(22.3.20) 金正日氏の最後の戦いと改革派
北朝鮮では常に改革派と保守派がつばぜり合いを行っており、改革派が優勢になると中国をまねて改革開放が叫ばれ、一方保守派が優勢になると社会主義経済への復帰が叫ばれる。
金正日総書記はそのバランスの上に立って国政を運営しており、ある時は改革派のポーズをし、またある時は保守派のポーズをしてきた。
昨年11月に行われた100分の1のデノミは保守派が指導したもので、「自由市場でしこたま儲けた資本主義分子に鉄槌を加え、原爆製造に邁進する核心層の生活向上を目指し、輝かしい社会主義経済に復帰」する予定だったが、まったく裏目に出てしまった。
誰も新たに発行された新ウォンを受け取らず、商人は商品を売らないから物価が急騰し、核心層に餓死者が出そうになった。
「朴南基のやろう、俺をだましやがって。輝ける社会主義経済なんてどこにもないじゃないか。朴南基は反革命分子でわが国の裏切り者だ」金正日が切れた。
この事業を推進した保守派の朴南基氏はかわいそうに射撃場で銃殺刑になり、76歳の命を終えた。
今度は改革派がはしゃぎだした。張成沢労働部長の指導で日本海沿岸に位置する港町、羅先市を特別市に昇格して、ここの運営を自由に任せる代わりに、6000万ユーロ(約74億円)を上納させることにした。
「金同志、羅先市の埠頭を中国やロシヤに貸与して、6000万ユーロの収益を上げて見せます。この資金で平壌に10万世帯の住宅を建設いたしましょう」
現在金正日総書記の頭には2012年が重くのしかかっている。
この年は故金日成国家主席の生誕100周年記念にあたり、この記念すべき年に三男、正銀氏を正式な後継者としてデビューさせたい。
そのためには国民にもプレゼントをしなければ総書記としての沽券に関わる。
「平壌に新たな高層住宅を10万戸建設して、世界で最も優秀なわが国民に白米とキムチを食べさせることが私の使命だ。そうでないと父、金日成国家主席に顔向けができない」
あと2年しかないのに朴南基が経済運営でとちり、高層住宅が建設できなくなってしまった。残された道は改革派に乗ることだけだ。
「張同志、お前が言っていた改革解放に舵を切ろう。経済特区も拡充し、中国に行って経済援助も依頼しよう。しかし単に物乞いでは男が廃る。
なにしろわが国はミサイル大国で、核大国なのだからな」
「金同志、それならばわが国にも立派な産業があることを中国に見せてやりましょう。咸興市にある、18年前に倒産したビナロン工場を復活させて、ビナロン生産を開始するのはいかがでしょうか。中国に負けない産業があり、単に物乞いではないと主張できます」
注)ビナロンとは日本で言うビニロンのこと。
金正日総書記の命は後3年だろうというのがアメリカの見方だ。人工透析でかろうじて延命しているとも言われ、群集の前に出てくる姿はすっかり老人のそれになってしまった。
しかし健康状態が優れないにもかかわらず、咸興市で行われたビナロン工場復活式典に張成沢氏を引き連れ、壇上から手を振って10万人の群集に答えていた。
「後2年しかない。正銀を後継者にし、立派な国家を残してやらないと中国とアメリカの餌食にされてしまう。改革開放もそれまでの辛抱だ。平壌に10万戸のアパートが建設できたら、再び国を閉じてしまおう」
金正日総書記の最後の戦いが残された命の中で続けられている。
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