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(22.4.30) 航空行政の大転換 羽田のハブ化とJALのリストラ強化

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 ようやく日本の航空行政も目が覚めてきたらしい。今までは発着枠がまったく足りない成田をハブ空港にしようとしたり、飛行機が飛ばない地方空港を作ったりしてむちゃくちゃな航空行政を行ってきたが、JALが倒産してようやく目が覚めた。
まずい、これでは航空会社も空港会社も共倒れで、日本のハブ空港は韓国の仁川空港になってしまう

 この4月28日に、2つの重要な航空行政の転換がなされた。
一つは羽田のハブ空港化と成田のローカル空港化の方針であり、もう一つはJALのリストラ策強化である。

 国交省成長戦略会議の試案では、羽田空港はこの10月の第4滑走路開設にあわせて、国際便の発着枠を当初は年に6万回、その後13年度からは9万回に増枠する方針が出された。

 従来羽田は国内便、成田が国際便のすみわけを行ってきたが、この国内・国際別空港という政策はまったく時代遅れだ
世界の主要な空港は国内・国際一体化がされていて、簡単に乗り継ぎができるのだが、日本では羽田から成田まで荷物を持って金と時間をかけて移動しなければならない。
もうやだ、こんな苦労をするなら韓国の仁川空港を使おう。安いし便利だし、食事だっておいしいじゃないか
仁川空港が実質的な日本のハブ空港になっている。

 一方成田はリゾート路線や格安航空会社の導入、ビジネスジェットの専用空港にしようという方針なのだから、これは茨城空港や静岡空港と同じで、はっきり言えばローカル空港としてしか生き残る道がないと言っているに等しい。

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もっともこの国交省の試案をおいそれと千葉県成田空港が受け入れるとは思われないが、客観的に見て成田は世界標準ではローカル空港でしかない。
滑走路が2本ではハブ化はとうに諦めなければならないし、24時間運用体制が取れない国際空港は国際空港としての資格がない。

 それに何より成田は首都圏から遠い。羽田・成田間を約50分の高速鉄道で結ぶといっても、一方仁川空港を使えばこの間の移動時間は0分だ。
いくら高速でも0分にはかなわない。

 私のように千葉に住むものにとって成田がローカル空港になるのに一抹の寂しさはあるが、日本全体のことを考えれば成田が国際空港だといってがんばっている限り、日本の航空界にとって未来はない。

 もう一つの変化はJALのリストラ強化策の発表である。この1月の会社更生法申請時のリストラ策に銀行団は鼻白らんでしまった。
こりゃダメだ。このまま行けばJALは再度倒産する

 支援機構が発表した1月時点の再建計画案は以下の通りだった。

① 3年間で国内17、国際14路線から撤退
② 3年間でグループ15661人を削減
③ 燃費の悪いジャンボ53機を3年間で退役

JALは本気でリストラをする気がない。3年間というのは企業再生支援機構が支援する期間のことだが、3年後にリストラがうまく行かないといって、また政府と金融団に泣きつくつもりだ。
1年目と2年目はリストラをやっているそぶりをするだけだろう


 金融団の強硬な申し出を受けて、ようやく国交省が動き再度のリストラ策を作らせたのがこの28日だ。

① 今秋以降、国内30、国際15路線から撤退
② 今年度中にパイロットを含む16452人のリストラ実施
③ ジャンボ機を今秋をめどに退役

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 最大の変更は本年度中に実施すると変更したことだ。
この結果JALは従来の事業規模が国際線で4割、国内線で3割縮小して黒字体質の企業に生まれ変わるという。
やれやれ、これでようやくJALも本気で再生を図る気持ちになったようだ」銀行団はほっとした。

注)現在のメガバンク3行の融資残高は1700億円だが、今後3年間の間にさらに日本政策投資銀行を含めて7000億円の追加融資を要請されている。金融団はリストラが進展せず、ただ融資だけが行われることを恐れている。

 一方JAL路線撤退で大騒ぎになってしまったのが地方空港だ。名古屋の小牧空港からは9路線すべてが撤退してしまう。
地方空港の収益は着陸料が主体だから、飛行機が飛ばなければ空港会社は大赤字になる。
もともと小牧空港は中部国際空港ができたら閉鎖する予定だったが、地元の要望で維持してきたのだが、倒産会社に地方空港を支える余力はない。

 他にも北海道の丘珠の2路線、函館の3路線、広島西の2路線等の閉鎖が発表された。
地方空港はほとんどが赤字で、地方自治体等が赤字補填をしてかろうじて維持しているいるのが実態だ。
当初から黒字になることなど想定せずに建設してきたのだが、今回のJALの撤退を受けて、本格的に地方空港の淘汰の時代が始まった

 ここにきてようやく国交省は拡大路線から縮小路線へと現実的対応をするようになった。

① 羽田のハブ化と成田のローカル化、②JALのリストラ強化とナショナル・フラッグからの撤退、③不採算地方空港の淘汰と、新たな航空行政の時代が始まったといえる。

 

 

 

 


 

 

 

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(22.4.29) 天気晴朗なれども波高し 中国海軍の実力

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 日清戦争が行われたのは今から100年以上も前だが、黄海海戦で手ひどい敗北を喫した中国の北洋艦隊が、100年のときを隔てて再び日本の前に立ちはだかろうとしている。

 中国海軍は大軍拡のおかげで、東シナ海の防衛的海軍から太平洋に展開できる大海軍にまで成長した。
その実力行使の一環として、中国海軍は潜水艦2、ミサイル駆逐艦2、護衛艦3等合計10隻で、西太平洋上での合同訓練を4月7日から実施した。

 中国海軍は最初は東シナ海で演習を行い、次いで沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を4月10日通過し、沖ノ鳥島方面の太平洋上で軍事演習を行った。
日本はこの軍事演習を監視するために、海上自衛隊の護衛艦「すずなみ」「あさゆき」が追尾したのだが、それに対し中国海軍の艦載ヘリが「すずなみ」に90mの距離まで急接近し、威嚇行動をとった。
おめえ、何で俺たちの後を追いかけてくるんだ。一発ぶっ放すぞ・・・

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 通常公海上で互いに武装した艦船とヘリが近づくと、一触即発の状態になる。相手の意図が分からないから両者とも臨戦態勢に入り、どちらか一方がトリガーを引けば戦闘状態になる。
中国と日本が西太平洋で、日清戦争の再現をしそうになった。

 たまらず日本は外交ルートを通じて「このような危険な行動を取らないように」と中国政府に申し入れを行ったが、中国の駐日大使からの回答は一方的に日本が悪いというものだった。

中国は国際的なルールに従い、軍事演習の計画を公表した。これに対し日本の護衛艦が監視体制をとり、東シナ海から太平洋までしつこく付きまとってきた。従ってわが国は艦載ヘリを出撃させたのだ

 現在西太平洋のシーレーンではどの国が制海権を確保するかで熾烈な戦いが繰り広げられている。
従来はアメリカ第7艦隊日本の海上自衛隊がここの制海権を確保していたが、そこに中国の東海艦隊が進出してきた。

注)軍事用語で第一列島線という言葉があり、日本・台湾・フィリッピンを結ぶ線を言う。従来は中国海軍はこの線の外側の西太平洋に展開する能力を持っていなかった

 中国海軍にとりこの演習がなぜ必要かというと、沖縄と宮古島の間の海峡を抜けて、台湾の背後に回り台湾を台湾海峡と西太平洋の両側から挟撃できる態勢を取ることが、長年の課題だったからである。
台湾解放のためには、西太平洋からの上陸作戦能力が必須である

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 しかし中国が台湾を実力行使で解放する場合に、中国海軍にとって厄介な問題が残っている。
それは宮古海峡を抜けるときに日本の海上自衛隊が阻止行動を取る可能性があることで、この海峡を自由に通過できなければ目的が達成できない。
今回の艦載ヘリの護衛艦「すずなみ」への接近は、威嚇の意味もあるが日本の護衛艦の実力とその意志を見たかったともいえる
日本は戦うか、それとも腰抜けか?」

 もう一つの西太平洋での演習目的はここに必ず駆けつけるアメリカ第7艦隊の空母を釘付けにして台湾に接近させないようにすることで、潜水艦を配置して空母に攻撃をかけるという演習だった。

注1)空母の艦載機の航空能力はほぼ700km程度のため、アメリカの空母を台湾から1000km範囲に入れないのが、潜水艦の目的になる。

注2)1996年3月に台湾の総統直接選挙を妨害するため、弾道ミサイルを台湾近辺に撃ち込んだが、このときはアメリカが空母ニミッツとインディペンダンスを台湾海峡に派遣して中国の野望をくじいた。
このとき以来中国海軍軍拡の目標は、アメリカの空母が台湾周辺に近づけないだけの海軍力を持つことになった。


 中国海軍は20年にも及ぶ大軍拡のおかげで、日本の海上自衛隊を凌駕する実力を蓄え、自由に宮古海峡を往来する能力を身につけた
西からも攻められることに驚愕した台湾はこの危機に備え、西太平洋からの上陸を阻止するための特別演習を実施し、さらにアメリカから地対空ミサイルPAC-3を購入したが、中国の台湾解放の実力は確実に上がっている。

 もし台湾が中国に完全に飲み込まれてしまうと、日本の防衛ラインは非常にあやうくなり、次は日本ということになる。

 普天間基地問題で日米関係が冷却しており、日米安全保障条約が実質的に機能しなくなれば日本は独自に中国と対峙しなければならない。1世紀の時を隔てて日清戦争時の状況が再現しようとしている。
 

 

 

 

 
 

 

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(22.4.28) オバマ政権から見捨てられた国 イギリスと日本

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 洋の東西でオバマ政権から見捨てられた国がある。イギリス日本である。
どちらとも長年アメリカとの特別な関係を標榜し、イギリスは政治と軍事で、日本は経済でどちらがアメリカの寵児であるかを競っていたが、結果はどちらも捨て子になってしまった。

 オバマ政権はヨーロッパではイギリスを無視してEUの盟主であるドイツフランスに接近し、東アジアではもっぱら中国だけが同盟国のようだ。
先日行われた核サミットでは鳩山総理は10分間のランチ対話を許されただけだったが、イギリスも同様に二国間会談は開催されなかった。

注)オバマ政権は中国とドイツとは親密な交渉をした。

 オバマ政権のイギリス無視はかなり前から続いており、昨年9月の東欧へのミサイル防衛配備計画の見直しではイギリスに事前相談もしなかった。
ヨーロッパの安全保障の問題で軍事面で特別な関係を誇る米英関係が「張子の虎」だったわけである。

イラク戦争に同盟軍として参加し、アフガンの戦役でもがんばっているイギリスに対するこれが仕打ちか」イギリスの歯ぎしりが聞こえる。

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 日本のトヨタを血祭りに挙げてGMクライスラーを何とかして自立させようとしたり、核軍縮を提唱して軍事面での負担の軽減を図ろうとしている。
イギリスがいくら軍事同盟の重要性を強調してもオバマ政権からは無視されたままだ。

 イギリスと日本の立場は実に良く似ている。地理的条件もアメリカとの関係も経済状況もそっくりだ。
いずれも大陸の横にある島国で、アメリカとの同盟が唯一の安全保障だったがアメリカから無視される一方で、両国とも経済は長期低迷に陥っている。

 イギリス経済は金融不動産のウェイトが高くGDPのほぼ30%を稼ぎ出してきたが、金融危機後金融機関に対しGDPとほぼ同額の直接支援や債務保証をしたのに、回復ははかばかしくない。
不動産価格は低迷したままで、おかげでGDPに対する財政赤字は10%を越えて日本といい勝負になっている。

注)イギリスの金融機関のレバレッジはほぼアメリカの金融機関の倍で不動産価格の上昇率はアメリカの1.5倍だった。
あまりにバブルの影響が大きく、日本と同様イギリス経済は回復できなくなってしまった。


 S&Pムーディーズといった格付機関から国債の格付けを引き下げると脅されているのはイギリスも日本も同じだが、イギリスにとってつらいのは国債の格付が下がると世界からの資金導入に支障をきたすからだ。
外国人のイギリス国債保有率の割合が約30%で日本の約5%とは大幅に違う。経常収支が赤字のため海外から資金導入を図らなければ経済が回らない。

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 おりしもこの5月に総選挙が実施されるが、政権与党の労働党はすっかり人気がなくなり、保守党が優位といわれているがどちらも過半数を取ることはできそうもない。

 第3政党の自由民主党の躍進が予想されるので、まるで中国の3国史の世界になってきて、連立政権が組まれるだろう。
労働党は財政拡大路線で,一方保守党は緊縮路線を主張し自由民主党はその中間といった位置づけだが、日本と同様に連立内部のきしみは当然出てくる。

 選挙予想で保守党が有利になると国債は値上がりし、一方労働党が巻き返すと国債は値下がりする。
市場はとても神経質だ。

注)保守党は財政再建のために約60億ポンド(約8000億円)の緊縮財政を組むと主張している。

 オバマ政権は完全な内向き政権で、イギリスとの軍事同盟も日本との経済同盟にも関心がなく、ただ国内経済の建て直しのために、中国とEUの市場と資金をあてにしている。
黄昏のイギリスと日本を相手にするな
アメリカに見捨てられイギリスと日本は世界の孤児のようだ。


 

 

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(22.4.27) チャレンジ富士五湖100kmを走ってきた

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 「走った、疲れた、寝たローマの伝令のような報告だが、これがすべてだ。
この25日の日曜日にチャレンジ富士五湖の長距離レースが開催された。
種目は112km、100km、72kmの3種類で、112kmは五湖すべてを回り、100kmは本栖湖を回らず、72kmは本栖湖と山中湖を回らない。

 私は今回100kmに出場したのだが参加人員の多さに驚いてしまった。
この種のレースはせいぜい1000名程度が普通なのだが、昨年は1931名、そして今年は2604名の参加だという。
マラソンブームが再来してきた。
私が出場した100kmでも1264名だというのだからすごい。

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 このチャレンジ富士五湖レースは他の100kmレースと異なり、警察による交通規制がされない。そのため走者はいたるところで信号で止められるが、超長距離では記録狙いの人の他はいたってのんびりしており、信号待ちをさして苦にしない。

 このレースが交通規制がされないのは理由があって、元々は間寛平氏ギリシャで開催されているスパルタスロンの練習コースとして、坂本雄次氏と相談して走った個人レースだからだ。坂本氏はコースつくりが上手で、この世界ではレースプロデューサーと言われている。
最初の参加人員は13名だったそうで、それから20年経ち全国規模の大会まで成長した。

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 実際競技を開催する主催者になってみると分かるが、交通規制の問題は大変厄介で、警察はよほどの理由がない限り交通規制に応じない。
それも当然で4月末の行楽シーズンに交通規制などしたら地元の業者からどんなクレームが付けられるか分からない。

 従って主催者側としては已む無く、この種の競技を個人的なマラソンとして実施することが多い。私のよく知っている例ではトランスエゾを毎年開催している御園生さんのレースでは、「遠足」という言葉を使い、通常の交通ルールを守って走り、信号で停止する。
個人が勝手に遠足をしているのです。走る遠足です

