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(22.5.17) 高速増殖炉もんじゅの再開

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 夢の技術といわれている高速増殖炉もんじゅの実験炉が、14年5ヶ月ぶりに再会された。
95年のプルトニウム漏洩事故を契機に、長い間操業を中止していたが、今回安全策等の整備ができたので再開にこぎつけたという。

 私を含め一般の人は原子力発電に詳しくないが、通常の原子力発電ではウランを燃やし、軽水といわれる水を沸騰させてタービンをまわして電力を得ている(蒸気機関車と同じで、燃料が石炭ではなくウラン)。
この軽水炉といわれる原子炉は世界各地で稼動しており、その技術的な課題はほとんど解決されている。

 ところがこの軽水炉は原料のウラン価格の高騰という問題に常に悩まされており、ここ10年間で価格が4倍に上がてしまった。
さらに各国で原子炉の稼動が続いて、今後とも価格が高騰しそうな状況になっている。

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中国、ロシア、インド、韓国等で原発の建設ラッシュが続いている

 日本のような資源小国にとって、このウラン価格の高騰は影響が大きい。
そしてさらに問題なのはウラン資源の抱え込みがあると、ウランそのものの入手も難しくなるという問題がある。

 12日のNHKクローズアップ現代でこの高速増殖炉もんじゅが取り上げられていたが、日本はこの問題を解決するために、使っても減らない実際は少しずつ減っていく)といわれる高速増殖炉に国の未来をかけたのだという。

 私のような物理音痴のものにはこの使っても減らないというところがどうしても理解しがたい。
説明によると通常の軽水炉で使用されるウランは、実はその一部が燃えるだけで残りは放射性廃棄物として捨てられるだけだという。
それでは高価なウランがあまりにもったいないという訳で、この放射性廃棄物を再処理して、プルトニウムを抽出し、それを原子炉の燃料に使用するというのが高速増殖炉の原理だそうだ。

注)ウランは中性子を取り込むとプルトニウムに変わる。プルトニウムは従来は核爆弾の原料にしか利用方法がなかった。

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高速増殖炉のイメージ。使用されないウランをプルトニウムに変えて燃料としている

 高速増殖炉軽水炉とのもう一つの違いは、熱せられる物質が水でなく液体ナトリウムであることで、液体ナトリウムは空気と接触すると激しく燃える性質がある。
このため空気との遮断技術がことのほか難しいらしく、95年の事故もナトリウム漏れに伴う火災事故だった。

 日本においては原子力発電と聞くと、核爆弾や放射能漏れをすぐに連想するように核アレルギーがことの他強い。
そのため事故が発生すると、その影響範囲を越えて不安心理が増幅する傾向にあり、発電所が設置されている地方自治体やマスコミも過剰に反応する。

 このため従来から軽水炉や高速増殖炉の事故について、施設の担当者は外部に影響が出ない場合は隠蔽する傾向が強かった。
今回のもんじゅ再開に当たってはこの隠蔽体質を全面的に改めることになったが、実際は「事故か事故でないかの区別」が難しく、相変わらず隠蔽体質があると非難されている。

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もんじゅの施設の近くに家屋が存在している

 ここ1週間の間に、放射能物質検出器の誤作動が6回、制御棒の操作ミスが1回発生したが、それが速やかに地方自治体に報告されなかったことが問題になっている。
福井県知事は「どのような些細なことでも報告するように」と釘を刺していた。

注)私はかつてシステムの管理責任者をしていたが、当初はトラブル報告は外部に影響が出た場合のみ報告し、内部で処理できたものは報告しなかった。

しかしそれはシステムセクションの隠蔽体質だと指摘されて、今度は何でも報告(夜中に部長をたたき起こすことになる)するようにしたら、部長から夜寝ることもできないので重要事故の場合だけの報告にしてほしいと修正された。
以来事故にランク付けをして報告するように変えた。

 実際、実務者とそれ以外の人との認識の最大の差は、実務者はトラブルは常時発生するもので、それゆえ監視活動をしていると思っているが、一般の住民は事故は絶対に有ってはならないものと思っている。

 すべての報告をすると、重大な事故や些細な問題のない事故雑多に報告されることになるので、住民は当初は驚くはずだ。
こんなにトラブルがあっていいのだろうか?」

 しかし報告を繰り返し行っていると、報告を受ける側も慣れてきて、トラブルの階層化が図られるようになる。
ああ、このぐらいなら大騒ぎしなくてもよさそうだ

注)トラブルというものは常時発生するのが当たり前だという認識を、住民も共有するようになるのが大切だ。

 現在この高速増殖炉の実験炉を持っているのは日本ロシアだけで、フランスやアメリカや中国はまだ研究の段階だ。
本格稼動は2050年と、まだ40年も先の話になっているが、石油やウランの原料問題がどのように推移するか分からないのだから、この夢の技術の開発に日本人は技術立国の立場から積極的に推進すべきだと私は思っている。

24.5.28追加)私は当時このように判断していたが、東日本大震災の福島原発の事故を見て原子力行政について疑問を持つようになった。
現在ではもんじゅの実験は不要と判断している。

 

 

 

 


 

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コメント

技術を追いたいのは判らなくもないのですが、放射能物質が付着した膨大なゴミの処理問題を末代に押し付けるか否か、また地下処分も「火山国」の日本では不可能という点を考えておきたいです。(米では地下水汚染を懸念し、最近まで地下処分ができないのを理由に原発が作られなかったようです)

座礁した原油タンカーからの原油の漂着はボランティアでなんとかなるにしても、放射能においてはボランティアを被曝させる訳にもいかないのでしょう。若い人が被曝すれば生殖の点でも懸念されるところです。

投稿: 横田 | 2010年5月17日 (月) 11時58分

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