(22.6.21) 多重債務者問題は解決するだろうか
この6月18日に改正貸金業法が完全施行された。
貸金業法自体は06年12月に法改正が行われたのだが、その後3年半をかけてようやく完全実施にこぎつけた。
3年半もかけたのは、貸金業者の経営に大きな影響を与えるため、激変緩和措置を設けたものだが、実際にこの間消費者金融の貸出残高は約4分の1程度減少し、貸金業者そのものも半減している。
注)消費者向け貸付残高の推移 06年3月 21兆円 → 09年3月 16兆円。
貸金業者は2年余りで半減し、現在3900社あまりになっている。
この18日の完全実施の内容は二つあって、
① 年収の3分の1を超える新規貸出しの禁止と、
② 上限金利を、いわゆるグレーゾーン金利(出資法の29.2%と利息制限法の15%~20%の間の金利)を廃止して、利息制限法の金利に統一する措置である。
ただし今回の実質的な影響は①の年収の3分の1の規定であり、②のグレーゾーン金利については消費者金融大手やカード・信販会社はすでにかなり前から廃止して、利息制限法の上限以下の金利設定になっている。
注)06年1月の最高裁の判決で、グレーゾーン金利のみなし弁済規定(借入者が了解すればグレーゾーン金利を適用しても良い)を厳格に運用する判決が出され、それ以降の裁判ではこのみなし弁済規定は実質的に認められなくなった。
これにより消費者金融各社は過去に遡って過払い利息の返還請求(29.2%-20%の金利の10年分)に追われ、経営が急速に悪化した。
この年収の3分の1の規定に抵触すると見られる利用者は、消費者金融全利用者約1400万人の半分の700万人相当と見られているため、影響は相当大きい。
消費者金融各社が「法律を見直されなければ業界が消滅する」と悲鳴をあげているのもうなずける。
実際業界大手のアイフルは実質的に倒産(09年9月 産業活力再生特別措置法に基づく措置を申請)し、武富士は業容が急激に悪化して外資等への身売りが噂されている。
90年代から06年1月の最高裁判決まで我が世の春を謳歌していた消費者金融のこの凋落は目を覆わんばかりだが、一方このことは日本における消費者金融というものが限界に達し、ビジネスモデルとして成立しないことを意味している。
通常の消費者が借入金を返せるあては、ボーナスが出るまでのつなぎや、給与の増加が期待される場合だが、日本の場合はどちらもその条件が失われた。
経済は成長せず給与もボーナスも上がらないのだから、返すあてはまったくなく、結局は多重債務者になるより他はない。
多重債務でも借りている人がいる間は消費者金融は成り立つが、今回の法律の施行で年収の3分の1以上の多重債務者への貸出しを規制されるのだから、結果的に貸す相手がいなくなる。
給与は増加せず、多重債務もだめなら消費者金融は存立できない。
ところで今回の法改正で多重債務者の対応は3通りに分かれそうだ。
① 多重債務者でまだ借入が少ない人は、借入を止め生活を切り詰めることで乗り切ろうとする。
② 借入が多すぎて生活ができない人は、消費者センター等に相談して自己破産の道を選ぶ。
③ 自己破産も生活の切り詰めもできない人は、あくどい闇金融に走る。
注)現在の闇金融の手口は、規制対象外のクレジットカードを利用したものが多い。これはカードで50万円のパソコンを購入させて、それを30万円で引き取ると言うようなもので、この場合の実質の利回りは67%になる。
多重債務者700万人のうちそれぞれの割合が3分の1づつと想定すると、約230万人程度はあくどい闇金融の餌食になりそうで、今後はそうした多重債務者が社会問題になるだろう。
しかし何度も繰り返すが、GDPの成長が止まった社会では、ボーナスも給与も伸びないのだから、消費者は返済財源を持たない。
その結果消費者金融の残された道は、日本をあきらめ成長著しい新興国での営業に乗り出すことだけで、実際にプロミスは中国への進出を図ろうとしている。
時代が変わったと言うことだろう。
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