注)一方交通量が多くないサロマや秋田リゾートカップでは交通規制がされていて信号で待たされることはない。こうした競技は地方の町おこしの一環として開催されているため、行政が積極的に手助けする。

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 今年の富士五湖は晴天に恵まれ富士山がくっきりと見え、気温もさほど高くなく走りやすかった。
私の今回の目標タイムは12時間で、前半と後半をイーブンで走るつもりだったが、前半の50kmは5時間21分と速く、後半は大失速して6時間45分かかってしまった。
合計タイムは12時間6分で、予定より6分遅かったが、まあ誤差の範囲内としよう。

 後半は5kmごとに設置されているエイドステーションで仰向けになって4分前後ずつ寝ていたが、そうでもしないと足の疲労感が強く走れなかった。

 ゴールに着いたのは午後5時6分(スタートは朝の5時で、太陽がかげりはじめて薄ら寒くなっていた。私はしばらく陸上競技場の芝の上に寝転がって後から入ってくる走者を見ていたのだが、急激に悪寒に襲われ、震えが止まらなくなった。
まずい、体温が低下している」すぐに荷物を取って着替えた。

 また喉の奥が切れてしまったらしく、物を食べると非常に痛んで食事もできなくなっていた。走っているときはエイドでチョコや甘納豆やスープをかき込むように食べるのでよく喉の奥が切れてしまう。

 しかし、疲れた。その日は近くのキャンプ場に張っておいたテントで寝込んでしまったが、身体を洗わずに寝たので汗で夜中中痒かった。それでも身体を洗う気がしなかったのだからよほど疲れていたのだろう。
でも、まあ、富士五湖100kmを完走したのだから良しとしよう。

注)私と一緒に参加したOさんはトップ争いをしていたが70km手前で足に激痛がでてリタイアした。走りきれれば優勝をしたのではないかと思われるのでとても残念だ。

 

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(22.4.26) トヨタをつぶさなければGMとクライスラーの明日はない オバマ政権の戦略

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 オバマ政権トヨタつぶしは執拗に続けられている。
今度は米消費者情報誌がスポーツタイプの多目的車(SUV)が横転の危険性があると指摘し、トヨタは3万4千台のリコールを発表した。

 電子制御による車両安定装置VSC)で制御できない場合があると判明したのだが、確かにそうした事例はあるとは思うが、ならば今までと同じように機械式で制御していたとしても同じような問題があったはずだ。

 さらに言えばVSCを装備している自動車はみな同じ問題を抱えているのに、なぜトヨタ車だけが標的になるのかが問題で、オバマ政権があらゆる組織とメディアを動員して言いがかりをつけ、トヨタつぶしを行っているからである。

 なぜトヨタをつぶさなければならないか
GMとクライスラーを再生させるためには、全米で最も人気があり、性能抜群と思われていたトヨタ車をつぶさない限り、GMもクライスラーもただ安楽死を待つだけだからだ。

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 実は7兆円あまりの政府資金を投入してGMとクライスラーを国有化したものの、この企業が再生の軌道に乗らない。
国有化したGMの経営は友達のロビーイストに、クライスラーは自動車労組UAWの幹部に任せたが素人経営で一向に経営は上向かない。

 自動車労組UAWはオバマ政権の金づるで大統領選挙のときは約4億5千万円の政治献金をしている。
何とかしてくれ、経営が立ち行かない」オバマ政権に泣きついた。

注)オバマ陣営は選挙期間中、草の根献金で50ドル、100ドルの小口献金を集めて戦ったと宣伝したが、実際はUAWやGMやGSやGEから多額の献金を得ていた。

 昨年の夏場には燃料効率のいい車に乗り換えれば30万から40万円の政府援助をしてみたが、実際に売れるのは日本車を中心とする効率のいい車ばかりだった。乗り換えによる支援は失敗した。

 オバマ政権内部で戦略会議が開かれた。

このままではGMもクライスラーも自然消滅してしまう。UAWの組合員は四散し、アメリカから製造業が無くなってしまう。どうしたらよいものだろうか・・
大統領、トヨタがある限りアメリカの車は売れません。この際トヨタをアメリカから駆逐しましょう
しかし、どうやったらそれができる。どう見てもトヨタの車の性能は世界一だ
大統領、心配には及びません。たたけばどこでも埃は出ます。幸いに09年8月にカリフォルニアでレクサスが事故を起こしています。これを最大限に利用しましょう。必ずトヨタをアメリカから追い出して見せます

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 アメリカはトヨタを米国市場から放逐しようとしているが、これはGMとクライスラーの経営が立ちなおるまで続く。
元々アメリカ車は燃料効率が悪い上に、HVEVといった次世代自動車の開発にも遅れを取っている。そのうえGMもクライスラーも素人経営で、UAWは自己の権利の保身だけが目的だ。

 だからGMもクライスラーも、どうやってもトヨタに勝てない。あとはアメリカ政府の戦略でアメリカ企業を守るだけだ。
こうしてトヨタはひどい濡れ衣を着せられ、今後も集団訴訟の悪夢に耐えなければならなくなった。

 唯一の光明はトヨタのアメリカ従業員が約20万人いることで、トヨタはアメリカと日本のハーフになっている。
だから完全な日本たたきにならないのが救いだ。

 これからトヨタはどうしたら生き残ることができるだろうか。一つの方策としてはUAWと同様にオバマ政権に多額の献金をして取り入ることがある。
中国政府のような媚薬戦略だが、郷に行っては郷に従うのも止む終えない。
アメリカは政治献金がすべてであり、そうした金銭政治の世界では戦略を駆使しないと生き残ることができない。

注)従来トヨタを含む外国車はブッシュ政権との関係が深かった(それなりの献金があったはずだ)。ブッシュ政権は自由市場での競争を支持していたからである。一方民主党は国内自動車産業とUAWを基盤としている。

 

 

 

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(22.4.25) 今日は富士五湖100kmだ

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 今年はやけにマラソンの対する情熱が復活している。実はここ数年まったく迫力がなくなり、ただスローペースで完走だけを目的にしていた。
フルマラソンなどは仮装ランナーになってしまい、楽しむだけのレースだ。

 しかし今年は気持ちが高ぶり、久方振りにフルマラソンで4時間を切ることができた。
もしかしたら、俺もまだまだ走れるのではなかろうか
最近は実に熱心に練習をしている。我が家から四季の道を通ってかずさの道を往復するのだが、約13kmのこの距離をほぼ毎日精一杯走っている。

今年は100kmに再挑戦しよう」久方ぶりにチャレンジ富士五湖100kmにエントリーした。
この富士五湖のレースは都心から近く100kmとしては意外なほど交通の便がいい。

 通常100kmのレースは北海道のサロマ湖や、四国の四万十川のような僻地で開催される。道路を交通規制してもまったく問題がないような場所が選択されるのだが、ここ富士五湖だけは別だ。
この時期観光客も多く、道路はほとんど交通規制されず、歩道側を自動車を避けながら走らなければならない。

 しかしこの頃の富士五湖は春爛漫で、天候がよければ富士山がくっきりと見え非常に美しい。気温はさほど高くはなく朝晩は寒いくらいだ。

 このレースは112km、100km、72km3種類あるのだが、100kmの制限時間が14時間なので完走しやすい。一方112kmの制限時間は14時間30分でこちらはかなり厳しい。

注)20年度に112kmに参加したが104kmの場所で制限時間オーバーで失格になっている。

 今回の目標タイムは12時間で、前半後半とも6時間のイーブンで走るつもりだ。大抵の走者は前半型で後半は歩いていたりするので、その頃になると次々に走者を追い越すことが出きる。
これは走ってみると分かるが後半人に追い越されると、それだけで気持ちが切れてしまうが、反対に追い越しているとだんだんと気持ちがハイになる。

 今まではこのレースは一人で参加していたが、今回はちはら台走友会のメンバーでかつては実業団の選手だったOさんも一緒にエントリーしている。
Oさんの今回の目標タイムは8時間だが、今回は練習のための参加で本命はサロマ湖で行われる日本選手権だ。

 この大会で優勝すると日本代表としてイギリスで行われる世界選手権に派遣が決まる。
私とはまったく異次元の話だが、Oさんはそれを目指しているのだ。

 ともあれ今日は100km走だ。いつものように気持ちを切らさずにがんばろう。

 

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(22.4.24) おゆみ野の森の船出

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 この4月18日の日曜日に、おゆみ野の森春祭りが行われた。例年だと地区のクチコミ紙などに開催の情報等を載せて、大々的に行ってきたのだが今回はそうした宣伝活動を一切しなかった。

 理由は従来と異なり、このおゆみ野の森の管理運営をすべて市民の手で行うことになったからである。
従来はUR都市機構とその子会社の新都市ライフに、人的にも、資材の提供でも、また資金援助についても相当部分を支援してもらっていた。

 昨年の春祭りに約300名の人員を集められたのもそのバックアップのおかげで、第一今回は無料でフランクフルトソーセージやピザを振舞う金にも不自由している。
市民の森になったんだ、身の丈にあったお祭りにしよう

 集まったのはこのおゆみ野の森を管理する常連のメンバーと何組かの家族連れで、総勢30名を少し上回る程度だった。
私も昨年やった「縄文式マラニック」をしないで済んで、ほっとしたりやや寂しさがあったりしたが、これが市民の森の実態なのだと思う。

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 こうした市民活動は意欲のある人があまり肩肘を張らずに楽しく行うのがコツで、一方決まりや規則でがんじがらめにして、「なんでお前は約束を守らない」なんて言い出すとすぐにその組織は崩壊してしまう。
もともとボランティアなのだから強制や指示命令や特別な思想で会を運営するのはご法度だ。

 会議などを頻繁に行うのも最悪で、会議の主催者は自分の流れに人を引き込もうとしてそれを行うので、参加してても馬鹿馬鹿しくなる。
自分ひとりでやってくれ

 私はもっぱらこの場所の草刈の責任を負っているのだが、草刈が楽しいからしているので、一方草刈について「この草は有用なので決して刈ってはいけない。ここは自然保護のメッカにする」なんていわれるとすっかり白けてしまう。

 各人が楽しくこの場所に集まって、それぞれの趣向で畑を作ったり、菜の花を植えたり、ウサギの糞を見つけたりしていればいいので、ゆるい規則の連帯こそが一番だ

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 幸いにこの会には個性豊かだがコモンセンスをわきまえた人が多く、シー・シェパードの闘士のような人がいないので助かる。
私は楽しく参加しているが、市民の森のように市民が一人一人の責任で管理運営するという試みは、これからの社会の一つの形態になる可能性が高い。

注)市町村に全面的におんぶする形態は資金的にも人的にも行き詰まりがあり、一方私のように定年退職者で時間的余裕がある人がますます増えボランティア要員は増えてくる

 さあ、そろそろ草木も伸びてきた。これからが本格的な草刈のシーズンだ。

なお、本件についてはこの森のインストラクターをして支えてくれていた斉藤さんが以下のブログで記載しています。
http://midorinochiba.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-bca9.html

 

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(22.4.23) 深く静かに潜行せよ 韓国哨戒艦「天安」沈没の謎

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 3月26日、韓国哨戒艦天安1200トンが、黄海のNLLといわれる北方限界線近くで撃沈し、40名以上の行方不明者を出した事件は、多くのミステリーを含んでいるが、どうやら北朝鮮の人間魚雷による攻撃を受けたのではないかとの観測が強まっている。

22.5.25追加)韓国、アメリカ、オーストラリアによる合同調査の結果、北朝鮮小型潜水艦から発射されたホーミング魚雷によることが判明した。

 当初は弾薬庫燃料タンクの爆発も想定されたが、実際に引き上げてみてそうした場所の損傷がないこと、また座礁するような浅瀬もなく、さらに老朽化による疲労破壊は造船大国の韓国ではありえないことから、外部爆発の可能性が高い。

 引き上げられた船尾部分の甲板も下から押し上げられたようにめくれており、また生存者の証言も爆発は艦船の外部で起こったと述べていることから、魚雷あるいは機雷による攻撃の可能性が疑われた。

 この黄海の海域は韓国と北朝鮮の間で互いに領海を主張し合っている場所で、韓国は朝鮮戦争後に連合国が定めたNLLという軍事境界線を境界としているのに対し、北朝鮮はさらに南方のNLLの内側部分まで北朝鮮の領海だと主張してきた。

注)NLL周辺はワタリガニの漁場で、北朝鮮の漁船がNLLを越えて操業しており、北朝鮮の警備艇が漁船保護を目的にNLLを越えて進入を繰り返している。

 このため常に両国は一触即発の軍事的緊張関係にあり、過去に何度も銃撃戦が行われている。
互いに相手を「領海侵犯した」と主張し合ているが、互いの領海が異なるのだから、領海侵犯はお互い様だ。

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 しかし最近は韓国軍の海軍力が圧倒的に勝るようになり、09年11月のいわゆる大青海戦では、銃撃してきた北朝鮮の警備艇が韓国軍の反撃で命からがら逃げ出している。

注)それ以前の2002年の西海海戦では北朝鮮警備艇の不意打ちで韓国兵6名が死亡している。

 これに激怒したのが金総書記で「我が軍は領海一つ守れないような腰抜けばかりか!!!韓国海軍を追い出せ・・・」と有効な報復体制をとるように命じた。
それに答えて準備していたのが人間魚雷で、艦船相互の銃撃戦では勝ち目がないので、自爆覚悟の特攻作戦に変更になったという。

注)韓国軍情報司令部が韓国海軍に対し「北朝鮮が人間魚雷で攻撃してくる可能性があるので、その対応を取るように」と注意喚起していた。

 どうやらこれが事実らしいが、今回は晴れてその成果が上がったわけで、いつも韓国軍に蹴散らされていた北朝鮮海軍が一矢を報いた形になった。
最も北朝鮮は「北朝鮮の関与はまったく濡れ衣だ」と大韓航空機爆破事件と同じような反論をしている。

 現在韓国側の調査団はアメリカやオーストラリアの専門家を含めて120以上の専門家が調査を行っている。
調査の結果北朝鮮の関与が明確になると思うが、事実が判明しても北朝鮮を強く非難できないのではないかとの憶測が流れている。

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注)NLL近辺での銃撃戦や海戦はいわば毎回の行事のようなものだ。ただし今回は韓国の誇る1200トンの哨戒艦(北朝鮮の警備艇は100トン以下)が撃沈してしまったので、軍事バランスが北に有利になっている。

 ようやく経済が上向きになってほっとしている李明博政権としては、北朝鮮との全面対決は避ける方針であり、限定的な戦闘行為に対する非難というレベルで矛を納めるようだ。
戦争など始めたら元も子も無くなってしまう。

 韓国のように常に軍事的緊張を強いられる国は大変だが、それだけに国民には緊張感があり、こうした危機対応一つとっても、あわてた対応はとりそうもない。

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(22.4.22) 韓国経済の光と影  その2

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 しばらく前までは韓国経済の影の部分の記事が大勢を占めていたが、最近は韓国経済を礼賛する記事が多くなっている。
特に週間エコノミスト4月13日号は韓国特集で、表題が「最強・韓国」で副題が「原発、電気、自動車・・・・日本敗北の理由」となっている。

