(22.4.8) 水資源は誰のものか メコン川流域
(エコさん撮影 山崎編集)
どうやら21世紀の大きな課題として水資源問題があることが徐々に明らかになってきた。
その典型的な例としてメコン川があり、現在メコン川が異常な渇水に見舞われている。
私がこのことを知ったのはNHKのニュースでだが、メコン川で漁業を営んでいる漁民が「今年のメコン川の水量は例年の半分ほどで、ほとんど魚が採れない」と訴えている画像だった。
メコン川はチベット高原の奥地が源で中国の雲南省、ミャンマー・ラオスの国境、タイ・ラオスの国境を通り、カンボジアを抜けて、最後にベトナムから南シナ海にそそぐ総延長4800kmの大河である。
典型的な国際河川であり、利害が微妙に錯綜する。
元々は大河の恵みを十分に受けて、雨季乾季の水量の差あるものの、沿岸住民は水資源の不足など考えたこともなかった。
しかし今年は30年来の渇水になってしまい飲み水や農業用水に事欠くことになった。
(エコさん撮影 山崎編集)
たまらずメコン川下流域のタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの4カ国首脳が集まり、流域4カ国会議を開いた。
下流域の一致した見方は「上流に中国が築いたダム群によって、下流域に水が流れなくなったから」で、中国に集団でクレームをつけようとしたのだが、オブザーバーとして出席した中国の宋外務次官の主張はまったく異なるものだった。
「渇水の原因はメコン川流域が史上まれに見る旱魃に見舞われたのが原因で、中国も深刻な旱魃被害に悩まされている」と言う。
まったくの濡れ衣だとの反論である。
中国の圧力に気おされて、中国非難は引っ込んでしまい、みんなで努力をしようというわけの分からない結論になった。
確かに中国の言うように中国西南部の雲南省を中心にひどい旱魃で、2000万人が飲料水にも事欠く有様で、中国政府は500億円規模の渇水対策を実施している。
注)約2万の井戸を掘り、2万キロの臨時水道管を敷設した。
だから中国南西部からタイ北部にかけて広がっている旱魃が第一の原因なのは確かだが、中国が上流部にダムを建設し、特に堤高世界一と言われる小湾ダムが建設されてから一気にメコン川の水量が低下したのも確かだ。
上流部に建設したダムから中国は渇水対策として飲料水や農業用水を大量に使用している。
注)正確に言うと小湾ダムは完全に完成されたわけでなく、水の溜め込みを開始した段階。
なぜこれほどまでの異常気象がこの地域で発生したのかは明確でないが、地球全体で温暖化が進み、その結果雲南省を中心とする中国内陸部が砂漠化しているようだ。
日本でも集中豪雨が凶暴化し、また私の住んでいる千葉では低気圧が通過するたびに信じられないような突風が吹き、3月は例年に比べて異常に雨の多い月だった。
(エコさん撮影 山崎編集)
日本では川の管理は所詮国内の問題だが、大陸では違う。メコン川は典型的国際河川なので、水管理は国際問題になる。
現在はこの異常気象に対し、強国中国が豊富な資金で水を独り占めしている構図で一方小国ラオスやカンボジアという国はただ泣きを見ているだけだ。
特にカンボジアとベトナムは農業用水をメコン川に頼ってきただけに被害が深刻だが、この地域には日本に代わり中国からの資金援助や投資が増加しているだけに中国に対し強硬手段がとれない。
かくして石油や鉄鉱石や石炭と同様に水も重要な資源となってきて、誰がこの水資源を独占するかの戦いになってきた。
メコン川に関して言えば中国の一人勝ちだ。
最近日本では水ビジネスの話が脚光を浴びており、水道局と企業が手を携えて水ビジネスに乗り出そうとしていると報道されていた。
水ビジネスは確かに魅力的なビジネスだが、こうした国際河川をめぐるパワーゲームが存在し、単に技術の移転の問題ではないことを視野にいれた対応が必要だろう。
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- (22.4.8) 水資源は誰のものか メコン川流域(2010.04.08)
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コメント
メコン川は上流の中国のダムにより渇水が起こっています
『奪われる日本の森 外資が水資源を狙っている』(平野秀樹、安田喜憲著、新潮社)には、空恐ろしい実態が報告されている。日本の森林資源が大量に取引されており、その面積は過去10年間でほぼ倍増、特にここ3年の取引の拡大は著しいという。都道府県別で最も取引面積が多いのが、北海道、宮崎、福島、熊本だそうだ。
以上櫻井よしこ氏2010.4.17プログより
日本の水資源も外資が狙っています。
(山崎) 21世紀に最も枯渇する資源が、水資源らしいと最近気づきました。この問題はとても興味があります。
投稿: ささき | 2010年4月30日 (金) 20時59分