« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

(21.12.31) 09年10大予想の結果報告 その3

Dscf0143

 09年10大予想NO7からNO10までの予実対比の結果です。

⑦ 不動産価格は引き続き低下する。

 アメリカとイギリスの不動産価格はもう一段の大幅な低下が見込まれる。従ってサブプライムローンを組み込んだ証券化商品の含み損は拡大し、各国の大手商業銀行にも甚大な影響を与える。
日本の金融機関でも証券のウェイトの大きな金融機関の経営が苦境に落ちいる。

(結果)
 アメリカの住宅価格はピーク時から35%低下したあたりで下げ止まりの傾向が見えてきたが、これはもっぱら政府支援の税控除措置等の恩恵によるもの。
税控除措置がなくなれば、専門家は45%まで低下すると予想している。
一方商業用不動産価格の低下は今始まったばかりであり、どこまで低下するか分からない。
不動産価格低下の影響は大きいが、サブプライムローンを元に組成した証券化商品は時価会計による評価を停止しているため、本当の含み損は隠蔽されてしまっている。

 イギリスについてはアメリカ以上に価格低下がひどい。

 日本の金融機関については農林中金や日本生命等に大きな影響を与えているが、こちらもアメリカに倣って時価会計の運用を弾力化しているので明確な損失は分からない。

(評価)
 住宅価格については下げ止まり傾向があるが、一方商業用不動産産価格は暴落しつつある。
トレンドとしては引き続き低下傾向を示しており、ほぼ予想通りだが時価会計を止めて損失を隠蔽しているため、本当の損失規模は不明になっている。

Dscf0130

⑧ 韓国は実質破算、北朝鮮は実質張成沢政権になる。

 韓国の経済は完全に行き詰り、日本と中国の通貨スワップ協定によってかろうじて命脈を保つことになる。北朝鮮の金正日総書記は死亡するか、死亡しないまでも完全に判断能力を失う。結果として張成沢氏が実権を握る。

(結果)
 韓国経済は中国経済の立ち直りにつられて急速に立ち直った。中国や新興国に対する輸出が大幅に改善する一方輸入が減少している。
国内経済は政府の支援策で自動車販売が持ち直し、余剰資金が不動産市場に流入し、価格が上昇している。
09年通期でGDPの伸び率はほぼ0%程度になる模様。

 一方北朝鮮では金正日氏の健康問題は小康状態を保っており、一時の超激やせからは回復している。ただし激務には耐えられないらしく、後継者として3男の金正雲氏を指定して、権力移譲がスムーズに行くような環境作りを急いでいる。

 たとえば最近実施した100分の1のデノミについては北朝鮮内部の小金持ちの資産を取り上げ、いっぽう軍や官僚層の給与を上げて(一部の報道では以前と同じ金額の給与を支払っているため、100倍の給与アップになったとのこと)、核心層の支持を得ようとする措置といわれている。

(評価)
 朝鮮関連ではまったく予想がはずれ完敗だ。
韓国経済は現在中国経済の衛星国のような立場になっており、中国経済の立ち直りの影響を真っ先に受ける構造になっている。
私は中国経済の09年度のGDP成長率0~+2%程度実際は+8%程度)と予想していたため、韓国経済の立ち直りを予想できなかった。

 北朝鮮については金正日氏がなかなかタフに生きており、当面いつ死亡するかは予想が難しくなっている。
人の健康のことは良くわからないというのが実態だ。


Dscf0156

⑨ 株価は09年中は低迷する。

 現在の株価はアメリカの株価の動向によって全て決まっている。09年度にアメリカ経済は立ち直ることはないので傾向的に株価は低下する。それにつられて各国の株価も低迷し、日本の株価も上がらない。

(結果)
 アメリカも日本も3月はじめ頃を底に株価は徐々に上昇しており、NYダウ平均は年初の9000ドルから現在は10000ドル前後で推移、日経平均も9000円から10000円前後になっている。
一方香港上海の株式は年初来倍程度にまで上昇しており、新興国の株式は概して好調といえる。

 先進国は株価はやや持ち直し気味で、一方中国を始めとする新興国の株価はミニバブルの状態といえる。
株価上昇の要因は各国の金融当局がジャブジャブの資金供給をしたため、その資金が株式市場に流れ込んでいるため。

(評価)
 先進国の株価は低迷しているがトレンド的には上昇、一方新興国の株式はミニバブル状態で、私の予想は外れた。
各国の類を見ない金融緩和が株式を押し上げており、その動きを捕らえることに失敗した。
先進国の実体経済は相変わらず悪いが、中央銀行がジャブジャブ資金供給を行えば株価は上がるという事例を示している。

Dscf0164

⑩ 地球環境問題は主要課題から外れる。


 経済が低迷し、実質的に二酸化炭素等の排出量が減少する。地球環境は自然に良い方向に向かう。各国は自国の経済振興に全力を注ぎ、地球環境問題は棚上げされる。

(結果)
 09年度に限れば先進国の二酸化炭素排出量は減少している。一方中国等の新興国の排出量は経済の拡大に伴い増加している。

 コペンハーゲンで開催されたCOP15はまったく何も決められずに物別れに終わっており、問題はCOP16に持ち越された。
環境問題は新興国中国と、先進国ではアメリカだけの問題になっており、西欧や日本は本質的には問題を解決している。

 しかし中国もアメリカも経済を最優先にしており、自国に有利な条約以外は認めようとしない。

 実質的には地球環境問題は棚上げされたが、地球環境が自然に良い方向に向かっているかどうかは資料不足で判断できない。

(評価)
 COP15が何も決められなかったことは予想通り。先進国は経済が不況でその分二酸化炭素の排出量は減少し、緊急性が和らいでいる。
一方中国等の新興国の経済は拡大しており、こちらは二酸化炭素の排出量を増加させている。

 トータルとして環境が改善されたか否かは、統計数字の確定を待たなければ分からない。
環境問題が主要課題から外れるというのは言いすぎだが、環境派が期待したような「環境問題が世界の主要課題になる」ということに失敗したことだけは確かだ。


 

 

| | コメント (0)

(2112.30) 09年10大予想の結果報告 その2

Dscf0101

 09年度10大予想NO4からNO6までの予実分析を以下に記載する。
実はこの予想の中でもひどいおおはずれになったのがここで、本当はそっと記事を抹消したいくらいなのだが、それをしたら未来がないので、恥を忍んで記載する。

④ 原油価格は30ドル前後。穀物価格もバブル発生前の価格に戻る

 原油に対する需要はGDPの落ち込みと同程度落ちる。一部に言われているイスラエルとアラブの全面戦争は起こらない。従って原油の価格が上昇する要因はない。原油価格で経済運営をしてきたオペックおよびロシアの経済は低迷する。
また穀物価格も投機資金が剥げ落ちるのでバブル発生前の水準(現在の半値程度)に戻る。

(結果)
 30ドル台だったのは3月頃までで、4月が40ドル、9月に65~75ドル、10月に入り80ドルになってしまい、ゴールドマン・サックス100ドル台が見えてきたといっている(ゴールドマン・サックスそう言っているということは、そうするということと同じ)。
また穀物価格もバブル発生前の1.5倍から2倍程度で推移しており、これは09年1月時点の価格とほぼ同じで、価格が低下したとはいえない(なおバブル時には約3倍値上がりしていた)。

 イスラエルとアラブの戦争は起こっておらず、またロシア経済は低迷し、オペック周辺ではドバイ経済が崩壊したが、オペック全体で低迷しているとはいえない。

(評価)
 各国の金融緩和策によって、市場に資金があふれており、原油や穀物に対し投機資金が流れている。
私の基本的認識間違いは金融の大幅緩和が新たな物バブルに移行することを読めなかったことで、実体経済だけの分析の限界を露呈してしまった。
たとえ実態がどんなに悪くても金が有り余ればものの値段が上昇するというのが市場経済というものだ。 

Dscf0086

⑤ 円高は70円程度まで進む。

 オバマ政権の大量のドル供給によってドルは常にドル安圧力にさらされる。資金は相対的にまともな経済運営を行なっている日本に集中して70円程度まで円高は進む。多くの輸出産業は国内では成り立たなくなるため国外での生産に比重を移す。輸入産業は大幅な利益が出る。

(結果)
 09年11月末のドバイショックで一時的に84円台まで円高になったののの、70円になることはなかった。
日本経済運営が相対的にまともかどうかも疑義があり、特に国債発行残高はどの先進国よりも多い。

 輸出企業は中国の経済回復に伴い業況は改善しているが、設備投資は中国をはじめとする国外にシフトして、国内での生産は現行の設備の範囲内で十分できる。
輸入産業は相対的に収益が上がっている。

(評価)
 基本的な方向感は正しいが、予測に書いたようにはドラスチックな経済状況にはなっていない。
ドバイショックのような問題が起こると円にシフトする傾向があるが、落ち着くと再びドルに回帰している。

 長期的な展望としては正しいが、短期の経済予測としては失敗してしまった。
 

Dscf0103

⑥ 市場万能主義に歯止めがかかる。

 オバマ政権もサルコジのEUも自由すぎる市場に歯止めをかける。特に投資銀行ヘッジファンドレバレッジを現行の原則無制限(実際は30倍程度)を商業銀行並みの11倍に抑える。
これにより市場のかく乱要因は大幅に低下する。

(結果)
 オバマ政権は国家資金が投入された先の役員報酬に上限を設け、またヘッジファンドを登録制にしようとしているが、上院共和党の抵抗が激しく実現を見ていない。
唯一の成果はイギリスとフランスで、国家資金が投入された金融機関のボーナスが多額(約350万円)になった場合、税金を科す制度が設けられただけ。

 商業銀行も投資銀行も以前より保守的な運用をするようになっているが、再びコモディティバブルが発生しており、ゴールドマン・サックスヘッジファンドの生き残りがリーマン・ショック以前と同じ行動をとるようになってきた。

(評価)
 人類は英知があり、二度とバブルを発生させないような措置を取ると思っていたが、まったくの期待はずれになっている。
特にアメリカでは住宅バブル崩壊をコモディティバブルで補おうとしており、金融緩和策が継続される限り、この傾向は変わらない。

 人類の英知に期待した私が愚かだった。

| | コメント (0)

(21.12.29) 09年10大予想の結果報告 その1

Dscf0105

 今年の1月3日毎日新聞の向こうを張って、09年の10大予想をしてみた。今その予想を振り返って見ると大枠であっているものと、まったく外れたものがあり、予想とは実に難しいものだとしみじみと思っている。

 もっとも何も言わないで結果だけを見て「実は私はそう思っていた」なんていわないようにブログに明記したのだが、今見ると羞恥の至りだ。
こんなに外れるものだろうか・・・・」下を向いている。

 しかし重要なことはなぜ外れたかで、その予想と実際の差異分析をしっかりしていけば、今後の予想の精度が向上していくはずだ。
以下に差異分析の結果を記載する。

 なお今回は10大予想のうち最初の3つについて差異分析を行ったもので、残りは明日より順次掲載をする。

Dscf0122

① 麻生政権は9月の任期一杯まで解散しない。

 今解散すれば小沢民主党が3分の2の多数を占める。従って麻生政権としては絶対に解散できない。9月の総選挙後は一旦小沢政権が出来るがすぐに行き詰まり、政界再編が進む。

(結果)
 麻生内閣の任期は09年9月だったが、解散総選挙はその約1ヶ月前に行われた。日本の選挙制度では引継ぎ期間というものがないため、任期満了まで政権を担当すると空白期間ができてしまう。
それを避けるため1ヶ月前には解散しなければならなかったのだが、麻生政権が任期ぎりぎりまでがんばったところは予想通りだった。

 なお、小沢代表は公設秘書が政治献金疑惑で逮捕されたのを受けて09年5月に辞任し、その後を鳩山氏が継いだが、8月の衆議院選挙で約3分の2の多数で民主党が圧勝した。

 民主党は参議院での過半数確保のため国民新党、社民党との連立政権になっている。
鳩山首相は普天間基地問題で何度もその主張を修正し、現在はグアムへの全面移転は難しいとの立場を表明した。
社民党はこれに激しく反発しているが、まだ連立政権の分裂という段階までは行っていない。

(評価)
 任期ぎりぎりまで総選挙が行われなかったこと、および民主党がほぼ3分の2で大勝をしたことまではほぼ予想どうりだったが、政界再編まで予想したのは早すぎた。
また、小沢氏の辞任についてはまったく予想の範囲外だったが、ここまで読むのは1月段階では無理というものだろう。

 基本的な大枠としては正しい予想といえそうだ。
 
Dscf0123

② アメリカのビッグスリーは行き詰まり連邦破産法11条の申請をする。


 アメリカ政府の金融支援によってもビッグスリーの経営は安定しない。結局破産法11条を申請し、社債、株式、労働者の賃金等の切捨てを行なった後に再生を図ることになる。クライスラーは実質的に解体され、ビック2となる。

(結果)
 GM09年6月クライスラー09年5月連邦破産法11条の申請をして倒産した。
その後GMは債務超過分約8兆円のうち5兆5千億円は政府の支援、残りの債務はほとんど踏み倒すことで再建の軌道に乗せることになった。
一方クライスラーフィアットに実質的に買収された。

 09年度の最終損益は両社とも赤字から免れていないが、第3四半期(7月~9月)から政府の支援買い替え補助や減税)で販売数量は一時的回復基調にはある。
ただし、フォードやトヨタ、ホンダには大きく水をあけられ前途は厳しい。

(評価)
 ほぼ予想通りの推移をたどっている。ただしクライスラーが解体されるとの判断については現状では不明というところ。もう少し推移を見ないと分からない。

Dscf0134

③ 世界のGDPは▲3%~▲5%となり、世界的なデフレが進む。

 先進国経済は▲5%程度の大幅な落ち込みとなる。新興国についてもプラス成長は難しい。中国の成長は0%~2%の間。

(結果)
 世界経済は第2四半期を底に、第3四半期(7月~9月)に入り回復基調に入った。
第4四半期についても横ばいか改善の方向にあり、世界恐慌の危機は去ったと評価されている。

 各国政府が財政・金融政策をふる活用してジャブジャブの資金供給をした結果、下期に入り金、石油、希少資源等でバブル状態になり、ゴールドマン・サックスは史上最高益を稼ぎ出し、市中銀行も軒並み収益が改善してきた。

 世銀09年6月段階では世界全体のGDPは年率で▲2.9%と予想していたが、下期に入り世界経済が急回復してきたことから、年率で▲1~▲2%程度になる可能性が高い。
中国のGDPは年率で+8%を越えると中国政府が発表している。

 なおデフレについては世界的規模で発生しており、実体経済では需給ギャップが大きい。

(評価)
 09年度の世界経済については、基本的に間違った見方をしてしまった。私は1年を通じてGDPは下がり続けると判断していたが、実際は第3四半期から回復基調になっている。

 この原因は各国政府の前例を見ない財政・金融政策の結果だが、特にアメリカや中国が金融政策において昨年度の2倍から3倍程度の資金供給を行っている。
このため市中には資金がジャブジャブにあまり、そうした資金が金・石油・希少資源等のコモディティ投資に向かっている。

 今回の金融危機の原因だったサブプライムローンバブル崩壊を、新たなコモディティバブルで隠す戦術であるが、こうした流れを読むことができなかった。

注)ITバブルの崩壊をアメリカでは住宅バブルでおお隠すことに成功して、一時は投資銀行が我が世の春を謳歌していた。
今回は住宅バブル崩壊をコモディティバブルで覆い隠そうと言うものだが、世界各国が指標金利を上げ、資金の貸出しを絞るまではコモディティバブルは継続する。

 

| | コメント (0)

