(22.4.7) 中国の刑法と死刑執行 覚せい剤密輸事件
(テラさん撮影 山崎編集)
覚せい剤を日本に大量に密輸しようとした日本人の死刑執行を行うと中国政府が通告してきたことで、鳩山首相、管副総理が中国政府に「懸念」を表明したが、なぜそのようなことをするかさっぱり分からなかった。
私などはまったく「懸念」しなかったからだ。
中国政府が法律に基づき死刑を執行することに日本がとやかく言う筋合いではない。反対に「日本の法律と相違しているので、日本の刑法に基づき裁け」と言う方が問題で、そんなことを言い始めたら国家の主権問題になってしまう。
今回覚せい剤密輸の罪で死刑が執行される赤野死刑囚は、大連空港で覚せい剤2.5kgを保持しているところを大連警察に見つかり逮捕起訴された。
注)正確に言うと赤野死刑囚が1.5kg、一緒にいた石田受刑囚(懲役15年)が1kg保持していた。なお、赤野死刑囚の刑は6日に実施された。
中国の刑法では「覚せい剤50g以上の密輸で懲役15年か無期懲役、または死刑」になるのだが、この量刑の違いは密輸しようとした量による。
だいたい1kg以上の密輸では死刑になる場合が多く、赤野死刑囚と石田受刑囚との量刑の相違はそこから来ている。
注)正確に言うと密輸を含め、保持していることが犯罪になる。
(テラさん撮影 山崎編集)
日本においては殺人事件以外で死刑が執行されることはほとんどないが、中国では麻薬の取引や汚職でも死刑が執行される。
麻薬取引が蔓延し、かつ汚職天国であるためで、厳罰で臨まなければこうした犯罪を防止できない。
これは中国のお家の事情だ。
管副総理が「やや日本の基準より罰則が厳しい」と言ったが、温家宝首相は「中国の法律に基づいての処理で、多くの人の命を危険にさらす重大な犯罪だ」と反論した。
これは公平に見て温家宝首相の言い分が正しい。
中国官憲の努力で、日本に大量の覚せい剤が持ち込まれないで済んだのだから、本当は日本は中国に感謝しなければならない立場だ。
中国の裁判は2審制であり、地裁で死刑判決を受け、その後09年4月に高裁で死刑が確定した。
赤野死刑囚の控訴時の申し立ては、
① 通訳の能力が低く、自分の立場を正確に伝えられなかったこと。それゆえ供述調書を証拠とできないこと、
② 自分は主犯格でなく、単なる運び屋であること、
③ 覚せい剤は押収されたので、実質的な害悪が発生していないこと、だったが高裁ではそうした理由はすべて却下された。
①については確かに問題があって、日本でも外国人の犯罪で言葉の壁がしばしば発生している。
②は中国の刑法の運用では覚せい剤の量が問題で、主犯かそうでないかは考慮されないので却下は当然だろう。
③はまったく反論になっていない。
①以外は控訴理由にはならない。
(テラさん撮影 山崎編集)
鳩山首相や管副総裁の言う「懸念」なるものが何なのか、私にはさっぱり理解できないが、今回も人権団体アムネスティが死刑判決は人権問題だといつものように言って中国大使館前で抗議集会を開いていた。
しかし赤野死刑囚は中国の法律に従って裁判にかけられ、死刑が確定したのだから、私だったら「まったく何も言うことはありません。これは中国の国内問題です」と言う。
繰り返すようだが、刑法の罰則規定はそれぞれの国の主権の問題で他国が口を挟むような問題ではない。
注)事件が発覚したのは06年9月だが、この覚せい剤は北朝鮮で生産されたものと思われる。従来北朝鮮の覚せい剤は北朝鮮の貨物船が日本の沿岸まで運び、暴力団関係者の小型船に渡していたが、日本の沿岸警備が強化されてこの方法が使えなくなった。
そのため北朝鮮は中国経由で覚せい剤を日本に密輸するルートに変更したが、こうした事情を中国当局は把握していたため、大連空港で運び屋を補足した。
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