(22.8.11) 夏休み特集 NO3 私が清掃活動を始めた理由
(トシムネさん撮影、山崎編集)
何事にも先達はいるものだ。私が四季の道の清掃活動を始めようと決心したのは、皇居の回りでいつも清掃活動をしていたNさんを見ていたからだ。
Nさんは私より若干若い女性だったが竹橋周辺の公園や遊歩道の清掃に命をかけていた。これは言葉どおり本当で、遊歩道だけでなく自動車道路の側溝に落ちているゴミまで清掃するので、いつ自動車に轢かれてもおかしくない状況だった。
Nさんはそうして自転車の前と後ろに目一杯のゴミを回収して自宅のある神田に雄姿をみせながら帰っていったものだ。
(トシムネさん撮影、山崎編集)
(19.2.9)友よ
何事にも先達はいる。私の清掃活動の先達は、皇居の竹橋周辺、毎日新聞社の前の外苑周回道路を清掃しているNさんだ。年齢は私より若干若い。主婦である。
「神田で小さな喫茶店を経営している」と言っていたが場所は知らない。
この皇居の外苑には約5kmの周回道路があり、ジョギングのメッカになっている。かつて谷川真理が練習コースにしていた。私の現役時代のJOGの練習コースもここだったので、そこでNさんにあった。
自転車の前後左右にゴミ袋を3つも4つも吊り下げているので、いやがうえにも目に付く。
「清掃をされているのですか」と聞いてみた。
「そうなの、ここはゴミがおおくて。皇居の周りがこうじゃ、日本の恥じゃない」と言う。
ここ竹橋付近には路上生活者が多い。さすがにダンボールで家を作ることはないが、ベンチの上に新聞紙やダンボールを引き、上にも掛けて寝ている。清掃はしないから、朝になると新聞紙やダンボールがあちこちに散乱する。それをNさんが片付けていた。
Nさんは実にタフだ。ある時新聞用チラシが竹橋前の自動車道路に散乱し、それが風に吹き寄せられ、約100Mに亘って側溝にたまっていた。竹橋周辺は交通量が多い
。
JOGをしているとき清掃中のNさんに会ったので
「いくらなんでもこれを集めるのは無理でしょう。自動車に引かれてしまいそうだ」と声をかけた。私はそのまま外苑を1周し、再び竹橋まで戻ってくると、信じられないことにNさんはすべてのチラシを回収してしまっていた。
「ちょっと危険だったけど、やったわ」と笑っている。
先鋭的なロッククライマーのように危険に立ち向かう。
(トシムネさん撮影、山崎編集)
ある日、犬と落ちていた紐の取り合いをしているのには笑ってしまった。一方の端を犬がくわえて「ううー」なんてうなっている。
他方の端をNさんが持って、強引に引っ張るのだが、犬は「紐が命」と言うような感じで離さない。皇居の前で犬と紐の取り合いをするような人はめったにいない。5分間程度見ていたが、JOGの途中だったので結末を見ることができなかったが、Nさんの勝利は間違いない。。
竹橋の近くの気象庁の前の公園には5Mはある立派な銅像が皇居に向かって立っている。しかしこの人物が誰で、何をした人なのかを記した碑文がない。Nさんは
「こんな立派な像に、碑文がないなんて、第一、観光客が困るじゃない」と言って役所に碑文を作るように申し入れをした。役所は
「ちょっと、難しい人なので作るわけにはいかない」と冷たく回答した。
実は、この像は和気清麻呂(わけのきよまろ)の像である。戦後教育で意図的に抹殺された人物で、戦前では知らない人がいないほど有名人だった。左翼からは蛇蝎のごとく嫌われている。
Nさんがすごいのは、それならと自分で碑文を作ってしまったことで、広辞苑等を引き、画用紙に碑文を書いて、座部に貼り付けた。
「和気清麻呂。奈良時代の廷臣。道鏡が宇佐八幡の神官と結託して皇位を望んだとき、勅使として宇佐八幡の神託を受け、これを阻止。ために称徳女帝と道鏡の怒りを買い、名を穢麻呂(きたなまろ)とされて大隈に流されたが、後に名誉を回復した」
かつて幕末に、静岡県清水市の沖合で、幕府軍と官軍の海戦があり、幕府軍の死体が浜に多く打ち上げられたことがある。このとき官軍は幕府軍の死者の埋葬を禁じたが、清水の次郎長が官軍の命令を無視して死体を手厚く葬った。
「おんなじ人間じゃねえか」と言うのが次郎長の立場だった。
Nさんの立場もそれに似ている。
「右も左もないわ。同じ人間よ」
「姉さん、江戸っ子だってね」
「神田の生まれよ」
私はこういう人が大好きだ。
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