(21.12.28) 年賀状の季節 グリーティングカードで済ませよう


Dscf0129

 いつもこの時期になると憂鬱になるのは年賀状を書かなければならないからだ。
定年退職して3年以上たったのだから、世間様との形式的なお付き合いはしないで済みそうなものなのだが、そう割り切れないところが苦しい。

 こちらが書かなくても相応の年賀状が来てしまうし、来たら返事を書かないわけにはいかないので、「それくらいなら最初から書いてしまおう」ということになる。

Dscf0112

 もっとも最近はパソコンで住所録さえ登録しておけばあて先の印刷は可能なのだが、悲しいことに我が家のインクジェットプリンターの印刷速度は遅い。
住所録の印刷だけで半日仕事になってしまう。
何とかならないものだろうか

 悩んだ結果2年前からメールアドレスが分かっている先は、グリーティングカードを送ることにしている。
このグリーティングカードは無料の場合がほとんどで、元旦の適切な時間帯に配信してくれるし、メッセージも十分書けるだけの容量がある。

 定年退職者にとって一番の魅力は無料ということで、はがき代も印刷代もかからず、それでいてなかなかこった年賀状ができるので嬉しくなってしまう。
だがこの年賀状をグリーティングカードで済ます人が増えると郵便事業会社は大ピンチになるらしい。

Dscf0127

 もともと郵便事業は赤字体質なのだが、唯一この年賀はがきで黒字を稼ぎ出してなんとか収支トントンまでもっていくのが、郵便事業のビジネスモデルになっている。
ところが通常の郵便が電子メールに代替され、年賀はがきまでグリーティングカードに代替されてしまえば、郵便事業の生き残るすべがなくなってしまう。

 亀井金融・郵政担当相が「地方の郵便局を行政の窓口にしよう」といっているのは、郵便事業が21世紀のネットワークの時代から完全に取り残され、地方の郵便局にとって行政のサービスぐらいしか仕事が残らないからだ。

 今日一日はグリーティングカードの作成に費やし、どうしてもはがきでないと困る先だけ年賀はがきにするのだが、できるだけはがきは作成しないつもりだ。
ネットワークの時代とは、あらゆる通信手段が無料になっていく時代なのにわざわざ金をかける気持ちにならない。

 おそらく私が神様のお迎えを迎える頃には、「かつて郵便事業があって、毎年正月には年賀はがきの交換をしていたんだ」なんて話をしているのではなかろうか。

注)ただしグリーティングカードの作成にも問題がある。今回は楽天の無料サービスを使用しているが、電子メールでは自由にやり取りしているメールアドレスを、なぜか受け付けない場合がある。
なぜ、このアドレスではダメなのだろうか」分からないことが多い。

 

 

| | コメント (0)

(21.12.27) NHKスペシャル マネー資本主義 集大成版 その2

211224_008_2

 今思えば1995年から2000年までの期間はアメリカにとってアメリカ経済が強いドルITバブル、そしてグローバリゼイションに沸いた至福のときだったことが分かる。
一方日本では長銀、日債銀、拓銀等の日本を代表する金融機関が次々に倒産していった時期だ。

 当時私はある金融機関にいたが、金融庁の強い指導の下に日本の金融機関の検査をアメリカ化することを求められていた。
アメリカの金融機関が使用していたチェックリストをそのまま日本語に訳し、それを厳格に適用することが正義のような感覚だった。
日本の金融機関もグローバルスタンダードを導入して時価会計に変更し、資産・負債の透明化を図らなければならない」金融庁のお達しである。

211224_013

 しかし2000年の末にITバブルが崩壊すると、FRBのグリーンスパン議長は政策金利を6.5%から1%まで引下げ、金融の大幅緩和を行うことで新たなバブルを作り出すことにした。
このITバブル崩壊をあらたな住宅バブルで覆い隠してしまう戦術は、大成功を収め06年に住宅価格がピークを打つまでグリーンスパンは世界の賞賛を浴び続けていた。
グリーンスパンがいる限りアメリカ経済は安泰だ

注)住宅価格が下降し始めてから、バブルが崩壊するまで約1年のタイムラグがあった。2007年の夏、突然にヘッジファンドの倒産が始まり、住宅バブルが終焉したが、一般の人はさらに翌年のリーマン・ショックまでバブルが終わったことに気づかなかった。

 この番組ではなぜベア・スターンズリーマン・ブラザーズという投資銀行下位2行が倒産したかの謎解きをしている。
ゴールドマン・サックスのような高収益企業になるために、この2行は禁断の木の実、サブプライムローンに手を出していたというのが結論である。

211224_015_2

 サブプライムローンとは自己資金では絶対に返済が不可能な人に貸し出した住宅ローンのことである。
このローンの最大の特徴は「住宅価格が上昇するならば、その上昇分を担保にさらに融資が受けられ、それを返済にまわすことができる」というもので、住宅価格が横ばいになったり、下落したら完全にアウトになることが確実な融資といっていい。

 通常ならばこうした融資を担保とした証券化商品などは誰も購入しない。
これを購入させるためにこの2社は手品のような方法を編み出した。
ヘッジファンドを子会社化して、さらに住宅ローン会社まで傘下におさめ、丸抱えでリスクの所在を不明にしたのだ。

 住宅ローン会社にはサブプライムローンを無制限に販売させて、それを傘下のヘッジファンドに購入させる。
ヘッジファンドは商業銀行や投資銀行のような業務の開示義務はないから、外部からは中身が分からない。

注)投資銀行がサブプライムローンを大量に仕込んでいると、中身がばれてしまうためヘッジファンドを隠れ蓑にして、情報開示をしなかった。
なお、ヘッジファンドはほとんどがバミューダ諸島のような場所に本社を置いていた。

211224_016

 この中身の分からないヘッジファンドサブプライムローンを対象に投資銀行は、金融工学でリスクを閉じ込めたように見せ、AAAという最高級の格付の証券化商品に衣替えをした。

注)実際はサブプライムローンだけでなくプライムローンやクレジットカード、自動車ローン等のありとあらゆる債権をごちゃ混ぜにして、新しい証券化商品にでっち上げたので、外部からこれを評価することはまったく不可能になった。

 当時、住宅バブルのひどさを恐れたSEC(証券取引委員会ヘッジファンドを登録制にして規制に乗り出そうとした。
あまりにヘッジファンドが巨大になり、その実中身がまったく分からないので危険だ
しかしこの試みは裁判でSECが敗退した。
SECにはヘッジファンドを規制する法的権限はない」との判決がでたからである。
当時の財務長官ポールソンはまったくヘッジファンドを規制するつもりはなかったので財務省は静観して法律を変えようとはしなかった。
ヘッジファンドこそ、アメリカ経済の力の源泉だ
ここでも規制当局は市場に負けている。

 08年5月ベア・スターンズが傘下のヘッジファンドの倒産により、自らも実質的に倒産した。
投資銀行や普通銀行が倒産する端緒がほとんど傘下のヘッジファンドの倒産によるのは、そこにサブプライムローンのようなクズ債権を持たせているからである
こうしてヘッジファンドというものの正体がばれてきた。
そうだったのか。ヘッジファンドとはクズ債権のたまり場だったんだ

 さらにサブプライムローン以上の問題が発生していた。クズ債権を黄金に変えるさらに高度な商品の開発がおこなわれたからだ。
CDSである。
サブプライムローンが禁断の木の実のスタートとすればCDSクレジット・デフォルト・スワップ)はそのゴールというようなものだ。
CDSとは会社保障のようなもので、たとえばリーマンブラザーズはAAAだというようなものだ。

 通常ヘッジファンドが組成した証券化商品を販売するとき、同時にそのヘッジファンドCDSも同時に販売する。
この証券は絶対に安全です。AIG(世界最大の保険会社)がヘッジファンドを保障していますので、たとえヘッジファンドが倒産してもAIGが保障してくれます

注)たとえば10%の利回りの証券化商品があった場合、3%を保険料としてCDSの引き受けてに支払い、顧客には7%の商品として販売する。

 当初はヘッジファンドが倒産するとはおもわれていなかったから誰もがCDSの引き受けてになろうとした。
こうしてCDSビジネス証券化商品の花形になってしまった。

背後にリーマン・ブラザーズがついているし、さらにAIGが保障しているなら買わない手はない。しかも信じられないくらい高利回りだ

 これがリーマン・ショックまでの世界だった。

 それから1年、確かにサブプライムローンCDSはまったく売れなくなったが、それに代わって物(金、石油、希少資源等)を担保とする金融化商品が花盛りになっている。

 サブプライムローンがはじけて損失が発生したが、その穴埋めを金や石油を中心とするコモディティバブルで補おうという試みだ。

なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」強欲だからである。



 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.26) NHKスペシャル マネー資本主義 集大成版 その1

内容が長く、とても一回ではブログに記載できないので2回に分けて掲載します

211224_001

 12月20日に放送されたNHKスペシャル、マネー資本主義は4月から7月にかけて計5回放送されたシリーズの集大成版だった。
このシリーズはNHKが放送したスペシャルシリーズの中でも、特出に値するほど内容が深い。少なくとも経済シリーズの中では最高傑作と言ってよいと思う。

 なにしろこの番組を見ることによって、通常の人にはまったく理解できなかった投資銀行、ヘッジファンド、ディリバティブ、金融工学について基本的な知識が身についたのだからすばらしい。

 私は長く金融機関にいたのにもかかわらず、最近までマネー資本主義というものが良く理解できなかった。

① 投資銀行とはどんなもので、どんな仕事をしているのか?
② なぜヘッジファンドというようなものができたのか?
③ 資産の証券化はどのようにして始まったのか?
④ 金融工学の言うリスクを閉じ込める技術とは何か?
⑤ なぜ金融の自由化が必要だったのか?
⑥ バブルはなぜはじけたのか?


 こうしたことがよく分からなかった。

 このシリーズによってその大枠を知ることができたが、なぜこの時期に集大成版が放送されたかは、ふたたびウォール街の逆襲が始まったからである。
信じられないことにバブルが再発しており、いつこのバブルがはじけるかが専門家の主要テーマになっている。

 このNHKの特別放送はリーマンショックからたった1年でバブル崩壊をすっかり忘れた人々に「なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」ということを問うている番組だ。

 昨年世界中が「すわ、大恐慌の二の舞か」と震え上がってから一年、アメリカではゴールドマン・サックスが史上最高の収益を稼ぎ出し従業員に破格のボーナスを振舞っている。
またCTAと呼ばれる商品投資顧問業者(ヘッジファンド)が、リーマンショック後もしぶとく生き残り、石油や金、ユーロに投資をして莫大な収益を上げている。
機関投資家はヘッジファンドに対し、より収益を上げるようにはっぱをかけている様は、リーマンショック以前とまったく変わりが無い。

 リーマンショック直後はG20で各国の首脳が集まり、投資銀行やヘッジファンドに縛りをかけようと合意した。
しかし実際はフランスとイギリスが公的資金を投入した金融機関で高額なボーナスを支給した場合に限り、特別税を徴求すること以外に実質的な規制はかけられていない。

注)両国では360万を越えるボーナスの半額を特別税として期間を限って徴求することにしている

 アメリカではすっかり規制の熱気が薄れ、アメリカ上院の公聴会ではヘッジファンドや投資銀行に対する規制反対の声ばかりが強調されていた。
自由な市場に規制をかければ、香港に市場を奪われてしまう

注)1998年当時の規制反対理由は「ロンドンに市場を取られてしまう」だった

 現在アメリカを始めとする世界各国の政府が低金利政策をとり、またアメリカでは焦げ付きそうな住宅ローン担保債権や返す当てのないCPまで買い取って、じゃぶじゃぶの金融緩和をしているが、そうした資金が株式市場、証券市場、石油や金などのコモディティ市場に流れ込み、リーマンショックまえと同じようになってきた。

注)リーマンショックまで1兆ドル(約90兆円)だったFRBの資産は現在2.3兆ドル(約207兆円)と2.3倍にも膨れ上がった。この膨れ上がった約120兆円が株式、石油、金、外貨等に流れている。
再び石油は100ドルを目指し、金は史上最高値になり、新興市場の株式はリーマンショック前の相場に近づきつつある。


 リーマンショックでヘッジファンドは約半分が倒産したり清算されたが、生き残ったCTAなどのヘッジファンドは再び高収益証券に投資をしていると年金資金などの機関投資家に売り込んでいる。
これはいままでの証券化商品とは異なり、絶対安全確実です。なにしろ投資先が金と石油です

 今回の番組をみて、アメリカの金融政策とは規制当局と自由を求める市場の戦いであり、結果として規制当局が敗北し、自由な市場がバブルを作っては崩壊していく過程であることが良く分かった。
なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか?」強欲だからである。

 アメリカの規制は大恐慌のあと制定されたダグラス・スティーガル法に始まる。この法律は他のどの国よりも厳しく金融機関を規制するもので、最大のポイントは商業銀行と証券会社を分離したことである。
大恐慌前の金融機関が株式にのめりこみ、倒産した教訓を基にしたものだ。

注)この法律によって商業銀行と投資銀行(証券会社)は分離された。他に商業銀行は預金利率の上限が決められ、州を越えた営業は禁止された。一方投資銀行は株式の仲介等の地味な取引だけを行なうように制限された。

211224_004

 この規制の網をかいくぐって、現在のモンスターのような投資銀行に変身させたのは1984年ソロモンブラザーズモーゲージ債を開発したときだと言う。
モーゲージ債とは住宅ローンを証券化したもの
で、このときから投資銀行は仲介業務ではなく自ら証券を組成して販売するようになった。

注)このモーゲージ債は高利回りだったため、爆発的な人気を呼んだ。商業銀行の利回りは最高限度が決められていたが、投資銀行はこの制約がなかったため、どのような高利回りの設定も可能だった。
投資銀行の収益は拡大し、商業銀行を凌駕するようになったのがこの頃である。
そしてアメリカの若者の勤めたい職種の第一位が投資銀行になった。

211224_005


 思えば1984年は金融規制が崩壊する端緒となった記念すべき年(あるいは悲劇の誕生の年といえる。
この年カリフォルニアで規制撤廃法案が可決された。撤廃の最大のポイントは資金の出し手であった年金基金のような組織が自由に投資先を選べるようにしたことである。
これで投資銀行はいくらでも資金を得ることができるようになった。

注)それまで年金基金は国債のような安全確実な投資を求められ、株式の投資やモーゲージ債への投資については規制があった。これを利回りを求めてどこに投資しても良いというように変更したもの。
なお、アメリカの金融機関は州ごとに設置されていたので各州ごとに法律の改正をしなければならなかった。


211224_006_3
(アメリカ中の資金がウォール街に集まっている様

 当時日本は未曾有のバブルに浮かれており、アメリカのこうした金融資本主義の動きを察知することができなかった(私も当然知らなかった)。
東京だけの地価で、アメリカ全体が買える」と豪語していたときで、アメリカが産業資本主義を捨てて、金融資本主義で再生するなどとはごうも思って見なかった。
21世紀は日本の世紀」と言っていたあの頃である。

 しかしこの債権の証券化という手法は禁断の木の実だったことが良くわかる。住宅債権が証券化できるなら、自動車債権でもクレジットカードでも何でも証券化できる。
資源でも食料でも債権が発生する場所ならすべて証券化が可能だ。

 問題はそうした債権の貸倒確率さえ分かれば、残りを優良債権として証券化して販売できることに気づいたことだ。
それが金融工学で、金融工学の専門家がこの貸倒確率を計算し、不良債権の浄化に成功したのだと言う。

注)ただし、この手法は過去の倒産確率を計算するもので、急激な経済状況の変化には対応できない。住宅価格が急激に下がったり、自動車ローンが信じられない速度で悪化すると、今までの優良債権はすべてクズになってしまう。それがリーマンショック後顕在化した。

