(21.12.18) COP15 弾丸の飛ばない戦争
やはりと言おうか当然と言おうか、コペンハーゲンで190カ国が集まって開催している国連のCOP15(国連気候変動枠組条約)は弾丸の飛ばない戦争になってきた。
先進国グループ(EU、日本)はアメリカと中国の条約への参加が必須と主張し、一方中国を含む途上国グループは先進国だけに義務を負わせようとする。
地球温暖化問題はまさに地球全体にかかわりのある問題だが、現在の主流になっている産業(鉄鋼、火力発電、自動車、セメント、アルミ等)にとってはコスト増につながるため、自国産業を守るためにおいそれと妥協するわけにはいかない。
他国の損失は自国の利益だ。
「世界の排出量の約40%は中国とアメリカが非出しているのだから、この2国が加盟しない条約など意味ない」
「いや、一人当たりの二酸化炭素排出量は、中国はアメリカの4分の1でしかない。まず個人あたり排出量の多い先進国が削減義務を負う」
けんけんがくがくの言い合いになって、まったく展望が持てなくなってきた。主催国のデンマークは困り果てて妥協案を提出した。
「それなら条約は諦めて政治合意と言うことにし、実質的に削減目標を守ることにしよう」
これに対し中国を中心とする途上国が猛反発した。
「だめだ、それなら京都議定書を延長して、先進国だけ削減目標を新たに設定したらいい」 途上国の主張は途上国の義務のない京都議定書の延長で、延長期間13年~20年の間の削減目標をすでに表明した水準(日本▲25%等)で条約を結べと言う。
国連の会議は数が物をいい、途上国が優勢だ。
中国は先進国の産業をCOP15で縛りつけ、その間に中国を世界最大の産業大国にしようとしている。
これには先進国が猛反発した。
「それじゃ、アメリカと中国、インドが抜けてしまう。絶対認められない。中国、アメリカ、インドを含めた別途の枠組みを作ることを条件に、京都議定書の延長を認めてもいい」
なんだか、さっぱり分からなくなってきた。
COP15は最終日が18日で、この日に各国の首脳が集まることになっている。時間が切迫しているのだが、まったく結論がでそうにない。
「仕方がない、折衷案でもないよりましだ。京都議定書の延長と、その他の国の新たな枠組みの二本立てにしよう」
理解不能な案だがどうやらこの案で妥協がはかられそうだ。
問題はアメリカ、中国、インド、ブラジルに実質的に削減をさせる枠組みになるかどうかだ。
それに実務的には検証の問題もある。
核開発と同じで検証体制が整わなければ、絵にかいたもちになってしまう。
はたしてどうなるだろうか。COP15の結論がでた段階でもう一度整理して見よう。
注)資料は毎日新聞作成
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