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(22.7.5) NHKスペシャル 狙われた国債~ギリシャ発・世界の衝撃

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 7月2日に放映されたNHKスペシャル狙われた国債~ギリシャ発・世界の衝撃」をビデオに撮って見てみた。

 ギリシャ国債の問題は昨年の10月に、パパンドレウ政権が「ギリシャの財政赤字が実際は12.7%だ」と発表した時からの問題なので、「なんでNHKは今頃になってギリシャ問題を取り上げるのだろうか、少し遅すぎないか」との印象を持って見始めた。
既に経済危機はスペイン、ポルトガルに飛び火して、ユーロ全体の問題になっているからだ。

 通常経済不況が深刻になると、まず中小企業から倒産が始まり、次に大企業に移り、それが金融機関にまで拡大して、最後に国家の破産へと進む。
リーマンショック時はこの金融機関の破産と言う段階で、国家が懸命に金融機関を支えたが、今回のギリシャ危機はその国家がついに自らを支えられなくなったと言う意味で、危機がもう一段進化したと言える。

注)国家が金融機関を支えるのを見て、「なんで金融機関ばかり優遇するのだ」という人がいるが、金融機関が倒産すれば次は国家の倒産が始まるからだ。

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 当初私はこの番組を見ても既に知悉したことばかりではなかろうかと思っていたが、それは間違いだった。
このNHKスペシャルの白眉はヘッジファンドの内実に迫っているところにある。

 というのも一般にヘッジファンドはいわば隠れた存在であり、表に出たがらない。秘密のベールに包まれていて実際にどのような手段で収益を上げているのかも分からない。
この秘密性がヘッジファンドの最大の特色で、それゆえに信じられないような利益を上げることができる。

 このNHKスペシャルはそうしたヘッジファンドのディーリングルームに入り、ファンドマネージャーから、ギリシャ危機でどのような戦略で収益を上げることができたかを教えてくれた。
こうした映像はNHKでなければ撮影が不可能だったろう。

 金融機関とヘッジファンドの相違は、一般の金融機関が日本で言えば金融庁や日銀から一挙手一投足まで指示されていて、逐一報告が求められるのに対し、ヘッジファンドはまったく国家の統制を受けない。
すべて自己責任で、損失が発生しても金融機関のように国家が損失を補填してくれることもない。

注)コンピュータ等の資本整備や商取引の内容については金融機関とそん色ない。私設のディリバティブ専門の金融機関だと思えばイメージが沸く。

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 今回この番組でヘッジファンドが゙いかにギリシャ国債を追い詰めたかを放映していたが、手段はギリシャ国債の空売りとCDSの購入だった。

 国債の空売りは国債価格を低下させるためのヘッジファンドの常套手段で過去に何回も例があり特に驚かなかったが、同時にCDSを大量に購入していたのには驚いた。
CDSとは一種の保証で、投資家がギリシャ国債を購入した場合、万一ギリシャ国債がデフォルトになった時を想定して、金融機関等に保証を依頼するものである。

注)たとえば国債利回りが8%でCDSが3%とすると、国債購入者は5%の利回りを得、残りの3%は保証銀行が得ることになる。

 実際にギリシャ国債がデフォルトになって投資家に元金や利息が支払われなくなると投資家は金融機関からその契約内容にしたがって弁済を受ける。
CDSの価格は、国債の信用が高い場合は低く、反対に信用が低い場合は高く、そして株式と同じように日々価格が変動している。

注)CDSの取引は正式な市場があるわけでなく、相対で取引される閉じられた世界。

 ヘッジファンドはこの低い時に大量にCDSを購入し、ギリシャ危機が発生した段階で高額で売り抜けた。
一方でギリシャ国債の空売りも行ない意図的にギリシャ国債の崩壊を誘っている。
うまくギリシャ国債が崩壊してくれればヘッジファンドは空売りとCDSでぼろもうけができ、実際にその通りになった。