 さすがにこうした市場の暴走を懸念したのがCFTC(米商品先物取引委員会)のグリーンバーガー1998年、「投資マネーを誰も監視していないのは問題だ」と規制案を提案したが、ルービン財務長官グリーンスパンFRB議長から大反対にあって規制はつぶされたと言う。
放送では「お前が規制などすると、経済危機が起こるがその責任を取れるのか」と財務省のNO2からCFTCが脅されらと証言していた。

211224_009  (世界中の資金がウォール街に集まっている様

 この頃はアメリカがITバブルを謳歌していた頃で、ルービン財務長官強いドル政策が最も効果を挙げ、世界中の資金がアメリカに集中していた頃である。
アメリカが最も栄えている時期に規制なんかできるか。世界をすべてアメリカナイズしろグローバリゼーションと言う言葉が世界を席巻していた。

 1999年ダグラス・スティーガル法完全撤廃され、これによって商業銀行も自由に投資銀行業務ができるようになった。
自由な市場が勝利し、モンスターが思う存分暴れることが可能になった。

次に続く



 

 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.25) ちはら台走友会のクリスマスプレゼント

211223_030

 ちはら台走友会では毎年23日の休日にクリスマスランを行うことにしている。練習走に使用させてもらっているかずさの道周辺に住んでいる子供たちに、感謝の印としてクリスマスプレゼントを配りながらランをする試みだ。
今年で4回目になる。

 今回はクリスマスプレゼントとして600個のお菓子を用意したが、この資金の元は走友会が地域のお祭り等で模擬店を出して蓄えた資金だ。
当日の朝、みんなで集まって袋詰めにするのだが、今回は人数も多かったので1時間程度で袋詰めが完了した。

 サンタランのスタートは2時なので、その前に全員サンタやトナカイに変身だ。
公園前には張り紙がしてあり、多くの子供たちがサンタクロースを今か今かと待っていてくれる。

211223_018

 とてもうれしいことにこの試みはすっかり地域のイベントとして根付いてくれた。はじめる当初は「変なおじさんたちがお菓子を配っているので、近づかないように」なんて警戒されるのではないかと心配したが、まったく杞憂だった。
すっかり子供たちの人気者になっている。

 衣装は毎年出店で蓄えた資金から少しずつ増やしており、今回は8組のサンタクロース、2組のトナカイさん、それと来年の干支の1組のとらさんのぬいぐるみが用意できた。

注)ただし一部は個人の縫いぐるみを持ってきてもらっている。

 スタート地点はかずさの道のちょうど中間地点ぐらいなので、二組に分かれてサンタランを出発した。
道行く人に「メリークリスマス」お大声で声をかけると、みんな気持ちよく「メリ-クリスマス」と返事をしてくれる。

 ちはら台は毎年人口が増えている関係もあって、子供たちの数も増加しており、お菓子が不足しそうになった。
来年はお菓子をもう少し増やす必要がありそうだなY会長の述懐だ。

211223_024

 今回のクリスマスランについてY会長がグループメールに記載していますので、一部抜粋して掲載します。

今年も成功です!
14:00南中スタート。
今回はトナカイになって、東、水の江方面行きました。
快晴、気温もほどよい。
鈴を鳴らして、トラになった山崎さんと「メリークリスマス!」と手を振り声かけながら。
水の江公園は去年よりこどもたちが少なかったようです。
これはプレゼント余っちゃうか、と心配し、人影もまばらなかずさの道を東へ。
ところが、御影台公園が見えてくると、いるわいるわ、ちっちゃい子供たちがいっぱい走ってくるわ!
211223_038

去年の倍くらいいるんじゃないかというくらい、大賑わい。
アッというまにプレゼントがなくなっちゃいました。14:30予定通り東端到達。
わずかに残ったのを持って住宅街からバス通りを車に手を振りながら戻ってきました。15:00前。
西チームはなかなか戻らず、15:30頃でした。
売れ行きよくなく、もどりながらだいぶ回ったとか。
それでも準備した600個、全部配れました。
ラン参加は12名。汗もかきながら、みなさん、ありがとうございました。
今年も笑顔いっぱい、元気いっぱい、気持ちよいサンタランでした。

 

| | コメント (0)

(21.12.24) 痴漢防止カメラの設置は実に喜ばしい 埼京線

202_001

 毎日新聞によるとJR東日本は28日から、東京と埼玉を結ぶ埼京線の一部の電車内に防犯カメラを試験的に設置すると言う。
なぜ埼京線かというと都内の電車内で痴漢行為が最も多い路線がこの埼京線で、痴漢仲間を募るネット掲示板があり、それを見て痴漢集団が集まり、痴漢行為を繰り返しているのだと言う。

 痴漢行為の多発にたまりかねた警視庁、埼玉、千葉、神奈川県警が首都圏の鉄道事業者を招き、電車内に防犯カメラを設置するように要請したのが10月で、それを受けて埼京線が防犯カメラ設置の第一号になった。

 痴漢行為はされる女性にとっては大変な被害だが、それと同時に男性にとっても思っても見なかった被害にあうことがある。
最近特に問題になるのが、間違って痴漢行為の加害者にされてしまった場合で、満員電車の中で急に「この人痴漢です」なんて大声をあげられたら頭が真っ白になってしまう。
一旦間違えられて加害者にされてしまうと、人生を棒に振ることは間違いない。

202_004

 私などはいい中年のおっさんで、頭などはげているし、どちらかというと好色な感じなので、周りの人から「この助べえ爺ならやりそうだ」と思われることは間違いない。

 満員戦車に乗り込んだような場合は、できるだけ女性のそばにいかないようにし、運悪く女性のそばにいる場合は両手でつり革を必ず持つようにして、身の潔白を明かしておかなければならないので実にわずらわしい。

 だから今回埼京線防犯カメラが設置されたと聞いて安堵の胸をなぜ下ろした。
やれやれ、これで痴漢にされずに済みそうだ
最も今回の措置は埼京線の一部だけだが、これを機会に首都圏の鉄道の痴漢被害が多い路線に順次設置されるだろう。

 防犯カメラについては「プライバシーの侵害問題」がいつも言われるが、たとえばコンビニの防犯カメラについては「撮影や録画に違法性がない」とした名古屋高裁の判決(05年3月)が有り、私が元勤めていた金融業界では防犯カメラの設置を金融庁から厳しく指導されていた。

202_006

 私は防犯カメラの設置こそは社会の安全のために絶対必要と考えている。
ここおゆみ野近辺ではちはら台の遊歩道防犯カメラが設置され、その結果ちはら台は非常に安全な町になっている。

 ちはら台の自治会長に聞いたことがある。
どうしたら防犯カメラの設置を遊歩道にできるのですか、その効果はどの程度ですか?」
それはね、自治会の要請で警察と折衝して設置してもらっているんだが、おゆみ野はそうした自治会のまとまりが良くないのではないのかい。
効果については、ここちはら台とおゆみ野を比べて見ると、犯罪件数は圧倒的にちはら台の方が少ないだろう。この防犯カメラの設置の効果は大きいよ

 防犯カメラは犯罪者にとっては脅威だが、反対に通常の市民にとっては自分を守る手段といえる。
おゆみ野南警察も犯罪の多い場所には防犯カメラを設置してほしいと指導しているが、四季の道などへの設置は市が協力的でないらしい。

 そうした意味で埼京線に防犯カメラが設置されたことは何よりも喜ばしいことだと心から思ってしまった。

 

 

| | コメント (4)

(21.12.23) 陸ガメ 亀ゴンの便秘

211222_003

 冬場になると亀ゴンの便秘が始まる。それまでほぼ毎日していたウンチとチッコをまったくしなくなる。
当初は大変心配し、尿毒症糞毒症になったらどうしようと思ったが、どうやらこれは陸ガメの生理らしく、あまり心配しないでも良いことが分かった。

 昨年は1週間もウンチもチッコもしないと大騒ぎをして人間のイチジク浣腸をしようとしたが、お尻の穴を尻尾でブロックされて、まったく受け付けてもらえなかった。

 他の方法として、本にお風呂に入れると気持ちよくなって糞と尿を出すと書いてあったので、ケージに5cm程度お湯をはって亀ゴンを入れたら大騒ぎになってしまった。
おぼれると思ったらしく、大パニックだ。

211222_001
冬場はこのケージの中で暮らす

 どうやらお湯の中ではダメなことが分かったので、お湯のシャワーにしたら今度は首を伸ばし手足さえ伸ばして懸案のウンチをしてくれた。昨年のことだ。

 こうした経験があったので1週間程度の便秘は心配しなくなったのだが、今回は10日を過ぎ、2週間になろうとするのにウンチをしない。
さすがに心配になってきた。
亀ゴン、お前、まったくウンチをためて大丈夫なのか?」

 私などは3日もためると固くなってまともにでてくれない。それが2週間もまったくウンチをしない。
このままウンチをためて死んでしまったらどうしよう・・・・・・・・・」ますます心配になった。

 昨年はお湯のシャワーをかけると出してくれたので同じことをしてみたが、10分以上お湯をかけているのに、ただ手足を伸ばしているだけだ。
お湯でもダメか。これは、どうも便秘薬が必要だな
亀の便秘薬などないから、ジャスコで人間の便秘薬を買ってきた。

211222_004_2

 使用上の注意を見て見ると、4歳以下は使用してはならないと書いてある。他の便秘薬の注意書は小学生以下はダメだと書いてあった。どうやら幼児に使用するのは問題があるらしい。
亀は大丈夫だろうか????」
実は昨年も便秘薬を亀に飲ませようとして娘に反対された。
お父さん、人間の薬を亀に飲ますなんてダメよ。第一適量が分からないじゃない

でもまあ、死んでしまったら大変だから・・・・・」娘とかみさんに内緒で今回便秘薬を飲ませようとしたら、うれしいことに亀ゴンが2週間ぶりにウンチをしていた。
見てみると適当に湿り気もあり、カチカチではない。
よかった。亀ゴン、ウンチしてるじゃないか」便秘薬は使用しないで済んだ。

 考えて見れば冬眠をする熊なんかが、春目覚めてウンチが硬くてでないようなことがあれば死に絶えてしまう。
人間は亀の便秘に驚いてしまうが、冬に冬眠をしたり動かなくなったりする動物はそれほど便秘にナーバスにならなくてもよいことを知った。

 


 

| | コメント (1)

(21.12.22) 第2回四季の道駅伝練習会

Dscf0067

 昨日(20日四季の道駅伝第2回練習会が開催された。場所ははるのみち公園で、今回の参集者は有吉小、扇田小、泉谷小の生徒が対象だった。
第1回目の練習会では50名弱の参集者だったのでやや心配したが、今回は100名弱の児童が集まってくれた。

 いつもゴザや飲み物を心配してくれているK姉さんが「今日は子供たちが多くてよかったわね」と言っていたが、私の気持ちを代弁してくれた。
ちはら台走友会四季の道ランナーズの現役のランナーがサポートしてくれるのも毎回のことだ。

 今回は実行委員会の方でタスキを用意してくれていたのでタスキリレーの練習も行った。
こうしたときは高校駅伝、大学駅伝で京都や箱根を走った経験のある小栗さんがいるので本当に助かる。

 私のように単に趣味で走っていたものと違って、走法の基本や駅伝のタスキ渡しの方法について詳細な説明をしてくれる。

Dscf0062

 走法で一番難しいのは身体をしっかり保ってぐらぐらさせないことだが、腹筋や背筋が弱かったり、走り方に癖があったりするとどうしても左右に揺れたりする。
私の場合は右肩が落ちる癖があって、写真などを見るとバランスの崩れた走りをしているのでがっかりする。

小栗さんの説明はさすがに上手だ。

いいかい、大事なのは姿勢だよ。頭のてっぺんから紐で引っ張られたように、身体をまっすぐに立てるんだ。その姿勢で身体を前に倒していくんだよ

その場で歩いてごらん。そうして急にどちらか片足で立つ姿勢をしてごらん。そのとき身体がぐらぐらしている子はまっすぐな姿勢になっていないのだ
実は私は片足で立つとすぐにぐらついてしまうのだが、この話を聞いて重心が真ん中の位置に来ていないことが分かった。

Dscf0060

 駅伝のタスキ渡しは両手で持って受け手がとりやすいようにすることなどを教えた後、リレーをしてみたが、子供たちは実に楽々と走っていた。
前にも記載したが、私がマラソンの指導をして一番驚いたことは子供たちの走力は思った以上に高い

 私などは小学校3年生の女の子に負けてしまうほどで、最近は深く反省してスピードプレイを練習に取り入れてスピードの回復を図っている。
この日は天候にも恵まれ、子供たちと楽しく練習ができて気分が爽快だった。

 次回の練習日は1月24日(日)、場所は秋の道公園の東西南北のロータリーに1時集合です。

 

| | コメント (0)

(21.12.21) 不正経理は犯罪の温床 千葉県農林部と土木部の怪

21_099

 12月18日、森田千葉県知事不正経理追加調査の結果を発表した。
これによると不正経理はさらに7億円増えて都合37億円になるのだと言う。この数字は都道府県のなかでも突出して大きい。

 従来の調査に比較し、今回は対象期間を広げ、また前回は事務用品購入代だけの調査だったのを、賃金、旅費、業務委託費、預金通帳の調査も行い、預金通帳と業務委託費の不正経理を新たに発見したのだと言う。

 なぜこのような不正経理が後をたたないかと言うと、未消化の予算を隠すためである。通常予算請求はめ一杯に行うため、実際問題として未消化になることが多い。
本当は未消化になったものは不必要な予算だから返却するのが筋なのだが、そのようなことをする担当者は役人の世界では無能と言われる。

21_098

 なにしろ散々理由付けをしてようやく確保した予算枠だから、「自分たちのもの」で、なんとしても使ったそぶりを見せなければならない。
よくあるのは支払いを本年度予算で行い、納入を来年回しにする方法である(とりあえず必要と思われるものを買ってしまう措置)。
もちろんこの反対の納入を本年度して、支払いを翌年度に回すことも多い(金がないが必要なものを買ってしまう措置)。

 前者であれば単に納入が遅れるだけだが、後者の場合、翌年度の予算確保に失敗したら払う資金がなくなる。
そうなると契約不履行で裁判沙汰にでもなったら大変なので、担当部署では預けという方法を編み出した。
未消化の予算を架空伝票を切らせて業者に預かってもらう方法である。

パソコンを納入してくれないかな。支払いは預けから落とすよ
業者はお金を担保してあるのでいくらでも県の言うことを聞いて、納入してくれる。
こうして預けを使用して担当者は自由自在の資金操作が可能になる。

 これは明らかに不正経理だが、当初は予算と実務との齟齬を埋めるいわゆる潤滑剤と担当者も業者も認識していたはずだ
そうでなければ県全体でこの預けが横行するはずがない。
そしてこうした行為を上手に行っていた職員が出世したろうことも予想できる。
いやー、Aさんのおかげで必要な備品がすぐに揃うし、助かる

 だがしかし、こうした不正経理、分けても預け犯罪の温床になりやすい。
なにしろ県の正式な帳簿に載っておらず、いわば私的に管理しているのだからまわりからチェックが一切効かない。

21_097

 不正経理は担当者も表面化すると指弾されるのは分かっているので、少人数の職員がこっそりと処理するのが普通だ。
上司は「今度宴会があるので、少しまわしてくれないか」とか「ゴルフコンペの費用が足りないんだ」とかいってたかることはしても、詳細な書類チェックをすることはない。

上司がゴルフ接待で預け金を使用するなら、俺だって着服してもいいだろう

 不正経理は県全体に蔓延したが、中でも県農林水産部県土木整備部を中心に横領が横行するのには理由がある。
いずれも予算規模が大きく予算の未消化が発生しやすい部局で、不要な公共投資の温床となっており、必要のない予算を伝統的に確保できる部局である。

