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(22.2.20) 文学入門 阿部定(あべさだ)事件 伊佐千尋著

 大事な注意本件は大人の世界の話であるので、子供がこの記事を読むことは禁止する。

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 今回の読書会のテーマ本は伊佐千尋(ちひろ著の「阿部定(あべさだ)事件」である。
阿部定事件と言っても一般の人はほとんど知らない。
この事件が発生したのは昭和11年5月だったから、今から70年以上も昔の事件で、この年の2月26日には「2・26事件」が発生している。
昭和恐慌の経済的困窮が世上を覆っていた時代といえる。

 阿部定事件とは日本事件史上まれに見る猟奇事件といわれている。
源氏名を阿部定(31才)と称する娼婦が、愛人の石田吉蔵42才)を細紐で絞殺し、さらに下腹部とても言いづらいのだけど、おちんちん)を刃物で切り取り、男の左腕に刃物で「」という一字を切り刻み失踪した事件である。

 阿部定はすぐに逮捕されたのだが、その時に石田吉蔵下腹部を紙に包んで保持していたことから、マスコミに格好の話題を提供することになった。
なぜ、阿部定は愛人の下腹部を後生大事に持っていたか?

 通常日本の心中物近松門左衛門曽根崎心中が典型的にそうであるように男女そろって情死するか、演歌の世界のように女性が一人さびしく男を思って自殺するかのいづれかであった。
時に石川さゆりが歌う「天城越え」のように「だれかに取られるくらいなら、あなたを殺していいですか」と聞くことがあっても、それを実行するわけではなく、ましてや下腹部を切り取るようなことはしない。
そうした意味で、日本犯罪史上、あるいは情死史上まれに見る特異な事件といわれた。

 この本を今回のテーマ本にしたのはJ姉さんだが、J姉さんがこうした事件に興味を持っているのは意外だった。かみさんは「私はこの種の話は嫌いなの」と言って本を読むこともしない。
私はテーマ本は必ず読むことにしているのでさっそく読み始めたが、著者の伊佐千尋(ちひろ)氏についてはまったく知識がなかった。

 伊佐氏は79年に「逆転」という書物で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、その後主として裁判関連の事件を題材にノンフィクションの分野で活躍した人だという。

 この書物は主として予審の尋問記録写しを基に構成されている。
第1回から8回までの予審記録がこの本の主要部分を占めているが、伊佐氏によれば公判記録が入手できなかったための代替措置ということだ。

 もっとも予審制度そのものが戦後廃止されたため、一般の人は予審制度やその尋問記録なるものの性格がよく分からない。

 簡単に言えば裁判を行う前に予審判事(本裁判の判事とは違う)が被告人を取り調べた調書だが、弁護士の立会いがなく一方的な取調べになる
したがって判事の恣意的な調書作りが可能で、かつそれがそのまま証拠として裁判に提出されるため、自白を主体とした証拠調べになりやすい。そうした意味もあって戦後は廃止された。

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 実際読んでみると阿部定が起こした事件の結果から、反対にその生い立ちや学業をやめてから後の堕落した生活を強調して書かれている。

このような事件を起こした女は、小さい頃から問題があった」という書き方だ。

 また阿部定が異常に性欲が強かったことが強調されているが、娼婦なのだから「強くなくては生きていけないだろう」と私などは思ってしまう。

注)吉原炎上という映画を見ると遊女があらゆるテクニックで男を喜ばしている様が描かれていた。

 そして何より不思議なのは第1回尋問調書阿部定石田吉蔵の首を絞めながら関係を持つと大変興奮するので、そうしたSEXを常時行っていたと証言していることだ。
首絞めあいっこをしていたと思えばいい。

 一方調書のトーンは阿部定が「他に取られるくらいなら殺そうとした」ということになっている。
このあたりがつじつまがあわない。
実際は紐で首を絞めているSEXを行っていて、われを忘れて首を絞めてしまい絞殺したとしか思われない。
殺人罪ではなく重過失致死罪ということである。

注)この本の著者もそうした判断をしていた。

Image0  新聞報道では妖婦」とか「美人女中」という活字が踊っており、何か美人殺人事件のような報道だったが、この本の表紙に採用されている阿部定の写真を見ても特段美人でも、妖婦でもなく、戦前によくいた婦人の一人にすぎない。

 この事件の唯一の疑問点は、なぜ阿部定石田の一物を持ち去り、それを保持していたかということだ。単なる記念品のつもりだったのだろうか。

 日本の歴史の中で戦国時代は勝者は敗者の首を取ることは普通だったが、首の持ち運びが難しい場合は耳をそいでいた。
また隣の中国では宦官という制度があり、これは自発的に性器を切り落としている。
肉体の一部を切ること自体は歴史的にはしばしば行われてきたことだ。

 私のこの本を読んだ阿部定の印象は、特に美人でもない普通の女性が、たまたま通常よりも性欲が強かったため、紐で情夫を締めるSEXをして間違って絞殺してしまった事件にしか見えない。

 その下腹部を切ったことは確かに異常だが、阿部定が最も愛したのは石田本人というよりも、その重要な場所だったとすれば、それを大事に持ち去った行為は十分納得できる。

 何か今回の記事はひどく大人の話になってしまい、私のような老人であればなんと言うこともない話だが、子供には刺激が強すぎるだろう。
18歳未満お断りのブログになってしまった。


注)本件について、読書会主催者の河村義人さんと、今回の担当者J.Yさん、それとM.Tさんが感想文を書いております。私の感想文とはかなり異なりますので、是非読んで比較検討してみてください。
http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/2010/03/post-825f.html
 

 


 

 

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