 具体的な内容を見てみると以下のようだ。
① DRAM、液晶で世界トップのサムスンの猛烈経営
② 冷蔵庫と洗濯機を売りまくる総合家電の覇者LG
③ 米国で着実にシェアを伸ばす、ホンダを抜いた現代


 確かにこの記事を見る限り韓国の躍進はすさまじい。ここにきてあらゆる指標も好転している。

① 昨年度のGDP伸び率は0.2%だったが、今年は韓国銀行の予測では5.2%になると言う(日本は09年は▲5.2%、今年は+1%程度)。
② 通貨は一時1ドル1500ウォン程度まで急落していたが、最近は1100ウォンまで回復し安定している。
③ 株価はリーマンショック時直前のレベルまで回復してきており、日本がまだ7割程度の回復に留まっているのと大違いだ。
④ 輸出も順調に回復しており、特に中国とアセアン等に対する輸出が伸び、一方北米、欧州、日本に対する輸出のシェアは縮小し、輸出先のグローバル化が進んでいる

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 こうした指標の好転を受けて、格付機関ムーディーズが韓国国債の評価を1段階あげて、上から5番目のA1に変更した(日本は上から3番目)。
ようやく世界が韓国経済の実力を正当に評価し始めた」韓国のマスコミは大騒ぎだ。

 元々韓国経済の問題点は国内に資本が少ないため多くの資金を海外から導入し、しかも短期資金のウェイトが高いことにあった。
このためリーマンショクアジア危機のような金融危機が起こると資金が韓国から一斉に引き上げられ、その調達のためになけなしの外貨準備を崩さなくてはならないことだった。

 今回のリーマンショック時にもこれが現れて一時は外貨準備が激減したので、市場は韓国が再びIMFからの支援が必要になるのではないかと固唾を飲んでいたものである。

 しかし09年度に入り、韓国は急速に輸出が回復した。一番大きな原因は中国経済が大躍進したことで、中国に対する輸出が伸びさらに新興国に対する輸出によって韓国経済はV字回復を遂げた。
日本がもたもたしているのに比較すると好対照だ。

「見ろ、もはや日本に学ぶべきものは何もない。韓国の企業は世界トップだ。日本が韓国を学ぶ番だ」韓国の鼻息は荒い。

 韓国の企業はオーナー企業が多い。こうした危機の時期はすばやい決断が要請される。韓国は市場特性を「低価格と適当な品質」を維持しながらいわゆる新興国の市場開拓に成功した。

注)私もDELLのディスプレイをサムスン製にしたが、非常に安くまた半年で壊れた。保証期間内であったのですぐに交換してくれたが、この経験で韓国製品は安いが壊れやすいことを実感してしまった。

 だが、しかしこの状態がいつまで続くのかは疑問がある。一番の問題は失業者が多く日本と同様に国内市場が拡大しないことだ。
投資はほとんどが国外でなされており、国内には投資機会がほとんどない。
サムスン・現代・LGといった大企業はGDPで日本の5分の1しかない市場をとうに諦め国外ばかりに投資をおこなった。そのため国際収支の構造がかわり、08年以降所得収支が激増している。

注)2000年までは所得収支は常に大幅な赤字だった。その後とんとんの状態が続いていたが、08年より急激に所得収支が増大した(08年 約5400億円、09年 約4500億円)。なお韓国企業は証券投資より直接投資に熱心だ。

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 韓国政府も景気対策として、2%という低金利と金融緩和策を実施したが、この資金はほぼ国外投資に向かい、国内はデフレ状態になっている。
日本との違いは大手企業が海外でしたたかに収益を上げていることだが、この快進撃がいつまでも続くとは限らない。

 アメリカでの躍進目覚しい現代自動車がいつアメリカでトヨタと同じようにイケニエになるか分からないし、中国の追い上げもきつい。

 そして何より北朝鮮との緊張関係があり、哨戒艦天安が北朝鮮からの攻撃で撃沈されたとなると一気に緊張感が高まってしまう。
良くも悪しくも韓国の経済は国際情勢を敏感に反映して、急速に好転したり悪化したりする。
そして国家も企業も多くの資金を外国に頼っているため、業況が悪化すればすぐに資金が逃げ出す。

 今は中国経済の恩恵と、新興国投資が効を奏して韓国経済は絶好調だが、やはり注意深く推移を見守っていくことが必要だ。

 

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(22.4.21) 文学入門 子どもたちへの文学案内 河村義人 その2

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 前回(18日)、河村義人さんの「文学案内」の解説を書いたが、これはその続きである。
それと言うのもこの本は10章、255ページからなる本で今回の読書会の対象はそのうちの4章までだった。

 前回の解説は2章までで、後2章残ってしまった。通常はそれでも支障はないのだが今回は私がレポーターだ。サボるわけにはいかないので、残りの2章の解説を記載する。

 第3章は「人生の華・ロマンス」で河村さんによると「本物よりロマンチック」だと言う。
もっともこれには有力な反論もあって、「何でも見てやろう」の作者、小田実さんは「恋愛は論じるもんやのうて、するもんや」と言っているし、私も小田さんの説に同意する。

 しかし河村さんはまれに見るロマンチストだ。タゴールの詩を「香り立つ、高貴なロマンチシズム」として紹介してくれた。

おのれの香気に狂って・・・・

おのれの香気に狂って森の樹下闇(このしたやみ)を走る麝香鹿(じゃこうじか)のように私も走る。
夜は五月の半ばの夜、微風は南の微風である。・・・・・・・・・・・


 このタゴールの詩は相当長く延々と続くのだが、私のように精神が干からびた者が読むと、何とも甘ったるいだけの詩だと思ってしまう。
ロマンチシズムは、まだ恋が成就したことのない「焦がれるような気持ち」の若者向けか、河村さんのように年をとってもみずみずしい青年の気持ちを保持している人向けらしい。

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 またタゴールを始め外国人の詩や小説は日本語に訳さなくてはならないので、訳者の力量に負うところが多いと言う。
特に詩はリズムと言うものがあり、日本語のリズムにぴったりとあわせるのには訳者も作者と同じような詩に対するセンスが必要になってくる。

 河村さんは「ロマンスの名作の名訳」としてドーテの「」を紹介してくれた。
この「」を訳したのは村上菊一郎さんだが、「この訳が一番好き」なのだという。

 この「」は詩と小説の中間のような作品だが、内容は貧しい羊飼いの青年の話である。
この青年は人里はなれた山奥で一人で羊の世話をしているのだが、2週間に1回ふもとの村から食料を届けてくれる。

 通常はノラードおばさんが届けてくれるのだが、この日はおばさんが休暇で、農場主のお嬢さん、ステファネットだった。
この青年はこのお嬢さんに強い思慕の念を持っていたが、身分が違いすぎてそうした気持ち打ち明けることはできない。

 すぐにお嬢さんは食料を届けると帰途につくのだが、途中で夕立にあって川が増水し家に帰れなくなり、再びびしょぬれでこの青年の小屋に戻ってきた。

 青年はその夜小屋にお嬢さんを泊めて、自分は星空の元で寝るのだが、お嬢さんも寝付かれず外に出てきた。そして二人で夜空の「」を見ながら語り合い、そのうちにお嬢さんが青年の肩にもたれかかりながら寝てしまうと言う物語だ。

・・・二人の回りでは、星が大勢の羊の群れのように黙々と歩み続けていたのです。そうしてときどき、私は、これらの星の中で一番きれいな、一番輝かしい一つの星が、道に迷って、私の肩に止まりにきて眠っているのだと想像したりするのでした・・・

 河村さんはやはり相当なロマンチストだと私は思う。

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 第4章は「悲しみの結晶」で「愛する者の死」を扱っている。
一般に死は悲しいものだが、それを芸術の域にまで昇華させた作品を紹介してくれた。

 宮沢賢治の妹の死を悼んだ「松の針」という詩が紹介されている。妹は25歳の若さで結核で夭折した。
・・・・ああけふのうちにとおくにさすらおうとするいもうとよ  ほんとうにおまえはたったひとりでいけるのか  わたしにいっしょに行けとたのんでくれ  ないてわたしにそう言ってくれ・・・・

 この章の最後の作品は山上憶良「子どもの死」にたいする親の悲しみ」を歌った歌だった。

瓜食めば子ども思ほゆ 栗食めば ましてしのばゆ いずくより 来たりしものぞ まなかいに もとなかかりて 安寝しなさぬ

しろがねも くがねのたまも なにせむに まされる宝 子にしかめやも
私はこの歌を昔から知っていたが、これが子を失った親の歌だとは知らなかったので驚いてしまった。
親の子どもに対する愛情を歌った歌だったと思っていたからである。

注)これは教科書に載っていたのだが、子どもの死を悼む歌との解説はなかったように思う。

 
河村さんのこの「文学案内」は採用されている俳句や短歌や詩や小説を読むだけでもためになる。
自らも万年文学青年を自称する河村さんが、四十数年間の人生の中でであった、珠玉の名作を紹介してくれているからだ。

 私のように相当精神が干からびたものでも参考になるのだから、子どもには無理でも若者には大いに参考になりそうだ。


注1)なお、河村さんの「子どもたちへの文学案内」はアマゾン等でも購入は可能ですが、おゆみ野在住の人であれば、このブログのメール機能で私宛連絡いただければ、河村さんにメールを転送いたします(河村さんのところに在庫があります)。

注2)なお読書会は本日(21日)、1時から緑図書館集会室(地下一階にあります)で行います。参加は自由ですので時間のある方は覗いてみてください。




 

 

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(22.4.20) 始めての経験 蕎麦打ち

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 人間長く生きていると思わぬ経験をするものだ。今回は始めて蕎麦打ちなるものをして、自分で打った蕎麦を食べると言う稀有な経験をした。

 実は私の息子の嫁さんはオーストラリア人で一緒に日本に住んでいるのだが、最近子供を生んだ。
私にとっては初孫になるのだが、この初孫の世話をしにオーストラリアのタスマニアから嫁さんのお母さんがやってきた。

 タスマニア島はオーストラリアの南極に近い側にあって、日本の北海道と大きさも気候もよく似ている。
人口は約50万人だそうだから、北海道の人口約550万人に比較すると約11分の1の人口密度だ。

 北海道を思いっきり寂しくした所と思えば大体当たる。
嫁さんのお母さんは約1ヶ月間滞在し、20日に日本を去ることになった。
だから今日(19日)は嫁さんのお母さんお別れパーティーをすることにしたのだが、それが蕎麦打ちである。

22419_018  この企画は息子の嫁さんがして「最も日本的な経験こそがお別れパーティーに相応しい」と考えたのだそうだ。
私とかみさんで息子たちが住んでいる成田にいそいそと出かけた。
嫁さんのお母さんは72歳だそうだが、とても元気がよく歩き方などは若者のそれだ。

 歌を歌い、畑仕事をし、食事も衣類もほとんど自分で作ってしまうのだから元気なはずだ。我が家に来たときもピアノを弾きながら上手な歌を披露してくれた。

 今回の蕎麦打ちは近くの蕎麦やさんに頼んで講習会を開いてもらった。
ここの主人はしばらく前まではサラリーマンをしていたらしく、意を決して蕎麦屋さんになったほど蕎麦が好きらしい。

 我々のためにそばに関する英語を事前に勉強していて、ご主人もはじめての外国人に対する講習に意欲満々という感じだった。
そば粉の練り方を教わり、次にそれを縦90cm、横45cmに引き伸ばし、それをたたんで蕎麦包丁で切るのだが、この切り方が難しい。

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 どうしても太く切ってしまい私などはうどんのような太さにしてしまったが、嫁さんのお母さんかみさんは実に上手に切っていた。
このあたりは経験の差が如実に表れる。

 できた蕎麦を熱湯で1分弱熱し、それを水につけて、さらに氷水につけると引き締まった実においしい蕎麦が出来上がる。
私も自分で打った蕎麦を食べたのははじめての経験なので感動した。
そうか、自分で作るとこんなにおいしいものなのか

 嫁さんのお母さんも実に楽しげに蕎麦打ちをしていたが、感想は「パンの作り方に似ている」とのことだった。蕎麦粉を練るところがまったく同じだとのことだ。

 嫁さんのお母さんとは20日にはお別れだが、私とかみさんに是非タスマニアにきてほしいと誘われた。

 やはり一度は息子の嫁さんの里を見てくる必要がありそうだ。
「来年には行きましょう
」と約束してしまった。
日本人は相手の気持ちを慮って適当に約束するのだが、外国人はその約束を素直に信用するから、守らないと信用を失う。
よし、来年はタスマニアの森を走り回ることにしよう」すっかりその気になってきた。

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(22.4.19) 中国の不動産バブルはどこまで拡大するか?

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 バブルは破裂するまでそれがバブルであることが分からない。日本の不動産バブルもアメリカのサブプライムローンバブルもそれが破裂するまでは誰もバブルとは思わなかった。
現在中国で発生している不動産バブルについても同じことが言える。

 中国の第一四半期10年1月~3月)のGDP伸び率が対前年比11.9%になったとの報道が一斉になされている。
中国の一人勝ち」と言う文字がおどり、確かにEUもアメリカも日本もかろうじてプラスの状況に比較すれば驚異的な数字だ。
世界は中国一国でもっているような報道だ。

 しかしその中身を見ると不動産投資を中心とする固定資産投資26%も伸び、特に都市部での不動産投資の伸び率は上海で約35%と突出している。
今回のGDP伸び率の主要部分が不動産投資であることが分かる。

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 もっとも中国のGDP統計は推定部分が多く、正確さが保証されていない。たとえば中国のGDPは翌月の半ばには第1次速報値が発表されるが、日本のGDPの発表はその1ヵ月後である。
日本ではそこまで時間をかけて推計しても、常に間違っているのだから中国の推計がかなり大雑把なものだと言うことが分かる。

注)元々GDPの計測には推計数字が使用されるが、中国の場合は国営企業や中国に進出している大企業、政府支出、金融機関貸出等の一部の資料で大胆に推計している。
また数字そのものが地区共産党の評価につながるため、常にバイアスがかかる傾向にある。
ただし、傾向値は分かるので、他の確実な貿易統計や外貨準備高の推移等とチェックすれば大体の動きはつかめる。

 GDP統計に疑問があるものの、中国で不動産バブルが発生していることは確かだ。その最大の原因は、中央銀行からの大量の資金供給で、10年の第一四半期にも2.5兆元約33兆円)規模の資金が市中に流れている。

注)09年1年間で市場に流れた資金は約135兆円規模と言われている。

 この数字は09年第一四半期の4.6兆元60兆円)よりははるかに少ないが、日本の日銀が行っている金融緩和が約半年20兆円だから、それをはるかに上回っている。
日本と中国のGDPはほぼ同じなので、この金融緩和策はジャブジャブの緩和と言っていい。
何でもいいから金を借りろ。好き勝手につかっていい

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 問題はこうした資金が開発ディベロパー等に流れ、たとえばこの資金を元に上海では地区政府から土地の使用権を購入し、マンション建設が盛んに行われている。

