(22.2.23) 国債は償還されるのか
はたして日本の国債は償還されるのだろうか、そうした疑問がわいて来る。なにしろ鳩山内閣のばら撒き政策で、国債の発行残高は膨らむ一方で、現時点で10年度末(11年3月)の公債の残高は863兆円(GDP対比181%)と推定されている。
この残高は当初予算のみでの残高だから、補正予算を組んで増発すれば瞬く間にGDP対比200%に近づいてしまう。
大雑把な言い方をすれば稼ぎの倍の借金を抱え込むことになる。
個人でも住宅資金を借りる時は所得の2倍程度の借金はするが、この場合は不動産が担保になっていていざという場合は不動産を処分して返済すればいい。
一方政府の場合はそうした担保がない。社会保障費などはそのまま消えていくし、ダムや道路などの建設費はダムなどを担保とするわけにはいかない。
したがって政府の場合は税金を増やしてその中から返済する以外に手はないのだが、実際問題として増税はかなり難しく、鳩山首相は今後4年間は消費税は上げないと言っている。
通常財政健全化の論理は「借金を将来の日本人に肩代わりさせるわけにはいかない」というものだが、本当に借金を将来の日本人に肩代りさせることが可能なのだろうか。
経済が停滞している日本で返済資金の余裕などが生まれるはずがなく、預貯金の約80%は老人が持っている。若者は生活するのに精一杯で老人より若者が貧しいのがこの日本の実態だ。
(ふうーん、それは深刻だね!!!)
返せないほどの借金が増えたときの常套手段は歴史が教えてくれる。
① ハイパーインフレーションを起こして国債の価値をゼロに近づける。
② 国家破産しIMFから支援を受けて財政再建に取り組む。
③ 自力で財政再建に取り組む。
はたして日本はどの方式を採用するのだろうか。
①の事例 日本の戦時国債の償還はこの方法でなされた。
戦争終結時点で、戦時国債が1400億円程度、政府短期借入金が2000億円程度、合計3400億円程度あったのだが、綺麗さっぱりと返済されている。
そのからくりは昭和9~11年の卸売り物価を100とすると、昭和26年(この頃から朝鮮特需で日本経済は立ち直った)までに物価が約350倍上昇した超インフレにある。これなら戦時国債・借入金の実質的な償還は約10億円(3400÷350)で済んだことになり、350分の1に踏み倒せるなら誰だって返済できそうだ。
戦時国債の例を当てはめると、現在の国債残高863兆円がこうしたインフレで帳消しになれば、このコストを負担するのは国債保有者(お金を持っている老人)ということになりそうだ。
注)戦後と同じハイパーインフレーションが発生したと仮定すると、返済額は約2.5兆円で済むことになる。
もっとも、現在は戦争もないので日本で再びハイパーインフレーションが発生する可能性は少ない。
現在はひどいデフレで政府はインフレ目標を年率1%にしたいと悲鳴をあげているくらいだ。
(結局、なるようにしかならないのよ・・・)
②の事例 この事例は世界各国にいくらでもある。IMFから資金を借りて対外債務の支払い等に充当し、一方で国内では超緊縮予算を組むことになる。
鳩山政権の10年度当初予算は、一般会計の規模は約92兆円で、税収約37兆円、その他約11兆円、国債発行約44兆円となっている。
一方国債の償還費は約21兆円だから、国債純増は23兆円ということになる。
これが超緊縮予算になると、国債増発はご法度で、できれば償還をすることが期待される。
たとえば毎年国債を5兆円ずつ縮小させ、かつその他のような埋蔵金がすでになくなっているものとすると、予算規模は52兆円規模(税金37兆円+公債発行15兆円、公債償還20兆円)になる。
ネットで利用できる予算は32兆円(37-5)で、これは10年度予算のネット71兆円(92-21)の49%、約半分ということになる。
大雑把にいえば現在の生活水準を約半分にした生活を要請される。
注)この場合の国債残高は毎年5兆円ずつ圧縮されることになる。ただし完済まで172年の歳月が必要(863÷5)
③の事例 自力で財政再建に取り組む。このためには増税が必須で、たとえば消費税が現在の倍の10%になったとすると、15兆円規模(GDP500兆円×消費の割合60%×増税分5%)の増税になる。
これにより税収規模は52兆円(37+15)になる。国債はまったく増発せず現状維持とすれば、現在のネット予算71兆円の73%、約7割程度の生活レベルで過ごすことになる。
注)国債は増発されないが、借り換えのための国債発行はおこなわれる。
過去の蓄え約1400兆円や、外貨準備約100兆円をすべて国債で使い切った後は、好むと好まざるとに関わらず、②か③の対応を迫られることになる。
私としては自助努力で生活してほしいと思っているが、自発的にこの7割の生活を国民に要請するのは並大抵のことではない。おそらくこうした自力努力は行われず、②の国家破産が起こって已む無く生活を切り詰めるのではなかろうか。
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コメント
素晴らしくわかりやすいですね。特に、実例に基づいた部分など。
結果の予測はその通りかと。
ただ、生活レベル半分が不幸なのかなあと。日本ほど、趣味(ソフトウェア、ハードウェア)に金をつぎ込んだり、
新しい車や家電を次々に買い替えたり、高い食事をしたり、100歳でも延命治療してる国は、そうはありません。
生活レベル半分で、世界に近づくでしょう。幸い、水資源や漁業資源や森林再生力や生物多様性と言った、
自然環境には恵まれてますし、貧しいなりになんとかなるでしょう。
(山崎)とてもすばらしいコメントです。感心しました。
投稿: kenta | 2012年7月 1日 (日) 01時36分