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(21.12.1) サイボーグ経済はどこまで持つか 中国経済の行方

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 Voice12月号2010年の中国経済の特集に、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏「サイボーグ経済」崩壊の始まり』という論文を掲載しており、実に興味深く読むことができた。

 上野氏の論文を読んで、今まで中国経済について私が記してきたことと非常によく似た認識を上野氏がしていることが分かった。
上野氏の論述を私の言葉で書くと以下のようになる。

注)これは上野氏の論文の注釈ではないので、興味のある方は直接上野氏の論文を読んでください。

 上野氏の分析では中国は人造人間サイボーグと同じであり、ちょうどオリンピックの100mで優勝し、その後金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンのようなものだとみなしている。
思いっきり筋肉増強剤で強化しているが、薬がなくなればただの人に過ぎないという訳だ。

 中国経済については表面的な数字は華々しい。また日本の輸出産業が中国経済の回復に伴い立ち直ってきたのは事実だから、それなりに中国経済が好調なのは事実である。

 だが、中国政府が発表するGDPの伸び率や失業率統計等マクロ数字は、ほとんどが政治的に粉飾されており、中南海の政策担当者でさえ実態をつかめない。
おもいっきり財政と金融を緩和したので、国内の公共投資と不動産投資、株式市場が好調なのは分かっているが、はたして中国のGDPがどの程度のものかさっぱり分からない」これが本音だ。

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 上野氏によると中国経済の本質的課題は以下のように整理される。

① 中国の社会保障制度が不備のため貯蓄率が高く、消費が伸びない(個人消費の比率は35%前後で日本の60%程度、アメリカの70%程度に比較して極端に低く、消費に頼ることができない)。
② 沿岸部の外資系企業はアメリカ経済の不調のため、輸出が停滞している(
輸出は対前年比▲20%程度が続いている)。
③ そのため、4兆元(54兆円)の財政支出による公共投資
約9兆元(約115兆円)の金融緩和による不動産投資と株式投資によって支えられており、この結果バブルと言ってよいほどの状況が出現している。

 なにしろ中国の2009年1月~8月までの都市部固定資産投資(主として不動産投資)は前年同期比+33%というのだからすさまじい。日本のバブル期以上だ。

 銀行は政府の指導によってジャブジャブの資金を、主として国有企業に割り当てており、当初予定の5兆元約70兆円)をはるかに越えて、このままいくと10兆元約135兆円)規模にまで膨らみそうだ。

 割り当てられた企業は(一部は設備投資に回すが輸出や国内消費がのびなやんでいるため)仕方なく不動産投資や株式投資にこの資金を投入したので、不動産も株価も目いっぱい上昇してしまい、日本の80年代後半と同じようになってきた。
「お願いします。何でもいいから資金を借りてください。無担保でも結構です」長銀や日債銀が倒産したのと同じパターンである。

 こうしたジャブジャブの資金緩和は、景気が回復すれば中止しなければならない。もっとも急激な引き締めは、景気を急停車させ、不動産関連融資の焦げ付きを発生させるので、そのタイミングは実に難しい。

 統計数字を確認しながら、このあたりでソフトランディングを図るべきなのだが、悲しいことに中国にはまともな統計がなく実態を把握するのは直感しかない。

 正確なのは北京市等の不動産価格の推移や、香港や上海の上場されている株価、それと輸出入統計やアメリカ国債の保有残高等、ミクロ数字か外国に比較できる数字があるものだけだ
これだけの数字で経済運営を行っているのは、レーダーなくして運行している船と同じだが、それにしても中国経済官僚の力量は世界一だ」世界が驚嘆している。

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 中国経済は確かに暴走しているが、80年代の日本のバブルが崩壊したように、中国バブルもいつかは崩壊する。
その時はいつだろうか?」

 中国は今が盛りだ。かつての日本がジャパン アズ NO1といわれた時がまさに分水嶺だったように、中国とアメリカの2強が世界を取り仕切るといわれている今が、分水嶺になる可能性が高い。

 中国がインフレを恐れ、国内経済の行き過ぎを修正するために引き締めに転じれば、不動産価格も株価もたちまちのうちに低下するのは日本の経験が教えている。

 日本には大前健一氏のように無条件に中国経済を賛美する人が多いが、上野泰也氏はサイボーグは筋肉増強剤の薬が切れた時がおしまいだという。
10年まで中国経済は持つだろうか。10年度も薬が切れなければ持つが、いつかは限界が来ることだけは確かだ。


今日のYou Tubeはマッスルさんが撮影した飯豊山の花です。
http://www.youtube.com/watch?v=eZimS1L0mck

 
 

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コメント

花々がほんとうに活きています。驚きました。適当に撮った写真なのに、山崎さんに命を吹き込んでもらいました。感謝!!

(山崎) マッスルさんに喜んでいただき、私もうれしいです。

投稿: マッスル | 2009年12月 2日 (水) 22時31分

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