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(22.5.21) 第2のリーマン・ショック前夜 5月10日の攻防 ギリシャを救え

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 5月10日、西欧の金融市場がすんでのところで、第2のリーマン・ショックに陥るところだった。
ギリシャ、ポルトガル、スペインの金融機関を中心に、短期金融市場で資金調達ができない銀行が現れ、金融機関の連鎖倒産が起こりそうだったからである。

 通常、金融機関は短期金融市場で無担保で数日(通常翌日までが多い)の資金のやり取りをして資金繰りをまかなっているのだが、この短期金融市場が凍りついてしまい、資金の出し手の金融機関がなくなってしまった。
ギリシャ国債を持っていそうな金融機関には金を貸すな!!

注)短期金融市場のレートは通常とても低い。たとえば0.1%だとすると1億貸して1日の利息は300円程度。だから出し手の銀行は、こんな小額の利息を稼ぐよりは手持ちをして安全を図ろうとするので、危ないうわさが出るとたちまちのうちに短期金融市場は凍りつく

 すでに(3日EUとIMFギリシャに対して1100億ユーロ約12兆円)の資金援助を公表していたのに、まだ市場は疑心暗鬼だった。
どうせギリシャは公務員給与の引下げや年金の引下げなんかできるはずがない。結局ギリシャ国債を持っている金融機関は国債の棒引きに応ずることになる

 どこの金融機関がどれだけギリシャ国債を持っているか分からないので、とりあえずギリシャ、ポルトガル、スペインの銀行には金を貸さないことにした。
ギリシャの次はポルトガルとスペインだ。これらの国の国債はクズだし、金融機関も危ない

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 あまりに急激な資金ショートに世界各国の首脳は驚いた。
これは第2のリーマン・ショックになる。世界経済が再び崩壊する!!
オバマ大統領、メルケル首相、サルコジ大統領、スペインのサパテロ首相が電話をかけまくり、対応策を検討した。
何でもいいから市場を驚かすような大規模な支援をうちだそう

 決まった支援策は、以下の通りだった。

① EUとIMFで総額7500億ユーロ(約83兆円)の融資枠の設定(EUの資金はドイツやフランス等が保証してEUが調達

② ECB(欧州中央銀行)による国債購入

③ 日・米・欧の中央銀行が短期金融市場にドルを供給

④ ユーロ圏各国の財務の相互監視


はギリシャ以外の国が金融危機に陥った場合の救済措置、は買い手のなくなったギリシャ、ポルトガル、スペインの国債をECBが購入する措置(ただし市場から)、は資金調達ができないギリシャ、ポルトガル、スペインの金融機関に短期金融市場を通じて中央銀行がドルを供給する措置、はドイツやフランスといった財務状況が好調な国がギリシャ・ポルトガル・スペインの予算・決算を監視する措置である。

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 こうした措置は確かに市場を驚かせた。
やれやれ、EUの今回の対応で金融危機は回避されそうだ。EUの連携は立派なものだ

 それまで買い手のなかったギリシャ等の国債が買われるようになり、また危なかった金融機関も倒産を免れた。
ユーロは再び信任されて、各国の株式も上昇したので政策当局はほっと胸をなぜ下ろしたものだ。
よかった、第2のリーマン・ショックをすんでのところで食い止めた

 こうして5月10日の金融当局と市場の攻防は金融当局の勝ちに終わった。

 確かにこれで大パニックを押さえ込むことには成功したのだが、冷静になってみると市場はあることに気がついた。

これで金融機関の倒産や、国家の倒産はなくなったが不良資産がECB(欧州中央銀行)に集められ、ドイツやフランスの保証債務が増えるだけではないか!!

