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(22.8.17) 夏休み特集 NO9 魔境

P7240146
(マッスルさん撮影、山崎編集)

 これは私が実際に経験した話である。私の趣味の一つにマラソンがあるが、最近のマラソンは色々なバリエーションがあり、超長距離走もその一つである。

 超長距離走とは、一般的に100kmを超えて長い距離を走るものだが、川の道というレースもそのうちの一つだった。
東京の荒川を遡り奥秩父の源流域まで走って、今度は信濃川を下って新潟まで走るレースで、5日間で一気に走りきる種目と2日半ずつ二回に分けて走る種目がある。

 私は後者の種目に参加し、荒川の河口にある葛西臨海公園から長野の小諸までの270km二日半のレースに参加した。
この種目の難所は夜半に越える奥秩父の三国山約2000M)の峠越えで、まったく月明かりだけの山道を越えなければならない。

 この時疲労と暗闇の恐ろしさがあいまって私は幻覚を見てしまった。

P7240148
(マッスルさん撮影、山崎編集)

(19.3.7)魔境


 この世には魔境という言葉がある。井沢元彦氏によれば「その宗教が邪教であろうとなかろうと、一定の条件の下に、『悟り』と錯覚するような現象『幻視・幻聴等』は起こりうる。それを魔境という」のだそうだ(逆説の日本史、6中世神風編)。

 実は私もその魔境を見てしまった。これはその報告である。

 私の趣味はマラソンだが、現在のマラソンはスピード系距離系に分かれる。スピード系については、テレビでよく放映されている東京マラソンのような、あくまでもスピードを狙った競技を指す。

 一方距離系はできるだけ長い距離を走ることを目的として、一般的には100km以上の競技を指す。
 私が魔境を見たのは「川の道270km」という競技で、荒川の河口、東京の葛西臨海公園から、長野県の小諸まで、二日半で駆け抜ける競技だった。こうした競技に参加する人は少なく、数十名のこじんまりしたレースである。物好きとしかいいようがない。5月だった。

 荒川に沿って遡り、更にその上流の中津川を遡ると、奥秩父の最高峰甲武信岳の近くの、三国山約2000m)の峠にさしかかる。競技は更に峠を降りて、千曲川に沿って小諸まで走るのだが、私が魔境を見てしまったのは、この三国山の峠越えの時である。

 その時は夜だった。すでに180km走ってきており、スタートから1日半が経っていた。途中4時間の休憩は取ったが、眠っていない。その状態で山越えに入ったことになる。5月の山は寒い。その時も氷点下に近かった。

 正直言うが、私は気丈ではない。かみさんからは「蚤の心臓」といわれている位だ。深夜の山道を1人で行くのは恐ろしかったので、やはり気の弱そうな走者と二人で山越えに入った。

P7240150
(マッスルさん撮影、山崎編集)

 私が幻聴に気づいたのは、中腹まで差し掛かった頃である。回りの小立や、横を流れている川面から、いっせいに笑い声が聞こえてきた。実に楽しげな笑い声で、ケタケタ笑っている。
こんな山奥でいったい誰が笑ってるんだろう
 あまりに不思議なので、止まってしばらく聞いていると、それが木立が風に揺れる音や、川のせせらぎの音だと分かった。しかし笑っているのだ。

 次に現れたのは幻覚だった。ありとあらゆるところから人が飛び出してきて踊りを踊り始めた。実ににぎやかな踊りで、幕末に発生した集団舞踏ええじゃないか、ええじゃないか」のイメージに似ていた。
いや、すごい。みんな踊っている

 実際に踊っている人のそばまで行くと、それは倒木だったり、岩だったり、道路標識だったりしたのだが、遠くで見ている限り、人の踊りなのだ
 相手が動いているように見えたのは、実際は自分がふらついていたからだが、意識としては相手が動いている。

人が大勢踊っていませんか」 と念のため、隣の走者聞いてみた。
実はやたらと人が見えるんだ」隣の走者はそう答えた。

  もう一つ不思議だったのは、こうした現象を不思議とも思わず、また恐れることもせず、恍惚として見とれてしまったことだ。
こんな世界があるんだ。すごい」 
 まさに魔境である。

 私は30年間の走歴がある。練習もそれなりにしている。それなのに、たった2日間眠ることなく走っただけで、精神に異常をきたしてしまった。
よくオウム真理教のような邪教集団が、修行と称して数日間眠らせずに、一心不乱に読経させるが、これは魔境を見させるためである。

 人はたやすく魔境を見るものだという井沢元彦氏の説を裏付けてしまった。しかも魔境は人を恍惚とさせる。神と一体になったと思うのも無理はない。オウム真理教の信者で今でも改心しない人がいるが、その理由が分かったような気がした。

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コメント

魔境を見るほど体を追い込むとはさすがです。
修験者の荒行もそれに近いのでしょうね。
むかし、肉が大好きなのにベジタリアンの彼女と付き合っていた友達は、ひもじさのあまり幻覚を見るようになったそうです。オソロシイ

ところで日頃から山崎さんといえば荷物が少ないという印象があります。
長距離ランや山登り、あるいは日常のランニングの時の
装備や持ち物がどんなものか記事にしていただけると、
荷物が多すぎてしまう身としては、とても参考になりありがたいです。
芸能人の鞄の中身拝見、みたいな話ですが・・・

投稿: ささき | 2010年8月17日 (火) 08時21分

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