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(22.3.24) オバマ大統領の苦い勝利 医療保険制度改革

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 すったもんだの挙句、アメリカの医療保険制度の改革案が議会を通過した。
当初は民主党主導の下院で国民皆保険制度を目指したが、共和党が上院で大反対を行い、結局妥協の産物として現在の 低所得者向け保険制度メディケイドの拡充 メディケイド対象外の無保険者への補助金の支給で妥協を図ることになった。

 オバマ大統領は「急進的な改革ではないにしても大改革だ」と自画自賛したが、本来目指した皆保険制度でないだけに本音は苦い勝利というところだろう。

 現在アメリカには約4600万人無保険者がいると推定され、今回の改革案が通ればそのうちの約3200万人が保険加入ができて、国民の約95%に保険がいきわたることになるという。
95%なら、ほぼ皆保険と言っていいじゃないか」という感度だ。

 アメリカで無保険者が多いのは、個人と保険会社が保険契約を締結することが原則だからである。
実際は企業や官庁が契約している保険会社と個人が契約するのだが、そのとき福利厚生の一環として企業が保険金の全額または一部を支払っている。

 もっともそうできるのは大企業だけで中小企業で業績がよくない企業はこうした福利厚生対応ができない。その場合は個人は直に保険会社と契約することになるが保険料は年間120万円程度で相当重い。

注)企業はあくまで福利厚生の一環として保険料の負担に応じており、法的に縛られているわけでないところが日本と違う。

 さらに問題なのは失業したりすると完全に自分で保険を負担することになるので、現在の10%近い失業率の状態では無保険者が急増してしまった。

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 もっともアメリカに公的保険制度がまったくない訳でなく、高齢者向けメディケアと低所得者を対象にメディケイドという公的保険制度が存在する。
今回の改革案はこのうちの低所得者向けメディケイドを拡充しようという案なのだが、問題はメディケイドという制度は州政府にとり財政逼迫の最大の原因になっていることだ。

注)メディケアもメディケイドも医療保険というよりも、日本的感覚では生活保護に近い。

 アメリカには貧困ラインという線引きがあり、親子3人家族の場合は年収が約140万円程度がこれに当たる。
メディケイド対象になるのはさらにこの貧困ラインの35%未満(ミシシッピー州の場合)というようにそれぞれ州ごとに基準があり、この場合は約50万円ということになる。

注)メディケイドは州の支出の約20%を占めており、貧困ライン全員を対象にすることができない

 この基準に達した貧困者はメディケイドの対象となりほとんどの医療費がタダになるので、非常に手厚い保護を受けている。
今回の改正案はこの貧困層の基準を緩和してたとえば100万円以下の場合は対象にするというような変更を行おうとしている。

注1)州には資金がないので連邦政府が州にメディケイド用補助金を増額して支給することになる

 一方医療保険を自分で支払っている人から見れば、「なんで俺は120万円も保険料を払い、メディケイドの連中はタダなんだ」ということになる。このあたりは日本の生活保護制度と似ており、メディケイド対象者とぎりぎりで非対象者になった人は天国と地獄の差がある。

 そのためメディケイドの対象になるほど貧困ではないが、無保険の個人や失業者、あるいは中小企業に勤めている無保険者に対しては補助金を支給して医療保険に加入させることにした。

 また企業に従業員が保険契約を締結できるようにする義務を課して、違反企業に罰則規定を設けたので、これで無保険者は大幅に減るだろうというのがアメリカ政府の読みだ。
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 こうした医療保険制度改革案が今回大反対にあったのは、金がかかるからである。
試算では今後拡充するメディケイド補助金のために10年間で約85兆円が必要となり、その資金は現在高額の医療保険を払っている人に対する増税メディケアの縮小によって費用を捻出するとオバマ政権が発表したからだ。

注)メディケアの縮小とは、メディケアとメディケイドの二重保護を受けている人たちもいて、これをメディケイドだけにするというような案

何てことだ。保険料を懸命に払っている国民はさらに増税され、失業者や母子家庭や障害者はさらに多くのタダの治療を受けられるのか。これが自由の国のアメリカの姿か。まるで社会主義国ではないか
共和党を中心に大反対の合唱が起こった。

 オバマ政権としたら、低所得者層はそもそも保険料の支払いなんてできない階層なのだからここから保険料を取ることはできないし、後は金持ちに増税するしか手はないとの判断だ。
しかし実際は増税はほとんど不可能と思われる。

 なにしろ今回の改革案でも僅差の勝利なのだから、増税なんて夢のまた夢で、結局資金は赤字国債を発行して穴埋めしなければならなくなるだろう。
しかしアメリカのGDPに対する財政赤字の比率は10%前後で、最も財政規律のない国の一つになっており、その悪い財政をさらに悪化させる。

 オバマ大統領の医療改革制度は財源の裏づけのないまま走り出したが、これは日本の子供手当てとまったく同じ構図になってしまった。
財源はないけど公約だから実現させよう」そんな感度だ。

 

 
 

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