注)上海中心から約20kmの場所にある、新紅湾城では中建地産と言うディベロパーが約11haの土地の使用権を購入し、そこにマンションを建設しようとしている。
そのマンション価格は1㎡あたり68万円と、日本並みの価格(
都心部90万、都下は50万程度だからその中間の価格)になると推測されている。

 こうしたマンション建設が果たしてバブルなのか実需なのかと言うことになるが、当然のことに中国当局は実需と主張し、海外の投資家はバブルと怪しんでいる。

 中国ではかつての日本の様に住宅事情がよくないことは確かなので、実需部分もあるが、相当部分はバブルと言うのが実態だろう。
なにしろ上海では市民の平均年収の約60倍だと言うのだから、投機目的以外の購入は不可能だ。

注)日本では住宅資金は年収の6倍程度が適切とされ、多くても10倍程度だったのと比べるとべらぼうだ

 一体この状態はいつまで続くのだろうか。
この中国の不動産バブルがはじけるのは中国政府が金融機関を通しての資金供給を絞ったときである。日本でもバブル真っ最中に政府や日銀が土地資金の規正に乗り出し、窓口指導を行うようになってから土地バブルが崩壊した。

 現在中国の中央銀行が土地資金融資に消極的になっているが、それでも市中には今までばら撒いた資金が豊富に滞留し、また中央銀行の引締めも本気ではない。
バブル崩壊よりも景気後退を恐れているからだ
従って当面はまだバブルがはじけることはないと見てよさそうだが、ユーフォリアはいつか終わることだけは確かだ。

 

 

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(22.4.18) 文学入門 子どもたちへの文学案内 河村義人

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(エコさん撮影 山崎編集)

 ここおゆみ野で毎月1回程度の頻度で読書会が開催されている。主催者はこのおゆみ野が誇る文学者で「子どもたちへの文学案内」の著書、河村義人さんだ。

 私もこの読書会には毎回参加し、その都度このブログに記事を書いてきた。
今まではどちらかと言うと文豪と言われた人の本や、相応に社会的評価が高かった著書の本を読むことが多かったが、今回は主催者の河村義人さんの著書を選択した。
 
 報告者は私で、この本を選んだのには訳がある。私は読書量が他のメンバーほど多くはなく、この読書会で紹介される書物もほとんど初めてのことが多い。
だから河村さんの著書も読んだことがなかったが、一度じっくりと読んでみたかった。
しかし私のことだ。だがタダ本を読めといわれても、読むことはない。

義務を課すと私は必ず読む。それには読書会のテーマ本にするのが一番だ」そう思ったのである。

 河村さんは著名な著者とは言いがたいが、私は読書会等で何度も話を聞くうちにその読書量に驚愕した。
この本にも自身の過去がつづられているが、中学生頃からいわゆる文学少年で、高校生の頃はあまりに多くの本を読んだために学業がおろそかになってしまったほどだと言う。

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(エコさん撮影 山崎編集)

 河村さんの文学に対する態度は「文学の精神とは、メジャーなものよりも、むしろマイナーものに進んで目を向けることだ」という態度で貫かれており、「天下国家を論ずる大説ではなく、・・・小説」なのだという。

 私などはこのブログで経済批評や政治批評を好んでしてしまい、「大説」ばかり記載するところがあるが、私と対極にある人だと想像していただければ大体当たる。

 この本は10章からなり、その最初の章は「カエル・愉快な仲間たち」である。カエルという小動物を通して文学がどのようにそれを扱っているかを見ようという試みで、河村さんはあえて「身近だが無視されやすいカエル」を取り上げたのだと言う。

 読んで見ると分かるがこの本は相当タフな本である。著者である河村義人さんの現在(確か40半ばだと思う)までの読書遍歴をできるだけやさしく解説しようとした意図は明確だが、しかし内容は濃い。

 それでもこの第一章の「カエル」は相対的にやさしく、できれば中学生にも詠ませたいとの意図は感じられた。
取り上げられた素材は主として俳句・詩であり、松尾芭蕉、小林一茶、草野心平、萩原朔太郎あたりまでは中学生でも読めそうだが、中村草田男、中村汀女あたりになると俳句の素養が必要となり、梶井基次郎の小説「交尾」の紹介はかなり本格的だ。

 河村さんはこの「交尾」を「カタルシスの文学」と定義したが、この文章を読んで清清しいカタルシスを感じるのはかなりの文学的素養が必要だろう。

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(エコさん撮影 山崎編集)

 
河村さんはこの本のあとがきで「これは中学生くらいから読むのが適当だと思うが、わからなかったら、またいつか読んでみたまえ」と言っている。
私の素直な感想としては「中学生ではやはり無理だろう」と思った。
日本の国語教育で古文を含めた過去から現在までの日本の文学が読めるように訓練されるのは高校に入ってからだからだ。

 私は必ずしも優秀な国語の生徒ではなく平均的な生徒だったが、平安期の古文はほとんど歯が立たず、日本の古典で読めたのは平家物語と言った鎌倉期以降の文学で、それも対訳がないと苦労するような代物だった。

 第2章の「ミクロとマクロ」になると河村さんの本格的な文学論が展開される。ここでも川端茅舎(ぼうしゃ飯田蛇笏(だこつの俳句が紹介されているが、著者が本当に紹介したかったのは島木健作の「赤蛙」という短編だ。

 この短編はかなり有名なので読んだ人が多いと思うが、川の中州にいる赤蛙が対岸に渡ろうと急流に飛び込んでは何度も失敗し、最後は力尽きて川面から消え去るまでの描写と、それを見ていた島木健作が大自然の神秘を感じたと言う短編である。

私は自然界の神秘とふことを深く感じていた。・・・・自然の神秘を考えるときにもたらされる、厳粛な敬虔なひきしまった気持、それでいて何か目に見えぬ大きな意志を感じてそこに信頼を寄せている感じ」と島木健作はその時の印象を綴っている。

 河村さんはこの赤蛙の無駄と思われる死と自然界の摂理を論じた文章に「ミクロとマクロ」の相互交換が行われており、「ミクロからマクロにジャンプするスピードが・・・一気に加速される感じ」と絶賛している。

 ミクロだけを論じるのではなく、それがマクロの中でどのように位置づけにあるかを書ききるのが小説家の役割だというのである。
このあたりまで来ると小説論と言ってよく、かなり難しい。

 この本の中身はかなりタフでその文学論まで理解するにはかなりの経験が要りそうだ。
やはり河村義人さんがその人生の大半をかけて読了してきた文学の真髄を理解するには、河村さんと同程度の人生経験と読書量がいるのだろう。

注1)河村さんとM・Tさんの感想文を書きに掲載いたします。
http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/2010/04/post-825f.html

注2)なお、河村さんの「子どもたちへの文学案内」はアマゾン等でも購入は可能ですが、おゆみ野在住の人であれば、このブログのメール機能で私宛連絡いただければ、河村さんにメールを転送いたします(河村さんのところに在庫があります)。

 

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(22.4.17) 体調維持とマラソン

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 このところの気候変化に身体がついていけない。今日(16日)は最高気温が7度真冬並だという。山沿いでは雪だそうだ。昨日も寒かったがその前日は初夏のような陽気だった。

 最近の天候を見ていると冬と夏が交互に訪れて、まるで春と秋がなくなってきたみたいだ。気候が非常に荒っぽくなってきており、マイルドな日々が少なくなっている。
異常気象は日本にも現れてきており、そのうちに夏と冬しか四季がなくなり、二季だなんて言わなくてはならなくなりそうだ。

 私のように年をとるとこの気候変化に身体がついていけない。特に気温の幅が大きくなると瞬く間に軽い風邪をひいてしまって家で寝込むことになる。
毎日2時間の清掃や、2時間のJOGをすることもできなくなって炬燵で寝ているか、ブログを書いている。

 私は元々運動部系なので身体を動かさないと夜眠ることもできない。
あまりに雨の日が続くとカッパを着てJOGに出かけているが、注意しないと風邪をひく。
雨の日にマラソンをしている人は運動フリークな人で、私となじみの男気の大将は嵐の中を平気で毎日走っているが、若いので平気なのだろう。

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 私はここおゆみ野からちはら台まで走って帰ってくるのを標準的なコースにしており、距離にして約13kmだが、毎日走りたいと思っている。
実際は雨や用事や体調不良で毎日と言うわけにはかないが、それでも気持ちは毎日だ。

 汗だくになって風呂に入って身体を伸ばしているときが一番幸せを感じるときで、「うん、今日の走りは良かった」なんて一人で自己満足している。
今年はマラソンに対する気持ちがハイになっており、この4月25日には富士5湖100kmマラソンを走ることになっている。

 普通の人は100kmと聞くと「フルマラソンも走ったことがないのに、100kmなんてとてもとても」という感じになるが、フルと100kmはまるで走り方が違う。

 フルのときは目いっぱいに走ってゴールしたときはほとんどエネルギーが残っていないが、100kmでははるかに低速で疲れを身体に蓄積しない走り方をする。
私の場合は12時間程度かかるから、時速にしたら8kmちょっとで、JOGのスピードと言っていい。

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 このスピードで淡々と走るのがコツで、後は気持ちが切れなければ走れる。
気持ちを切らさない方法は過去を振り返らないことで、今と未来だけを考えて走る。
今の状態はまだまだ走れそうだ」とか、「あと30kmならばこの程度の疲労感なら走りきれる」とか考えて走ることが必要で、「すでに70km来たのでそろそろ限界なのではなかろうか」なんて考えると気持ちがなえて歩いてしまう。

 今シーズンは富士五湖100km以外にも100km走や、もっと長いレースにも参加を予定しており、久方ぶりにランナーの気持ちになっている。
だから天候不順で走る機会が少なくなるのはとてもつらい。
今日も雨か!!!」
カッパを着て走ろうか、風邪をひきそうだから炬燵で寝てようか」悶々としてしまう。

 

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(22.4.16) キルギスの深い闇 バキエフ大統領追放劇

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 何とも不思議な感覚にとらわれた。死者80名を出したキルギスの政変のことである。
この4月8日にキルギスのバキエフ政権が崩壊し、北部を地盤とする臨時政府が樹立されたが、大統領は南部の自身の地盤に逃れ「自分はまだ大統領だ」と主張しているので、南北朝の様相を呈してきた。

追加)15日、バキエフ大統領は辞表を提出し、カザフスタンに亡命した。

 一般的には日本人はキルギスについてほとんど知識がない。
中央アジアの一角で、周りを○○スタンといわれる国や中国に取り囲まれており、アフガニスタンに近い
人口約500万人の小国で、高い山に囲まれその間の峡谷に部族ごとに人が住んでいるという国だ。
国名のキルギスと言う言葉は40の部族を意味する言葉で、この言葉通り多くの部族が存在し、部族が異なれば対立し、特に南部と北部の対立が激しい。

 日本との関係は1999年JICAから派遣された日本の鉱山技師4名が誘拐拉致されて日本政府が奔走したがそうした記憶も薄れている。
本来ならば何が起ころうとも世界政治には影響がなく、「勝手に殺し合いをしていろ」と大国からは無視されるような国なのだが、そうは行かない事情がキルギスにはある。

注)日本が鉱山技師を派遣したのは、この国を中央アジアの拠点にしようとしたからで、一時は日本が最も多くの資金援助をしていた。農業国ではあるが鉱物資源として金が豊富にある。

 ここにアメリカの対アフガン用前線基地マナス空軍基地が存在し、その近くにロシアのカント空軍基地があって互いにキルギスの覇権を狙って対峙しているからだ。
アメリカ軍基地とロシア軍基地がこんなに近くにある場所は珍しいが、バキエフ大統領両国を天秤にかけて資金援助を引き出す作戦を立てたからである。

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 バキエフ大統領は2005年に南部部族を糾合し、いわゆるチューリップ革命を起こし、アカエフ前大統領を追放した。アカエフ前大統領が一族郎党の縁故政治で腐敗していたからである。

 当初は民主化と汚職追放を目指したが、ここでも実際に起こったのはバキエフ一族を優遇した縁故政治と汚職だった。

 さらにバキエフ大統領プーチン首相並の権力を掌握しようとして、反対派やジャーナリストの投獄・殺害を繰り返したので、特に北部を地盤とする部族同盟がバキエフ大統領の失脚を虎視眈々と狙っていたと言う構図になった。

 もっともそれだけではバキエフ政権は倒れない。問題はバキエフ大統領がロシアのメドベージェフ大統領との約束を保護にして、ロシアの面子を丸つぶれにしたからである。
メドベージェフ大統領キルギスを再びロシアの衛星国にするために、2000億円の資金援助を約束し、その見返りにアメリカのマナス空軍基地の閉鎖を約束させた。

 一旦はこの約束を実行しようとしたが、今度はアメリカ側から従来の3倍の賃貸料(年間約50億円)とその他援助の申し込みがあったためすっかり気持ちが変わってしまった。
よし、アメリカとロシアから金をふんだくって、わが部族の栄華を極めよう

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 今回の政変は北部部族を支援したロシアの意向が強く反映されている。
バキエフ大統領は「ロシアが私を見捨てたとは思わない」と泣き言を言ったが、プーチン首相はさっさと新政権を承認し、46億円の資金援助と、2万5千トンの石油と、種まき用穀物の提供を約束した。

してやったり、欲張りのバキエフを追放できた。これでキルギスからアメリカを追い出せるプーチン首相の高笑いが聞こえる。
一方アメリカはアフガン政策の見直しをしなければならなくなり、オバマ政権にとってひどい痛手になっている。

 私がキルギスの政変を見て不思議に思うのは政変や革命が起こるたびに民主化が叫ばれ、未来が開けるような感覚に襲われるのだが、実権を握るとたちまちのうちに強権政治に変わってしまうことだ。
今回もそうなる可能性が高い。

 そして権力者は一族郎党の蓄財のためだけにアメリカやロシアを利用している
こんな部族政治があっていいものだろうか」とても不思議な気持ちになる。

 

 

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(22.4.15) オバマ大統領の懸念と鳩山首相の懸念 核安全サミットと普天間

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 この12日から13日にかけて、アメリカのオバマ大統領主催で核安全サミットが47カ国の首脳を集めてアメリカで開催された。
オバマ大統領がわざわざこのようなサミットを開催したのは、核の脅威がかつての国家間の核戦争の脅威から、テロリストによるアメリカ等への攻撃に代わり、それへの対応が不十分と認識したからである。

 アメリカはすでに2001年にニューヨークのワールドトレードセンターに対し、民間航空機によるテロを仕掛けられ、3000名弱の死傷者をだす大惨事を経験している。
一方ロシアも地下鉄での無差別自爆テロの脅威におびえており、イギリスでも公共機関を狙ったテロが起きている。

こうしたテロリストが一旦核兵器を手にしたらどうなるか、その前に阻止をする仕組みを作ろう

 アメリカは次はアルカイダによる小型核兵器汚い爆弾低レベルの核物質を通常爆弾で爆発させる)での攻撃と想定している。
そのためには各国が核物質管理の厳密化を図ること、そしてもし自国で管理できない場合は核物質をアメリカ等へ移送して管理することについて同意を求めた。

