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(22.7.7) 郵政国有化の大チョンボ ゆうパックがとどかない

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 今回のゆうパックの遅配の遠因はJPエクスプレスと言う会社をめぐる権力闘争にある。
JPエクスプレスほど政治に翻弄された会社はない。

 JPエクスプレス08年6月に、郵政社長西川善文氏の肝いりで郵便事業会社日本通運250億円の資本を共同出資して設立した会社である。
郵便事業会社ゆうパック日本通運ペリカン便を統合し、宅配便の雄で両社でシェアの70%を占めるクロネコヤマト佐川急便を猛追する目的で設立した会社だ。

注)郵便事業会社とは郵政民営化で設立された会社で、郵便事業と宅配便事業を行っている。
郵政民営化では、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、郵便事業会社、郵便局の4つの事業体に分割され、それの持ち株会社が郵政で西川氏は郵政の社長。


 当初郵政民営化西川社長の下で順調に進んでいたが、麻生政権鳩山邦夫総務相鳩山政権亀井金融・郵政担当相が実権を握ってからは郵政国有化に大きく舵を切り、郵政民営化の実行役西川社長は徹底的にいじめられることになった。

西川の作ったJPエクスプレスなんてつぶしてしまえ総務省(旧郵政省を中心にJPエクスプレスつぶしが始まった。
実際JPエクスプレスにははたけばほこりが出るところがあり、郵政社長西川氏のアキレス腱だったからである。

注)総務省は小泉政権の郵政民営化に天下り先がなくなるため反対であったが、小泉政権が続いている間は、面従腹背でとおした。
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JPエクスプレスは設立の当社からつまずいている。
08年6月、日本通運のペリカン便JPエクスプレスに移管したが、郵便事業会社のゆうパックはシステム統合が間に合わず、仕方なく09年10月に統合することになった。

注)通常2社が合併する場合一方のシステム開発が遅れることはない。本当は郵便事業会社の実務者がサボタージュしたのではないかと思っている。

 もともとゆうパックペリカン便も赤字なので統合して規模の利益を得ようとしたのに、せっかく設立した会社は片肺飛行になってしまい、JPエクスプレスの赤字が毎月50億円規模で膨らんでしまった。
JPエクスプレス郵便事業会社が66%、日本通運が34%の株式を保有しており、持分法でそれぞれの会社の損益に反映される。

注)設備投資がゆうパックとペリカン便をあわせた規模だったが、ゆうパックが入らないため過剰投資になってしまった。ただし毎月50億円の赤字と言うのは信じられないような大きさで、元々設備投資過剰であったともいえる。

 09年10月にようやくゆうパックのシステムが整備されて、JPエクスプレスに統合しようとしたが、この時総務省は郵政民営化を押し留め、再び国有化する絶好の機会を逃さなかった。
チャンスだ。西川をつぶして天下り先を取り戻そう

注)、「人とオペレーションの準備が統合に間に合っていない」と難癖をつけて統合を認めなかった。

 西川氏小泉元総理の後ろ盾で郵政民営化を推し進めていたが、小泉政権が終わった後は後ろ盾がなくなり、麻生政権鳩山邦夫総務相は、かんぽの宿の売却と、東京中央郵便局の再開発問題ですっかりへそを曲げて、郵政の方向転換を迫っていた。

注)このあたりは総務省の官僚が郵政の実権を取り戻すために鳩山総務相をたきつけて西川社長の追い落としを図ったのだと私は思っている。

 さらに亀井金融・郵政担当相になってからは、明確に郵政国有化方針をとり,郵政西川社長は斬首され、変わりに元大蔵次官の斎藤次郎氏に代わり、郵便事業会社の社長も元郵政官僚鍋島真一氏に代わった。
郵便事業は再び国家統制の下に入り、官僚支配が復活した。

注)西川善文氏は三井住友銀行の元頭取

 そして官僚支配の仕上げとしてJPエクスプレスを清算し、ゆうパックJPエクスプレスに統合されるのではなく、反対に郵便事業にJPエクスプレスを統合することに変更した。

注)郵便事業会社は宅配便事業がなくなると郵便事業だけになり、実質的に会社の存立が危うくなると判断し、総務省を中心に巻き返しを図っていた。

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 こうして前郵政社長西川善文氏が設立したJPエクスプレスを強引に清算し、業務を郵便事業会社に引き継ぎ郵政国有化路線は政治的には勝利した。
しかしすべてがうまくは行かないものだ。
あまりに政治的に変更したため、引継ぎのための従業員の訓練を実施する時間がなく、大混乱に陥ってしまった。

 7月1日にこの引継ぎは行われたのだが、その後5日までにおよそ32万個ゆうパックが遅配し、特に生鮮食料品のももやメロンが遅配になって消費者はかんかんだ。
なんで指定日に届かないの。クロネコヤマトや佐川急便では絶対に遅配はないのに

注)システム開発部門は、9年10月の段階ではゆうパックをJPエクスプレスに引き継ぐ対応をしていたのに、その後急遽JPエクスプレスをゆうパックに統合することになり、テンヤワンヤの大騒ぎになっていた。

 それでもシステム開発は間に合ったが、一方作業員に対するマニュアルの提示が稼動の2週間前になり、訓練も1回だけというやっつけ仕事になってしまい現場が大混乱に陥った。

 あまりの大混乱に総務省も見ておれなくなって、社長の鍋倉真一氏を呼びつけ、業務改善命令を出す直前にまでなっている。
しかし、こうしたトラブルの原因を作ったのはもともとは総務省で、09年10月の段階では、「人とオペレーションの準備が統合に間に合っていない」といって統合を許さなかったのに、郵便事業会社の社長が元郵政官僚になったとたん「人とオペレーションの準備が統合に間に合っていない」が統合をしてもいいと認めたからである。

 だから本来は業務改善命令は総務省に出すべきなのだ。

 このJPエクスプレスをめぐるドタバタは、政治に翻弄された企業の悲劇に私には見える。
郵政民営化は総務省と亀井国民新党のタッグで国有化に変更され、実務的には大チョンボをしながらJPエクスプレス約1000億円の累積赤字を残して、郵便事業会社に引き継がれていくことになった。

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