 本来は予算は弾力的に配分されるべきだが、実際は前年度実績が最も重要になる。だから過去に多くの予算措置があった部局に多くの予算が配布される。その結果こうした部局は予算をすべて使ったように見せる不正経理が横行する。

 一方福祉や環境のように本当に予算不足の部局も発生するが、前年度踏襲型の予算配分では予算不足に悩まされる。


 千葉県で不正経理が多発する一番の原因は、予算が前年度踏襲型の硬直した予算措置のためであり、結果として公共投資消化部署土木整備部、農林水産部等)に不要な予算が配布されているためである。

注)他の自治体でもこうした構造を持っている場合は必ず不正経理が存在する

 森田知事は今回前任者の堂本知事にも1000万円の返還金を要請するようだが、堂本前知事がこうした硬直化した予算に切り込みをせず、その結果不正経理を横行させたことは確かだから当然の措置だろう。

 それにしても横領職員の一人は預け金から約400万円相当の電化製品を購入し、自宅で使用していたのだが(本人は処分したと言っているので、中古センターに換金したのかもしれない)、適切な予算編成ができないと、資金が有り余ってしまう部局が発生し、結果的にネコババの温床になるのは当然の事といえよう。

 

| | コメント (0)

(21.12.20) 企画のたまご屋さん その2

21_071

 企画のたまご屋さんのプロジュースをしているKさんから、出版のための企画書をかくように言われてから早2ヶ月が過ぎてしまった。
Kさんはここおゆみ野で読書会のメンバーの一人だが、以前自らも著書を商業出版し、また現在その続編を出版する計画があると言う。」

みなさんも是非本の出版をしましょう」はっぱをかけられた。
私はブログを毎日書いている身で、このブログの自由さというものが大変気に入っている。だからあえて本にしようとする気はなかったのだが、Kさんの熱気が伝わってしまった。
いいですよ、ロドリゴ巡礼日誌を再編集して、本の体裁に変えてみましょう」いつもの安受けあいだ。

 しかし企画書を書く段になって驚いた。
私は企画書なるものは本の概要が分かればいいのだと思っていたが、実際は出版社の職員が上司に出版計画を書くような代物だと気づいた。

21_069

 本の題名や概要を書くのは分かるがそれ以外に以下の内容を書かねばならない。

① キャッチコピー(自分でキャッチコピーを考えなければならない
② 企画意図(
なぜこの本を出すことが今必要かを述べなければならない
③ 企画の背景(
自分自身が本を出すのに十分な条件や資格があることを説明しなければならない
④ 読者ターゲット(
ターゲット層を絞ることが要求される
⑤ 類書(
類書をどれだけ研究しているかのレポート
⑥ 類書との差別化(
なぜこの本が類書より優れているかの説明
⑦ この本を製作するための有利な条件(
すでに著者として著名だと言うようなこと
⑧ 構成案(
本の目次の構成

 うなってしまった。はったりや自己PRを恥ずかしげもなく書かなければならない。
うぅーん、止めようか!!!!」気弱になった。
しかし、まあ乗りかかった船だ。何とか企画書を書いてみることにした。

注)以下のURLをクリックすると私の書いた企画書原案を見ることができます。ただし自己PRが過ぎており、恥ずかしいので企画書を書こうとする意図のある人以外は見ないこと。

http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/2009/12/211219-75ac.html


 話を聞くと出版業界はひどい不況で、そのために次々に本を出版しなければならないのだそうだ。通常は不況だと出版件数が少なくなると思われるが、出版業界の特殊な慣習が、かえって新書を増加させているのだと言う。

 私は出版業界に詳しくないので、聞いた話をそのまま記すと、出版社が取次店に新刊の配布を依頼すると、その段階で取次店から金が支払われる(前渡し金のようなもの)。
もっとも売れなければ返品になり、返品に応じた金額は返金しなければならないのだが、また新刊をだして前渡し金を入手して、返品相当額の返済をするということのようだ。

21_064

 そのため、前渡し金を入手するための自転車操業のような新刊発行が常態化しているのだそうだ。

注) 出版不況で出版冊数は減少。平成9年がピークで約16億冊、現在は14億冊。
一方新刊本は6万件から8万件に増加している。
なお、返品率は平均して40%程度だそうだ。

うぅーん、それでは私の出版がうまくいったとしても、すぐに返本され前渡し金の餌食か」考え込んでしまった。

 当初は企画書だけ書いて、出版社から依頼があれば完成原稿を作るつもりだったが、Kさんから1月下旬までに完成原稿見本を作るように言われてしまった。
オーダーがあったときに完成原稿があるほうがいいのですよ

しかし無駄骨になってしまいそうだな・・・・・・」気持ちがナーバスになった。
だがあまり悲観的になるのはよそう。こうした経験はあまりないのだから、企画書にもとづいてとりあえず完成原稿を作って見ることにした。

 

| | コメント (1)

(21.12.19) NHK たった一人の反乱 法律を変えた男 岡村勲さん

211217_001

 先日NHKが放送した「たった一人の反乱」は弁護士で、1997年9月その妻を弁護に恨みを持った男に殺害された岡村勲さんの反乱だった。
岡村さんは当時山一證券第一勧業銀行の会社側の弁護をしていたのだが、山一證券の弁護で恨みを持った加害者が岡村弁護士を殺害しようとして、たまたま家にいた妻の眞苗さんを殺害したのだと言う。

 この事件で岡村さんは弁護士と言う立場から、急に被害者の家族になったのだが、そうなってみて始めて被害者が法的に何の権利も認められていないことに気づき愕然としたと言う。

 たとえば妻の遺影を持ち込むことも禁止され、裁判記録の閲覧もできず、起訴状も見ることができない。弁護士であったときは自由に見れたこうした書類が被害者になったとたんに見ることができなくなってしまった。

211217_012

 実は日本の刑事訴訟法にはある原則があって、それは「裁判は社会秩序の維持のために行い、被害者のために行うのではない」との判例を最高裁が出している。
裁判はあだ討ちではない」と言うわけだ。

 日本の裁判制度はこの原則で60年間も維持してきたために、被害者の権利の擁護はまったく行わず、あくまで加害者の権利だけを擁護するまったくいびつな法体系になってしまった。

 よく日本で言われる人権とは加害者の人権であり、たとえば未成年者が殺人事件を起こしても氏名は伏せられ、一方被害者の方は法的保護を受けられないので、名前も、その人の過去も、生活態度さえ暴かれてしまう。
被害にあった人が「あんな生活をしていれば被害にあうのが当然だ」などと言われたりしても何も反論できず泣き寝入りだ。

 そして日弁連は加害者の人権擁護に奔走するので、日本では悪徳弁護士と人権弁護士が同義語になってしまった。

注)私は長い間、人権弁護士と言う人種が日本で最悪の人種だと思っていたが、それは誤解で法体系が加害者だけを守る仕組みになっていたことからの当然の帰結であることが分かった。

211217_008

 岡村さんはこうしたいびつな法体系に対して被害者が直接権利として裁判に参加し、また損害賠償の民事訴訟を刑事訴訟と一緒に行える法体系に変えるべく奔走する。
しかしここでも反対は法務省日弁連で、いわゆる今までの体制を少しでも変えたくない人たちだった。

ドイツでは被害者の直接参加がうまくいっていないと聞いている。また刑事裁判と民事裁判を一緒に行うと裁判に時間がかかりすぎる」法務省の反論である。
被害者を裁判に参加させると加害者の人権が損なわれる」日弁連の見解である。

注)従来は損害賠償を請求するために別途民事訴訟の裁判を起こす必要があり、被害者は二重の負担を強いられていた。

 岡村さんは支援者と一緒になってドイツやフランスの被害者参加の裁判制度を調べ、60万通の署名を集めて政府に被害者の裁判参加を訴えた。
小泉首相に直訴し、法制審議会で検討することになったが、最後まで反対したのはここでも日弁連だった。日弁連はあくまで加害者の人権擁護だけに奔走していたからだ。

 2007年、ようやく刑事訴訟法が改正され、被害者が被害者参加人として裁判に臨むことができ、また民事訴訟を別途起こさなくても済むようになり、岡村さんの10年に及ぶ戦いが終わった。

 現在裁判で被害者や被害者の家族が、裁判の直接当事者として意見を述べたり質問ができるのは、この岡村さんのたった一人の反乱のおかげである。

 ここおゆみ野でも、しばしば中学生や高校生が犯罪に巻き込まれることがあるが、実際に被害にあわれたTさんの話によると、被害者の家族が警察に問い合わせても何も教えてくれないと言う。

注)刑事訴訟法は裁判にかかる法律で、それ以前の警察の捜査については、相変わらず加害者の人権だけが法的に保護されている。

 被害者の家族は岡村さんの努力で裁判になれば被害者参加人として権利が認められたが、裁判以前の捜査段階ではやはり被害者やその家族は蚊帳の外というのが実情だ。
日本の法体系である「加害者だけの人権擁護」の壁は厚い。

 

 

 

| | コメント (3)

(21.12.18) COP15 弾丸の飛ばない戦争

21_065

 やはりと言おうか当然と言おうか、コペンハーゲンで190カ国が集まって開催している国連のCOP15(国連気候変動枠組条約弾丸の飛ばない戦争になってきた。
先進国グループEU、日本)はアメリカと中国の条約への参加が必須と主張し、一方中国を含む途上国グループは先進国だけに義務を負わせようとする。

 地球温暖化問題はまさに地球全体にかかわりのある問題だが、現在の主流になっている産業(鉄鋼、火力発電、自動車、セメント、アルミ等)にとってはコスト増につながるため、自国産業を守るためにおいそれと妥協するわけにはいかない。
他国の損失は自国の利益だ。

世界の排出量の約40%は中国とアメリカが非出しているのだから、この2国が加盟しない条約など意味ない
いや、一人当たりの二酸化炭素排出量は、中国はアメリカの4分の1でしかない。まず個人あたり排出量の多い先進国が削減義務を負う

21_066

 けんけんがくがくの言い合いになって、まったく展望が持てなくなってきた。主催国のデンマークは困り果てて妥協案を提出した。
それなら条約は諦めて政治合意と言うことにし、実質的に削減目標を守ることにしよう

 これに対し中国を中心とする途上国が猛反発した。
だめだ、それなら京都議定書を延長して、先進国だけ削減目標を新たに設定したらいい
Image0_2  途上国の主張は途上国の義務のない京都議定書の延長で、延長期間13年~20年の間の削減目標をすでに表明した水準(日本▲25%等)で条約を結べと言う。
国連の会議は数が物をいい、途上国が優勢だ。
中国は先進国の産業をCOP15で縛りつけ、その間に中国を世界最大の産業大国にしようとしている。

 これには先進国が猛反発した。
それじゃ、アメリカと中国、インドが抜けてしまう。絶対認められない。中国、アメリカ、インドを含めた別途の枠組みを作ることを条件に、京都議定書の延長を認めてもいい
なんだか、さっぱり分からなくなってきた。

 COP15は最終日が18日で、この日に各国の首脳が集まることになっている。時間が切迫しているのだが、まったく結論がでそうにない。
仕方がない、折衷案でもないよりましだ。京都議定書の延長と、その他の国の新たな枠組みの二本立てにしよう」

21_067

 
理解不能な案だがどうやらこの案で妥協がはかられそうだ。
問題はアメリカ、中国、インド、ブラジルに実質的に削減をさせる枠組みになるかどうかだ。
それに実務的には検証の問題もある。
核開発と同じで検証体制が整わなければ、絵にかいたもちになってしまう。

 はたしてどうなるだろうか。COP15の結論がでた段階でもう一度整理して見よう。

注)資料は毎日新聞作成

 

| | コメント (0)

(21.12.17) GDP改定値の怪  なぜ大幅下方修正になったのか

21_498

 内閣府が12月9日発表した09年7~9月期GDPの改定値を見て、腰を抜かさんばかりに驚いてしまった。
なにしろ1次速報値では実質GDPの年率換算が+4.8%と言っていたのに、改定値では+1.3%だと言う。

 約4分の1に下方修正されたのだから、驚かないほうがおかしい。
日本の統計の正確さは世界一だと言われていたのに、こんなに予測数字がぶれるようでは本当は無能なのではなかろうか・・・・・・

 もともとGDP1次速報値2次改定値も、そのときまでに入手できた統計資料を基に推計するのだから、より実態に近い統計数字が出るたびに修正されるのは分かる。
しかし今回の下方修正はあまりにも乖離が大きすぎるし、社会に対する影響も大きい。
日本も完全に回復基調に入った。年率換算で+4.8%はEUやアメリカより回復が早い」誤解してマスコミがはしゃいでいたのはついこのあいだだ。

21_509

 第2次改定値が大幅に下がった理由は、設備投資の推計で失敗したからだ。
第一次速報値で設備投資を推計した統計資料は「鉱工業生産指数」でその中の「資本財出荷指数」が+5.2%だった。

 これを受けて統計官は、国内の設備投資が前期比+1.6%と推計した。
従来、資本財出荷指数が5%前後上昇すると、国内設備投資が1.5%程度上昇していたからだろう。

 しかしその半月後に出された「法人企業統計調査」をみて統計官はびっくりしてしまった。「企業設備投資」が▲8.8%とまったく「鉱工業生産指数」と反対の動きをしていたからだ。

注)「鉱工業生産指数」は供給者側の資料で、一方「法人企業統計調査」は需要者側の資料。今回「法人統計調査」の数字を元に「設備投資」を+1.6%から▲2.8%に修正した。

なぜ供給側の数値はプラスなのに、需要側の数値が大幅マイナスなのか?」大騒ぎになった。
答えは「国内で投資が行われず、もっぱら中国等の海外で投資が行われている」からである。

21_738

 日本国内ではデフレギャップが大きく、稼働率もよくて70%~80%程度であり、今後需要が伸びても現状の設備で十分対応できる。
一方中国やその他新興国の需要は急拡大しているから、自動車も電気産業も化学プラントももっぱら海外生産にシフトしている。

 日本企業の設備投資全体は落ちているのだが、なかでも国内ではほとんど投資が行われないと言う状況になって、資本財の行く先は海外になってしまった。
日本国内の空洞化が始まっている。

注)大企業・製造業の09年度設備投資金額は前年度実績比▲28.2%

 製造業としては当然の対応だが、それがあまりに急激に始まったため統計官が推計できなかったというのが実態だ。
統計は過去の資料を基に推計を行うから、質的な変化があると推計値を間違う。
どうやら日本は設備投資を行うのに適さない国になったらしい

 なんども同じことを言って恐縮だがこれは当然で、日本のような成熟した社会で、しかも老人人国が年を追って増大していく国で、需要が拡大しGDPが増大するなんてことはありえない。
企業は需要のある場所に出て行かないと生き残れないので、設備投資は海外が中心になる。

注)もちろん政策的にGDPをあげることはできる。赤字国債をばんばん発行して公共投資を行ったり、減税をしたり、子供手当てを増額したりすればそれなりの効果はある。
ただしそうした手当てを打ち切れば元に戻ってしまうので、自立的な成長ではない。


 今回のGDP改定値の怪とはそうした統計官が間違うほどの質的変化が急激に発生していることを示したものといえる。
日本経済は変わっているのだ。

 

 



 

 



 

| | コメント (0)

(21.12.16) 日米密約文書は破棄された

2012_017

 岡田外相日米密約文書の捜索命令は、どうやら外務省サボタージュで出てこない可能性が高い。
密約をうかがわせる草案や討論議事録はでてきても、日米双方の責任者が署名した極秘文書なるものはすでに破棄されているようだ。

 日米密約文書とは以下の4種類を言い、60年の日米安保改定時と、72年の沖縄返還時に交わされた文書で、主としてアメリカ軍の核持込を黙認することと、朝鮮半島有事の際、米軍の出動を事前協議の対象からはずすことがポイントとなっている。