注)本当の狙いはアメリカですべて核物質の管理をするということ。

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 核物質の管理は各国の水準に大きな差があり、特に大学や実験室で使用している小規模の施設では核物質管理はほとんどされていない。

 この会議での結論は「4年以内に核物質の国際管理」を図ろうと言うことになった。
原子力発電等でできた使用済み核燃料再処理して使用するのだが、管理の対象はその再処理過程でできる高濃縮ウランウラン235が20%を越えるウラン、これが90%を越えると核兵器に使用できる)や分離プルトニウムである。
それ以外には核兵器を解体した場合にもプルトニウムが発生するので、この管理も必要になる。

注)ウランに中性子が結合すると、何回かの崩壊を経てプルトニウムになる。高濃縮ウランもプルトニウムも核兵器の原料だが、プルトニウムの方が効率がいい。

 低濃度のウランは通常原子力発電で使用しているが、一方プルトニウムは厄介な物質で、核兵器以外で使用する方法は限られている。
すでにウクライナは保有するプルトニウムをロシアで、カナダ、チリはアメリカでの管理に同意した。

注)1990年代初めまでアメリカは各国に民生用原子炉燃料として高濃縮ウラン(ウラン235が20%以上のもの)の輸出を行っていた。
現在世界には約1600トンの高濃縮ウランと500トンの分離プルトニウムが存在していると推定されている。
原爆1個作るのには25kg~50kgの濃縮ウラン、5kgのプルトニウムがあれば可能と言われている。


 かつては気前よく高濃縮ウランを輸出していたが、気がつけばアルカイダがそれを入手して、通常爆弾で爆発させれば核攻撃されたのと同じ状況になってしまう。
これがオバマ大統領の危惧だった。

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 そこに普天間基地移設問題でピンチに立っている鳩山総理が出かけていった。
沖縄住民の負担軽減のための話し合いをしたいと申し出たが一蹴され、公式な会議は開催されず、歓迎晩餐会の席で10分ほど軽い話をすることになった。
晩餐会には各国の要人がいるので、当然込み入った話や秘密裏の話はできない。

 アメリカは本当は鳩山総理の話など聞きたくもなかったが、最も重要な2国間関係だとの建前もあり、聞くだけは聞いてやると言う態度だった。
結果は鳩山総理が泣き言を言っただけに終わり、成果はなかったがそれも当然だと思う。

 なにしろアメリカは直接的な核の脅威にさらされており、アメリカ国民の命に関わる問題で集まってもらっているのに、一方は負担軽減のレベルだ。
核攻撃されたらどうなるかお前は分かっているのか。沖縄問題は日本国内の問題なのだから自分で解決しろ。お前は総理大臣なのだろうオバマ大統領の本音だ。

 鳩山総理の最大の欠点は、国内問題にけりをつけてから外国と交渉することができないことだ。
オバマさん助けてください
こうした態度を植民地根性と言う。

 昨年の9月に民主党政権ができてから半年、日本の外交力は日を追って低下しており、アメリカからは幼児並の扱いを受けている。

 

 

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(22.4.14) カチンの森は呪われた場所 ポーランド政府専用機墜落

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(エコさん撮影 山崎編集)

 カチンの森はよほど呪われた場所らしい。第2次大戦中、ポーランドに進駐したソビエト軍は、スモレンスク州のカチンの森で捕虜にしていたポーランド将校等約2万名を密かに銃殺し死体を埋めた。

注)スモレンスク州のカチンの森は現在のベラルーシの国境に近いロシア側にある。ここにポーランド将校等の捕虜収容所があった。

 当初このポーランド将校等の虐殺はナチスドイツの仕業とソビエトロシアは言っていたが、その後の調査でソビエト秘密警察の仕業と判明した。
ゴルバチョフエリチェンはその事実を認めたが、「すべてはスターリン個人の問題」でロシア国民には責任がないとしたことで、その後もながくポーランドとロシアのわだかまりになってきた。

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(エコさん撮影 山崎編集)

 今回の「カチンの森70周年追悼集会」はそうした両国間のわだかまりを解消して新たな両国関係を築こうと、ポーランド政府が主催したものである。
だが、この追悼集会は政府専用機が墜落し、大統領を含む政府要人96名全員が死去したことで新たな追悼式典になってしまった。
カチンの森は呪われた場所と言える。

注)大統領夫妻、上・下院副議長、軍参謀総長、中央銀行総裁、国会議員、外務次官等政府要人が死亡した。

300pxtupolevtu154arp750pix1  ロシアはこの事故の原因は「当時スモレンスクには濃霧が発生しており、管制官がパイロットにモスクワまたはミンスクへの着陸を指示したが、パイロットが強行着陸し木に引っかかって炎上したもの」だと発表した。
飛行機には異常がなく、すべてはパイロットの操縦ミスだという報告である。

 しかしこの報告を素直に信じるのはかなり難しい。
もともとロシアの報道は常にロシア側に有利になるようにバイアスがかかっているからである。

 今回の事故機はロシアが生産したツポレフ154型機といって、1972年以降ロシアの国内幹線や中距離国際線に就航してきた機種で約1000機が生産されたが、老朽化が激しい。
今回の政府専用機は1990年に製造されたものでほぼ20年になる。

 過去に何回か事故が発生し、09年7月にはイラン西部で168人が死亡する事故、06年8月にはウクライナ東部で170人が死亡する事故が発生している。
設計は堅実と言われているものの、西側の基準から見たら一世代も二世代も前の機種で、西側のコードネームがケアレス(不注意な)と言われたほどのオンボロ機だ。

注)アエロフロートを利用すると成田・モスクワ間はエアバスが就航しておりとても快適なのだが、モスクワからヨーロッパ各地に飛ぶときはツポレフのようなロシア機に変わる。
乗ってみると分かるが機体がガタガタと揺れて、かなり緊張感を強いられる。

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(エコさん撮影 山崎編集)

 ポーランドの政府専用機がこのツポレフ154だったのは、ポーランドの国情を象徴して何とも不幸だったのだが、それに輪をかけて不幸はスモレンスク飛行場が日本的感度からはオンボロ飛行場だったことにある。

 ここはロシアによくあるように軍民共用の飛行場だったが、軍隊が引き上げ現在は主としてスモレンスク飛行機工場の試験用に使用されていたという
計器着陸装置はついてなく、この飛行場に下りるためには目視によらなければならない

周りの樹木をさけて下りるには経験が必要だが、あいにくポーランドの操縦士はそうした経験がない。

注)ロシア人パイロットは軍人出身が多くとても優秀だと言われており、どのような設備の飛行場にも下りられるように訓練されている。
しかしポーランドの操縦士にそれを求めるのは無理と言うものだ。

 当時は濃霧が立ちこめていて管制官は当然「モスクワやミンスクへの変更を求めた」のだと思うが、ポーランド側にはスモレンスクに下りたい事情があった。
モスクワやミンスクはあまりに遠く、ポーランド主催の式典に間に合わない可能性が高かったからだろう。
何とか着陸できないか

注)モスクワやミンスクはスモレンスクから約500km程度離れており、かつ旧共産圏の道路事情はかなりひどいので、式典の日程を遅らさなくてはならなくなる。

 結果的には着陸を許可したはずだが、なれないオンボロ飛行場にオンボロ機で着陸を試みて事故が発生してしまった。
ロシアは「すべてパイロットミス」だと言っているが、ロシアのオンボロ飛行場の現実を説明していない。
ツポレフ154自体は今回は問題がなかったかも知れないが、この飛行場に着陸せざる得なかった機長は不幸だったと言える。

 やはりカチンの森は呪われた場所らしい。

 

 

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(22.4.13) タイの農民戦争 タクシン派の反乱

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 タイの政局はほとんど収拾がつかない状態になってきた。
アピッシト首相が1ヶ月も続いたタクシン派による都心部の占拠や、国会乱入に業を煮やして非常事態宣言を発したのがこの4月7日だったが、タクシン派からは「かえるの顔にションベン」と無視されてしまった。

どうせ、アピッシトはまともな対応なんかできるはずはない
これにはアピッシット首相も自制心を失った。

それなら、実力行使がどういうものか見せてやる
10日に治安部隊に命じてデモ隊の強制排除に乗り出した。幸いに軍はアピッシト首相を支持している。

注)通常タイでは軍隊は中立を守ることが多い。その場合は首相が命令しても軍隊はサボタージュを決め込む。

 しかしこの治安部隊による排除で大混乱が起きてしまい、21名あまりの死者と1000人近くの負傷者が出てしまった。
この中にはロイターが派遣した日本人カメラマン、村本博之さんも含まれる。
こうまでして排除しようとしたのに、実際はまったく効果がなく、相変わらずバンコックの繁華街はタクシン派によって占拠されたままだ。

 おかげでアピッシト首相は恒例のアセアン会議にも、オバマ大統領が召集している核サミットにも出席できなくなってしまった。
タクシン派のデモは成功し、アピッシト首相は世界的に恥をかいた。

 タイの治安維持がいつも難しいのには訳がある。タイはよく「微笑みの国」と言われが,、その理由は流血を極度に嫌う平和な国柄だからだ。
デモも当然平和裏に行うのだが、これを排除しようとすると必ず流血の惨事になって、流血の責任を問われる。

首相はなぜ人を殺したのだ。軍や警察はなぜ発砲したのだ」となって、首相は退陣、軍や警察の首脳も首を切られるので、それを恐れて誰も手を下そうとしない。
秩序を維持することよりも流血を避けようとするのだ。

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 今回のタクシン派による繁華街の占拠は1ヶ月続いたが、一昨年の反タクシン派の首相府占拠は約3ヶ月、空港占拠は約1ヶ月続いた。
仕方なく首相のほうが折れて退陣するのがいつものパターンだ。

 こうしたタイの政権交代方式は他国にはないタイ独自なもので、日本人から見ると何とも奇妙に見える。
この国は秩序を維持しようとする意志がないのではなかろうか」と映るからだ。

 タイの政局はこのように不思議の国のアリスだが、実際の対立構造はどこの国にもある都市と農村の対立であり、それが選挙による政権交代ではなく、しばしばデモやクーデターによるところがタイ式だ。

 バンコックに行ってみると分かるが、この都市は非常に近代的な都市であり、中間層や富裕層も多く、日本と変わりが無い。
繁華街には日本のデパートが進出して、消費活動は非常に活発だ。
バンコックだけ見ればタイは非常に裕福な国に見える。

 一方一歩農村部にいくと、遅れた昔のままのタイが残っている。私がタイを訪れたのは15年以上も前だが、アユタヤのタイ人が泊まる宿は一泊100円で、食事は50円でできた。
裸電灯とベットと扇風機だけの部屋だったが、「こんなに安いのなら一生タイに住もうかしら」と思ったほどだ。

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 私はそうした遅れた何もないタイが好きなのだが、タイ人にとっては「なぜ都市住民は裕福で、俺たちはこんなに貧乏なのだ」と言うことになる。
情報はテレビ等で十分行き渡るので、一旗あげようとバンコックに出てみても、田舎出身者は最下層の貧しい仕事しかなく、中間層にも富裕層にもなれない。
なにしろ教育水準が違いすぎて貧富の差は固定されたままだ。

農民はいつも虐げられている。バンコックに出てきても俺たちは二流の国民だ
こうした不満を吸収して01年2月に首相になったのが、今はタイを追われているタクシン元首相で、タイ東北部の農村地帯に補助金をばら撒き、農民の心を捉えた。

 もっとも都市住民からは大ブーイングで、「バンコックの富を農村にばら撒いて人気を取っているトンでもないヤツ」と言うことで06年9月に軍事クーデターが発生し、タクシン元首相はタイを追われて流浪の旅を余儀なくされた。

 その後は軍隊と富裕層と中間層が手を組んで08年12月に都市党アピッシト政権を成立させたが、リーマンショック後の経済停滞を背景に失業者が増大し、農村党タクシン派が盛り返してきたのが今の構図だ。

 果たして都市党と農村党のこの争いはどう決着がつくのだろうか
21名にも及ぶ死者が出てしまえば、アピッシト首相は責任を取って辞任するのが今までのタイのパターンだが、都市と農村の戦いは今後も継続し、タイのアキレス腱になりそうだ。

注)皮肉なことに都市と農村の対立がこの様に先鋭化するのは、タイが民主国家だからである。中国でも都市と農村の対立は激しいが武装警察が不満を抑えてしまうので、問題が外に知られることが少ない。

 

 

 

 

 

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(22.4.12) だから言ったじゃないの 岡田外相始末記

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 「だから言ったじゃないの」という状況になってきた。岡田外相が推し進めてきた日米密約の存在の開示ついて、「お前が言っていたのだから、真面目に密約文書をさがせ」と東京地裁から命令されてしまった。
岡田外相の調査は不十分だと言われたのである。

 岡田外相が日米密約の存在を国民に明らかにすると言って、外務省の尻をたたいたのが昨年の9月で、今年の2月に外務省の有識者会議がその調査結果を発表した。

 今回裁判で問題になった密約とは、開示された4つの密約の中のうちの一つ、「沖縄返還の財政負担をめぐる密約」のことで、具体的には以下の密約が存在し、その内容を明記した密約文書があったと言うものである。

① 米軍の軍用地回復費用として400万ドル(約4億円)の肩代わり
② 米軍の短波放送(VOA)の国外移設費用1600万ドル(約15億円)の肩代わり
③ 日本側による米国での無利子預金の存在

 従来外務省はこうした密約は存在しなかったと突っぱねてきたが、岡田外相の開示命令で、有識者会議は10年2月に「(密約文書の存在は確認できなかったが広義の密約は存在した」と結論付けた。

 岡田外相はこれで満足したようだが、そうは問屋がおろさなかった。
この密約の存在をすっぱ抜き毎日新聞を追われた西山記者が起こした裁判の判決で、東京地裁は「密約文書が過去の一時期に存在していたことは確かであれば、(今は存在しないと証明できない限り)真面目に探せ」と命令した。

 09年9月に密約文書の開示を命じた岡田外相が今度は自分が開示を怠っている責任者と裁判所から認定されてしまった。

 岡田外相は憤懣やる方ないようで「俺の命令で調査して、ないとしたのだからない」と突っぱねるつもりのようだが、岡田外相よりも、より密約文書の開示に熱心な西山元記者が現れた以上、岡田外相は従来の自民党政権と同じ立場になった

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 パンドラの箱は一旦開けられるとどこまで開けたらいいか分からなくなる。

 原理主義者岡田外相がより厳しい原理主義者西山元記者に追い詰められていく姿は、かつての全共闘運動とまったく同じだ。
私が大学生だった1970年代は全共闘運動が燃え盛った時期で、当初は最も左翼と思われていた共産党配下の民青が、いわゆる全共闘によって、体制維持勢力とみなされていた時期である。

 その後全共闘は互いにそのラジカルさを競い、少しでもラジカルさが劣ると思われた党派は容赦なく指弾され、最後は浅間山荘事件となってメンバーを互いに殺し合い自然消滅していった。

