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(22.7.12) EUのストレステストは成功するだろうか?

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 EUはギリシャ、スペイン、ポルトガル等の国債のソブリンリスクが治まらないため、とうとう主要金融機関のストレステストを実施すると6月17日に発表した。
対象はEU内の91の金融機関で、大手銀行だけでなく市場が懸念しているドイツ州立銀行スペイン貯蓄銀行を含めると言う。

注)ドイツ州立銀行は国債等の変動リスクのヘッジが不十分と疑われており、スペイン貯蓄銀行は多くの不良不動産融資を抱えていると疑われている。

 質問用紙を金融機関に7月5日に送付し、15日までに回答をもらい、23日に発表すると言うスピード審査だ。
ストレステストはアメリカが09年5月に実施し、かなり怪しげな結果報告だったが結果的にはその時を境に金融危機が収まった経緯がある。
ストレステストさえ実施すれば金融不安は必ず収束する」当局の読みだ。

注)アメリカのストレステストについては「アメリカのストレステストは大本営発表」(リンクが張ってあります)参照。

 ストレステストとはいくつかの経済指標が政策当局が発表している数字より悪化した場合、それが金融機関の経営に対しどの程度の影響が出るか推定し、必要があれば政府資金を投入する作業である。

 現在発表されているシナリオでは、① GDPが当局の発表より3%悪化し、② 失業率が同じく1%悪化し、③ 不動産価格が同じく10%悪化するという条件で、金融機関の健全性を調べるのだと言う。

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 しかしこうした指標は形式的な指標で、今回の本当の目的は欧州銀行監督委員会(CEBS)が内々に各金融機関に示した国債の担保掛目(ヘアカット)で保有している国債の再評価をさせることにある

 ストレステスト対象の資産は融資と国債といわれているが、実際は国債のストレステストが主目的だと見ていい。

注)5日に書類を送付し、15日までに回答をもらうと言う短期の調査では融資のストレステストまでは十分できない。01年、日本においては金融庁が各金融機関に実査に入り数ヶ月かけて不良資産の洗い出しを行った経緯がある。
個別融資の査定にはとても時間がかかる。
今回はせいぜい不動産価格が10%低下したとしていくら不良債権が発生するか大まかに推定するより仕方がない。

 今回の本当のシナリオは各金融機関が保有している各国の国債を以下の基準にしたがって査定して報告を求めるものである

① ギリシャ国債 ▲17%
② スペイン国債 ▲3%
③ フランス国債 ▲0.7%
④ ドイツ国債  ▲0%


 なお、他の国債のカット率も示されているはずだが、明細はもれてこない。また上記のカット率は平均の数字で実際は5年ものとか10年ものごとに細かいカット率が示されているはずだ。

 問題はこうしたカット率が果たして市場から見て適切な数字かどうかだが、ギリシャがデフォルトした場合の市場のカット率は60%と想定されているので、市場の評価と比較すれば今回のストレステストは3分の1程度の大甘な基準と言えそうだ。

 だから「これじゃ、ストレステストなんて代物ではない」と言うのが一般的な市場の評価だ。

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 だが、ストレステストにまったく意味がないというのも言いすぎで、これで各金融機関の国債の保有残高を当局が把握できるというメリットがある。

 欧州の金融機関の情報開示率は非常に低く、当局としても問題の残高がどの程度あるか把握仕切れていない。
それが今回のストレステストではっきりと残高が分かるようになるので、適格な対応策がとりやすくなる。

 実際にアメリカではストレステストを実施し金融機関の財務を当局が完全に把握できたので、ストレステストそのものはかなりいかがわしいものだったが、その後の金融緩和策で金融機関を救うことができた。

 さて、今回の欧州版ストレステストはどうなるであろうか。当局の思惑通り、アメリカ並みに金融不安は収まるだろうか。
アメリカはジャブジャブの金融緩和で乗り切ったが、一方欧州は引締め政策に入っている。

 問題銀行を当局が把握できても、十分な政府資金の投入や金融緩和が必要だが、どう見てもEUはそのつもりはないようだ。
だから欧州版ストレステストはアメリカほどには成功しないと言うのが常識的な判断だろう。

 

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