 リーマンショックでほとんどのヘッジファンドが崩壊したと思われたが、その後の各国の超金融緩和で大量の資金がヘッジファンドに流れ込み、よみがえったヘッジファンドが今度はその資金を使用して弱い国債を狙い撃ちにしている。

注)たとえば日本では指標金利が0.1%なので、金融機関はこの金利で日銀等から資金を調達し、ヘッジファンドに1%程度で融資しても鞘を抜くことができる。
現実問題として企業には設備投資の資金需要がないので、こうした資金はほとんどヘッジファンド等の投機資金に回っていると見ていい。

 
ドイツのメルケル首相が、ヘッジファンドを目の敵にし、国債の空売りの規制やCDSの取引の禁止、そして何よりもヘッジファンドのためと言っていいような金融緩和に反対して緊縮財政を舵を切ったのも、ギリシャ危機のような国家危機を収束する手段はそれ以外にないからだ。

 緊縮財政をユーロがとれば経済成長は大幅に減速するが、一方そうしなければ国家が破産する。
経済成長か、国家破産かを迫られユーロは経済成長を諦めた
日本も菅総理が消費税率10%を掲げて参議院選挙に臨んでいる。

 潮目が変わって為替も株式も大揺れに揺れて、いつ収束するか分からなくなってきた。

 

 

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評論 世界 ヨーロッパ経済 ギリシャ」カテゴリの記事

コメント

リーマンブラザーズの破綻も、ゴールドマンサックス、JPモルガンチェースなどの投資銀行による同じ手口だそうです。投資銀行間でも、互いに攻撃しあっている様です。空売りとCDS金利を上昇させることで、市場に破綻の危機があると思わせ、儲けるみたいです。一企業の儲けのために、世界中が混乱しています。

投稿: takaping | 2010年7月 8日 (木) 00時16分

経済に疎いためこのブログで始めて知る事柄が多く大変勉強になります。
日本が経済破綻の危機に直面している事やCDSという言葉も最近知りました。
他の方の様な知的なコメントがさっぱり出来ないのが恥ずかしいですが
山崎さんの経済評論もっと読みたい!と思いました。そして写真が綺麗

(山崎)写真を褒めてもらうのが、一番うれしいのです。

投稿: doltz | 2010年7月 5日 (月) 20時10分

こんにちわ。
金曜夜のNHKスペシャルは衝撃的な内容でしたね。おっしゃられるようにギリシャやドイツの実態もさることながら、ヘッジファンドの手口の内実を明かし、さらには将来日本国債が狙われる可能性について言及したことはショックでした。
これまで、日本の不動産バブル、ITバブル、WTIの147ドルまでの急騰、そしてサブプライム問題などにおいて、常に危険を指摘する声が一部にあったものの、それらは当時のイケイケの熱気の中で掻き消されてきました。そして事後になって、中身が検証され、なぜこんな当たり前なことが予
測できなかったのだろうかという反省が繰り返されてきました。
今日本の累積経常赤字と国債乱発の現状を憂うる声は、個人資産140兆円というまやかしの切り札に力を得ず、また、少子高齢化、外需依存経済、政治迷走、若者の内向き志向など将来への希望が見えないにも関わらず、円高が進行する不思議な状況が果していつまで続くのでしょうか。
欧州危機を食いつくし、巨額の利益を得たヘッジファンドが、いつ日本にその収益を求めて群がってくるのでしょうか。その危機に私たちは一体どう備えればよいのでしょうか。
色々と考えさせられた番組でした。

(山崎)とても長いコメントをありがとうございました。

投稿: キムリン | 2010年7月 5日 (月) 12時39分

私も、この番組を見て、衝撃を受けました。

私は、医薬品や医療のマーケティング・コンサルタントなのですが、こんな財政状況では、医師会や厚労省の描いている医療は実現不可能だと思います。

投稿: 若杉 徹 | 2010年7月 5日 (月) 11時20分

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