 読売新聞によれば密約の内容と現在まで判明した結果は以下のように整理されていた。

外務省調査結果のポイント

 ▽日米安保条約改定時の核持ち込み密約は、根拠とされる討論記録の草案を発見

 ▽朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動密約は、根拠とされる議事録を発見

 ▽沖縄返還時の有事核持ち込み密約の根拠文書は見つからず

 ▽沖縄返還時の補償費肩代わり密約の根拠文書は見つからず

2012_007

 上記の密約について外務省は一貫して存在しないと説明してきたが、01年の情報公開法施行前に密約文書はすべて破棄したようだ。
まずい、今まで存在しないと言ってたのに、密約文書が出てくれば外務省はマスコミから袋叩きにあう。署名文書はすべて廃棄しろ

 最近、上記の密約のうち「沖縄返還時の補償費肩代わり密約」について当時の外務省アメリカ局長吉野文六氏が、法廷で自ら署名したとの証言をしている。

注)本件は71年当時、「補償費肩代わり密約文書」の存在をすっぱ抜いた元毎日新聞記者西山太吉氏が国家公務員法違反で逮捕起訴されたが、それが冤罪だったとの裁判を東京地裁で争っている。
この裁判で吉野氏が密約文書の存在を証言した。


 結局この密約文書の問題は、「あったことは確からしいが、明確な証拠となる署名文書は発見できなかった」という結論になる可能性が高い。
原則主義者岡田外相としては憤懣やるかたない結論になりそうだが、個人でも国家でも人に隠しておきたいことはあるのだから、すべてが白日の下にさらされるのがすべて良しということにはならない。

2012_002

 この問題でワシントンポストは「鳩山政権の下で日米同盟関係の均衡が崩れている」と警鐘を鳴らしている。
日米関係は最も親密な二国間の同盟関係だ」というのは政治的なリップサービスにすぎないことは確かだが、「日米関係は最も最悪な二国間の同盟関係だ」といわれるよりはましだ。

 どうやら「あえて日米関係を悪化させるよりは」と、外務省が大人の知恵で署名文書を破棄したことが実態のようだ。
外交とは密約が付き物なのだから、「さすがは外務省」と私などは思ってしまう。

| | コメント (0)

(21.12.15) 鳩山首相の不思議な戦略 なぜかくも優柔不断なのか

200

 連立政権の民主党の影が薄い。あたかも国民新党社民党の政権のようで、亀井総理、福島副総理のような状況になっている。
いったい民主党はどこに行ってしまったのだ。選挙で選択したのは国民新党でも社民党でもないのだが」有権者が当惑しだした。

 このような状況を作り出した最大の責任は鳩山首相にあり、特に鳩山首相の優柔不断な発言や態度に有るのだが、鳩山首相本人は「連立政権維持のためじっと我慢をしている」境地だろう。

 もともと鳩山首相は資産家のおぼっちゃんで、政治資金ももっぱら母親から贈与されていたことがばれてしまったほどだが、この育ちのよさが優柔不断の態度をつくりだしていることは分かる。
何か戦前の近衛文麿首相を彷彿とさせるようなキャラクターだが、なぜかくも優柔不断でいられるのだろうか。

 なにしろ政治の世界は弱肉強食の世界で選挙は武力を用いない戦争なのだが、鳩山首相はもっぱら友愛しか説かない。
鳩山はお坊ちゃんだ。この機会に民主党をかき回せ
亀井氏福島氏が、連立政権の主導権をとってしまった。

217

 亀井金融・郵政担当相の豪腕は自民党にいた頃から周知の事実で、とくに守旧派の代表として、あらゆる変化に反対してきた。郵政改革を元に戻して国有化し、整備新幹線はすべて再開して土建国家を再建しようというのが、亀井氏の戦略だ。
小役人の言うことなんか無視だ。国債をじゃんじゃん発行して国中道路だらけにしろ

 一方福島消費者・小子化担当相は日本を代表する左翼で、かつて「ダメなものはダメ」と言っていた土井たか子氏の直系だ。
県外・国外以外に普天間基地の移設を認めない。もし県内だったら政権離脱だ

 そして民主党は自民党反主流派が中心になって結成した党であり、ここに旧民社党と旧社会党右派、および今回大量に当選した小沢チルドレンが加わった寄せ集めのような党だ。
あえて特色を言えば「アンチ アメリカ、アンチ自民」ということだろう。

210

 こうした本来は連立などとても組めない政党同士が、参議院で過半数を取るという目的だけに連立を組んでいる。
そして民主党の持っているこのあいまいさと、鳩山首相の優柔不断さの間隙をついて、亀井金融・郵政担当相がいいように内閣を揺さぶってきた。しかしついに菅副総理の堪忍袋の緒が切れてしまった

 12月4日に行う予定だった3党の「基本政策閣僚委員会」を亀井氏が欠席し、菅氏の再三の招集要請を蹴って電話にもでなかったからである。
亀井氏は自ら主張した「10兆円規模の第二次補正予算を了承しなければ閣僚委員会にはでない」と尻をまくったのだが、これはかつての旧陸軍と同じ方法で、「昔陸軍、今亀井になっている。

 結局閣僚委員会12月8日に延長されて、亀井氏の要望を入れて7.2兆円で決着しようとすることになったのだが、亀井氏はそれでも不満で「閣僚委員会では了承しない。閣議で鳩山首相が決めるのであれば了承する」と菅副総理の心を逆なぜした。
菅、お前の案など飲めるか」と言うことだ。

郵政株式売却凍結法案も通過させ、斎藤次郎のような元大蔵官僚を日本郵政社長にすることを了承し、こんなに国民新党の顔を立てているのに、また予算規模で駄々をこねるとは何事だ菅副総理が切れた。
うるせい、おれは鳩山総理とさしで決めたのだ。菅ごときにあれこれ言われる筋合いはない」大喧嘩になってしまった。

 しかし鳩山総理のコメントは落ち着いたものだった。
政策論議は大いにやってもらうのがいい

158

 一方普天間基地問題では現状の辺野古以外に行く場所がないことは当初から分かっているのに、「県外・国外」の選択肢を検討しているそぶりをみせ、福島党首からはエールを送られている。
しかしアメリカとの「バラク・ユキオ」の関係は家庭内離婚の状態になってしまい、オバマ大統領からは「ユキオの顔も見るのもいやだ」と嫌われてしまった。

 連立政権は国民新党社民党にかき回され、オバマからは「顔も見たくない」といわれても、それでもまったく動じない鳩山総理にはただただ感服してしまう。
育ちのよさがそうさせるのだろうか、それとも何らかの目算があるのだろうか?

 おそらく鳩山氏としては来年の参議院選までは何とかこの姿勢で政権を引っ張っていくつもりなのだろう。
今は普天間基地の移設先は決めようもないし、予算の規模も亀井の顔を立ててやろう。
それも来年7月の参議院選挙までの我慢だ。民主党が過半数をとれば、すぐさま国民新党や社民党との連立を解消してやる。小沢さんが着々と手を打っているから、過半数は絶対に取れる


 さて、この鳩山首相の戦略は成功するだろうか。その前に決断をしなければならなくなって、連立崩壊というようなことが起こらないのだろうか。
優柔不断な態度で逃げ惑う首相がどこまでのらりくらりと逃げられるか見ものだ。



 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.14) 第一回四季の道駅伝練習会

211213_001

 今年も四季の道駅伝練習会が始まった。昨年もこの時期から計4回の練習会を開催したが、今年も昨年と同様の4回を計画している。
この地区の小学校は6校有るので、それを半分に分けて3校ずつ2回指導するという試みだ。

 今回は小谷小、金沢小、おゆみ野南小の児童が対象だった。昨年よりは参集者は少なかったが、顔見知りの小学生が何人もいた。
私はおゆみ野南小ではわくわくキャンパスでのマラソン指導小谷小では昨年までパソコン指導を行っていたので、小学生の知り合いが多い。
先生、こんにちわ」なんていわれるといい気分になる。

211213_017

 今回もマラソン指導のランナーとしてちはら台走友会四季の道ランナーズのメンバーが駆けつけてくれた。特にちはら台走友会小栗さんは高校駅伝や大学駅伝のエースだったので、こうしたときはとても参考になる話をしてくれる。
今回は特別に世界記録レベルのモデル走もしてくれて、何人かの小学生は小栗さんの後を懸命に追いかけていた。

 子供たちには4年生以上片道1kmの距離の往復、3年生500mの往復をしてもらった。この距離が実際の駅伝の走る距離になっている。
印象的には今年のほうが昨年よりも子供たちが楽々走っていた。
もしかしたら走力が上がっているのかもしれない。

211213_029

 それと私が小学生のマラソン指導をして気づいたことは、小学生は意外に良く走るということだ。
もちろん体重過多であえぎあえぎ走る子もいるのだが、身体に脂肪がついていない子は実に楽々と走ることができる。
そういえば昔私の子供が小学生の頃、丹沢の山道をカモシカのような早足で降りて行くので、とてもついて行けなかったのを思い出した。

 この秋の道公園には一周250mぐらいのコースが取れるので駅伝をみたてて4人一組でのリレーも経験してもらった。
個人走では手を抜く子も、リレーとなると精一杯走るのは大人も子供も同じだ。

 実行委員長の緒方さんやその他の実行委員のメンバーも参集してくれていたが、昨年と比べるとどこか余裕が見られた。
やはり昨年の経験があるので、落ち着いて見ていられるのだろう。

 やはりこの四季の道駅伝大会の練習会が始まると、「さあ、駅伝だ」という気分になる。

211213_005

 次回は12月20日(日)、午後1時から春の道公園で有吉小、扇田小、泉谷小の児童を対象に練習会が開催される

 できれば今回以上に多くの児童が参加してくれればいいのだが。

 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.13) マラソン指導が大変だ

211116_006

 いやはやマラソン指導が大変になってきた。現在おゆみ野南小で3年、4年、5年生を対象にマラソン指導を行っているのだが、これがなかなか大変なのだ。

 人数が40名弱と言うこともあるが、最も悩ましいのは私の走る速度が子供たちに負けてしまうことだ。
信じられないことに3年生の女の子で私より速い子供などがいる。
これはまずい、指導者としての沽券にかかわる

 私がスピード練習をしていたのはせいぜい53歳頃までで、その頃からまったく速くならないものだからすっかりスピードは諦め、その後は持久力だけを鍛える練習に変えてしまった。

211116_004

 遅いスピードで長長距離を走るのだが、確かにこれで100kmだろうが200kmだろうが淡々と走れるのだが、なんとしても遅い。
今までは特に遅かろうが、トランスエゾ1100kmあたりでは時速6km程度に設定されているのだから問題にならなかった。
200kmから250km程度のレースでは、通常1日半から2日がかりなのだが、これも眠らないで走れば時速6km程度でも完走できる。

 しかし四季の道駅伝の指導を始めて、このスロージョギングが支障になってきた。一緒に走ると小学校の3年生の女の子より遅いのだから、指導者としての素養を疑われてしまう。
先生は本当にマラソンの選手なのだろうか?????」

 先日は4人一組になって、一人当たり500m程度のアップダウンのコースでリレーを行った。普段はできるだけ走らないでぼろが出ないようにしているのだが、人数が足りないと私もメンバーの一員として走る。

 メンバーの女の子から「先生、他の子を抜いてね」と言われたが、精一杯走ったのに抜くことができない。
先生は一番後で、みんなの走っているのを見てるんだ」と息をあえぎあえぎいってごまかした。

 しかしさすがに反省した。スロージョギングだけでは指導者は務まらない。久しぶりにスピードプレイ1000mを全力で何回か駆けるトレーニング法)をすることにした。
せめて3年生には負けないようにしよう

211116_001

 しかしこのトレーニングはよほど注意して行わないと年寄りには鬼門で、たちまちのうちに肉離れを起こす。
筋肉が硬く縮んでいるので、十分ストレッチをしてから走らなければならない。
それに最初からこれを行うのも危険で、身体を十分温めてからおこなわなければならない。

 いやはや指導者にはこんな苦労があるとは知らなかった。
よく往年の名ランナーが指導者になると、決して自分では走らない理由がようやく分かった。
誰か若いぴちぴちしたランナーが協力してくれるとありがたいのだが。

 

| | コメント (0)

(21.12.12) デスクトップがなぜ出てこない

092

 なんとも精神的に落ち着かない。私が使用している3台のパソコンのうち、一番最近購入したGatewayのパソコンのデスクトップが開かなくなってしまった。
デスクトップにアクセスできません。アクセスが拒否されました」と言ったきりうんともすんとも動かない。
最初はコンピュータが壊れてしまったのかと思ったが、開かないのはデスクトップだけで、スタートボタンからインターネットを開くと動いてくれる。

なぜだ、なぜデスクトップがでない」あれこれ操作をしているのだがまったく埒があかない。
私はデスクトップに必要なソフトのアイコンを貼り付けてあるので、これが開かれないとなんとも不便だ。

 今まで自由に出入りしていた家から出入り禁止を通告され、裏口からこっそり忍び込むような感じで、いらいらする。
ヘルプ機能を見ても、「突然デスクトップが消えてしまった」なんて質問もみあたらないので頭を抱えている。

 もっとも3台パソコンがあるのだから1台動かなくてもすぐにどうこうということではないが、動いて当たり前のものが動かないのはなんとも不満で、暇があるとこのGatewayを元に戻そうとあえいでいる。
だが、その甲斐もない。

122

 最近私はパソコン環境に不満が多い。先日回線速度を上げようとADSL8M光回線に変えた。光は公表100Mだから、おおよそ10倍速くなるのかと思ったら、せいぜい2倍程度の感覚だ。
しかも私が当初目的にしていたYouTubeへのアップロードはまったく速くならない。

 比較のためにPicasa Webへのアップロードを調べてみたらこちらは速くなっているので、どうやらYou Tubeだけの問題らしい。
何だよ、これでは光に代えた意味がないじゃないか。映像作家へ挑戦をしたいのに・・・・・・」ブツブツ。
もしかしたら設定の問題かもしれないが、光に代えても変わりないのにはがっかりした。

 実は私の生活態度はとても保守的で、いつもの日常がいつものように始まっていないと精神的に落ち着かない。
朝起きてぶどうパンを食べ、早朝の四季の道の清掃活動に出かけ、帰ってブログを書き、午後にはJOGをして、夕食を食べたらすぐに寝てしまう。

119

 リズムが壊れるのが何しろ嫌いなのだ
朝ぶどうパンを買い忘れていたりすると、それだけでその日は憂鬱になるし、雨で清掃活動ができないといらいらする。
ブログを書くパソコン環境がいつもと違っていれば、髪を振り乱してもとの環境に戻そうとするが、こちらは技術がつたないので思うに任せない。

 JOGをしなければ疲労感がないので、夜寝ることもできない。寝るためにはくたくたにならないと駄目なので、この年になっても運動が止められない。
一方身体が少しでも不調になっていつもと違うと、心配が嵩じて胃酸過多になり、本当の病気になってしまう。

 このように生活を保守的に保つのは容易ではないのだが、最近のパソコン環境の不調は私の気持ちをさかなぜにしている。

 

 

| | コメント (1)

(21.12.11) NHK たった一人の反乱 千葉県谷津干潟 森田三郎氏

211210_004

 NHKが放送している「たった一人の反乱」「千葉県谷津干潟」を興味深く見た。それと言うのも谷津干潟は私が現役時代、京葉線の窓越しにいつも見ていた干潟だったからだ。

 始めてこの干潟を見たときは驚いてしまった。通常干潟はその先に大海原が広がっているのだが、この干潟は周りが埋立地になっていて、どこから海水が入ってくるのか、または閉じ込められているのか分からなかったからである。

