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(22.3.18) なぜ金融政策は効果がないか  新型オペと日銀の苦悩 

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 日本は完全なデフレ状態になっており、消費者物価卸売り物価も前年対比で1~2%程度の速度で低下し続けている。
すべての価格が下がるのだから、定年退職者や首切りの心配無い公務員には天国のような状況だが、一方生産者や流通業者はいくら経営の合理化を進めても収益改善が進まないという地獄の状況だ。

 政府は財政政策を思いっきり発動して、10年度予算では赤字国債を44兆円規模で発行するのでこれ以上の財政出動が不可能になってきた。

注)赤字国債をさらに増額できるが、財政規律の限界をとうに突破しているし、格付が低下する。

 菅直人副総裁兼財務相日銀白川総裁の尻を引っぱたいて「財政がダメなんだから、金融でなんとかしろ」と金融政策の一層の緩和を要請したが、だからと言って30兆円(09年10月から12月)といわれるデフレギャップが埋まることは無い

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 日本には今後ともデフレが継続していく要因があり、金融緩和はデフレに対してまったく効果が無い。

 日本が基本的にデフレなのは人口が低下し始め、老人人口が増加しているからである。人口減少はそれだけで需要は低下するし、若者が少なくなって老人が増えると、住宅投資が減少し、教育に金をかける必要が無くなり、衣食も何でもよくなり、レジャーも金をかけるよりも有り余った時間をかけておこなおうとする。

 これらすべての要因があいまって、日本ではデパートスーパーも最近ではコンビニさえも、売上が落ち込むようになり、自動車住宅も前年度対比減少している。
だからと言って工場学校スーパー等はすぐに縮小や撤退することができないから、需給ギャップが広がり、さらに物価は低下してしまう。

 国内に資金需要がなければ、日銀が金融緩和で放出した資金はすべて国外に向かうと思っていい。
そのことは最近の日本の金融緩和策の経験を見ても、また少しシミュレーションしてみてもすぐに分かる。

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 浜矩子同志社大学教授は、「日本が21世紀初頭におこなってきた長期の金融緩和策の結果が、サブプライムローンの肥大化につながり、リーマンショックを引き起こした」と分析しているが、今回の金融緩和策もまた同様な資産バブルを誘発する可能性が高い。

 日銀は昨年の12月以降、新型オペレーションと称して、金融機関に金利0.1%、期間3ヶ月の資金を10兆円規模で供給している。
だがデフレ回避に一向に効き目が無いので、さらに10兆円規模の追加措置を発表した。

 しかしこうした資金が日本の経済、特に設備投資を増大させてデフレギャップの解消に向かうかというとそうはならない。
たとえば金融機関にとってはタダのような資金を日銀が供給してくれたのだが、何しろ期間が3ヶ月では設備投資資金などには使いようが無い。

 一番可能性が高いのは銀行が自己ディーリングを行い、新興国等への株式投資や、流動性が高い国債や投資信託、あるいは金や石油への投資をおこなうことである。
3ヶ月間、タダの資金があるのだ。鞘を稼ごう

 日銀もさすがに期間3ヶ月では効果がないと判断したのか、期間の延長や供給金額の増加(3月17日に10兆円増額したを図ろうとしている。
しかしこれでも国内の設備投資増強には向かわないだろう。

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 たとえば自動車メーカーが金融機関からほぼゼロ金利と言ってよいような資金を無理やり借りさせられたとしよう。
何でもいいから、1000億借りてください。政府の依頼です

注)中国の金融緩和はこうした資金が不動産と株式投資に向かった。

 この自動車メーカーはその資金を国内の工場建設に向けるだろうか。
企業としては銀行と同じような鞘稼ぎを行うか、あるいは投資をするとしても中国インドブラジルといった新興国に最新鋭の工場を建設するはずである。
日本じゃ、車が売れないし、輸出だと貿易摩擦が起こるから現地に工場を建てて、現地に溶け込もう
だから日本の需給ギャップは金融緩和ではどのようにしても埋めることができない

 人口減少、老人天国の日本は毎年のように需要は減少していく。。
GDPは傾向的に低下していくので、生産設備や流通施設をそれに合わせて縮小させなければデフレギャップはうまらない

注1)日本でGDPを拡大させる唯一の方法は海外から若者を移住させて日本人の国籍を取得させることである。
貧しくエネルギーのある若者はハングリー精神に燃えており、かつ住宅や衣食に対する需要が旺盛だ。

 日本では大相撲の世界がそうなっており、上位力士はほとんどが外国人で、日本人はとても横綱になれそうも無い。
それでも私たちは大相撲をけっこう楽しんでいるのだから、これこそ日本に活力をもたらす起爆剤だと認識することだ。

