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(22.2.10) 攻勢終末点をむかえたトヨタ自動車 リコール問題

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 軍事用語で攻勢終末点という言葉があるのをご存知だろうか。それまで連戦連勝だった軍事攻勢がある地点に達するとピタッと進撃が止まり、その後は後退に次ぐ後退を迫られる地点のことである。

 実際は補給路が伸びきってしまったり、相手も敵の弱点を知ってそこを攻撃してきたりして、それ以上は勝利が望めなくなるのだが、当事者にはその攻勢終末点が分からない。
わが皇軍には敗北という言葉がない」誰もがそう思っているまさにその時を言う。

 太平洋戦争の日本軍で言えばガダルカナルがそれだし、ヒットラーにとってのスターリングラード、ナポレオンのモスクワ、アレキサンダー大王のインダス川、アメリカのイラク・アフガンといくらでも例があるが、日本経済の1991年のバブル崩壊もその例に入る。

 実際日本経済はバブルが崩壊した1991年以降長期停滞に入り、現在のGDPはバブル崩壊時のそれとほとんど同じで、この間日本はまったく成長していない。

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 トヨタ自動車約900万台の自動車を販売し、GMを抜いて世界NO1になったのは08年のあのリーマン・ショックの年だが、今思えばこの年がトヨタ自動車にとっての攻勢終末点だった。

 リーマン・ショックは全世界の自動車産業を巻き込み、GM、クライスラーは倒産し、フォードも赤字経営に悩んでいたから、自動車問題はアメリカ自動車業界の問題だと思っていたが、実は勝利に酔っていたトヨタ自動車の問題でもあった。

 この時を境にトヨタは何をやってもうまくいかなくなっている。
トヨタ車には従来からアクセルペダルに不具合があるのではないかと疑われていた。
アクセルの下に敷かれているフロアマットが引っかかり、アクセルがもどらないため自動車が暴走するという現象だったが、トヨタの対応は、「世界のトヨタに欠陥はない」というものだった。

 しかし09年8月、カリフォルニア州でレクサス車が暴走して、4人の死者が出た事故が、ターニングポイントになった。
世界のトヨタに欠陥があるのではないか」と消費者が疑い始めたからである。

 トヨタの対応は時間を追ってみると次のようになっている。

① 運転者の運転操作の未熟が原因と認識。

② フロアマットをしかるべき位置に敷いていないのが原因と認識。

③ フロアマットがアクセルに引っかかることがありうるのでフロアマットを無償で交換する自主的回収措置を実施(09年秋)

④ アクセルペダルに構造的欠陥がありそうなので、ペダルを無償で交換する自主的回収措置を実施(09年11月)

⑤ 正式にアクセルペダルの欠陥を認め、リコールを実施(10年1月)


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 時間的経緯を見ると、当初は運転者側に原因があって、トヨタの問題ではないと思っていた事が分かる。
原因がトヨタ車にあると認識したあとも、フロアマットの問題とし、資金的にも多大な持ち出しになるアクセルペダルの問題ではないと主張して自主回収に留めていた。

注)自主回収とリコールの差は、「問題がありそうだ」と「問題がある」との差であるが後者は法律に基づいて無償の交換をおこなう。

 リコール対象車は全世界で500万台規模に成りそうだから、半端な数ではない。08年、09年と2年連続で赤字になっていたが、これで10年度も赤字になる可能性が高くなった。

 トヨタは世界NO1になったとたん品質管理で油断をし、欠陥車だらけになって攻勢終末点をむかえてしまった。
トヨタが社運をかけて開発した3世代目のプリウスにもブレーキ系統の欠陥があり、これもリコールの対象に成なったからである(2月9日)。

 この問題ではトヨタは当初「ドライバーの感覚的な問題で、構造的な欠陥はない」と主張したが、一方で1月以降販売のプリウスについては問題点を修正したと発表した。

注)ABSという横滑りを防ぐためのブレーキ制御システムをドライバーの感覚に合せる措置を取った。

 
しかし「欠陥でない」といいながら一方で修正を行っていたため、トヨタの信頼は地に落ちてしまった。
ラフード米運輸長官は「トヨタの対応は遅い」と不満を募らせ、前原国交相は「トヨタの姿勢は顧客の姿勢がいささか欠けている」と苦言を呈している。


注)ラフード米運輸長官はこの機会にトヨタをNO1からの地位から追い落としGMを再び世界のGMにしようとする意図があり、悪意ある情報操作を行なっている。

 トヨタはだんだんと2000年から2004年にかけて発生した三菱自動車のリコール隠しと似てきた。
三菱自動車はハブが摩滅して車輪が外れる事故が多発していたのにそれを隠し、すべて整備の問題として片付け、最後にリコールになったときは経営が傾きかけていた。

 攻勢終末点をむかえた場合の軍事的措置は、自らが守れる戦線まで後退して守勢に徹することである。
トヨタにとっても、リコール対応が速やかに実施できる規模まで販売規模を縮小して、守勢に徹するほかに方法がない。

 特にアメリカがこれを機会にトヨタ車の追い落としを図ろうとしているのだから、生半可な対応で乗り切れるとは思われない。
今すべきことは消費者の信頼を取り戻すことを最重要の経営目標とすることで、もし苦し紛れの販売促進(軍事的には戦線拡大)などを行えば更なる苦境に陥ることは確かだ。

注)トヨタ車のリコール問題でアメリカではすでに30件以上の集団訴訟が提示されている。集団訴訟とはある特定の案件の判決が、同時に同じ状態にあるすべての人に対し効力が及ぶ訴訟。
たとえばプリウスのブレーキ故障でA氏に1000万円の和解金を払うことになると、他の20万台のプリウス保有者にも同額の和解金を払わなくてはならなくなり、和解金は天文学的な数字になる。



 

 

 

 

 

   

 

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