(22.8.28) ロドリゴ 蝦夷地探訪記 その2
(様似から襟裳岬に海岸線を約36kmたどる)
(今日の目的地襟裳岬)
ロドリゴにとってとても意外な気がしましたのは、この蝦夷地が相対的に衰退していることでございました。
蝦夷地全体としても1995年ごろの人口570万人から、現在は550万人に漸減しており、それは特に漁村部や農村部において著しい傾向となっております。
ここ様似(さまに)においても1980年には約8000人いた人口が、今では約5000人の規模になり、アポイの火祭りを行うのにも事欠く有様のようでございました。
したがってこの集落にはたしてコンビニと称する食料調達地があるか、非常に不安だったのでございます。
(いざ出発だ)
様似の駅を出立したのは元禄3年8月9日の朝6時ごろでしたが、信じられないことに国の道を約200m程度行ったところで、セイコー・マートと称するコンビニに遭遇することができたのでございます。
このセイコー・マートは橙色の鳩のマークが目印ですが、長らく江戸表に住みセブン・イレブンやローソンを見慣れた目からすると「セイコー・マートって何」という雰囲気でしたが、実際はその後このセイコー・マートに何度も飢餓一歩手前で助けられたものでございます。
「主よ、主はロドリゴのためにセイコー・マートを用意してくださったのでしょうか」
何はともあれ、当日と翌日までの食料を入手できましたので食料問題は解決でき、泊まりはいつでも野宿が可能で、非常に晴れ晴れとした気持ちで出立できました。
(こうした海岸線が続いている)
今日は様似から襟裳岬(えりもみさき)まで歩く予定で、距離はおおよそ36km程度と推定されました。時速4kmで約9時間の行程ですが、途中で休みを入れたりして10時間程度で襟裳岬に到着が可能に思われました。
ここ日高地方の太平洋側に面した海岸線は日高昆布の一大産地で、この時期は漁家はあげてこの昆布の収穫に全精力を集中しておりました。
昆布は資源保護のために夏の4ヶ月と漁期が決められ、かつ朝方の3時間だけが許されるという制限の元に、ここに漁業権を持っている猟師が一斉に船を出して収穫を競い合っておりました。
今回の探索はほとんど海岸線に沿ったものでしたので、この昆布漁の光景は幾度となく見ることができましたが、この昆布漁でその年の生活をまかなわれており、収穫量の多寡が生活を決定づけているようでございました。
( 舟で収穫した昆布はトラックに積み替えられ干し場に運ばれていく。こうした作業は一家総出で行われていた)
そして概して言えば漁家は昆布のおかげでかなり裕福な生活をしており、家並みも江戸表のそれとそん色ないレベルでございました。
「なるほど、松前藩の財力はこの昆布漁に負っているのか」
途中この地域の守り神である約800mほどのアポイ岳(火のあるところの山)の麓を過ぎましたが、ここはアイヌの聖地のようでございました。
襟裳の国の道をひたすら南下し、朝方の霧も晴れ強い直射日光が肌を刺すほどの好天になったのでございます。
山が海岸にまで迫っており、急斜面を川が流れ落ちており、おかげで水の苦労はなく、また身体が火照ると水浴びをして体温を下げることができたのでございます。
(鹿やキタキツネが出迎えてくれる)
えりも港を過ぎると、襟裳公園道という特別な道があり、周りの光景が一変し高山植物と笹が生い茂る荒涼とした景色が続いておりました。
「ここは昨年歩いたフランスの高原地帯にそっくりだ」そんな感じの場所でございます。
襟裳岬は江戸表の歌い手、森進一が「襟裳の春は 何もない春です」と歌った場所でございますが、この時期常に霧が立ち込め長袖を着込まないと寒さに耐えられないような場所でございました。
(こうした光景が延々と続く)
ようやくついたものの景色は霧にかき消されていましたので、灯台の後ろあたりにテントを張って寝ようとしておりましたところ、ここに住居を構えている和人が「旅の方、もし野宿をされるならバス停の待合室が戸もきっちり閉まって快適ですよ」と教えてくれたのでございます。
(このバス停が一夜の宿になった。戸が頑丈に作られておりヒグマでも開けられないようになっている)
ここ襟裳岬にはヒグマが出没しているらしく、有線放送でさかんに熊対策を放送しており、キャンプなどしていると熊の餌食になってしまいそうな雰囲気でしたので、喜んでこの和人の言葉に従い、バス停の待合室で一夜を過ごすことにしたのでございます。
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コメント
是非、装備品の説明をお願いします! 何を持っていったのですか?
(山崎) 探訪記その3に説明を掲載します。
投稿: T | 2010年8月29日 (日) 02時19分