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(22.5.8) 西洋の没落 ユーロの終焉

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 シュペングラー「西洋の没落」を書いたのは第一次世界大戦が終了した傷跡生々しい戦争直後だった。
確かにこの戦争は、それまで世界の中心だった西洋からアメリカに覇権が移ったという意味で「西洋の没落」を象徴する戦争だった。

 それから1世紀たち、フランスとドイツが手を結び、ヨーロッパは再びEUユーロ圏という形でアメリカに対抗できる一つの政治的・経済的核として復活したように見えたが、それが幻想であったことが明確になってきた。
ユーロ圏が終焉しようとしているからだ。

 現在ギリシャ、ポルトガル、スペインとユーロの弱い輪が次々に破綻し始めた。
ヨーロッパの内部でこれを収拾することができず、IMFというアメリカ主導の救済機関にギリシャへの資金援助を依頼した。
いたしかたなく総額1100億ユーロ(約12兆円)の支援を、ユーロ各国とIMFは決めたが、その支援条件があまりに厳しいために、今度はギリシャ国民が切れてしまった。

給与も年金も下げて付加価値税を引き上げる。俺たちはどうやって暮らせばいいんだ
ギリシャは貧富の差が激しく、普通の国民の給与は10万円~20万円程度だ。

こんな薄給の身で、さらに給与が引き下げられたら、俺たちは生活できない
ゼネストは収まる気配がなく、ついに3名の命が失われた。

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 一方市場はこのギリシャの状況を見て驚愕した。
これでは1100億ユーロ程度の支援では収まりそうもない。ギリシャ政府は給与も年金も引下げができず、財政支出は削減できない」

「まずい、ギリシャ国債を持っている金融機関は国債の一部放棄をせざる得なくなる。ギリシャ国債と金融機関の株式を売っぱらえ!!!」

注)ギリシャ国債の残高は約2700億ユーロ(約32兆円)でこのうちの4分の1がギリシャの国内銀行、約7兆円をフランスの銀行、約4兆円をドイツの銀行が引き受けていると想定されている。

 EU各国の株価は大幅に下落し、ユーロは叩き売りの状態となって、1ユーロは120円を大幅に下回ってしまった。一方上がったのはドルと円で、アメリカも日本も褒められるような経済状況ではないが、あまりにヨーロッパがひどいので、資金がドルや円に逃避している

 ヨーロッパの経済状況がなぜここまでひどくなってきたかの原因は、会計制度に遠因がある。
アメリカの場合は基本的に時価会計のため、株式や不動産やディリバティブの価格の急落はすぐに収支に現れ、対応も早い。一方ヨーロッパの場合は過去の日本と同様に投資勘定と商品勘定の区分が厳密でなく、市況が悪くなるとそれを投資勘定に移してしまう。

これは投資のためのディリバティブだから、取得時の原価で評価します
このためヨーロッパの金融機関の損失は外部に現れにくく、そのためリーマン・ショック後の対応についても時価会計を採用しているイギリスを除いて、ドラスティックな対応がなされなかった。
それが2年遅れでギリシャ経済の崩壊と言う形で表面化し始めた。

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 90年代に日本のバブルが崩壊し、08年にリーマン・ショックでアメリカのバブルが崩壊したあと、2年遅れのギリシャ・ショックでヨーロッパバブルが崩壊したと考えるとイメージが沸く。

注)ヨーロッパのバブルの崩壊の仕方はかつての日本と似ている。徐々にそして確実に崩壊していく。

 遅かれ早かれ、どこの経済であろうともバブルのつけは支払わなくてはならない。
ユーロ圏はどのようにしてこのつけを支払うことになるのだろうか?

 おそらく1枚岩のユーロが崩壊し、強いユーロ圏と弱いユーロ圏に別れ、ユーロも第一ユーロと第二ユーロに分かれるというのが、最もありそうなシナリオだ。
弱いユーロ圏にはギリシャ、ポルトガル、スペイン、アイルランドあたりが含まれ、通貨の切り下げを実施して経済の建て直しを図ることになる。

注)現在、単一通貨ユーロを導入している国は通貨の切り下げと言う手段がとれず、残りは緊縮財政しかないため、国民の不満が一気に爆発してしまう

 金利政策も自由に第二ユーロ圏として取れるようになるため、ギリシャショックのような時に、弾力的な金融政策が実行できる(独自に金利の引下げが可能になる)。

 確かにこれで弱いヨーロッパは救われるが、これはEU、わけても通貨統合で一つのヨーロッパ共同体を作り上げようとしたヨーロッパの夢の崩壊でもある。

注)もう一つのシナリオはユーロ圏についていけない弱い国を切り離すというシナリオがある。

 通貨統合から約10年、西洋のバブルが崩壊し、今こうしてフランスとドイツの「西洋の復活」の夢が潰えようとしている。

(5月11日追加)
EUおよびECU(欧州中央銀行)はこのギリシャ危機に対応するため、大規模な支援策を10日発表した。
これによるとEUは総額90兆円規模の融資枠を確保し、またECBは市場で流通している国債の買取を実施することになった。

市場は一様に好感し、株価は値上がりユーロは再び120円台に上昇した。
この措置で当面の危機は乗り切ったが、今後はギリシャがEUのシナリオ通りに財政削減に応じるか否かにかかってきた。


 

 
 

 

 


 

 

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評論 世界 ヨーロッパ経済」カテゴリの記事

コメント

とても分かりやすい経済解説ありがとうございます。
特に赤字の注釈がとてもありがたいです。
いくら分かりやすい経済の本を読んでも、素人には分からない部分が多く、結局ぼんやりとしか理解できないままで終わってしまうことが多いです。
しかし、山崎さんの解説は素人の「?」に救いの手を述べてくれています。

これからも経済関係の解説を期待していますので、よろしくお願いします。

(山崎) 私の経済関連の記事を期待して読んでくださってありがとうございます。分かりやすい記事をこれからも書いていきます。

38歳 主婦 愛知県在住

投稿: A | 2010年5月 8日 (土) 23時07分

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