それにギリシャやポルトガルやスペインが財務改善に失敗すれば不良資産が増えるし、反対に本気になって財務改善を図ると緊縮財政になり成長戦略はとれない。
どっちに転んでもヨーロッパは長期にわたって景気後退が続く・・・


こりゃ、だめだ。ヨーロッパは日本のように成長力のなくなった社会になってしまった

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 さらに18日、ドイツが発表したユーロ圏の国債、CDS、ドイツの銀行株の空売り禁止が市場の心理を冷やした。
そうか、もうヨーロッパでは空売りで儲けることができないのか。ならヨーロッパから資金を引き上げて新興国や資源に投資資金を移そう

注)から売りは値下がり局面で収益を確保する手法。これを仕掛けられると国債価格等は止め処もなく値下がりする

 5月10日に120円台に持ち直したユーロも、また株式も再び売られだした。現在のユーロは112円から113円になっており、そのうちに1ユーロが100円程度になりそうだ。

 ユーロ圏は国家倒産の危険性はなくなったものの、将来にわたってまったく魅力のない市場に変わってしまった。
そして今投資対象からはずされ、資金の大移動が始まっている。


注)市場の動向は上記に述べたファンダメンタルな部分で動くが、投資技術的な面でその動きが増幅される。

 たとえば国債を扱うディーラーは常時持高と収益で監視されており、今回のようにギリシャ国債の値下がりが発生すると、持高制限にひっかかかり、ギリシャ国債を売らなければならなくなる(ギリシャ国債は今まで10億まで持ち高を許されていたのが急に5億に引き下げられる)。

 さらにギリシャ国債を売却することで損失が出ると、その穴埋めに利益が確保されている他の国債(ドイツ国債等)を売却して収益を確保しようとする。

 このためギリシャ国債もドイツ国債も売られて価格は低下し、ファンダメンタルを反映した低下幅以上に増幅して低下することになる。

 

 

 

 

 

 

 

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評論 世界 ヨーロッパ経済 ギリシャ」カテゴリの記事

コメント

海外で、大きく為替を生業にしている友人からのコメントが入りましたので送ります。
ご参考になれば、

今、ユーロは少し戻していますが、また近いうちに下げると思います。案外ヨーロッパ委員会の連中はそれを望んでいるのかもしれません。そうすれば対米・中・日貿易で大きな貿易黒字ないしは限定的な貿易赤字が期待できますので。
だから、スイスの介入を苦々しく思っているのかもしれません。ユーロ崩壊はもちろん望んでないと思いますが、その範囲でユーロ安のほうが彼らにとってはうれしいのかもしれませんね。
そうでないと今の時期に為替介入をきっぱり否定することなどありえないと思います。
ギリシャがユーロのメンバーでなければ、ギリシャの通貨は今の時点で大暴落していることでしょう。そして、国民は輸入品の物価高に苦しみますが、通貨が暴落するおかげでギリシャの商品は安くなり貿易的には大きな恩恵を受けることができます。輸出産品があればの話ですが。韓国はこの手で2000年はじめと2007年の2度の通貨危機を乗り切っています。しかし、ご存知のとおり、ギリシャはユーロに加盟しているのでそれができません。今、ギリシャのほかに、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインがやばいといわれてますが、これらの国々を根本的に助けるためには援助額はあまりにも小さく、他のメンバーから文句が出ますが、ユーロの価値そのものを下げてしまうことで、各国も(特にに大国は輸出立国なのでギリシャなんかより大きな恩恵を受けることができる)これだと大賛成なのかもしれませんね。いわゆる一石二鳥になるわけですEUおよびユーロの形成はものすごい経済圏をもたらし、これがうまく機能している限りでは驚くほどの力を発揮しますが、コインの裏面は今経験していることなのだと思います。これをうまく乗り切ることによってEUおよびユーロはますます発展して行くことだと思います。そうした意味ではまさに今が試金石ですね。

(山崎)情報提供ありがとうございます。

投稿: T | 2010年5月21日 (金) 12時25分

昨晩から、ユーロ、米国市場等不安定な状況になってますね

投稿: T | 2010年5月21日 (金) 04時34分

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