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(21.12.7) 東証の責任はその程度か 1円株誤発注判決

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 みずほ証券05年12月、東証マザーズに新規上場したジェイコムの株取引で、「1株61万円で売却」しようとして、誤って「61万株を1円で売却」と入力し、システム的に取り消しができなかったため、415億円の損失が発生した事件の東京地裁の判決が出た。

 判決では「注文取消義務(誤発注から1分25秒後」と「売買停止義務(誤発注から6分59秒後」が争われたが、前者の責任は東証にはなく、後者についてのみ責任があると判断され、107億円の賠償をみずほ証券に支払うよう判決が出されている。

注)判決では異常な取引を認識した時点で売買停止をすべきであったとして、その時点以降の150億円の損失発生にのみ損害賠償の責任が発生するとした。
ただし責任の割合は東証7割、みずほ証券3割とし、150億円×70%=107億円をみずほ証券に支払いを命じている。

 一瞬「本当か?賠償は訂正のインプットができなかった時からではないのか?」眼を疑ってしまった。
東証のシステムでは一旦入力した内容の訂正が効かなかったのだが、裁判所の判決ではそれでいいのだという。

 東証の言い分は「売買するための施設の提供が役目で、個別の注文を処理する義務はなく」「今回は予想不可能なトラブルで賠償責任はない」と言うものだった。

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 通常システムを構築するときは「人間は間違いをする」と言う前提の下に、必ず「訂正処理のシステム」を構築するのが常識だ。
金融機関の用語で「被訂正・訂正」と言うのだが、一旦打ち込んだ内容を取り消して、新たに正しい内容を打ち込む処理である。

 ところが東証システムにはこの「被訂正・訂正」の処理が一応はあったのだが、実際はプログラムミスで取り消し処理ができなかった。
このため間違いは永遠に間違いのままで、後は「異常な売買状況を認識した時点で、売買停止措置を取」事しかなかったのだという。

 東証は「予想不可能だった」と言っているが、ならば「訂正処理のシステムを構築していた」のはなぜかと言う疑問が残る。

注)東証では確かに訂正処理のシステムは構築したが、みずほ証券のような入力ミスはプロがするはずがなく、本来あってはならないレアケースなので、プログラムテストをしなかったのは東証の責任ではないという。

 確かに株式の取引で「あの注文は間違いでした。ごめんなさい」なんて常時いわれたら取引が成立しないことは確かで、遡って注文を取り消すことは不適切だが、間違いを気づいた段階で「取り消しができない」と言うのはシステムとしては最大の欠陥だ。

注)なおロンドン等海外の証券取引所では誤発注の約定を事後的に取り消すルールが存在しており、東証も07年9月にそのルールを導入した。

 東証はシステムに詳しい人材の育成をせず、もっぱらシステム構築をメーカーに丸投げして、訂正処理のテストをすっぽかしため、実際にその処理を行おうとしたときにはシステムが動かなかった。

 ところが今回の判決はこの「取消注文義務」が東証にはないとの判決で、常識的な判決だとはとても思われない。
みずほ証券はまだコメントを出していないが、「承服できない判決で、損害賠償対象金額は訂正処理をしようとした後で発生した損失415億円だ」というのが本心だろう。

 現在東証の世界に置ける地位の低下は著しく、上海証券取引所に売買代金で抜かれてしまって、上海が3位、東証が4位になってしまった。かつて世界一と言われていた東証は、これからもますます差を付けられそうだ。

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 現在の取引所相互間の競争は、① コンピュータによる自動取引と、② 細切れに分けて売買注文が出せるシステム開発なのだが、東証は「欠陥システムがあってもそれは東証の責任ではない」と言っているのだから、これでは最初からシステム競争に勝てるはずがない。

 東証の税引き後利益は年間100億円程度だそうだから、確かに400億円も賠償責任が発生したら、4年間の利益が吹っ飛んでしまう。
だからどんな屁理屈であろうと、この裁判に勝たねばならないということは理解できるが、だからと言って東証がシステムテストも十分に行わず、欠陥システムをリリースした責任は免れないと私は思っている。

注)みずほ証券は上告すると思うが、その場合は東証に対するより厳しい判決が出ると私は予想している。

 

 

 

 

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