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(21.12.2) 悲劇の経営者 西川善文氏

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 このたび発表された日本郵政グループの中間決算を見て、改めて西川前日本郵政社長の力量に感服した。
21年3期の決算で郵政4社ゆうちょ銀行、かんぽ生命、郵便事業、郵便局)がいづれも黒字決算になったのには驚いたが、21年9月期中間決算では郵便事業を除いて黒字に成っている。

注)中間決算の内容

グループの連結決算
売上高8兆9513億円(対前年同期比▲5.6%)
純利益2009億円(同▲9.7%)

純利益の内訳:ゆうちょ銀行1581億円、かんぽ生命380億円、郵便事業▲193億円、郵便局93億円


 郵便事業は上期は常に赤字で、下期の年賀はがきで黒字に持っていくのがパターンだが、今期に限って言えば黒字化は難しそうだ。
日本通運との宅配事業の統合会社JPエクスプレスの正式認可を総務省から待ったをかけられ、事業統合のためのシステム経費等の支出が膨らんでいるためである。

注)JPエクスプレスは08年6月に設立され、ゆうパックとペリカン便の統合を目指していた。しかし麻生政権の鳩山総務相がかんぽの宿問題や、中央郵便局の立替問題でクレームをつけ、事業統合の認可を伸ばしてきた。
さらに鳩山政権になり亀井金融・郵政担当相が統合に反対している。なおJPエクスプレスの上半期の赤字は▲160億円。


  今回の中間決算は、もしJPエクスプレスの問題が早期に解決していたり、かんぽの宿で経営者が国会対策に翻弄されなかったならば、さらによい決算内容だったと予想されるだけに、西川氏としては残念なことだろう。

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 小泉元首相から請われて、日本郵政をたてなおした西川氏の手腕は上記のように確かなものだったが、亀井氏を始めとする旧郵政省グループに蛇蝎のごとく嫌われ、最後は鞭打たれ日本郵政から追い出されてしまった

 西川氏は、もし小泉路線が継承されていれば、今頃は成功裏に民営化を実現させたきわめて有能な経営者として賞賛を浴びていたはずだ。
しかし実際はかんぽの宿で不適切な売買契約を結んだ経営者という濡れ衣を着せられて、何か胡散臭い経営者のように思われている。

注)かんぽの宿は総額2400億円をかけて建設したが、実際は旧郵政省と郵便局職員の再就職の場としか利用されず、収益還元法で評価すると約100億円の評価しかなかった。
この価格でオリックスに売却しようとしたのだが、その売却過程が不明瞭だと疑われたものである。

 しかし本当に問題なのは100億円程度の価値しかないものを2400億円かけて建設したことで、これは旧郵政省の責任である。

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 その後釜に座ったのが、元大蔵事務次官斎藤次郎氏で、斎藤氏は郵政国有化の旗振り役として亀井静香氏に請われて社長に就任した。
斎藤氏郵政国有化に自信満々だが、残念ながら経営については期待できない。

 現在の日本郵政グループの収支構造はゆうちょ銀行の黒字が約8割とダントツなのだが、ゆうちょ銀行が黒字なのは、177兆円の残高の約8割を国債で運用し、その利ざやが1%程度あるためである。

 ここで次のような設問に答えてほしい。

国債利回りがゆうちょ銀行の利回りより平均して1%程度高い状態が続いた場合、ゆうちょ銀行利用者は郵便貯金より国債購入に移行しないか?」

誰でも答えは「移行する」だろう。

注)実際郵便貯金の残高は傾向的に低下してきており、01年には262兆円あった残高が、最近時点では177兆円(▲85兆円)になっている。

 ここにゆうちょ銀行の本質的な問題があり、現状の国債運用を続けていく限りジリ貧に成るのは当然といえる。

① ゆうちょ銀行は現状は収益を確保しているが、貯金者が利回り選考に目覚めると自身で国債購入を始め、郵便貯金を経由しなくなる。

② 郵便事業は電子メール等の普及に伴い、その実質的な役目を終えようとしており、さらにゆうパックはクロネコヤマトのような手ごわい競争者と競合している。

③ ゆうちょ銀行とかんぽ生命に全国一律営業を亀井大臣はさせることにしているが、実際はまったく商売が成り立たない郵便局が出てくる。

 このような厳しい状況をかいくぐって経営をしていくのは並大抵のことではなく、それゆえ西川氏の手腕が光るのだが、今回社長に就任した元大蔵事務次官の斎藤氏にそれを求めるのは始めから無理というものだろう。


(別件)Picasa Webでの写真です。現在You Tubeとの比較対象のために作っています。http://picasaweb.google.co.jp/yamazakijirou0/Sample02?authkey=Gv1sRgCOT57ojC0PWHygE#

 



 

 

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評論 日本の政治・経済 郵政民営化」カテゴリの記事

コメント

公務員のボーナス支給に批判が出ているのですが、民間の製造業などでは現物支給という措置が執られていることに準えて、「じゃあ、公務員も予算に対する国債の割合そのままに、ボーナスの一部を国債にしたらいいんじゃない?」と話していたら、翌朝の朝日新聞で、ゴールドマン・サックスが幹部のボーナスを5年売却禁止の自社株にしたという記事にびっくり。

公務員が優秀だという建前であれば、国債を減らす動機付けにはなるだろうし、また国債の質を高めようと努力する分、国民に対しては予算の税の節約と、国債を購入した国民への利回りの還元にも結びつくんじゃないかしら。

(山崎)かつて電話を引こうとすると、工事費のほかに電話債券の購入が義務づけられていました。電話網の敷設のために工事費だけではまかなえきれなかったからです。
国家予算については予算規模に対し税金が半分以下になったため、国債を発行しています。
この国債が市場で売れなくなると、電話債券と同じように個人割り当てが始まり、たとえば公務員のボーナスは国債で支払い、運転免許の更新の時には更新国債の購入を義務づけるというようなものです。
現在はまだ市場で国債の販売ができていますが、近い将来年金も国債で支払われるかもしれません。

投稿: 横田 | 2009年12月12日 (土) 15時53分

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