(22.3.31) すべては政治に還元される 冷凍ギョーザ毒物事件
感心してしまった。毒物ギョーザ事件の中国の対応にである。
犯人が検挙され中国の警察の捜査能力が高いとか、よくここまで捜査を継続したとか言うことではない。
そうではなくてこの毒物ギョーザ事件の政治的取扱についてである。
08年1月にこの事件が発生してから当初はメタミドホスが混入されたのが中国か日本かで捜査当局が対立し、中国当局は「中国でメタミドホスが混入された可能性は限りなくゼロに近い」と言い切っていた。
その後08年6月にこの当局の発表をまともに信じた天洋食品が、回収したギョーザ15万食を国営企業に転売して食中毒が発生したため、さすがに中国当局も本格的な取調べを再開した。
しかしその後約1年半にわたってなしのつぶてだった。
「どうやら中国はこの事件を迷宮入りさせたいらしい」
外務省も諦めて、「日中食品安全推進イニシアチブ」というわけの分からない取り決めをしてお茶を濁そうとしていた矢先だけに日本中が驚いた。
逮捕された呂月庭容疑者は36歳の天洋食品の食堂の管理人で「自分と妻を正社員として雇ってくれなかった天洋食品に不満をもち、会社を困らせる目的で冷凍庫に保管されていた冷凍ギョーザに注射器で都合3回、メタミドホスを注入した」と供述したと言う。
逮捕のきっかけは呂月庭容疑者が妻や知人に「自分がやった」と話していたとの情報から発覚したとのことである。
その結果、(捜査を担当した中国公安省の発表によると)呂月庭容疑者はつい最近当局に逮捕されたとのことであるが、これはかなり怪しい。
毎日新聞はこの取調べを行っていた責任者が昨年秋の異動で昇格しているので、その頃には犯人が特定され、呂月庭容疑者が拘束されていた可能性が高いと推定しているがそれが真実に近いだろう。
中国の捜査方法は社会主義国特有の垂れ込み情報(今回もそれと思われる)と拷問の組み合わせだから、かなり早い段階で犯人が特定されるか、あるいは政治的にでっち上げられるかどちらかでないとおかしい。
今まで呂月庭容疑者を逮捕したとの発表がなかったのは政治的に見て発表しないことが中国政府にとりメリットがあったからである。
「この事件は迷宮入りにさせよう。わが国に落ち度などない」
ところがここに来て中国とアメリカの関係が急速に悪化してきた。オバマ政権が中国を為替操作国として認定して、元の切り上げを迫ることが確実になったことと、Google問題で中国の言論の自由を揺さぶる政策に出てきたからだ。
「まずい、アメリカとの関係がギクシャクしてきた。この情勢をわが国に有利に展開するには鳩山を取り込もう」
この5月に鳩山総理の中国訪問、その返礼としての温家宝首相の日本訪問が予定されている。
鳩山総理に対するプレゼントとして、呂月庭容疑者の逮捕を公表した。
中国ではいかなる事件も政治的に利用される。犯人逮捕の情報が中国にとって有利な場合のみ公表されるし、不利な場合は「捜査は継続中」と言って伏せられる。
このように中国の情報操作は実に巧みで、とても日本の及ぶところではない。一方日本では岡田外相がアメリカとの関係がどんなに悪化しようとも核の持込の密約を公表したりしているのだから、とても外交で勝てそうもない。
情報の取扱は大人と幼児ほどの差がある。
注)岡田外相は普天間移設問題でゲーツ国防長官と話し合いをしているが、相手のすねを蹴っ飛ばしながら、一方で握手するのはとても無理と言うものだ。
今回の中国の対応をみて、鳩山政権に中国の半分程度の政治的配慮があれば、日本も国際的に評価される国になるのにと思うが、実際はアメリカと中国に幼児扱いされる国で、とても残念な気がした。
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