 パンドラの箱をあければそこまで行かないと収束しない。
岡田外相が得意満面になって公表した密約文書の存在については、こんどは「外務省が存在しないことを明確に証明できない限り存在する」と言うことになった。

だから言ったじゃないの
原理主義者はより厳しい原理主義者によって追い詰められるのだ

注)西山元記者を一般的な意味で原理主義者と呼ぶのは適切でないが、こと「沖縄返還の財政負担をめぐる密約文書」の存在については、西山元記者は絶対に譲ることはない。
なにしろこの事件をスクープしたことで毎日新聞を追われたからだ。


 

 

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(22.4.11) デジタルカメラについて

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 私がデジタルカメラを使用するようになったのは引退してからだから4年目になる。
それ以前も使用しなかったわけではないが画質が悪く、とてもアナログカメラの画質には及ばなかったので使う気がしなかった。

 なにしろ我が家には10万円以上もしたアナログカメラがごろごろしていたし、かなり本格的な大型カメラさえあった。
すべて登山写真を撮ろうとして購入したものだが、欠点は重くて歳を取るに従ってカメラを持って登山するのが億劫になってきた。

 私は毎年のように1週間程度アルプスや東北の山や北海道の山を一人でキャンプをしながら歩いたのだが、その時の写真がないのは写真機を持参しなかったからである。

 ところが最近デジタルカメラの画質が急激に改善し、しかも重さは手のひらサイズに変わってきた。
こんなに軽くて、高画質なら使用してもいいのではなかろうか
デジタルカメラを使うようになってから、これが自由に編集できるのには目を見張った。

 かつてアナログカメラで撮ったとき、ネガを写真屋さんに持って行き、トリミングや明るさの調整やらを頼むのは一仕事だった。
写真屋さんはほとんどが機械処理の流れ作業で行っているので、そうした特殊な注文を嫌がるからだ。
なんとか自分で編集ができないものだろうか
いつも思っていたが、これがPicasaというような編集ソフトを使用すればいとも簡単にできることに驚愕した。

 今私はどこに行くにもデジタルカメラを携帯している。気に入ればとりあえず写しておき、あとで編集作業を行えばピンボケ写真以外はそこそこの写真に変身する。
女性が上手にお化粧をするのと同じで、化粧の上手な女性はいつも美人であるのと同じように上手に編集された写真はプロ並みの写真になる。

注)フォトショップというソフトを使うと皺まで修正できる。

 一方デジタルカメラの欠点は小さすぎてすぐに落としてしまうことだ。私はマラソンのレースをしながら写真を撮ったりしているのでよくカメラを落とす。
まずい、また落としてしまった
そうすると枠がゆがんでしまって、シャッターがうまく切れなくなり買い換えることになるのだが、今は4代目のカメラになってしまった。

 毎年1台購入することになったのだが、デジタルカメラは高性能な割りに信じられないような低価格だ。
アナログカメラだったら10万円以上もしそうな高機能のカメラが1万円~2万円で購入できる。
夢のような話だが、これじゃー、メーカーは大変だろう」同情が禁じえない。
機械がデジタル化してすべての価格が劇的に下がっている。

 私は現在のデフレの原因のひとつにこのデジタル化があると思っている。
デジタル化とは低価格化と同義語だ
おかげでどんどん高機能になっていくカメラを次々に買い換えることができるのだから消費者にとっては天国のような時代だ。

注)同じことを何度も言って恐縮だが、このデジタル化の恩恵をこうむって年金生活者でもまったく生活に困らない。

 
 

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(22.4.10) 再びの  年齢別ランキング100への挑戦

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 このところめっきり湿っていたマラソンへの情熱が復活し始めた。情熱がなくなっていたのには訳があって、年ごとにスピードがなくなり、フルマラソンを走っていても面白みがまるでなかったからだ。
スピードがなくなるのは年齢のせいもあるが、私の場合は坐骨神経痛が右足に出てきて、練習をするにも痛くて億劫になっていた。
イテー、こんなに足が痛いのだから走れない
 
 情熱がなくなるとまったく走る気がなくなる。若いうちは馬力で走れるのだが、年齢を重ねるに従って気力で走るようになる。
まだ、若い衆には負けられん」老いの一徹だ。

 それがなくなって好々爺のようになって、「みなが楽しく走っているのだから、わしも急がず止まらずゆっくりゴールしよう」なんて気持ちになってしまう。
おかげでここ数年フルマラソンで4時間を切ることがほとんどできなくなり、昨年のつくばマラソンでは仮装ランナーになってしまった。

 ランナーが仮装ランナーになるということは、これ以上の無理はしないとの宣言のようなもので、後は引退しかない。

 しかしここに来てまた気持ちが変わってきた。
坐骨神経痛が痛むのは相変わらずだが、これは静かに立っていたり、ゆっくり歩いているときだけで、早足や走っているときは痛まない。
おそらくスピードを上げると前傾姿勢になって腰への負担が少なくなるからだろう。
そうか、走っているときは痛まないのだから、それならいつまでも走っていればいいんだ」気持ちが切り替わってきた。

 先月行われた佐倉マラソンで事前トレーニングの成果もあり、久しぶりに4時間を切って3時間53分でゴールできた。
俺も練習をすればまだまだ走れそうだ」気持ちがすっかりハイになった。

 マラソンランナーの目標の一つに年齢別ランキング100というのがある。マラソンの専門誌ランナーズが日本の各地で行われたマラソンの公式記録を集計して年齢別にランキングを発表している。
年寄りは若者と競って勝てるわけはないが、同じ年齢同士だったらまだ競って、100番以内に入ることも可能だ。
せめて、日本で100番程度のものが1つあってもよさそうだ

 例年の傾向を見ると64歳次のシーズンはこの歳になる)で3時間40分を切れば、100番が見えてくる。
そうか、あと13分程度短縮すればいいんだな」希望が見えた。
ここ1~2ヶ月はほぼ毎日近所の周回コースで走っている。
日によって距離は異なるがほぼ10km程度で、目標は1キロ5分で走り通すことだ。

 この1キロ5分というペースは市民ランナーの一つの目標で、本当にこのペースで最後まで走れればフルマラソンを3時間半で走れることになる。
次のつくばマラソンまでほぼ半年だ。
山ちゃん、がんばれ、100番は近いぞ」叱咤激励だ。

 

 

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(22.4.9) NHKスペシャル アフリカンドルーム ルワンダの奇跡

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 私はアフリカについてほとんど知識がない。かろうじて知っているのはエジプトぐらいで、それも古代史と言っていい昔の話だ。
アレクサンドリアクレオパトラがいてローマの将軍を美貌でたぶらかしていたというような知識だから、何も知らないのと同じだ。

アフリカについても少しは知識を持ちたいものだ」と思っていたら、嬉しいことにNHKスペシャルで、アフリカシリーズを放送することを知った。

 第1回目はルワンダでそこが奇跡の復興を遂げているのだと言う。
ウッッ、ルワンダってどこにある
アフリカのちょうど真ん中あたりにあって、四国の1.5倍の面積で、人口は1000万人程度の小さな国で人口密度がアフリカ一だそうだ。

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 以前ひどい内戦が勃発して、多数派のフツ族が少数派のツチ族の大虐殺を行ったという。
そういえば、昔テレビで何度か虐殺されたツチ族の死体の映像が流されていたな
約80万人のツチ族が殺害されたそうだが、ルワンダに住んでいたツチ族はほとんど死滅したほどのジェノサイドだったそうだ。

 1994年に発生したこの大虐殺は100日間のジェノサイドと言われ、生き残ったツチ族は周辺の国に逃れた。
その後、このジェノサイドに怒ったツチ族ルワンダ愛国戦線RP)を組織して、フツ族の政権を転覆させ、以来ツチ族の政権が続いている。

アフリカはいつも民族対立が激しくて、民族が違うと手首や足首を切り落とすひどい野蛮な国だ」これが私のアフリカのイメージでルワンダはまさにそうした国だと思っていた。

 しかし番組ではそれは過去の話であり、現在のルワンダは治安が安定し、汚職が極めて少なく、その結果すばらしい経済成長を遂げているアフリカきっての希望に満ちた国だと紹介されていた。
何かしばらく前のシンガポールのようなイメージだ。

いくらなんでもそれはないだろう。16年前にルワンダに住んでいたツチ族が大虐殺されたのに、今は仲良く暮らしているなんて無理だろう

 放送によれば、ツチ族の政権が誕生した後、世界各地に離散していた約100万人といわれるツチ族ルワンダに帰還して、ルワンダ復興に貢献しているのだという。
この亡命したツチ族をディアスポラ(古代ユダヤ人の通称で離散者という意味)といい、現在のカガメ大統領ディアスポラだそうだ。

 首都キガリは建設ラッシュに沸き、中国やアメリカの投資マネーがこのルワンダを潤しているのだそうだ。世界の先進国で仕事を覚えたディアスポラがルワンダ復興の中心になり、ルワンダをアフリカのトレードセンターにする事業が着々と進められているという。

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「うぅーん
」考え込んでしまった。
なぜ大虐殺のあと急激に治安が回復したのだろうか。通常は報復攻撃が行われて内戦の泥沼に陥るのが普通なのに・・・・・・

 番組では明確に説明されていなかったがどうやら以下のような理由のようだ。
① ジェノサイドを行ったフツ族は報復を恐れて隣国に逃げてしまった。残ったのはツチ族と穏健派フツ族だけになった。

② ルワンダ救国戦線による軍事政権が、治安維持について熱心に取り組んだのでアフリカきっての安全な国になった。

③ 海外に離散したディアスポラを呼び戻すために税金等の優遇措置や、経済成長を支援する措置をとった。

④ カガメ大統領がルワンダをアフリカの経済センターにするという明確なビジョンを持って独裁を進めた。

 何かカガメ大統領はシンガポールのリー・クアンユーのような開発独裁国家を作り出したらしい。

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 アフリカシリーズはとても面白そうだ。今回のシリーズで私のアフリカについての知識が少しずつ深まっていけそうなので嬉しくなってしまった。

 なお、私がよく読むブログでQ翁さんがこの番組の詳細な解説をしていたので以下に紹介します。
http://ameblo.jp/dokkyohisashi/entry-10500417767.html

  

 

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(22.4.8) 水資源は誰のものか メコン川流域

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(エコさん撮影 山崎編集)

 どうやら21世紀の大きな課題として水資源問題があることが徐々に明らかになってきた。
その典型的な例としてメコン川があり、現在メコン川が異常な渇水に見舞われている。
私がこのことを知ったのはNHKのニュースでだが、メコン川で漁業を営んでいる漁民が「今年のメコン川の水量は例年の半分ほどで、ほとんど魚が採れない」と訴えている画像だった。

 メコン川はチベット高原の奥地が源で中国の雲南省、ミャンマー・ラオスの国境、タイ・ラオスの国境を通り、カンボジアを抜けて、最後にベトナムから南シナ海にそそぐ総延長4800kmの大河である。
典型的な国際河川であり、利害が微妙に錯綜する。

 元々は大河の恵みを十分に受けて、雨季乾季の水量の差あるものの、沿岸住民は水資源の不足など考えたこともなかった。
しかし今年は30年来の渇水になってしまい飲み水や農業用水に事欠くことになった。

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 (エコさん撮影 山崎編集)

 たまらずメコン川下流域のタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの4カ国首脳が集まり、流域4カ国会議を開いた。
下流域の一致した見方は「上流に中国が築いたダム群によって、下流域に水が流れなくなったから」で、中国に集団でクレームをつけようとしたのだが、オブザーバーとして出席した中国の宋外務次官の主張はまったく異なるものだった。

渇水の原因はメコン川流域が史上まれに見る旱魃に見舞われたのが原因で、中国も深刻な旱魃被害に悩まされている」と言う。
まったくの濡れ衣だとの反論である。
中国の圧力に気おされて、中国非難は引っ込んでしまい、みんなで努力をしようというわけの分からない結論になった。

 確かに中国の言うように中国西南部雲南省を中心にひどい旱魃で、2000万人が飲料水にも事欠く有様で、中国政府は500億円規模渇水対策を実施している。

注)約2万の井戸を掘り、2万キロの臨時水道管を敷設した。

 だから中国南西部からタイ北部にかけて広がっている旱魃が第一の原因なのは確かだが、中国が上流部にダムを建設し、特に堤高世界一と言われる小湾ダムが建設されてから一気にメコン川の水量が低下したのも確かだ。
上流部に建設したダムから中国は渇水対策として飲料水や農業用水を大量に使用している。

注)正確に言うと小湾ダムは完全に完成されたわけでなく、水の溜め込みを開始した段階。

 なぜこれほどまでの異常気象がこの地域で発生したのかは明確でないが、地球全体で温暖化が進み、その結果雲南省を中心とする中国内陸部が砂漠化しているようだ。
日本でも集中豪雨が凶暴化し、また私の住んでいる千葉では低気圧が通過するたびに信じられないような突風が吹き、3月は例年に比べて異常に雨の多い月だった。

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(エコさん撮影 山崎編集)

 日本では川の管理は所詮国内の問題だが、大陸では違う。メコン川は典型的国際河川なので、水管理は国際問題になる。
現在はこの異常気象に対し、強国中国が豊富な資金で水を独り占めしている構図で一方小国ラオスカンボジアという国はただ泣きを見ているだけだ。

 特にカンボジアベトナムは農業用水をメコン川に頼ってきただけに被害が深刻だが、この地域には日本に代わり中国からの資金援助や投資が増加しているだけに中国に対し強硬手段がとれない。

 かくして石油や鉄鉱石や石炭と同様に水も重要な資源となってきて、誰がこの水資源を独占するかの戦いになってきた。
メコン川に関して言えば中国の一人勝ちだ。

 最近日本では水ビジネスの話が脚光を浴びており、水道局と企業が手を携えて水ビジネスに乗り出そうとしていると報道されていた。
水ビジネスは確かに魅力的なビジネスだが、こうした国際河川をめぐるパワーゲームが存在し、単に技術の移転の問題ではないことを視野にいれた対応が必要だろう。

 

 

 

 

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(22.4.7) 中国の刑法と死刑執行  覚せい剤密輸事件

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(テラさん撮影 山崎編集) 

 覚せい剤を日本に大量に密輸しようとした日本人の死刑執行を行うと中国政府が通告してきたことで、鳩山首相、管副総理が中国政府に「懸念」を表明したが、なぜそのようなことをするかさっぱり分からなかった。
私などはまったく「懸念」しなかったからだ。

 中国政府が法律に基づき死刑を執行することに日本がとやかく言う筋合いではない。反対に「日本の法律と相違しているので、日本の刑法に基づき裁け」と言う方が問題で、そんなことを言い始めたら国家の主権問題になってしまう。

 今回覚せい剤密輸の罪で死刑が執行される赤野死刑囚は、大連空港で覚せい剤2.5kgを保持しているところを大連警察に見つかり逮捕起訴された。

注)正確に言うと赤野死刑囚が1.5kg、一緒にいた石田受刑囚(懲役15年)が1kg保持していた。なお、赤野死刑囚の刑は6日に実施された。

 中国の刑法では「覚せい剤50g以上の密輸で懲役15年か無期懲役、または死刑」になるのだが、この量刑の違いは密輸しようとした量による。
だいたい1kg以上の密輸では死刑になる場合が多く、赤野死刑囚石田受刑囚との量刑の相違はそこから来ている。

