(22.4.26) トヨタをつぶさなければGMとクライスラーの明日はない オバマ政権の戦略
オバマ政権のトヨタつぶしは執拗に続けられている。
今度は米消費者情報誌がスポーツタイプの多目的車(SUV)が横転の危険性があると指摘し、トヨタは3万4千台のリコールを発表した。
電子制御による車両安定装置(VSC)で制御できない場合があると判明したのだが、確かにそうした事例はあるとは思うが、ならば今までと同じように機械式で制御していたとしても同じような問題があったはずだ。
さらに言えばVSCを装備している自動車はみな同じ問題を抱えているのに、なぜトヨタ車だけが標的になるのかが問題で、オバマ政権があらゆる組織とメディアを動員して言いがかりをつけ、トヨタつぶしを行っているからである。
なぜトヨタをつぶさなければならないか。
GMとクライスラーを再生させるためには、全米で最も人気があり、性能抜群と思われていたトヨタ車をつぶさない限り、GMもクライスラーもただ安楽死を待つだけだからだ。
実は7兆円あまりの政府資金を投入してGMとクライスラーを国有化したものの、この企業が再生の軌道に乗らない。
国有化したGMの経営は友達のロビーイストに、クライスラーは自動車労組UAWの幹部に任せたが素人経営で一向に経営は上向かない。
自動車労組UAWはオバマ政権の金づるで大統領選挙のときは約4億5千万円の政治献金をしている。
「何とかしてくれ、経営が立ち行かない」オバマ政権に泣きついた。
注)オバマ陣営は選挙期間中、草の根献金で50ドル、100ドルの小口献金を集めて戦ったと宣伝したが、実際はUAWやGMやGSやGEから多額の献金を得ていた。
昨年の夏場には燃料効率のいい車に乗り換えれば30万から40万円の政府援助をしてみたが、実際に売れるのは日本車を中心とする効率のいい車ばかりだった。乗り換えによる支援は失敗した。
オバマ政権内部で戦略会議が開かれた。
「このままではGMもクライスラーも自然消滅してしまう。UAWの組合員は四散し、アメリカから製造業が無くなってしまう。どうしたらよいものだろうか・・」
「大統領、トヨタがある限りアメリカの車は売れません。この際トヨタをアメリカから駆逐しましょう」
「しかし、どうやったらそれができる。どう見てもトヨタの車の性能は世界一だ」
「大統領、心配には及びません。たたけばどこでも埃は出ます。幸いに09年8月にカリフォルニアでレクサスが事故を起こしています。これを最大限に利用しましょう。必ずトヨタをアメリカから追い出して見せます」
アメリカはトヨタを米国市場から放逐しようとしているが、これはGMとクライスラーの経営が立ちなおるまで続く。
元々アメリカ車は燃料効率が悪い上に、HVやEVといった次世代自動車の開発にも遅れを取っている。そのうえGMもクライスラーも素人経営で、UAWは自己の権利の保身だけが目的だ。
だからGMもクライスラーも、どうやってもトヨタに勝てない。あとはアメリカ政府の戦略でアメリカ企業を守るだけだ。
こうしてトヨタはひどい濡れ衣を着せられ、今後も集団訴訟の悪夢に耐えなければならなくなった。
唯一の光明はトヨタのアメリカ従業員が約20万人いることで、トヨタはアメリカと日本のハーフになっている。
だから完全な日本たたきにならないのが救いだ。
これからトヨタはどうしたら生き残ることができるだろうか。一つの方策としてはUAWと同様にオバマ政権に多額の献金をして取り入ることがある。
中国政府のような媚薬戦略だが、郷に行っては郷に従うのも止む終えない。
アメリカは政治献金がすべてであり、そうした金銭政治の世界では戦略を駆使しないと生き残ることができない。
注)従来トヨタを含む外国車はブッシュ政権との関係が深かった(それなりの献金があったはずだ)。ブッシュ政権は自由市場での競争を支持していたからである。一方民主党は国内自動車産業とUAWを基盤としている。
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コメント
私は、何時もこの手の問題が発生すると日本政府(通産省)に疑問がある。
アメリカ製品に同様な問題が出てきた場合(狂牛病など)直ぐに、商務省や食肉団体が出てきて、良い悪いは別としてサポートする。
だが、今回の様に、日本を代表するの国際企業が意図的に窮地に、追い込まれても、通産省や、一般社団法人 日本自動車工業会などは、全面的にサポートしない。 何の為の組織か?
ある意味今回は、不当なロビー活動を利用した、経済戦争なので、防衛の為の措置を取るべきでは?
(戦争推進派では有りません 念のため!)
外資系、日本企業両企業での職務経験から、この手の問題発生時の両国 (商務省 US と通産省 日)の対応は余りにも、日本は無力・無責任ですね。
企業戦士は、援護なしで、必死の思いで、何十年も掛け開拓した市場を、この様な形で失う事は、国益にも反している様に思えます。
通産省や日本政府にもっとしっかりして欲しいですね。
T
(山崎)どこの国家も自国の産業を守ったり守り立てることに懸命ですが、日本政府は例外的にそうした行動をとることに消極的です。
本来なら通商産業省が矢面に立って交渉すべきなのですが、まったくトヨタを見捨てたような対応です。
(戦略的な対応としてはアメリカ製品、たとえばボーイングに難癖をつけるのが有効なのですが、日本人の性格としてそうした悪巧みをしません)
投稿: T | 2010年4月26日 (月) 09時51分