 この干潟は1970年代、周りの海がすべて埋め立てられたため干潟としては再生不可能といわれ、習志野市ではここも埋め立てを行って跡地に住宅団地を建設する予定だったという。
住民の格好のゴミ捨て場になっており、悪臭がひどく犬や猫の屍骸や、タイヤや電気製品の古くなったものや衣類がところ狭しと捨てられていた。
どうせ埋めたてられるのだから、何を捨ててもいいや」

211210_006

 ところがこのヘドロの海を一人で再生しようとした青年があらわれた。森田三郎さん、当時29歳、新聞配達の仕事をしていた。1974年のことだ。
自分が子供の時分に遊んだ海を取り戻そう」と一人で立ち上がったのだが、映像を見て森田氏の苦労が並大抵でなかったことが分かった。

 ごみ処理では常にその最終処分の仕方が問題になる。当初森田氏は干潟の近所のゴミ回収所にそのゴミを置いていたみたいだが、習志野市から回収を拒否されたそうだ。

 おそらくこのゴミステーションを管理していた住民から習志野市にクレームが付いたのだろう。
自分たち以外のゴミが捨てられて困っています。いくら言っても聞いてくれません

211210_003_2

 習志野市から回収を拒否されたため、森田氏はこの干潟の管理者である大蔵省関東財務局に掛け合うが、「地元住民が捨てているゴミの回収はできない」と断られた。
実際問題として大蔵省はゴミを回収する手段を持っていない。ゴミ回収は地方自治体の仕事だからだ。

 結局森田氏はゴミを自宅に持ち帰り、自宅周辺のゴミステーションに捨てていたのだが、この方法しかないことはよく分かる。
私も四季の道、約6kmの清掃をほぼ毎日行っているが、集めたゴミは我が家が捨てるべきゴミステーションに捨てている。

 森田氏はゴミ袋をバイクに積んで自宅に運んでいる途中に交通事故に会い、それでもめげず松葉杖をつきながらゴミ回収を続けていた。
しかし4年間は誰からも相手にされず、孤独な作業が続いていたと言う。

 森田氏は干潟の重要性を訴える立て看板を作ったり、干潟を見渡せるベンチを作ったりして、少しでも干潟を理解してもらおうと孤軍奮闘するが、これは「たった一人の自然保護運動」と言ってもよい取り組みだ。

 時が経つにつれてそうした活動を理解する人が増え、朝日新聞の記者や地元のお母さん方の支援活動が始まり、1980年にはクリーン活動が開始されたのだと言う。

211210_014

 画面ではクリーン活動に集まった地元住民や日本道路公団のゴミを運び出すトラックが映し出されていた。
森田氏がたった一人で活動を始めてから6年後に、地元住民の運動となり、1984年には習志野市議会干潟として保存するとの決定をおこなったのだという。

 私はこうした話が好きだ。自分自身がこのおゆみ野の四季の道を「世界で一番美しい遊歩道になるように、定年パワーを全開させよう」として毎日清掃活動をしているせいもあるが、森田氏に強いシンパシーを感じた。

 実は私は定年退職をした後の生き方として、「日本の海岸線にたどり着いたゴミをすべて回収して、元の美しい日本の砂浜に戻す旅にでよう」と思っていた。日本の海岸線はゴミでいっぱいだ。
スタイルは黒染めの僧衣を着て、ゴミの回収が終わるごとに、「ここに清掃終わる。僧 次郎」という立て看板を立て、海岸線を美しくする漂泊の旅で一生を終わると言うイメージだったが、実際は四季の道の清掃と、近くの都川源流の調節池のゴミの回収しかしていない。

 森田氏の努力の跡を見て、かつて「日本の海岸線を美しい砂浜に戻そう」と思っていた自分を思いだした。
はたしてあの頃の情熱がよみがえるだろうか?




 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.10) GM ヘンダーソンCEOの馘首(かくしゅ) GMの迷走

2024_051

 11月16日、GM09年7~9月期の決算発表であんなに得意満面だったヘンダーソンCEO12月1日には解任されてしまった。
最終損益が昨年同期の▲25億ドルから、▲12億ドルと半減し、10月の米国市場での販売台数が前年同月比+5.6%になったのがよほど嬉しかったのだろうが、結末は悲劇だ。

12月には米政府からの借入金の一部返済を始める」と公表し、また「来年度に株式を再上場する」と大見得を切っていたヘンダーソンCEOに何があったのだろうか?

 新生GMの取締役会の13名の役員のうち、GM出身者はヘンダーソン氏ただ一人で、後は米政府の代理人10名、カナダ政府の代理人1名、全米自動車労組の代理人1名だったから、ヘンダーソン氏が少しでもへまをすればすぐに解任される状況下にあったのだが、それにしては唐突だ。
なにしろそれまではヘンダーソン氏はよくやっているとの評価だった。

2024_030

 どうやら解任の理由は、ドイツにあるGM子会社オペルの売却問題らしい。
GMが苦境に落ちたと同じ理由でオペルも苦境に落ちていたのだが、ドイツ政府の肝いりで、オペルをカナダのマグナ社に売却する話がほとんど決まっていた。

 ドイツ政府としては労組を説き伏せ、人員削減等の条件を飲ませる代わりに、独州立銀行から約2000億円のつなぎ融資をし、さらに約5000億円の持参金をつけてオペルの再建をマグナ社に約束させたばかりだ。
やれやれ、これで失業問題も回避でき、オペルは最新設備を導入できて競争力が向上し、新生オペルとして蘇るだろうメルケル首相は胸をなぜ下ろしていた。

 ところが急にGMが強気になり、オペルの売却を白紙撤回するといい始めた。11月4日のことである。
どうやらヘンダーソンSEOGMの業況が回復基調に乗ったと判断し、またドイツ政府が5000億円の持参金を出してくれるなら、GMの管轄化でオペルを再生できると判断したらしい。
GMの大型車はもう売れない。オペルを強化して環境対応車にするのがGMにとって再建の近道だ

2024_053

 しかしこれにはメルケル首相が完全に切れてしまった。「何言っているのよ、私が大事なのはドイツのオペルで、GMじゃないわ。約束を反故にするならすぐさま独州立銀行の2000億円の融資金を返済しなさい」と命じ、さらに持参金など一銭も出さないと通告した。

 困ったのはヘンダーソンCEOだ。ドイツ政府は失業問題を恐れて、つなぎ融資もそのままで、さらに独政府の支援5000億円を当てにしていたのに、実際はすべてGMもちで再建を果さなくては成らなくなった。

ヘンダーソン、君ははしゃぎすぎだ。せっかくマグナ社に売却ができるはずだったのに、ドイツ政府を怒らせ元の木阿弥になってしまったじゃないか。君には経営能力はない
取締役会で解任されてしまった。

注)実際はメルケル首相からオバマ大統領に厳重抗議が行き、アメリカ政府がヘンダーソン氏の首をきったのだろう。

 GMの業況の回復はアメリカ政府や中国政府の買い替え補助制度や、減税措置によるところが大きい。
こうした政府の支援がなくなれば自動車市場は瞬く間に凍りついてしまう。
自らの実力ではない政府支援のおかげで、かろうじて販売が伸びているのに、ヘンダーソン氏は自分の経営能力によるものと誤解したらしい。

2024_038

 これで再びGMの再建に赤信号がともった。
なにしろGMには環境対応車の開発で決定的に遅れているという弱みがある。アメリカ政府の環境対応車への補助金で潤ったのは、GMというよりは日本車だ。

 さらにここにきて、オペルだけでなく、スウェーデンのGM子会社サーブの売却が白紙撤回されてしまった。
せっかく連邦破産法11条の適用を受け、身軽になったのに、これではまた昔のGMに戻ってしまいそうだ。
GMの経営について、また目が離せなくなってしまった。

 


 

 

| | コメント (0)

(21.12.9) 農業政策のダッチロール  戸別補償制度

Dscf0057

 日本の農業制度は保護を目的にしてきたため、農業は徐々に衰退を続けてきたが、今回民主党が導入する「農業者戸別所得補償制度(戸別補償)」を見て、「これで日本農業は最終的に衰亡が決定した」と思った。

 それまでの自民党農政も決して褒められたものではなかったが、それでも農産物の自由化を見越して、国内農業の生産性を向上させるための大規模農業の実現には努力していた。
07年から主として大規模農家(4ha以上)や集落営農20ha以上)に補助金を出して、規模の拡大と生産性の向上を図らせていたからである。

注)当初自民党は大規模農家だけに補助金を出すことにしていたが、民主党から小規模農家も対象にすべきとの修正案がだされたため、集落営農と言う形で、農家が集まって20ha以上になれば補助金の対象にした。
なお、集落営農に対する補助金は組織に与えられ個人に与えられるわけではない。

Dscf0060

 ところが今回民主党が導入を図ろうとしている戸別補償では10a以上のコメ生産農家に直接補償をするという内容に変更された。
10aとは自民党農政が目指してきた農家の40分の1の規模だ。

そんなら、集落営農なんか止めて個人で米つくりをしたほうがいいじゃないか。集落営農では補助金は組織のものだが、自分で耕せば補助金は自分のものだ

 それまで大規模農家や集落営農組織に農地を賃貸していた農家がすっかり、農作業を再開することにしてしまった。
しかしなぜ小規模農家が農業を止めていたかというと、高齢化で農作業ができなかったり、トラクターなどの農業資材の高騰で農業が割に合わなかったからである。

お父さん、農業を再開するといっても、腰が曲がってしまって農作業ができないじゃない
心配するな、作るそぶりだけでいいんだ。できた米の品質なんて問題じゃなくて、補助金をもらうのが目的だ。手抜き農法なら今でもできる

Dscf0043

 今回の戸別補償の最大のポイントは従来の補助金や交付金が農協経由で配分されていたのに対し、農家に直接支払われることにある。

自民党の支持基盤の農協をつぶせ。直接農家の支持が得られれば、来年の参議院選で、民主党は過半数を取れる小沢幹事長の戦略である。
確かに政治的には戸別補償は民主党にとって利すると思われるが、経済的には最悪だ。

 なにしろ諸外国にも戸別補償はあるが、規模がまったく違う。
豪州が3200ha以上、アメリカ180ha以上、イギリス40~60ha以上と大規模農家を農業の中核に据えて、国の食糧確保と輸出用農作物の生産を図らせようとするものだ。

 たしかにこの規模なら生産性の向上も期待できるが、日本の10a以上ではライオンとネズミのような差であり、当初から強い農業を目指しているのではなく、民主党の票田とのみ考えていることが確かだ。
じいさんと、ばあさんで2票だ。しかも必ず投票してくれるのだから戸別補償など安いものだ

注)来年度は試験的に導入することとして、予算規模は約5000億円。しかし最終的に米以外の農家への導入が決まると約3兆円の予算が必要といわれている。
なお米については生産調整に応じた農家という条件はついている。


Dscf0058

 しかしそれでは日本の農業は衰退するだけだ。大規模農家をつぶして小規模農家だけにし、生産性を徹底的に落として戸別所得補償だけしようという案だ。
当然品質のいい米もなくなって、国際競争力などまったく期待できない。
大規模農家や生産組合すら、経営努力は止めて品質の向上を図るよりは補助金で食べていこうとするだろう。

 戸別所得補償制度は日本農業の挽歌となると私は思っている

 

 

 

| | コメント (1)

(21.12.8) 私設 長柄町一周駅伝(JOG) 

Dscf0011

 伝統ある長柄町一周駅伝は今年は中止になった。新型インフルエンザが流行していたために、中学生や高校生が多く参加するこの駅伝は、今年は中止になったのだという。

 昭和33年以来51回も継続してきた大会だけに主催者としても忸怩(じくじ)たる思いだろう。
例年ちはら台走友会では2チームを編成してこの大会に臨んでおり、私も遅いBチームのメンバーだっただけにとても残念な気がした。

 そう思っていたら走友会のY会長が、「今回駅伝に出場できなかった人たちの思いを代表して、駅伝コースを一周しないか」との提案をしてくれたので喜んで参加することにした。
一度駅伝コースすべてを走ってみたかったんですよ」気持ちがハイになった。

Dscf0015

 今回はY会長と私の二人旅だったが、朝方のもやも次第に晴れて日中は小春日和の最適なJOG日和になってくれた。
長柄町は千葉県のほぼ中央に位置する起伏の多い場所で、駅伝コースも登ったり降りたりするかなりタフなコース設定になっている。

 特に2区4区はスタート直後に急激な登りがあり、私はこの区間は走ったことはなかったが、心臓が破裂しそうな坂道だった。
イヤー、これは大変なコースだ

Dscf0022

 Y会長萩往還250kmレースにも完走した経験があって、長い距離をJOGペースで走るのが好きだ。私もレースより街道や古道を走るのが好きなのでこの日は本当に楽しかった。
特に冬場の晴れた風のない小春日和の日は、心地よい汗が全身を包んでくれる。

 一周は約25km程度なのだが、2時間半程度かけて出発地点の長柄町役場まで戻ってきて、そこに隣接されている温泉で汗を流すことができた。
温泉はかなり黒ずんだ湯なのだが、地元の人の話だと約1800mボーリングして温泉を掘り当てたのだそうだ。

 Y会長ちはら台走友会グループメール長柄町一周JOGの練習記を掲載しているので、一部転載いたします。

Dscf0027
山崎さんと長柄ロングラン走ってきました。
長柄駅伝がインフルエンザで中止になったので、70チーム、420名を代表して、駅伝コース25km1周です。
9:35長柄町役場前は霧が立ちこめ、肌寒いくらいでしたが、スタートしてからだんだん晴れ、気温も上がってきて、快晴。
自然の中を気持ちよく走れました。
3区茂原街道の道の駅でエイド、4区下り終わって商店でエイド、それ以外は、㌔6分ペースで、山崎さんとお話しながら、おいしい空気を吸って、道行くおばさんたちとも笑顔で挨拶を交わしながら、とてもいいランでした。
25km 2:37:02(6’16/k)
ゴールしてセブンイレブンでノンアルコールビール買っておいしく飲みました。
温泉でゆっくりあたたまり、和室大部屋で弁当をほおばりました。
右ハムはテーピングしてたせいか痛みはほとんどなく、むしろ左ハムからお尻にかけての方が痛みがありました。
佐倉に向けて、いいスタートが切れました。
走ると気持ちいいです。
日頃のモヤモヤもすっきりしました。

 

 

| | コメント (0)

(21.12.7) 東証の責任はその程度か 1円株誤発注判決

027

 みずほ証券05年12月、東証マザーズに新規上場したジェイコムの株取引で、「1株61万円で売却」しようとして、誤って「61万株を1円で売却」と入力し、システム的に取り消しができなかったため、415億円の損失が発生した事件の東京地裁の判決が出た。

 判決では「注文取消義務(誤発注から1分25秒後」と「売買停止義務(誤発注から6分59秒後」が争われたが、前者の責任は東証にはなく、後者についてのみ責任があると判断され、107億円の賠償をみずほ証券に支払うよう判決が出されている。

注)判決では異常な取引を認識した時点で売買停止をすべきであったとして、その時点以降の150億円の損失発生にのみ損害賠償の責任が発生するとした。
ただし責任の割合は東証7割、みずほ証券3割とし、150億円×70%=107億円をみずほ証券に支払いを命じている。

 一瞬「本当か?賠償は訂正のインプットができなかった時からではないのか?」眼を疑ってしまった。
東証のシステムでは一旦入力した内容の訂正が効かなかったのだが、裁判所の判決ではそれでいいのだという。

 東証の言い分は「売買するための施設の提供が役目で、個別の注文を処理する義務はなく」「今回は予想不可能なトラブルで賠償責任はない」と言うものだった。

029_2

 通常システムを構築するときは「人間は間違いをする」と言う前提の下に、必ず「訂正処理のシステム」を構築するのが常識だ。
金融機関の用語で「被訂正・訂正」と言うのだが、一旦打ち込んだ内容を取り消して、新たに正しい内容を打ち込む処理である。

