(22.4.19) 中国の不動産バブルはどこまで拡大するか?
(マッスルさん撮影 山崎編集)
バブルは破裂するまでそれがバブルであることが分からない。日本の不動産バブルもアメリカのサブプライムローンバブルもそれが破裂するまでは誰もバブルとは思わなかった。
現在中国で発生している不動産バブルについても同じことが言える。
中国の第一四半期(10年1月~3月)のGDP伸び率が対前年比11.9%になったとの報道が一斉になされている。
「中国の一人勝ち」と言う文字がおどり、確かにEUもアメリカも日本もかろうじてプラスの状況に比較すれば驚異的な数字だ。
世界は中国一国でもっているような報道だ。
しかしその中身を見ると不動産投資を中心とする固定資産投資が26%も伸び、特に都市部での不動産投資の伸び率は上海で約35%と突出している。
今回のGDP伸び率の主要部分が不動産投資であることが分かる。
(マッスルさん撮影 山崎編集)
もっとも中国のGDP統計は推定部分が多く、正確さが保証されていない。たとえば中国のGDPは翌月の半ばには第1次速報値が発表されるが、日本のGDPの発表はその1ヵ月後である。
日本ではそこまで時間をかけて推計しても、常に間違っているのだから中国の推計がかなり大雑把なものだと言うことが分かる。
注)元々GDPの計測には推計数字が使用されるが、中国の場合は国営企業や中国に進出している大企業、政府支出、金融機関貸出等の一部の資料で大胆に推計している。
また数字そのものが地区共産党の評価につながるため、常にバイアスがかかる傾向にある。
ただし、傾向値は分かるので、他の確実な貿易統計や外貨準備高の推移等とチェックすれば大体の動きはつかめる。
GDP統計に疑問があるものの、中国で不動産バブルが発生していることは確かだ。その最大の原因は、中央銀行からの大量の資金供給で、10年の第一四半期にも2.5兆元(約33兆円)規模の資金が市中に流れている。
注)09年1年間で市場に流れた資金は約135兆円規模と言われている。
この数字は09年第一四半期の4.6兆元(60兆円)よりははるかに少ないが、日本の日銀が行っている金融緩和が約半年で20兆円だから、それをはるかに上回っている。
日本と中国のGDPはほぼ同じなので、この金融緩和策はジャブジャブの緩和と言っていい。
「何でもいいから金を借りろ。好き勝手につかっていい」
(マッスルさん撮影 山崎編集)
問題はこうした資金が開発ディベロパー等に流れ、たとえばこの資金を元に上海では地区政府から土地の使用権を購入し、マンション建設が盛んに行われている。
注)上海中心から約20kmの場所にある、新紅湾城では中建地産と言うディベロパーが約11haの土地の使用権を購入し、そこにマンションを建設しようとしている。
そのマンション価格は1㎡あたり68万円と、日本並みの価格(都心部90万、都下は50万程度だからその中間の価格)になると推測されている。
こうしたマンション建設が果たしてバブルなのか実需なのかと言うことになるが、当然のことに中国当局は実需と主張し、海外の投資家はバブルと怪しんでいる。
中国ではかつての日本の様に住宅事情がよくないことは確かなので、実需部分もあるが、相当部分はバブルと言うのが実態だろう。
なにしろ上海では市民の平均年収の約60倍だと言うのだから、投機目的以外の購入は不可能だ。
注)日本では住宅資金は年収の6倍程度が適切とされ、多くても10倍程度だったのと比べるとべらぼうだ。
一体この状態はいつまで続くのだろうか。
この中国の不動産バブルがはじけるのは中国政府が金融機関を通しての資金供給を絞ったときである。日本でもバブル真っ最中に政府や日銀が土地資金の規正に乗り出し、窓口指導を行うようになってから土地バブルが崩壊した。
現在中国の中央銀行が土地資金融資に消極的になっているが、それでも市中には今までばら撒いた資金が豊富に滞留し、また中央銀行の引締めも本気ではない。
バブル崩壊よりも景気後退を恐れているからだ。
従って当面はまだバブルがはじけることはないと見てよさそうだが、ユーフォリアはいつか終わることだけは確かだ。
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コメント
中国は、完全に日本のバブル経済の頃と同様の様相ですね!
今まで、噂されてきた、万博終了後1年以内のバブル崩壊を予想する経済学者も出てきたいますね。
その時、USボンドの下落と日本国債の暴落にならなければ良いですが、老婆心ながら、いつも勉強になります。
T
(山崎)バブルははじける前までは誰も「まだまだいける」と思っているものです。そのときが来ると誰もがパニックになってしまうのはそのためでしょう。
本は明日お借りに伺います。
投稿: T | 2010年4月19日 (月) 17時42分