注)正確に言うと密輸を含め、保持していることが犯罪になる。

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(テラさん撮影 山崎編集)

 日本においては殺人事件以外で死刑が執行されることはほとんどないが、中国では麻薬の取引や汚職でも死刑が執行される。
麻薬取引が蔓延し、かつ汚職天国であるためで、厳罰で臨まなければこうした犯罪を防止できない。
これは中国のお家の事情だ。

 管副総理が「やや日本の基準より罰則が厳しい」と言ったが、温家宝首相は「中国の法律に基づいての処理で、多くの人の命を危険にさらす重大な犯罪だ」と反論した。
これは公平に見て温家宝首相の言い分が正しい。
中国官憲の努力で、日本に大量の覚せい剤が持ち込まれないで済んだのだから、本当は日本は中国に感謝しなければならない立場だ。

 中国の裁判は2審制であり、地裁で死刑判決を受け、その後09年4月に高裁で死刑が確定した。
赤野死刑囚の控訴時の申し立ては、
① 通訳の能力が低く、自分の立場を正確に伝えられなかったこと。それゆえ供述調書を証拠とできないこと、
② 自分は主犯格でなく、単なる運び屋であること、
③ 覚せい剤は押収されたので、実質的な害悪が発生していないこと
、だったが高裁ではそうした理由はすべて却下された。

については確かに問題があって、日本でも外国人の犯罪で言葉の壁がしばしば発生している。
は中国の刑法の運用では覚せい剤の量が問題で、主犯かそうでないかは考慮されないので却下は当然だろう。
はまったく反論になっていない。

①以外は控訴理由にはならない。

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(テラさん撮影 山崎編集)

 鳩山首相管副総裁の言う「懸念」なるものが何なのか、私にはさっぱり理解できないが、今回も人権団体アムネスティが死刑判決は人権問題だといつものように言って中国大使館前で抗議集会を開いていた。

 しかし赤野死刑囚は中国の法律に従って裁判にかけられ、死刑が確定したのだから、私だったら「まったく何も言うことはありません。これは中国の国内問題です」と言う。

 繰り返すようだが、刑法の罰則規定はそれぞれの国の主権の問題で他国が口を挟むような問題ではない。

注)事件が発覚したのは06年9月だが、この覚せい剤は北朝鮮で生産されたものと思われる。従来北朝鮮の覚せい剤は北朝鮮の貨物船が日本の沿岸まで運び、暴力団関係者の小型船に渡していたが、日本の沿岸警備が強化されてこの方法が使えなくなった。

 そのため北朝鮮は中国経由で覚せい剤を日本に密輸するルートに変更したが、こうした事情を中国当局は把握していたため、大連空港で運び屋を補足した。

 

 

 

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(22.4.6) 21世紀型都市への挑戦  東京都の排出権取引

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テラさん撮影、山崎トリミング 青葉の森公園

 私は石原都知事の強引さには辟易しており、特に新銀行東京の対応はまったく間違いだと思っているが、今回の排出権取引は久々のヒットといえる。

 東京都が世界に先駆けてオフィスレベルで排出権取引を行うと言うのは、地盤沈下が著しい東京再生のコンセプトとしては正しい選択だ。
なにしろ東京はかつての先端都市からローカル都市に落ち込んでしまって再生のきっかけがつかめないでいる。

 すでに最高級のブティックは日本を離れて上海に行ってしまうし、東京証券取引所はもはや資金の調達場所でも運用場所でもない。
不動産価格はミニバブルの時期をのぞけば、バブル崩壊後以降一貫して下落しているし、羽田はハブ空港としての機能を韓国の仁川空港に奪われている。
物流も日本の東京港を素通りしてしまうし、外国企業は上海やソウルやシンガポールに行ってしまった。

 20世紀の後半、世界で最も魅力のあった東京は、20世紀型都市としてはただただ地盤沈下をしていただけだ。

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テラさん撮影、山崎トリミング

 だから石原都知事がいくら東京にオリンピックを招聘しようとしても、世界の目から見たら東京で開催する理由がまったく見つからなかった。
何で、あんな魅力のない田舎の都市でオリンピックを開かなくてはならないの
20世紀型の産業と商業の街としては失格の烙印を押されてから久しい。

 今必要なのは過去からの決別であり、それも断固とした決別だ。
模索すべきは21世紀型の先端的な都市像であり、20世紀の街ではない。
だから二酸化炭素の排出量が世界で最も少ないクリーン都市を目指す今回の排出量取引は、東京再生の戦略として正しい選択だと思う。

 世界を見ると、現在までローカルな排出権取引 EU域内での工場相互間の取引と、 米国北部10州が実施している発電所を対象にした取引だけであり、今回石原都知事が導入する排出権取引は世界で3番目で、しかも工場だけでなくオフィスを対象にした本格的なものである。

 今まで工場のみを対象にしてきたのは、そこが省エネ効果を追求し易く、また排出量の把握もし易かったからだが、一方オフィスはまったく対象外であったことから、ほとんど二酸化炭素削減努力をしてこなかった。

 しかしオフィスの二酸化炭素排出量は全体の約20%を占めて、工場の半分規模であり決して無視できない。
今回の東京都が実施する排出権取引の対象工場やオフィスビルは全体で1400程度だそうだが、工場以外では東大本郷キャンパス8.7万トン日本空港ビル(羽田ビル7.7万トン東京ミッドタウン6.5万トンがベスト3だそうだ。

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テラさん撮影、山崎トリミング

 今回の目標は、この排出量を2014年までにオフィスの場合、8%削減しなければならず、もし削減ができなければトン当たり4500円で排出権を購入する仕組みだという。

注)ただし具体的設計は2011年に行うので、現在は想定の数字。

 この例でいくと、たとえば東大本郷キャンパスがまったく削減できなかったとすると、8.7万トン×8%=6960トンで、これは6960×4500円=31.3百万円になる。
東大本郷キャンパスは約31百万円で排出権を購入しなければならない。

 東京都としては、そうならないように工場もオフィスも削減に努力するはずだと想定しており、もし違約すれば団体名の公表と最大50万円の罰金を課すのだそうだ。

注)罰金50万円では企業やオフィスが削減努力をしないのではないかと危惧してしまうが、恥の文化の日本では団体名の公表のほうが恐ろしそうだ。

 今回東京都が導入した仕組みはキャップ・アンド・トレード方式と言って、これはEUやアメリカで導入された方式と同じである。

 まず最初に対象工場やオフィスの過去の二酸化炭素排出量を原油換算で求める。
この方式はかなり専門的で、電力消費量や燃料消費量、熱消費量等を計測し原油換算するのだが、1社(1オフィス)当たり専門の検証機関50万円の費用で請け負ってくれる。

 その後、この検証機関が毎年20万円の費用でチェックする仕組みで、さらに東京都が求めているチェック項目への回答で数百万円がかかる。
だから中小企業ではとても対応が出来ないので、今回は大手の工場とオフィスが対象になった。

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テラさん撮影、山崎トリミング

 このキャップ・アンド・トレード方式の最大の問題点は、キャップをどのように決めるかにかかっている。
全体の削減量を取り決め、それを個別の工場やオフィスに当てはめるのだが、過去に真面目に二酸化炭素削減を行ってきたオフィスとそうでないオフィスがあると、後者のほうが削減がはるかに容易になることだ。
今まで努力してきた正直者が馬鹿を見るのですか

 これは実際にEU域内の排出権取引で起こっており、東欧諸国が排出権の売り手になるのはもともと二酸化炭素削減努力など今までしたことがないからだ。

 鳩山政権もこうした取り組みを行おうとしているが、政府内部での対立が激しく日の目を見ておらず、東京都が先行した。
政府の取り組みはいつも遅い。東京は21世紀型都市のモデルを目指して、排出権取引を行う
石原都知事のこの決断は高く評価できる。
落ちぶれた東京の生き残る道は未来にしかない。

 石原都知事はおそらくこのクリーン東京のイメージを引っさげて再び東京オリンピック誘致に乗り出そうとしているのだと思うが、確かに東京が二酸化炭素の排出が世界で一番少なければ、選手は喜んで東京に集まることは間違いないだろう。

注)北京オリンピックではマラソンの第一人者ゲブレシラシエが喘息を理由に参加を取り止めた。

 
 

 

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(22.4.5) グアムが沖縄になってきた 普天間基地移設問題

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 4月3日の毎日新聞の記事には驚いた。グアムが沖縄と同じように、海兵隊の受け入れに反対しているのだと言う。

 グアムは沖縄の約半分の面積の島だが、30%が軍用地として接収されている。
ここにアンダーセン空軍基地アプラ港海軍基地というアメリカ屈指の基地がある。
私はグアムには基地問題などは存在せず、住民は米軍が駐留していることで基地経済が活性化して喜んでいるものだと思っていた。

 しかし実態は違うと言うのだ。
歴史をたどるとグアム1898年のスペインとの戦争で勝利したことにより、スペインから強奪したのだが、その後第二次世界大戦中約4年間日本軍に占領された。

 現在は準州として扱われ、グアム代表の下院議員は国会で投票権を持たず、住民は大統領選挙にも参加できない。メリットは税金をアメリカ本国に取られないで済むことだが、このあたりの住民感情は大変複雑なのだと言う。
俺たちは植民地の住民か?なぜ大統領を選べない
グアムの先住民で最大の人口を持つチャモロ人の心を苛立たせている。

注)グアムは人口20万人弱でこのうち約半数が先住民のチャモロ人。現在は知事が選出されているが、1968年以前は軍政だった。

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 現在問題になっているのは、2014年までに日米合意に基づき、約8000名の海兵隊がグアムに移転すると言う計画で、これに先立ち軍が行った環境アセスメントで新たな軍用地の徴用と28haに及ぶさんご礁の海の浚渫が必要だと発表された。

とんでもない。今でも島の面積の30%が軍用地なのに、それがさらに広がり、さんご礁の海がなくなれば観光客が来なくなってしまう
グアムは住民のほぼ60%が観光業に従事しており、観光資源が最も重要な資源となっている。

 当初グアム海兵隊8000名の受入に賛成したのは、軍用地の拡張やさんご礁の海が埋め立てられるとは思っていなかったことと、移転に伴い、不足していたインフラ整備が進むと思っていたからである。

日本が移転費用の約6割、6500億円相当を出してくれる。これによって汚水処理、発電施設整備、道路、橋梁の補修が一気に進み、グアムの住環境は格段に向上する

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 しかし計画が具体化するにしたがって日本からの拠出金は主として軍関係の住宅整備や港湾の整備に使われ、住民の生活向上にはほとんど回らないことが明らかになってきた。
なんということだ。得をするのは軍だけか!!」
たまらずカマチョ知事は「4年後の海兵隊8000人の移転期限の延長を求める」という声明を発表した。

注)米軍は軍事予算の削減で兵舎等の住環境の投資が十分できなくなっている。日本政府からふんだくる資金はすべて、不足している軍の福利厚生や軍施設の整備に当てようとしている。

 この問題をさらに複雑化させたのが普天間基地移設問題で、「海兵隊の移設だけでもこれだけ問題があるのに、さらに普天間基地のヘリコプター部隊の移設など、とても認められない」という雰囲気になってきた。

 社民党阿部政審会長は「グアムは普天間基地の移設に反対しているが移設費用4000億円をグアムに渡せば、グアム移転を了承するはずだ」とコメントしたが、そうは問屋がおろしそうにない。
移転費用が軍関係だけでなく民生にも回らなくてはカマチョ知事も賛成するわけにはいかないからだ。

日本政府が資金を上積みして民生費用まで出してくれれば考えてもいい」と言うのが偽らざる心情だ。

 しかし、グアムは日本領土ではない。軍の移転費用の他にグアムの民生費用まで面倒を見るのは、日本国民が納得しないだろう。
こうして日本国内だけでなくグアムの住民も普天間基地移設に反対し始めた。
鳩山総理は「腹案がある」と言ったが、実際はますます問題が複雑化している。

 おそらく鳩山総理の腹案とは、総理辞任しかないのではなかろうか。

  

 

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(22.4.4) コミュータ航空FDAは白馬の騎士か  静岡空港の苦悩

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 昨年6月に開港した静岡空港ほど地方空港の苦悩を表徴している空港はない。当初は09年3月に開港予定だったが、伐採されていない樹木が航空法の制限に抵触していることが分かり、この木を伐採するまでは、ILS(計器着陸装置)が使用できない不手際が発生し、開港を3ヶ月伸ばした。

 結果的には石川前知事が責任を取って辞任することと引き換えに樹木の伐採が行われ、ILS装置の使用ができることになったが、次に発生した問題はJAL福岡便への搭乗率保証問題だった。

 JALはこの静岡空港のメインフラッグで一日に、札幌便1、福岡便3が就航していた。
福岡便が3便なのは、静岡県の搭乗率保証があったからで、搭乗率が70%を下回った場合、1席に付き15、800円を県はJALに支払うことになっていた。

注)通常地方空港の場合は、地方空港間は1日1便であることが多い。3便と言うことは特別に便数が多い。

 県が搭乗率保証に応じたのは、計画では搭乗率が70%を下回ることは絶対にないと想定していたからである。
しかし実際は県の予想は過大予想だったこともあり、09年度の静岡空港全体の搭乗者は予想の5割以下になってしまった。
福岡便に限って言えば67%で、これに伴う搭乗率保証は約1億5千万円になる。
なんということだ。担当者は常に満席になると言っていたではないか」

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 さらに問題を複雑にしたのはJALに経営問題が発生し、不採算航空路からの撤退が表明され、この静岡空港からも撤退することになった。
なにしろ初年度の赤字が4億円で、いればいるほど赤字が増えてしまいます

注)事務所を構え、システム投資や人員配置をすると、日に4便(福岡3、札幌1)程度ではこのように赤字になってしまう。

 驚いたのは静岡県で、「搭乗率保証までしているのに、撤退はないだろう。ひどい信義則違反でとても1億5千万円は払えない川勝知事が怒りの会見をした。
静岡県にとってはメインの福岡航路がなくなり、しかも搭乗率保証まで取られるのだから踏んだり蹴ったりの状況になった。

 しかしJALは倒産会社だ。おいそれと静岡県の要望を聞くわけには行かない。ANAも赤字航路だから増便に応じない。

注)ANAは札幌と那覇に一日1便飛ばしている。

静岡県にとって幸いだったのは地元の企業がコミュータ航空会社を設立していたことだ。FDA(フジドリームエアラインズ)と言う。
こうなると静岡県として頼れるのは地元企業のコミュータ会社、FDAだけになってしまった。
FDAは地元の物流会社鈴与が設立したコミュータ航空で、静岡から小松(石川県)、熊本、鹿児島への3航路を就航させており、3機エンブラエル機で一日1往復している。

注)エンブラエル機とは76人乗りの小型ジェット機

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FDAさん、どうかJALの福岡便と札幌便を引き継いでくれませんか

