(22.4.21) 文学入門 子どもたちへの文学案内 河村義人 その2
前回(18日)、河村義人さんの「文学案内」の解説を書いたが、これはその続きである。
それと言うのもこの本は10章、255ページからなる本で今回の読書会の対象はそのうちの4章までだった。
前回の解説は2章までで、後2章残ってしまった。通常はそれでも支障はないのだが今回は私がレポーターだ。サボるわけにはいかないので、残りの2章の解説を記載する。
第3章は「人生の華・ロマンス」で河村さんによると「本物よりロマンチック」だと言う。
もっともこれには有力な反論もあって、「何でも見てやろう」の作者、小田実さんは「恋愛は論じるもんやのうて、するもんや」と言っているし、私も小田さんの説に同意する。
しかし河村さんはまれに見るロマンチストだ。タゴールの詩を「香り立つ、高貴なロマンチシズム」として紹介してくれた。
「おのれの香気に狂って・・・・
おのれの香気に狂って森の樹下闇(このしたやみ)を走る麝香鹿(じゃこうじか)のように私も走る。
夜は五月の半ばの夜、微風は南の微風である。・・・・・・・・・・・」
このタゴールの詩は相当長く延々と続くのだが、私のように精神が干からびた者が読むと、何とも甘ったるいだけの詩だと思ってしまう。
ロマンチシズムは、まだ恋が成就したことのない「焦がれるような気持ち」の若者向けか、河村さんのように年をとってもみずみずしい青年の気持ちを保持している人向けらしい。
またタゴールを始め外国人の詩や小説は日本語に訳さなくてはならないので、訳者の力量に負うところが多いと言う。
特に詩はリズムと言うものがあり、日本語のリズムにぴったりとあわせるのには訳者も作者と同じような詩に対するセンスが必要になってくる。
河村さんは「ロマンスの名作の名訳」としてドーテの「星」を紹介してくれた。
この「星」を訳したのは村上菊一郎さんだが、「この訳が一番好き」なのだという。
この「星」は詩と小説の中間のような作品だが、内容は貧しい羊飼いの青年の話である。
この青年は人里はなれた山奥で一人で羊の世話をしているのだが、2週間に1回ふもとの村から食料を届けてくれる。
通常はノラードおばさんが届けてくれるのだが、この日はおばさんが休暇で、農場主のお嬢さん、ステファネットだった。
この青年はこのお嬢さんに強い思慕の念を持っていたが、身分が違いすぎてそうした気持ち打ち明けることはできない。
すぐにお嬢さんは食料を届けると帰途につくのだが、途中で夕立にあって川が増水し家に帰れなくなり、再びびしょぬれでこの青年の小屋に戻ってきた。
青年はその夜小屋にお嬢さんを泊めて、自分は星空の元で寝るのだが、お嬢さんも寝付かれず外に出てきた。そして二人で夜空の「星」を見ながら語り合い、そのうちにお嬢さんが青年の肩にもたれかかりながら寝てしまうと言う物語だ。
「・・・二人の回りでは、星が大勢の羊の群れのように黙々と歩み続けていたのです。そうしてときどき、私は、これらの星の中で一番きれいな、一番輝かしい一つの星が、道に迷って、私の肩に止まりにきて眠っているのだと想像したりするのでした・・・」
河村さんはやはり相当なロマンチストだと私は思う。
第4章は「悲しみの結晶」で「愛する者の死」を扱っている。
一般に死は悲しいものだが、それを芸術の域にまで昇華させた作品を紹介してくれた。
宮沢賢治の妹の死を悼んだ「松の針」という詩が紹介されている。妹は25歳の若さで結核で夭折した。
「・・・・ああけふのうちにとおくにさすらおうとするいもうとよ ほんとうにおまえはたったひとりでいけるのか わたしにいっしょに行けとたのんでくれ ないてわたしにそう言ってくれ・・・・」
この章の最後の作品は山上憶良の「子どもの死」にたいする「親の悲しみ」を歌った歌だった。
「瓜食めば子ども思ほゆ 栗食めば ましてしのばゆ いずくより 来たりしものぞ まなかいに もとなかかりて 安寝しなさぬ
しろがねも くがねのたまも なにせむに まされる宝 子にしかめやも」
私はこの歌を昔から知っていたが、これが子を失った親の歌だとは知らなかったので驚いてしまった。
親の子どもに対する愛情を歌った歌だったと思っていたからである。
注)これは教科書に載っていたのだが、子どもの死を悼む歌との解説はなかったように思う。
河村さんのこの「文学案内」は採用されている俳句や短歌や詩や小説を読むだけでもためになる。
自らも万年文学青年を自称する河村さんが、四十数年間の人生の中でであった、珠玉の名作を紹介してくれているからだ。
私のように相当精神が干からびたものでも参考になるのだから、子どもには無理でも若者には大いに参考になりそうだ。
注1)なお、河村さんの「子どもたちへの文学案内」はアマゾン等でも購入は可能ですが、おゆみ野在住の人であれば、このブログのメール機能で私宛連絡いただければ、河村さんにメールを転送いたします(河村さんのところに在庫があります)。
注2)なお読書会は本日(21日)、1時から緑図書館集会室(地下一階にあります)で行います。参加は自由ですので時間のある方は覗いてみてください。
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