注2)日銀がまったく効果のない新型オペレーションをおこなっているのは、政府から「国債の直接日銀引受」を要請してくるのを回避する代替手段だといわれている。
「国債を引き受けてハイパーインフレーションになるよりはマシだ」との判断だ。

注3)自民党政府は、このデフレギャップを埋めるために、無理やり地方空港やダムを建設してきた。しかしこれはただ無駄なことをしただけで、日本の国力をそぐ効果しかなかった。



 

 

 

 

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評論 日本の政治・経済 円高・デフレ」カテゴリの記事

コメント

初めてコメントさせて頂きます。
非常に分かりやすい内容で感銘しました。

(山崎)ありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいです。

投稿: gaia | 2010年8月29日 (日) 01時25分

 先日、デンマーク大使館に行ってきました。2月、仕事でデンマークを訪問した折、アテンドしていただいたお礼を伝えてきました。私の英語力では仕事にならないので、通訳もお願いしたのです。大変お世話になりました。大使館で興味深いデータを知りました。デンマークと日本の2005年頃の比較です。デンマークは税金は相当高いのですが、福祉や教育など人材の育成と自立に積極的に投資しています。経済も堅調、農業大国でもあります。国民は生活や仕事での悩みやストレスは、もちろん抱えていますが、幸福度は高いと感じており、世界からも同様な評価を得ています。しばらくは、デンマークに注目です。
 
                    デンマーク          日本
人口                  539万人         1億2,767万人
国民一人あたりGDP       3.2万US$        3.1万US$
税率(国民負担)          73.8%           38.4%
失業率                4.5%            5.4%
年間労働時間           1,578時間        1,842時間
穀物自給率             115.0%          28.0%
エネルギー消費          18.6百万トン       509.4百万トン  (石油換算)
ノーベル賞の受賞者数       13人            12人

投稿: TADA | 2010年3月20日 (土) 19時49分

読んで疑問に思ったことを長々と書いてしまったので、落書き程度のコメントと思ってください。

>注1)日本でGDPを拡大させる唯一の方法は海外から若者を移住させて日本人の国籍を取得させることである。

・人が減った国は、どうでも良いのか?
・人が増えることが良いことなのか?
・人が増えると一人当たりのGDPが増えるのか?
・人が増え続ける国が良いのか?
・安い値段で働く人を増やすとする場合、言い換えれば奴隷を増やすようなことでは?
・技術のある優秀な人が集まる国を目指すのが良いのでは?
・インフレになれば円でのGDPは増える。
・円高になれば他国から通貨で見るとGDPが増える。
・他の国を日本の領土にして人口もGDPも増やした場合、日本と日本の領土になった国の人に経済的な変化はないので、人を増やすことに意味があるのか疑問に思います。

>注3)自民党政府は、このデフレギャップを埋めるために、無理やり地方空港やダムを建設してきた。しかしこれはただ無駄なことをしただけで、日本の国力をそぐ効果しかなかった。

・地方のインフラは捨てるのか?極端なことを言えば地方に住むことを禁止して都会に集中させるのは良いかもしれませんね。
・無駄な空港とは具体的にどこか?離島の空港は無駄?
・無駄な空港を作らなかった場合、その周辺に住む人の生活は、どうなるのか?
・無駄とは利用者が少ないと言う意味では?多ければ無駄ではないですよね?
・建設費が安ければ問題ないのか?建設費が安くなるように公共の場所に利用する土地を安く取得できるようにすれば良いのでは?
・ダムは水力発電や農業用水にも使えるが、CO2削減、農産物増産は良いのか?

今回、書かれたことを読むと、日本の国力を増やすには、こんな方法は良くありませんし間違いですが、他の国を消滅させ、地方切捨て、お年寄りが早く死ぬことだと思ってしまいました。

では、どうしたら良いかと思い考え、2つの案を思いつきました。
・日本の弱点として石油などのエネルギーと食料の輸入が多いので、これらを減らす。
・人が少なく病院の経営が難しい町に住む人は、他の町に移動してもらう。

投稿: 通りすがりんご | 2010年3月18日 (木) 17時46分

バブル崩壊後に社会に出た第二次ベビーブーム世代(現在の30代後半を中心とする世代)を貧困化させ、未婚率上昇と超少子化を引き起こしてしまったのが最大の敗因でしょうね。
第三次ベビーブームを起こしていれば、国民の平均年齢上昇やデフレ再来を防ぐことが出来たのでしょうが・・・。

投稿: ponpon | 2010年3月18日 (木) 11時49分

この記事へのコメントは終了しました。

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