知事、FDAとしては当初札幌や福岡便を飛ばしたかったのですが、ここはJALやANAに飛ばさせるので、FDAはコミュータ航空だから小松や熊本や鹿児島と言ったローカル路線が適当だろうと言われたのですよ

申し訳ない。まさかJALがこんなに早く倒産するとは思ってなかったので、判断を誤りました。どうか当初の話は水に流してこの路線を引き継いでくれませんか。特に福岡便には登場率保証が付いています

 この4月1日から、JALの代わりにFDAが運行を引き受けることになった。しかし問題は果たしてFDA白馬の騎士になれるかどうかにかかっている。

 静岡空港は全体で1900億円の総工費をかけて建設し、そのうち本体工事は490億円、国からの特別会計の補助が245億円だったから、静岡県は1655億円の工費をかけて建設したことになる。
当初の乗客予想は138万人で、09年度の実績は約60万人だった。

注)乗客予想が過大にでっち上げられるのはどこも同じだが、この予想数字を元にあらゆる設備が整備されるのでひどい過大投資になってしまう。

 川勝知事は今後毎年10万人ずつ乗客が増えて、5年後には空港会社は黒字化すると強気な読みをしているが、これはかなり怪しい
現行の60万人も、福岡便への約8000万円かけたツアー客への補助があって、かろうじて維持できた数字で、補助がなくなればすぐにツアー客が減少してしまう。

 さらに問題を複雑にしたのが、このJALの福岡便だけの優遇策に対し、ANAが尻をまくったことで、「なんでJALばかり優遇するんだ、ANAだって札幌と那覇に1日1便飛ばしている。わが社も経営的に苦しんでいるので搭乗率保証をしてくれなければ撤退する」と言い出した。

注)09年度はANAの沖縄便の着陸料を減免することで矛を収めてもらった。

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 なんてことはない、あらゆる航空会社が福岡便と同じ搭乗率保証がなくては飛行機を飛ばさないと言い出して、静岡県は今後どこまで負担が増えるかわからなくなってきた。
さらにバス会社に静岡空港までの路線開設を依頼したが、赤字になったら相当部分の赤字補填をバス会社に約束している。

注)他に国際便として、アシアナ航空、大韓航空のソウル便がそれぞれ一日1往復、中国東方航空が週に2~4便飛ばしている

 結局静岡県は1655億円の費用をかけて、国内・国外の赤字路線を就航させ、その赤字部分の補填を航空会社に約束することでかろうじて飛行機を飛ばすことになりそうだ。
わが県は立派な飛行場がある。ただし飛んでいるのは真っ赤な赤字鳥だ

 これが静岡空港の実情で、県のツアー補助8000万円や宣伝活動6000万円(一種の販促費がなくなれば乗客数は減少し、したがって搭乗率保証だけが拡大する構造だ。

 FDA白馬の騎士にする静岡県の戦略は、失敗を少し先延ばしするだけの結果に終わるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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(22.4.3) セキュリティー対策がいま一つ分からない

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 セキュリティー対策がいま一つよく分からない。一番分からないのはウィンドウズはそれ自体でセキュリティー対策を講じているのに、さらになぜウィルスバスターのような総合的対策ソフトが必要かということだ。

 私のメインパソコンはOSはXPを使用しているが、Windows Updateで配信される「重要な更新プログラム」を自動でインストールしているので、ウィンドウズのセキュリティーホールはふさがれている

 さらにInternet Explorer(IE)は最新のIE8を使用しているのだから、IE6IE7より格段にセキュリティーが強化され、ブラウザソフトも問題ないはずだ。
それなのにさらになぜ総合セキュリティーソフトのウィルスバスターが必要なのだろうか。

 不正アクセスのブロックや迷惑メール対策やフィッシング詐欺対策についても、ウィンドウズIE8が十分しているのではないかと私は思っているのだが、それは間違いなのだろうか。

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 私がこのような悩みを持っているのは、ウィルスバスター非常に重たいソフトだからである。このウィルスバスターが動き出すとブログの更新も、メールもほとんど動かなくなって、その間いらいらしながら待っていなければならない。

 私のウィルスバスターの設定は、一日1回はすべてのファイルを検索して問題が起こってないかチェックさせているのだが(ただし自分が設定した記憶がないので初期値の設定と思われる)、それが昼間の12時から1時の間に実施される。

 夢中でブログを書いていて、急に動きが緩慢になると12時になっていて件のウィルスバスターが動き出している。こうなると仕方ないので「ウィルスバスター殿、見回り、ご苦労さまです」と言って、昼間のJOGに出かけるのが日課となってしまった。

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 私はこのウィルスバスターの1日1回のチェックは必要なのだろうと思って我慢しているのだが、果たして本当に必要なのだろうか。
特にウィンドウズブラウザソフトが自身でセキュリティー対策を強化しているのだから、総合セキュリティーソフトはもういらないのではなかろうか?
必要と思わせてるのは総合セキュリティー対策メーカーの陰謀なのではなかろうか?

 そう疑っているのだが、確信がない。どなたかこのセキュリティーソフトについて知悉している方がおられれば、教えていただけるとありがたいのだが。

 

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(22.4.2) 風雲急を告げだした世界経済 鉄鉱石価格の急上昇

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 再び世界経済が風雲急を告げている。鉄鉱石価格の上昇が止まらず、09年に比較し、本年度は約2倍の価格になってきた。
あのリーマンショック直前のような価格の上昇だ。

 鉄鉱石価格上昇には2つの要因がある。
一つは供給者側が寡占体制をひいていて、ブラジルのヴァーレ、豪英系のBHPビリトンリオ・テントの3社で世界市場の約70%を占有している。
この3社が共同して価格アップを図っているので、供給者側の価格形成力はとてつもなく大きい。

 もう一つは投機スポット価格が急上昇しているが、この市場には実需以外の投機資金が大量に流れ込んでいる。
ちょうどリーマンショック以前のあの金余りの状態と酷似しており、当時はトン当たり20ドル前後だった価格が77ドルまで上昇したが、今回はリーマンショック後一旦55ドルまで下がった価格が、100ドルまで上昇することになった。

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 今回大手のヴァーレ新日鉄に要請してきた内容は、鉄鉱石価格をこのスポット価格に合わせて、年4回改定しようと言うことで、これは従来の年1回改定で必ずしもスポット価格とは連動しなかった価格決定方式とはまったく異なる。

 新日鉄としてはこうした新しい価格決定方式に反対しているが、暫定的な措置として10年4月~6月までは、スポット価格を反映したトン当たり100ドルで購入するところまで追い込まれた。
供給者側は自らの価格形成力に絶対の自信を持っている。

 それにしてもひどい話だ。先進国経済は一頃の最悪期を脱したと言っても、10年度の景気回復は遅々としたもので、日本などはほとんど実需が盛り上がっていない。
中国・インド・ブラジルと言った新興国経済は順調だが、それでも鉄鉱石価格を二倍にするほどの実需があるわけではない。

 現在各国が行っている金融緩和の資金がこうしたコモディティ市場に流れて、原材料価格を押し上げている。
最も問題なのはこの日本で、日銀が新型オペと称して0.1%の資金を約20兆円市場にばら撒いたが、国内にほとんど資金需要がないため、この20兆円がコモディティ市場に流れ込み、価格を上昇させている。

 日本は外国の資源を高騰させるために金融緩和策を実施しているようなものだ。
さすがに各国は鉄鉱石、、石炭、石油、金や不動価格の上昇に危機感を持って金融緩和策の転換を図り始めたが、信じられないことに日本だけがジャブジャブの資金供給を拡大した

注)日本には約30兆円のデフレギャップがあると言われ、このギャップを埋めるために日銀が20兆円の資金供給をしている。しかしその資金は国内に留まらず海外の投機資金として使われている。

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 日銀は自分が行っている金融緩和がまったく日本経済のためにならないことを知っているが、亀井金融・郵政担当相から「日銀の国債直接引受け」を強要されるよりはましだと、この新型オペなる方策を行っている。
日銀もこのデフレ克服のためにがんばっております

 しかしその結果がリーマンショック前とまったく同じ、鉄鉱石・石炭・石油・金等の価格の急上昇なのだから、世界経済にとっても日本国民にとっても迷惑なことだ。
日本においてはデフレギャップを縮小する手段は、需要の拡大ではなく供給の縮小が必要なのだが、亀井金融・郵政担当相は金融緩和と財政拡大に邁進している。

日銀は文句を言わず、金を出せ」亀井氏の怒号が聞こえるが、この政策は日本と世界に不幸をもたらすだけだ。

注1)リーマンショック後の最安値から、鉄鉱石が約2倍、石炭が約50%、石油が約2倍、金が約45%上昇している。穀物価格はまだ上昇していないが今後急上昇する可能性がある。

注2)こうしたコモディティ価格が再び下落するのは、日銀が金融緩和をやめるときである。しかし市場は日銀のスタンスは相当の期間金融緩和を継続させると読んで、強気な投機戦略を展開している。

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(22.4.1) 地方空港は死屍累々 再生の道はあるか 

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 なぜこれほどひどい状態になってしまったのだろうか。日本の地方空港の現状についてである。
調べてみるとほぼ9割の空港が赤字で、黒字転換のめどが立っていない。

 日本には現在97の空港が存在しているが、そのうち会社組織になっているのが空港、が管理しているのが26空港、自治体管理が54空港、その他が14空港となっている。

 このうちで空港会社の決算が明確に分かるのは会社組織の3社成田、関西、中部)だけで、国が管理している空港は空港整備特別会計で26空港のどんぶり勘定であり、自治体管理の空港はその自治体の会計とのどんぶり勘定になっている。

 このため今までは会社組織以外の空港会社が儲かっているのか損をしているのか、さっぱり分からなかったというのが実情であり、そもそも儲けるとか儲けないとかの対象外の公的施設との意識が強かった。

 しかも空港整備の特別勘定毎年5000億程度あったため、国交省は各都道府県に1空港を作らすために躍起となっていた。

金はいくらでもある。飛行機が飛ぼうが飛ぶまいが飛行場を作ろう。後は天下りだ
それが掛け声になって全国各地に地方空港が乱立してしまった。

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 そもそもなぜ国管理の空港と自治体管理の空港ができたかと言えば、国管理の空港が必要性に迫られて国が空港を整備してきたのに対し、自治体管理の空港は不必要だが、自治体の見栄で作ったからである。
隣の県には空港があるのにわが県にはない。これでは県民が納得しない。管理は自治体でするから作ってくれ

注)国管理の空港は羽田、伊丹、新千歳、福岡、那覇という拠点空港と、北海道や九州のように鉄道よりも航空路のほうがはるかに利便性が高い場所に建設され、必要性の原則で作られたことが分かる。

 一方自治体管理の空港は最近できた茨城や静岡のように、大都市の近辺にできており、必要性よりも特別会計に予算が余って、かつ自治体が作りたがったから作ったと言う空港が多い

 最近までは国管理の空港では、空港会社ごとの決算が不明であったがさすがに政府もこれではダメだと気が付いて、昨年から26空港を対象に、収支の試算をすることにした。

 この試算は4種類の試算があり、今回は6年度を対象に実施したが、通常の企業会計ベースで試算したところ、黒字は6空港、最も厳しい試算では黒字は伊丹、新千歳、熊本、鹿児島の4空港になってしまった。

 この中で羽田が赤字なのは以外だが、再拡張工事の整備費、原価償却費、支払い利息が多いためであり、また那覇は着陸料が安く設定されており、福岡は都市周辺にあって地代が高いため赤字だと言う。

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 これでようやく国管理の空港の収支の一端は分かってきたのだが、一方自治体管理の空港の収支はまったく不明の状態が続いている
思い余って毎日新聞がアンケート調査で54空港の収支の試算を行った。

注)収入を、着陸料等の収入+土地建物の賃貸料収入、支出を維持管理費(人件費+物件費)として計算したもの。減価償却費は入っていない。

 これによると黒字なのは秋田、富山、神戸、石垣の4空港、残りの50空港はすべて赤字となった。
なんだ、調べてみたらほとんどが赤字じゃないか」毎日新聞も驚いた。

注)公共工事として飛行場を整備してきたため、ダムや道路や港湾と同じように建設会社と官庁の天下りのために飛行場を作ってきている。したがって始めから収支をまかなおうとの意識はない。

 空港会社の収支が赤字になるのにはいくつかの理由があるが、最も大きな理由は乗客数を過大に推定して、その過大な乗客数にあわせて施設や人員を配置しているからである。
08年の実績で見ると、乗客数の実績が予測を上回っていたのは8空港だけで、残りの89空港はすべて実績を下回っていた。

注)中でも紋別、石見、奥尻、広島西、松本空港は予測の20%にも届かず、就航している航空会社は折あらば撤退しようと機会を狙っている。

 私は当初、乗客予測はまったくのでたらめ数字を積み上げただけだと思っていたが、必ずしもそうでないことを知った。
需要予測モデルに使用される数値の中で最も重要なのはGDPの伸び率であるが、これは政府見通しを採用している。
ところがこの見通しは政策目標として設定されたものであり、意図的に高めに設定されている。

  たとえば2005年の国交省の航空需要予測では、2006年から2012年までの名目ベースのGDPの伸び率を年平均1.8%と想定しているが、実際は06年 0.9%、07年 1.8%、08年 ▲1.7%、09年 ▲5.5%となり、06年547兆円から09年527兆円GDPは20兆円も縮小してしている。

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これは花牟礼さんの四季の道の葦ペン画です)

 要するにこの間はGDPマイナスかよくてゼロベースになる可能性が強い。
そしてこのありもしない数字を基に、さらに意図的に乗客数を膨らませるので途方もない数字ができてしまう。

担当者茨城空港は飛行機は飛ばなくても81万人の乗客が見込めます
知事君、いくらなんでも飛行機が飛ばなければ乗客は増えないのではないか
担当者いえ、政府の需要予測を使用する限り、飛行機が飛ぼうが飛ぶまいが絶対に乗客は増えることになります。お疑いであれば政府に問い合わせてください

 こうして90%余りの赤字空港が乱立してしまった。
さてこのような赤字を垂れ流している空港は再生が可能なのだろうか。
まず最初にすることはどのように経営しても赤字脱却が不可能な空港と、そうでない空港を分類して、脱却不可能は空港はすぐに閉鎖をすることである。

 たとえば紋別、石見、広島西、松本の各空港や最近できた茨城静岡は閉鎖対象になる。
こうした空港は黒字に転換することは絶対に不可能なのだから、できるだけ早急に閉鎖することが望ましい。
そしてその空港の跡地利用を真剣に考える段階にきている。

注)空港の跡地は広大な敷地が更地であるのだから、東京の立川基地跡地のように使用方法はいくらでも考えられる。
最も魅力的なのは21世紀型エコ住宅環境の実験場にすることで、その場所では二酸化炭素の排出量をゼロにする諸政策(エコ住宅、エコカー、自転車と人主体の道路網、二酸化炭素を吸収する公園、最高速度のインターネット網等)を整備し、世界に21世紀のモデル都市をつくって見せることである。

 

 

  

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