« (22.7.27) 夏枯れ 読者の投稿依頼 | トップページ | (22.7.29) 水澤 勇気さんの「数学の段階」 »

(22.7.28) イカサマのカーニバル 欧州のストレステスト

22725_108

 これほどのイカサマがあっていいのだろうか。欧州銀行監督委員会CEBS)が23日に発表した欧州20カ国、91金融機関のストレステスト(健全性審査)の結果である。

 CEBSは胸をはって「厳格かつ包括的」なテスト結果だと言ったが、「厳格かつ包括的」なのは形式であり、実態はひどいイカサマになっている。
今回のストレステストはギリシャの国債に始まったソブリンリスク国家、特にその国債の信用リスク)を評価するために行ったはずだが、実際はそっとソブリンリスクを外してしまった。

 もともと欧州の金融機関の情報開示度は低く内容に疑義があり、その最大の問題点はトレーディング勘定と銀行勘定(投資勘定)の任意的な使い分けにある。

 金融機関の勘定に詳しくない人は何のことか分からないと思うが、たとえば株式の保有にしても、「株式を売買して儲けるために保有する場合はトレーディング勘定」に振り分け、一方「その会社を買収するような目的で長期間保有する株式は銀行勘定」で管理する。

22725_109

 その勘定の相違はトレーディング勘定時価評価するのに対し、銀行勘定はほとんど取得原価方式をとることにある。

 そして問題は売買目的か所有目的かはその時の情勢によって変わるので、金融機関はほとんど任意にこれをトレーディング勘定と銀行勘定に振り分け、実際は利益操作に利用してきた。

注)一般的には株式が下降局面では損失が発生するため、銀行勘定に移して含み損を隠し、一方上昇局面ではトレーディング勘定に移して含み益をあらわすような操作を行っている。なお日本でも同様の操作を行ってきた。

 今回問題になっているギリシャ、スペイン、ポルトガルの国債について、その銀行が「これは銀行勘定で期日まで保有しています」といえば、CEBSは金融機関の申請をそのまま認めている。
金融機関はギリシャ国債などはほとんど銀行勘定に移し、ソブリンリスクが発生しないように事前に操作している。

注)実際はユーロ各国はそうした操作をすることを積極的に奨励している。

 その結果問題のある金融機関はたった7行で、追加で資本増強を図らなければならない金額は全体で35億ユーロ(約3900億円)ですむことになった。
欧州の金融機関はまったく問題はありませんCEBSの主張である。

注)アメリカでさえ746億ドル(約6兆5千億円)の資本投入が必要だった。
なお、今回資本投入が必要とされた金融機関はスペインの貯蓄銀行5行、ドイツの不動産銀行1行、ギリシャの農業銀行1行である。

22725_115

 しかしこれはほとんど詐欺に等しいイカサマである。
確かに欧州はリーマンショック以降約22兆円規模にのぼる政府資金を金融機関に投入して支えてきたが、この22兆円はサブプライムローンに代表されるディリバティブによって蒙った損失に対応したもので、その後発生したスペインの不動産融資の焦げ付きや今問題になっている国債のデフォルトに対応するものではない

 CEBSの言う最も厳しい条件での評価とは、ギリシャ国債が23%、ポルトガル国債が14%、スペイン国債は12%低下するというソブリンリスクの想定だが、ただしこれはトレーディング勘定の国債だけだから、銀行勘定に移してしまえば国債の低下はまったくないことになる。

 たとえば今回資本投入が必要とされた7行の金融機関の一つにドイツのヒポ・レアル・エステートがあり、390億ユーロのギリシャ、ポルトガル、スペインの国債を保有している
これがすべてトレーディング勘定にあれば、国債が3カ国の平均の低下数字約16%で計算すると390億ユーロ×16%=62億ユーロ(約6800億円)の資本不足にならなければならない。

 しかし問題のある金融機関7行の全体の資本不足35億ユーロ3900億円)だから、ヒポ・レアル・エステートは実際はほとんどの国債を銀行勘定に振り替えているはずだ。

 CEBSはこの損失隠しを黙認したまま、形式だけ厳格さをよそおってストレステストを実施し、問題の金融機関は7行に留まったと発表した。
市場は一応この発表を好感してユーロは強含みに推移しているが、どう見ても一時の時間稼ぎにすぎない。

 これから欧州はギリシャ、ポルトガル、スペイン、アイルランド等の危機が発生するたび、あのストレステストがイカサマだったという事実をかみ締めることになるだろう。

 

 

|

« (22.7.27) 夏枯れ 読者の投稿依頼 | トップページ | (22.7.29) 水澤 勇気さんの「数学の段階」 »

評論 世界 ヨーロッパ経済」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (22.7.27) 夏枯れ 読者の投稿依頼 | トップページ | (22.7.29) 水澤 勇気さんの「数学の段階」 »