 ところが東証システムにはこの「被訂正・訂正」の処理が一応はあったのだが、実際はプログラムミスで取り消し処理ができなかった。
このため間違いは永遠に間違いのままで、後は「異常な売買状況を認識した時点で、売買停止措置を取」事しかなかったのだという。

 東証は「予想不可能だった」と言っているが、ならば「訂正処理のシステムを構築していた」のはなぜかと言う疑問が残る。

注)東証では確かに訂正処理のシステムは構築したが、みずほ証券のような入力ミスはプロがするはずがなく、本来あってはならないレアケースなので、プログラムテストをしなかったのは東証の責任ではないという。

 確かに株式の取引で「あの注文は間違いでした。ごめんなさい」なんて常時いわれたら取引が成立しないことは確かで、遡って注文を取り消すことは不適切だが、間違いを気づいた段階で「取り消しができない」と言うのはシステムとしては最大の欠陥だ。

注)なおロンドン等海外の証券取引所では誤発注の約定を事後的に取り消すルールが存在しており、東証も07年9月にそのルールを導入した。

 東証はシステムに詳しい人材の育成をせず、もっぱらシステム構築をメーカーに丸投げして、訂正処理のテストをすっぽかしため、実際にその処理を行おうとしたときにはシステムが動かなかった。

 ところが今回の判決はこの「取消注文義務」が東証にはないとの判決で、常識的な判決だとはとても思われない。
みずほ証券はまだコメントを出していないが、「承服できない判決で、損害賠償対象金額は訂正処理をしようとした後で発生した損失415億円だ」というのが本心だろう。

 現在東証の世界に置ける地位の低下は著しく、上海証券取引所に売買代金で抜かれてしまって、上海が3位、東証が4位になってしまった。かつて世界一と言われていた東証は、これからもますます差を付けられそうだ。

031

 現在の取引所相互間の競争は、① コンピュータによる自動取引と、② 細切れに分けて売買注文が出せるシステム開発なのだが、東証は「欠陥システムがあってもそれは東証の責任ではない」と言っているのだから、これでは最初からシステム競争に勝てるはずがない。

 東証の税引き後利益は年間100億円程度だそうだから、確かに400億円も賠償責任が発生したら、4年間の利益が吹っ飛んでしまう。
だからどんな屁理屈であろうと、この裁判に勝たねばならないということは理解できるが、だからと言って東証がシステムテストも十分に行わず、欠陥システムをリリースした責任は免れないと私は思っている。

注)みずほ証券は上告すると思うが、その場合は東証に対するより厳しい判決が出ると私は予想している。

 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.6) 世界経済の七不思議 日本国債のレートはなぜ低い

056  

 おそらくこれほど魔か不可思議な現象はないとも思われる。
日本国債の利回りが世界のどの国の国債の利回りよりも低位にあって、一方政府の債務残高の推移は対名目GDP対比、先進国では断トツに高い

本政府は国債を自由勝手に増やすが、だからと言って市場は易々諾々とその低金利の国債を購入する、なぜだ?」

 かつて格付機関ムーディーズは軽蔑をこめて言ったものだ。
日本国債のGDPに対する比率は許容限度を越えた。これではボツワナレベルの格付がせいぜいだ2002年のことである。

 しかしその後も日本国債は売れ続け、利回りはどこの国よりも低位で安定してきた。
ムーディーズの馬鹿がとちりやがって
市場からクレームが付き始めたので、ムーディーズはあわてて「日本の対外債権や国内預金の多さから見ると、ボツワナレベルは間違いだった。イタリア並だ」と訂正した。2009年のことである。

 しかしムーディーズならずとも、この日本国債の強さは信じられないだろう。
現在利回りは1.5%前後だが、他の先進国は軒並み3.5%前後だし、高金利政策をとっている豪州やニュージーランドは6%前後、経済に赤信号が付いている南アフリカは10%前後になっている。
日本国債はオリンピックならば断トツの金メダリストといえる。

 一方、政府債務残高の推移は赤字国債の発行増で急激に悪化しており、アメリカやヨーロッパ主要国がGDP比せいぜい100%程度なのに、日本は200%と他を寄せ付けない悪さだ。
先進国の中でイタリアだけが150%だから、ムーディーズが日本をイタリア並みに評価したのもうなずける。
Image03_2

 だがそれでも日本国債の市場評価はゆるぎない。
リチャード・クー氏が「心配するな。赤字国債をいくらでも発行して、経済の底上げを図れ」とはっぱをかけるのもうなずける。

 日本国債が世界最強である理由は通常以下のように説明される。

① 日本国債の購入者は国内の機関投資家であり、日銀の低金利政策により1.5%前後でも十分に利ざやが取れるので、あえてリスクテイクな投資をしない(ゆうちょ銀行が典型的にそれで177兆円の貯金の約80%を国債運用にまわしている

② 日本は経常黒字国で、常に金余りの状態にあり個人貯蓄も約1500兆円と断トツに多い。いわば金の使い道に困っている状態なので、国債運用でも運用がないよりはまし。

③ 日本の国民が日本政府を信用し、国がよもやハイパーインフレ政策をとって国債の価値をゼロにするようなことはないと思っている。


Image04_2  

 以上のようだと、日本政府が低金利政策をとる限り、また経常収支が黒字である限り、また財務省と日銀がへまをしない限り、日本国債は売れ続け、世界最強の国債でいられることになる。

だから言ったろう。赤字国債をいくら発行しても日本は大丈夫なのだ。45兆円でも、50兆円でも発行しろリチャード・クー氏の雄たけびが聞こえるようだが、日本は世界の目から見るとえたいの知れない国と写るだろう。
まさに世界経済の七不思議なのだ。

注)日本人の行動パターンはグリーンスパンも理解の限度を越えていたらしい。「利回り1%の10年国債を進んで買う投資家は、日本人以外にはいない」とあきれ返っていた

 

 

 

 

| | コメント (1)

(21.12.5) 原油 急騰か暴落か エコノミスト特大号

Image02

 私の経済予測の中でいつも今一つなのは原油価格の予想だ。
昨年の12月に、「石油価格はさらに低下しそうだ」という記事を書き09年度30ドル前後だと自信満々で予想したが、30ドル台だったのは3月頃までで、4月が40ドル、9月に65~75ドル、10月に入り80ドルになってしまい、これからさらにあがりそうな気配だ。
一体どうして私の予想が当たらないのだろうか」頭を抱えた。

 09年度の世界経済成長率は世界全体で▲1.1%とIMFが予想しているように、実体経済は相変わらず悪い。
中国が好調だといってもアメリカも西欧も日本も経済が失速し、石油需要が減少しているのに、なぜ価格だけが上昇するのだろう?」
悶悶としていたら、週刊エコノミストが「原油」の特集号を出して私の疑問に答えてくれた。

 このエコノミスト特集号には3つの論文が収録されているのだが、丸紅経済研究所所長柴田明夫氏の「構造変化した価格決定メカニズム」と草野グローバルフロンティア代表草野豊己氏の「原油バブルは仕掛人CTAの手口」の2つの論文が参考になった。
特に草野氏の論文は私の疑問に直接回答を出してくれている。

 柴田明夫氏の論文の趣旨は原油価格は実体経済によって決定され、特に新興国の経済成長に伴って需要が増大して、価格が上昇しているというものである。

 基本的には私が行ってきた分析と同じ手法で、ただ新興国中国のウェイトを高く評価して価格上昇を予想しているのに対し、私が世界的経済の低迷で価格は上昇しないと判断したところが違うだけだ。

 一方草野氏の分析手法はまったく違う。草野氏の分析では、2009年WTI原油先物価格の推移を、実体経済の自律回復だけで説明するのは不可能だとし、その原因をFRBによる流動性の大量供給に求めている。

 大量の資金供給が、銀行貸し出しの増大には結びつかず(貸出しは08年対比09年度、約50兆円減少している)、銀行自身の自己勘定ヘッジファンドCTA:商品投資顧問業者)による原油、金、ユーロに対する投資によって価格上昇が起こっているという。

注)ヘッジファンドはリーマンショックの後半減したが、CTAと称するヘッジファンドだけはリーマンショック後も+14%程度の利益を出し、09年度に入ると、ますますリスクテイクの傾向を強めている

 いわば流動性供給バブルが発生しており、前回のリーマンショックまでは日本が低金利政策をとって世界にバブル資金を供給したが、現在はFRBがゼロ金利政策でバブル資金を供給しているという。

 これを証明するため、草野氏米商品先物取引委員会の資料を元に実に説得的なグラフを作成したが、このグラフを見るとWTI原油先物ユーロFRBの資金が流れていった様子が見て取れる。

注)以下の二つのグラフは非商業部門(実需に結びつかない投資部門)の原油とユーロに対する先物投資持高の推移をあらわしたもの。

Image0_3
このグラフは投資目的である非商業部門の原油先物の持高<値上がりが予想されると持高がプラスになり、値下がりが予想されると持ち高はマイナスになる>がFRBが金融緩和に乗り出した後の5月以降急激に増え、また原油価格が上昇していることが分かる

Image01_2
このグラフはユーロへの投資がやはりFRBの金融緩和後、5月以降積極的に行われ、ユーロ高につながっていることを示している。ユーロ・ドルとはユーロをドルで割ったもの

そうか、金余りになり行き場を失った資金が再び原油や金やユーロ、そして最近では円に殺到しているのか
09年3月頃から原油価格は上昇に転じているが、FRBの金融緩和時期にほぼ一致し、この状況はFRBが引き締めに転ずるまで続く可能性が高い。

 現状のFRBの姿勢はゼロ金利のまま、政府機関債やMBS(不動産担保証券)を担保に来年3月までは資金供給を行うことにしているので、それまでは金融機関はジャブジャブの資金が調達できることになる。

注)それによりドル安が予想されるが、ドル建ての商品(特に原油)は、ドル安部分だけでもヘッジしなければ持っているだけで損失が発生してしまう。

そうなると、来年の3月までは原油価格は上昇局面にあって、100ドル程度まで上がる可能性がありそうだ。もし3月でFRBが金融を引き締めれば、今度は急転直下原油価格は下降に転じて、リーマンショックと同じような急落をすることになる

 今回の草野氏の論文を読んで、今まで私が行ってきた実体経済分析による見通しだけでは、十分価格推移を見込めないことが分かった。
リーマンショックの後も世界はあいも変わらず過剰流動性による、バブル価格が原油先物価格を決定しているようだ。


 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.4) 文学入門 ファイティング寿限無 立川談四楼

Dscf0099

 今回の河村義人さんの読書会のテーマ本は立川談四楼たてかわ だんしろう)氏のファイティング寿限無じゅげむ)だった。
この本を選んだのはこの読書会でいつも一風変わった本を紹介するOさんである。

 とても正統派とは思われない、それでいて人気のある作品を選択するのだが、私は立川談四楼氏もまたこの作品も知らなかった。
さっそくWikipediaで調べてみると次のように記されてあった。

立川 談四楼(たてかわ だんしろう、1951年6月30日 - )は、群馬県邑楽郡邑楽町生まれの落語家、作家。
1970年、(昭和45年)高等学校を卒業後、同年3月立川談志に入門。前座名は寸志。1975年11月の二つ目昇進後談四楼と改名。

 1983年、落語協会での真打昇進試験において、談四楼と兄弟子の小談志が不合格になる。これをきっかけに談志は弟子をつれて落語協会を離れ、落語立川流を結成。同年5月、落語立川流真打に昇進


 私と5歳違いの落語家で作家だと言う。昭和45年は私も社会人になった年なので感慨深かった。
そうか、この人は私と同じ年に、落語界に身を投じ、その後作家活動をしてたのか・・・・・・

Dscf0124

 小説の筋はいたって簡単で、落語家でボクサーのファイティング寿限無がたちまちのうちに世界王者になり、なったとたんにボクシングを捨てて落語にまい進すると言う話である。

 立川談四楼氏は落語家で作家だが、それを落語家でボクサーの寿限無に投影して、夢を描いたと思えば大体あたる。
この小説にでて来る師匠の橘家龍太桜は実際の師匠立川談志そのもので、語り口も話の内容もほとんど実際にあったものと推定される。

 私はボクシング業界についてはほとんど知識がないが、寿限無が入門した金丸茂二ボクシングジム金子ボクシングジムのことだし、寿限無を好意的に取り上げるニュースキャスター ヨネキュー久米宏といった具合である。

 この小説では実在の人物があたかもその人そのものと思われるキャラクターで現れてくるので、ちょうど水島新司氏の人気漫画「あぶさん」を読んでいるのと同じような感覚になる。

 作者が落語業界に詳しいのは当然としても、ボクシング業界の知識も相当なもので、私のようにこうした世界に無知なものにはとても新鮮な感覚で読めた。
また寿限無が瞬く間に世界チャンピオンになってしまうのだが、このあたりはかなり劇画風であり、映画「ロッキー」のようなのりだ。

Dscf0089

 ただし、寿限無を世界チャンピオンにするために作者はかなり無理な設定を行っている。
たとえば寿限無がボクサーとして頭角を表したことで、芸能人アスリートナンバーワンを決める特別番組に出場を要請され、寿限無は100m走に出場する。

 対抗馬は元バレーボールのメダリストで現スポーツキャスターの河田俊男で昨年のタイムは11秒65。
寿限無は一回目でこれと同じタイムを出し、ファイナルでは10秒59河田を振り切って優勝すると言う話になっている。

 思わず笑ってしまった。
いくらなんでも、そりゃないよ。ボクサーとしてのトレーニングをしたからといって、日本陸上選手権のセミファイナルクラスのタイムが出せるはずがないじゃないか
ボクサーのJOGは決して早く走るためのトレーニングではない。
フットワークを鍛えるためであり、実際立ち止まってシャドーボクシングをしては、又走ることの繰り返しだ。

 もう一つの無理は世界タイトルマッチに向けてのキャンプに二人の若手のボクサーを同行させるのだが、一人は中距離、もう一人は駅伝とハーフマラソンで高校、大学で鳴らした選手だったと言う設定だ。
この二人と寿限無は走りこみの練習をするのだが、キャンプの最終段階でこの二人をらくらく抜いてしまうと言う話になっている。

そりゃないよ。高校・大学まで一流選手だった人と、落語会に入って身体をなまけ、その後ボクサーとしてのトレーニングをしたからといって、陸上競技を専門にしてきたランナーに勝てるはずはない

 もっとも落語家でボクサーと言う二束のわらじを履きながら世界チャンピオンになれるというのも荒唐無稽なので、鼻白むようなことではないが、私のように長い間マラソンをしてきた人間から見ると、どうしても話の筋に無理が見えてしまう。

 しかし、あまり細かいことは言うまい。この本を読んでいた数時間は結構楽しく読めたのだから、人を楽しませてくれる本ということは言える。
まあ、落語と同じだ。楽しけりゃ、それでいいじゃないか


*この会の主催者河村義人さんの書評を掲載いたします。この本に対する高い評価を下されていますので、是非一読ください。
http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/2009/12/1129-9345.html

*また今回の読書会のチューターのOさんの感想文は以下の通りです。http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/


 

 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.3) NHKスペシャル 数学者はキノコ狩りの夢を見る ポアンカレ予想

211_004

 先日見たリーマン予想の番組があまりに良くできており、私のような数学音痴でもそのポイントが理解できたので、今回このポアンカレ予想の番組も期待して見ることにした。

注)この番組は2007年に放送されたものの再放送で、リーマン予想の番組より前に制作されている。

 しかし結論から言うと、このポアンカレ予想の番組は出来が良くない。なぜそう言えるかというと、私が途中で寝てしまったからだ。
自分が寝たから良くないなどと言えば、まったく自分中心の天動説みたいな解釈だが、ビデオを再度見直して、なぜ私が寝てしまったかの理由が分かった。

