(22.5.26) 韓国の9.11 哨戒艦天安の撃沈にいかに対処するか!!
韓国の哨戒艦天安が北朝鮮の魚雷攻撃によって撃沈されたことが明らかになって、南北関係は一挙に緊迫の度を加えている。
李明博大統領は24日談話を発表し、以下のような制裁措置を取ると言明した。
① 北朝鮮の謝罪と関係者の処罰の要求
② 国連安保理へ北朝鮮の制裁決議提出
③ 開城工業団地を除く対北経済交流の中断
④ 領海、領空侵犯等には即時自衛権の発動
⑤ 北朝鮮船籍の韓国側海域の通行禁止
また国防相は、米韓合同の対潜水艦訓練を近く実施、今年後半に韓国周辺海域で大量破壊兵器拡散防止構想に基づく海上封鎖訓練を準備していると発言した。
これに対し北朝鮮は猛反発しており「韓国のでっち上げだ」と主張しているものの、明確な魚雷攻撃の証拠があり、また過去何回も韓国に対しテロ攻撃を仕掛けた前科があるだけに、国際世論は「テロ国家北朝鮮がまたやったのか」という受け止め方だ。
注)83年のラングーン事件では韓国の閣僚17人が爆死させられ、87年の大韓航空機爆破事件では115人が犠牲になっている。
もっとも韓国国内では金大中、ノムヒョンと2代続いた左派政権が10年余りも太陽政策を推し進めていたことから、北朝鮮はもはや韓国に対してテロを仕掛けることはないのではないかと見られていただけに韓国内のショックは大きい。
また李明博大統領も基本的にはこの太陽政策を継承してきたが、今回の談話はその太陽政策との決別を意味し、全面戦争を避けながらも、二度と北朝鮮がテロ攻撃を仕掛けないようにさせるにはどうしたらよいかとの苦心のあとが見られる。
実は韓国にとって最も重要で実質的な措置は国防相が発表した、米韓合同の対潜水艦訓練と核拡散防止構想に基づく海上封鎖訓練である(北朝鮮を刺激しないため、わざと大統領ではなく国防相から発表させた)。
対潜水艦訓練は、北朝鮮小型潜水艦によるホーミング魚雷による攻撃に対処するためだ。
今回の事件で北方限界線NLL近海では北朝鮮が制海権を握ってしまったので、この制海権を取り戻どさなければならない。
また核拡散防止構想による海上封鎖が必要なのは、現在北朝鮮の輸出物資が核物質とミサイルになっているからである。
注)ホーミング魚雷とはスクリュー音を追尾して敵船の真下で爆発するようにセットされた魚雷。
一方経済協力の全面停止後も、開城工業団地の引き上げは除いているが、これは韓国にとっても北朝鮮にとっても犠牲が大きすぎるからだ(ここからの引き上げは全面戦争になる可能性が高い)。
開城工業団地には121社の韓国企業が進出しておりこの団地の貿易額は、南北の貿易額約1500億円の56%、約850億円の規模となっている。
北朝鮮はこの団地で4万人の工場労働者が勤務しており、その給与等の収入は年間約45億円といわれている。
北朝鮮にっては核物質とミサイル以外のまともな貿易は対韓国貿易だけであり、この工場団地が閉鎖されれば対外的に完全に孤立する。
注)これ以外には中国との貿易があるが、実質は中国の経済援助であって、貿易とは言いがたい。
一方韓国は常時1000人規模の韓国人が開城工業団地で経営指導に当たっており、もしこの団地から完全撤退をすると、団地で働いている韓国人がすぐさま戦争捕虜になってしまい、さらに今までの投資額約5億ドル(450億円相当)の資産を失うことになる。
李明博大統領としては、北朝鮮との全面戦争は避けるが、NLL周辺の局地戦争では負けない体制を作り上げるということで、二度と北朝鮮がテロ攻撃に出ないような体勢さえ築ければ了としたいようだ。 だがしかしNLLと言われる北方限界線は実に厄介な問題が存在している。
ここは朝鮮戦争終結時点で、連合国側が海上の軍事的優位を背景に一方的に設定したものであり、北朝鮮はこれを認めていない。
実際地図を見てみると分かるが、NLLは北朝鮮の沿岸を取り巻くように設定されており、北朝鮮から見れば許しがたい領海設定になっている。
注)この海域では1999年に第一延坪海戦、および2002年に第二延坪海戦(西海海戦)がおこなわれており、北朝鮮が北方限界線を越境、韓国軍に戦闘を仕掛けている。
また2009年11月10日には、大青海戦と呼ばれる両国間での銃撃戦が発生し、北朝鮮の警備艇が大破しながら逃げ帰った。
ここNLL周辺海域は互いに領海を主張しあっている場所なので、いつでも戦闘が起こる。
両国とも全面戦争を避けながら、この局地戦と言われる領海紛争は負けるわけに行かない。
そして最も懸念されるのが互いに意地を張り合って、局地戦が全面戦争になってしまう危険性だ。
注)市場はこれを懸念してウォンと韓国株式を売っている。
「局地戦で勝利し、かつ全面戦争にしないための決断とは何か」
韓国大統領は常時白刃のヤイバの上に座って決断しているようなものだ。
この韓国大統領に与えられた試練に比較すれば鳩山総理の普天間基地問題など試練に値しないことが分かる。
一方は戦争の瀬戸際でぎりぎりの判断を要請され、一方は実質的にアメリカの庇護の下に安全を図られているため、防衛問題を住民の負担軽減の問題と思っている者の差である。
韓国の大統領と比較すると、日本の首相は親に甘えている子どものようだ。それでも首相をしていられるのだから平和国家日本を喜ぶべきなのだろう。
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