(22.1.28) バブルの清算 かずさアカデミアパークの破綻
第3セクターのかずさアカデミアパークが約58億円の負債を抱えて倒産した。すでに05年以降債務超過に陥っていたため金融機関からは見放されており、県が唯一の支援先だったが森田知事の決断で支援を中止することになった。
「県が来年度以降貸付を行なわないことになったので、民事再生法の適用に至った」と自身が県出身の相原社長が苦渋のコメントをしたが、誰も相手にしてくれなくなれば倒産はやむ終えない。
かずさアカデミアパークは国際会議が十分に開催できるホールや、飛び切り立派なホテル、スポーツ施設を運営してきたが、毎年の赤字が3~5億で出血が止まりそうもない。
堂本前知事はこの状況を見て見ぬふりをしてきたが、森田知事は矢継ぎ早に前県政の膿を出すことを決心したらしい。
当初、八ツ場ダムでは継続を主張し「森田知事も土建屋知事か!!」と思ったが、不正経理では徹底的な調査を行い、今回は赤字垂れ流し第3セクターの整理を決断したのだからたいしたものだ。
「やるじゃないか」思わず手をたたいてしまった。
注)横田さんからコメントをいただき、不正経理について「徹底的な調査」をしたとは言いがたいとの野党議員の評価を読ませていただきました。この件については別途ブログでまとめることにします。
かずさアカデミアパークの構想ができたのは1984年だからバブル真っ最中のときで、県も企業も計画の成功を疑わなかったのはよく分かる。
あの頃は誰しもジャパン・アズ・NO1と自他共に認識し、アメリカに代わるヘゲモニー国家になるつもりだったのだから、こうした景気のいい計画ができたのだろう。
しかし、なんとも間の悪いことに、かずさアカデミアパークが設立された91年は日本のバブルが崩壊したその年だ。
その後失われた10年が始まり、進出を予定していた大企業は富士通を除いてすべて撤退してしまった。
本来ならばこの段階でかずさアカデミアパークも縮小体制に入れば、こうまでひどく損失は膨らまなかったはずだ。
しかし実際はますます拡大方針をとり、97年にはホテルやスポーツ施設の運営を始めてしまった。
「日本経済は必ず立ち直り、かつてのバブル経済が再現するはずだ」そう思っていたのだろうか。
企業はかずさアカデミアパークに見切りをつけたが、一方県は前のめりになっており、このあたりが企業体と役所とのセンスの相違だ。
第3セクターとは県や市町村と金融機関、企業が一体となって事業を行う形式だが、誰が社長でもうまくいくのは経済が右肩上がりの時だけで、不況になれば経営者の能力がその組織の浮沈を左右する。
注)4代続いた社長はすべて県のお偉方だった。なお第3セクター方式の場合はほとんどが県や市町村が運営の責任を負っている。
地方公共団体が企業のまねごとをしたと考えるとイメージがわく。
99年に策定した長期計画では「パークを中心に研究機関の集積ネットワークが進み、国際的水準の研究開発がされる」とばら色の夢をこの段階でも追っていたことが分かる。
長銀や日債銀や北拓や山一證券が倒産しても、かずさアカデミアパークはいささかも影響がないと思っていたとは信じられないような見通しだが、それが役所というものだろう。
注)企業は失敗したら倒産するから甘い見通しを立てないが、役所は絶対につぶれないのでどうしても自分にとって都合の良い見通しを立てようとする。
しかしその後は01年から企業の協力金は得られなくなり、金融機関からの借り入れも04年、05年を最後に融資を受けられなくなった。
債務超過の事業に金融機関は融資するわけにはいかないからだ。
その後は県だけが頼りで、毎年3~5億円の赤字を埋めてもらってきたが、森田知事に代わってからはそれも万事窮すになった。
「この問題は俺の責任でないから、これ以上赤字資金は出さない」ということだろう。
今思えば99年の段階で、まじめな経済予測さえしていればその後発生した金融機関からの借入金約9億、県のパークへの損失補償分の貸出金約17億の計26億円は不要だったことが分かる。
いつものいい加減な需要予測で失敗を糊塗してきたつけが26億円だが、今ようやくバブル計画のつけを払うことになったようだ。
注)県が最終的に負担する金額は約60億円。内訳は出資金35億、貸出金17億、損失補償9億。
なお、かずさアカデミアパークの他の出資者は、木更津市5億、君津市2億、袖ヶ浦市1億、富津市1億、その他は金融機関と企業。
出資金合計は約98億円。
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コメント
はじめまして。30代の元千葉県民です。
かずさは県が推し進めた成田空港・幕張新都心との「三角構想」の一翼との位置づけでしたが、おおよそ無理があることは当時子供だった私でもわかる話でした。
一方幕張も当初はソニーの開発部門なんかがどーんと来るって話でしたが撤退が相次いで結局は新習志野側はほとんど更地で、計画の半分くらいのままですね。
横浜のみなとみらい地区も似たような状況でしたが、数年前のプチバブルの時に業務地区を住宅を建てられるように都市計画変更し、マンションデベに土地を売り払うことに成功しました。
しかし結果として超高層マンションが高密度に建ち並ぶこととなり港と街が近接するヨコハマ独自の都市景観を破壊してしまったと思います。
日本では中長期の地域戦略を練るというのは難しいことなんでしょうかね。
(山崎)幕張のように好立地でも実際は半分程度しか埋まっていないのですから、かずさのある木更津地区では難しいことが良く分かります。
アクアラインも当初は高額すぎて敬遠されていたのですから、アクセス条件としては最悪だったといえそうです。
投稿: 元千葉県民 | 2010年2月 2日 (火) 11時52分
不正経理の徹底捜査については、野党県議のblogでの評価もあわせて多面的に見る必要があると思います。
岐阜県でも同様な不正があったのですが、その後の対処が参考になりそうです。
http://kenken55chiba.blog54.fc2.com/blog-entry-90.html
その後の動きですが、どうも・・・です。
http://kenken55chiba.blog54.fc2.com/blog-entry-92.html
http://kenken55chiba.blog54.fc2.com/blog-entry-104.html
http://ken-net.gr.jp/kawamoto/?p=1258
http://ken-net.gr.jp/kawamoto/?p=1247
(山崎) なかなか興味のある記事ですが、別途別の機会に分析してみます。
投稿: 横田 | 2010年1月28日 (木) 20時07分