 ポアンカレ予想とは「宇宙の形と構造を調べる方法」にかかる予想である。
ポアンカレによれば、「もし宇宙に一本の縄をつけた宇宙船を飛ばして、宇宙空間を旅した後に、地球に帰ってこれたとして、その縄を手繰り寄せることができれば宇宙は球面だ」という。

211_021

 これをポアンカレは数学の表現で以下のように数学者に問うた。
単連結な三次元多様体は、三次元球面と同相といえるか
縄を途中で引っ掛けることなく回収できるような三次元多様体は球面と同じだと証明してみろ、と言っているわけである。

 さて、この番組ではこのポアンカレ予想の説明のために悪戦苦闘するのだが、最初から三次元空間では視聴者がまったく理解しないと判断して、最初は二次元空間の説明から始める。
しかし、この説明がまったく舌足らずなために、私のような数学音痴は理解不能になって白けてしまった。
一体何を言おうとしてるんだろう、さっぱり分からん・・・・

 二次元空間の例ではマゼラン世界一周から説き起こされる。マゼランは西に艦隊を向け続けて、最後に出発地点に戻ったのだから、地球が丸いことを証明した。
しかしとポアンカレは言う。
そうでなくてたとえば地球がドーナツ状になっていたとして、その外側を一周しても艦隊は帰ってこれる。だから西に向かって航海しただけでは証明したことにならない

211_020

 ポアンカレは地球が球であるためには以下の内容の証明が必要だという。
マゼランが一本のロープを引いて航海し、最後に戻ってきてからそのロープが手繰り寄せられれば、地球は丸いと言える

 数学音痴の人間はこの説明に頭を抱えてしまう。マゼランの航海なら理解できても、ロープをたどり寄せることなど実際は無理だし、「もし手繰り寄せられるとしてもドーナツ型だって外側に沿った航海ならば手繰り寄せることができるじゃないか・・・・・・、それにそのことがなぜ球だという証明なのだろうか・・・・・・

 実はポアンカレ予想には二つの重要な前提条件があり、その前提条件の下で縄は手繰り寄せられるかと聞いているのだが、番組の当初はその説明がない。
二つの前提条件とは以下の通りである。

① 縄は必ず地球の表面を伝わって引き寄せられなければならない(ドーナツ型だと真ん中の穴に落ちたときに表面から離れる
② 船がどこをどのように航海しても結び目はできない(
マゼランが北極や南極や日本に自由に立ち寄ったとしても縄には結び目ができない

 ポアンカレ予想の証明をしようとした数学者はこの二つの条件の元で証明しようとして苦闘したのである。
そして上記の例は二次元空間だが、ポアンカレ予想はそれを宇宙まで拡大し、三次元空間で証明しなければならない。
宇宙の形は一本の縄で証明できる。もし、穴に落ちることもなく、結び目もなく手繰り寄せられたらそれは球面だ。だが、そのことをどのようにして証明すればいいんだ・・・・・・

 この番組ではこのポイントが明確にされていない。実際は時間の経過とともに分かるのだが、最初にこのポイントを明確化しないため、なぜ縄が地球表面から離れてはダメなのか、結び目がなぜ重要なのかわからない(だから数学者の苦闘が分からない)。

 私のようにビデオを見直して番組を再構成してみれば、番組製作者の意図が分かるのだが、最初みたときには分からなかった。
はっきり言ってしまえばできの悪い教師がだらだらとエピソードを述べ、生徒は懸命にノートをとって、それを見直すことによってはじめて内容を理解すると言ったレベルで、これでは生徒がかわいそうだ。

注)このような問題を解くための数学的方法としてポアンカレは位相幾何学(トポロジー)という数学を考案した。位相幾何学では穴の数だけが重要になる。
20世紀後半の数学界はこの位相幾何学の全盛時代となり、数学者はポアンカレ予想を証明するための方法はトポロジーだと信じていた。
211_025
(位相幾何学ではこれは穴が一つなのでドーナツと同じとみなされる)


 実際はポアンカレ予想微分幾何学(19世紀の数学)という手法で証明されるのだが、番組ではこれを証明したロシア人数学者ペレリマン博士のエピソードに多くの時間を費やしている。

 ペレリマン博士が、このポアンカレ予想を証明したのに、数学界最高の栄誉であるフィールズ賞を辞退して、賞金100万ドルを受け取らなかったこと。
人と会うことを避けてサンクトペテルブルグの森でキノコ狩りをしながら人目を避けた生活をしていること。
高校時代の恩師呼びかけにもこたえないこと、等が映像で紹介されている。

211_040

 確かに人間ペレリマンの紹介としては面白いが、なにしろポアンカレ予想のポイントが何なのか良く分からない人間には、「ペレリマンて何よ」という感じだ。

 どうやらこの番組の製作者は途中でポアンカレ予想の説明が数学音痴の人間には理解させることができないことに頭を抱え、途中で番組をエピソード数学史に変えたのではなかろうか。
ダメだ、視聴者にポアンカレ予想を理解させられない。なら、エピソードでお茶を濁そう・・・・・・・」そんな感じだ。

 この番組の最後もひどい。ポアンカレ予想を証明したペレリマン博士をプリンストン大学に呼んで説明を求めたのだが、トポロジーの専門家はペレリマンの微分幾何学がまったく理解できず、頭を抱えたと言う話で終わっている。

 しかしここで最も重要なのはポアンカレ予想がなぜ最新の数学であるトポロジーでとくことができず、微分幾何学と言う1世代前の数学で解かれたかで、そのさわりの説明に失敗している
おそらく番組制作者も理解できなかったのだろうが、見ている人はただあっけにとられるだけだ。

注)正確にいえば、ハミルトンのリッチフローを使用すれば、ポアンカレ予想を証明できると説明されており、このリッチフローが微分幾何学の式なのだが、見ている人には何がなんだか分からないだろう。

 この番組は多くのことを語たりすぎて自分でも収拾がつかなくなり、適当にお茶を濁した説明ばかりを行った駄作で、先日見たリーマン予想には足元にも及ばない。
製作者が理解できないことは、視聴者が理解できるわけがないということを確認するだけの番組に終わってしまった。

211_036
注)この番組ではポアンカレ予想を内包するより大きな予想として、サーストンの幾何化予想と言うものが紹介されている。
サーストンの予想とは宇宙は最大で8つの形からなりそれを証明できればポアンカレ予想が証明できると言うもの。
しかし、ポアンカレ予想でさえ十分理解できない頭には、「これ以上いろいろなことを言うのはやめてくれ」という感じだ。


 

 

 

 

| | コメント (0)

(21.12.2) 悲劇の経営者 西川善文氏

19129_061

 このたび発表された日本郵政グループの中間決算を見て、改めて西川前日本郵政社長の力量に感服した。
21年3期の決算で郵政4社ゆうちょ銀行、かんぽ生命、郵便事業、郵便局)がいづれも黒字決算になったのには驚いたが、21年9月期中間決算では郵便事業を除いて黒字に成っている。

注)中間決算の内容

グループの連結決算
売上高8兆9513億円(対前年同期比▲5.6%)
純利益2009億円(同▲9.7%)

純利益の内訳:ゆうちょ銀行1581億円、かんぽ生命380億円、郵便事業▲193億円、郵便局93億円


 郵便事業は上期は常に赤字で、下期の年賀はがきで黒字に持っていくのがパターンだが、今期に限って言えば黒字化は難しそうだ。
日本通運との宅配事業の統合会社JPエクスプレスの正式認可を総務省から待ったをかけられ、事業統合のためのシステム経費等の支出が膨らんでいるためである。

注)JPエクスプレスは08年6月に設立され、ゆうパックとペリカン便の統合を目指していた。しかし麻生政権の鳩山総務相がかんぽの宿問題や、中央郵便局の立替問題でクレームをつけ、事業統合の認可を伸ばしてきた。
さらに鳩山政権になり亀井金融・郵政担当相が統合に反対している。なおJPエクスプレスの上半期の赤字は▲160億円。


  今回の中間決算は、もしJPエクスプレスの問題が早期に解決していたり、かんぽの宿で経営者が国会対策に翻弄されなかったならば、さらによい決算内容だったと予想されるだけに、西川氏としては残念なことだろう。

19129_030

 小泉元首相から請われて、日本郵政をたてなおした西川氏の手腕は上記のように確かなものだったが、亀井氏を始めとする旧郵政省グループに蛇蝎のごとく嫌われ、最後は鞭打たれ日本郵政から追い出されてしまった

 西川氏は、もし小泉路線が継承されていれば、今頃は成功裏に民営化を実現させたきわめて有能な経営者として賞賛を浴びていたはずだ。
しかし実際はかんぽの宿で不適切な売買契約を結んだ経営者という濡れ衣を着せられて、何か胡散臭い経営者のように思われている。

注)かんぽの宿は総額2400億円をかけて建設したが、実際は旧郵政省と郵便局職員の再就職の場としか利用されず、収益還元法で評価すると約100億円の評価しかなかった。
この価格でオリックスに売却しようとしたのだが、その売却過程が不明瞭だと疑われたものである。

 しかし本当に問題なのは100億円程度の価値しかないものを2400億円かけて建設したことで、これは旧郵政省の責任である。

19129_047

 その後釜に座ったのが、元大蔵事務次官斎藤次郎氏で、斎藤氏は郵政国有化の旗振り役として亀井静香氏に請われて社長に就任した。
斎藤氏郵政国有化に自信満々だが、残念ながら経営については期待できない。

 現在の日本郵政グループの収支構造はゆうちょ銀行の黒字が約8割とダントツなのだが、ゆうちょ銀行が黒字なのは、177兆円の残高の約8割を国債で運用し、その利ざやが1%程度あるためである。

 ここで次のような設問に答えてほしい。

国債利回りがゆうちょ銀行の利回りより平均して1%程度高い状態が続いた場合、ゆうちょ銀行利用者は郵便貯金より国債購入に移行しないか?」

誰でも答えは「移行する」だろう。

注)実際郵便貯金の残高は傾向的に低下してきており、01年には262兆円あった残高が、最近時点では177兆円(▲85兆円)になっている。

 ここにゆうちょ銀行の本質的な問題があり、現状の国債運用を続けていく限りジリ貧に成るのは当然といえる。

① ゆうちょ銀行は現状は収益を確保しているが、貯金者が利回り選考に目覚めると自身で国債購入を始め、郵便貯金を経由しなくなる。

② 郵便事業は電子メール等の普及に伴い、その実質的な役目を終えようとしており、さらにゆうパックはクロネコヤマトのような手ごわい競争者と競合している。

③ ゆうちょ銀行とかんぽ生命に全国一律営業を亀井大臣はさせることにしているが、実際はまったく商売が成り立たない郵便局が出てくる。

 このような厳しい状況をかいくぐって経営をしていくのは並大抵のことではなく、それゆえ西川氏の手腕が光るのだが、今回社長に就任した元大蔵事務次官の斎藤氏にそれを求めるのは始めから無理というものだろう。


(別件)Picasa Webでの写真です。現在You Tubeとの比較対象のために作っています。http://picasaweb.google.co.jp/yamazakijirou0/Sample02?authkey=Gv1sRgCOT57ojC0PWHygE#

 



 

 

| | コメント (1)

(21.12.1) サイボーグ経済はどこまで持つか 中国経済の行方

006

 Voice12月号2010年の中国経済の特集に、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏「サイボーグ経済」崩壊の始まり』という論文を掲載しており、実に興味深く読むことができた。

 上野氏の論文を読んで、今まで中国経済について私が記してきたことと非常によく似た認識を上野氏がしていることが分かった。
上野氏の論述を私の言葉で書くと以下のようになる。

注)これは上野氏の論文の注釈ではないので、興味のある方は直接上野氏の論文を読んでください。

 上野氏の分析では中国は人造人間サイボーグと同じであり、ちょうどオリンピックの100mで優勝し、その後金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンのようなものだとみなしている。
思いっきり筋肉増強剤で強化しているが、薬がなくなればただの人に過ぎないという訳だ。

 中国経済については表面的な数字は華々しい。また日本の輸出産業が中国経済の回復に伴い立ち直ってきたのは事実だから、それなりに中国経済が好調なのは事実である。

 だが、中国政府が発表するGDPの伸び率や失業率統計等マクロ数字は、ほとんどが政治的に粉飾されており、中南海の政策担当者でさえ実態をつかめない。
おもいっきり財政と金融を緩和したので、国内の公共投資と不動産投資、株式市場が好調なのは分かっているが、はたして中国のGDPがどの程度のものかさっぱり分からない」これが本音だ。

010

 上野氏によると中国経済の本質的課題は以下のように整理される。

① 中国の社会保障制度が不備のため貯蓄率が高く、消費が伸びない(個人消費の比率は35%前後で日本の60%程度、アメリカの70%程度に比較して極端に低く、消費に頼ることができない)。
② 沿岸部の外資系企業はアメリカ経済の不調のため、輸出が停滞している(
輸出は対前年比▲20%程度が続いている)。
③ そのため、4兆元(54兆円)の財政支出による公共投資
約9兆元(約115兆円)の金融緩和による不動産投資と株式投資によって支えられており、この結果バブルと言ってよいほどの状況が出現している。

 なにしろ中国の2009年1月~8月までの都市部固定資産投資(主として不動産投資)は前年同期比+33%というのだからすさまじい。日本のバブル期以上だ。

 銀行は政府の指導によってジャブジャブの資金を、主として国有企業に割り当てており、当初予定の5兆元約70兆円)をはるかに越えて、このままいくと10兆元約135兆円)規模にまで膨らみそうだ。

 割り当てられた企業は(一部は設備投資に回すが輸出や国内消費がのびなやんでいるため)仕方なく不動産投資や株式投資にこの資金を投入したので、不動産も株価も目いっぱい上昇してしまい、日本の80年代後半と同じようになってきた。
「お願いします。何でもいいから資金を借りてください。無担保でも結構です」長銀や日債銀が倒産したのと同じパターンである。

 こうしたジャブジャブの資金緩和は、景気が回復すれば中止しなければならない。もっとも急激な引き締めは、景気を急停車させ、不動産関連融資の焦げ付きを発生させるので、そのタイミングは実に難しい。

 統計数字を確認しながら、このあたりでソフトランディングを図るべきなのだが、悲しいことに中国にはまともな統計がなく実態を把握するのは直感しかない。

 正確なのは北京市等の不動産価格の推移や、香港や上海の上場されている株価、それと輸出入統計やアメリカ国債の保有残高等、ミクロ数字か外国に比較できる数字があるものだけだ
これだけの数字で経済運営を行っているのは、レーダーなくして運行している船と同じだが、それにしても中国経済官僚の力量は世界一だ」世界が驚嘆している。

1984_094

 中国経済は確かに暴走しているが、80年代の日本のバブルが崩壊したように、中国バブルもいつかは崩壊する。
その時はいつだろうか?」

 中国は今が盛りだ。かつての日本がジャパン アズ NO1といわれた時がまさに分水嶺だったように、中国とアメリカの2強が世界を取り仕切るといわれている今が、分水嶺になる可能性が高い。

 中国がインフレを恐れ、国内経済の行き過ぎを修正するために引き締めに転じれば、不動産価格も株価もたちまちのうちに低下するのは日本の経験が教えている。

 日本には大前健一氏のように無条件に中国経済を賛美する人が多いが、上野泰也氏はサイボーグは筋肉増強剤の薬が切れた時がおしまいだという。
10年まで中国経済は持つだろうか。10年度も薬が切れなければ持つが、いつかは限界が来ることだけは確かだ。


今日のYou Tubeはマッスルさんが撮影した飯豊山の花です。
http://www.youtube.com/watch?v=eZimS1L0mck

 
 

| | コメント (1)

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »