(21.11.23) NHKスペシャル 魔性の難問 リーマン予想
NHKが数学界最大の難問、リーマン予想の放送をするというので、ビデオに撮っておいた。
一般に数学に関する放送はほとんどの人が敬遠し、特に聞いたこともないリーマン予想などと言われると、それだけでチャネルをかえてしまいそうだ。
「数学なんてとんでもない。高校生以来見るのもいやだ」
しかしNHKはこの世紀の難問を一般の人にもわかりやすく理解させることに成功したようだ。なにしろ数学音痴の私でさえ問題の所在が理解できたのだから、この番組の製作者の能力は相当なものだ。
この番組を見てはじめてリーマン予想がどのようなもので、この難問を解くために数学者がいかに苦労してきたかを知った。
リーマン予想とは、算数でも教わる基本的な数、素数の謎を解き明かそうと言う試みである。
素数とは1と自分自身でしか割れない数で、具体的には2,3,5,7,11、13・・・・・・と無限に続いていく数だが、一般的にはこの素数に意味がないと思われていた。
ところがこの素数に意味があることを最初に発見したのは18世紀始めのスイス人数学者オイラーで、素数だけを使ったある種の数式の解が、円周率πと関連していることを証明した。
まったくランダムに見える素数と円周率πとの関係は数学者を驚かせ、その後の素数の研究の礎となったと言う。
そして、このオイラーの式を関数化(ゼータ関数)してその解を求めようとしたのが、この番組のテーマであるリーマン予想である。
(ゼータ関数の式)
リーマンは19世紀半ばのドイツの数学者だが、このゼータ関数の解がゼロになる位置を4つほど計算し、それが一直線上に並んでいることを発見した。
そこでリーマンは次のように予想した。
「ゼータ関数のまだ発見されていないゼロ点の位置は、すべて一直線上に並ぶ」
リーマンが発見した4つのゼロ点以外に、一直線上に並ぶゼロ点が無数に存在し、一直線上以外にはゼロ点は存在しないとリーマンは予想したことになる。
(リーマン予想のゼロ点が一直線に並んだイメージ)
その後の数学者は、このリーマン予想を証明しようとして悪戦苦闘する。
たとえば20世紀入り、イギリスのニュートンの再来とまで言われた大数学者ハーディはこの証明を完成させたと一時思われたが、大失敗をしてしまった。
ハーディは確かにゼロ点は一直線上に並んでいることを証明したが、一直線上にないゼロ点が存在しないという証明に失敗したからだ。
これではゼロ点は一直線上にもまたそうでない場所にも多数存在することになってしまう。
また第2次世界大戦後のアメリカを代表する数学者だったナッシュ博士は、この問題に挑戦して精神に異常をきたし、ほぼ30年間病気と格闘しなければならなくなった。
アメリカのアカデミー映画「ビューティフル・マインド」のモデルはナッシュ博士である。
(映画 ビューティフルマインド)
その後リーマン予想は数学者の鬼門といわれ、フランスの数学者ド・ブランジュ博士以外に正面きって研究する数学者はいなくなってしまったという。
「リーマン予想の証明は困難で、これに取り付かれると精神に異常をきたす」
再びリーマン予想が注目を浴びたのは1972年で、アメリカのプリンストン大学の喫茶室で、著名な物理学者と数学者の何気ない会話からだと言う。
物理学者「あなたは数学のどのような問題を研究しているのですか」
数学者「リーマン予想で使用されたゼータ関数のゼロ点の間隔を表す式です」
その数学者が書いた数式が物理学者が研究していたウランの重いエネルギーの間隔の数式とほぼ同じだったことから、素数が再び脚光を浴びることになった。
「素数と原子や素粒子といったミクロの世界とは関連がある」
これはリーマン予想の研究者ド・グランジェ博士の直感だが、それが実際に証明された瞬間だった。
(ミクロの世界とゼロ点の関係のイメージ図)
以来数学者と物理学者はこの問題の共同研究を重ねているがリーマン予想が証明され、素数と素粒子との間の関係が解き明かされる日が近づいていると言う。
そしてその関係が明らかになれば、この宇宙の成り立ちが分かり、宇宙の謎が素数にひそかに隠されていたという驚くべき事実が明らかになるのだそうだ。
何か、アメリカ映画「ダヴィンチコード」みたいな話だが、数学の世界もずいぶんミステリアスだと感心してしまった。
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コメント
再々放送をたった今、見てました。久しぶりにπγを見たなあ・・・。
理論的に、かつまた非理論的にも考えなければならず、そして自分の内心を見つめるという、また哲学という文系思考が理系にもなお必要ということでしょうか。
理屈で済めば世は簡単、とはいかないのが世の常。
そして不連続な世界という幾何学的思考。
この不連続という歪みこそが、また戦争という歪みで現れているのだろうか。
意外だったのはリーマン氏が40にして早世だったということ。
余談ながら、「拡散」は原子レベルで定められており、その原子の集合体である人間もまたその定めにある!
知性によって、拡散を制御できるだけの存在でしかない点で見ると原発は非常に傲慢なものだと伺える。
あ、話が拡散しちゃったわ^O^;
投稿: 横田 | 2009年12月14日 (月) 02時03分
山崎さま
興味深い解説ありがとうございました。
番組は見逃してしまいましたが内容が解りよかったです。
(山崎) そう言ってもらえるととても嬉しいです。
投稿: ジェーン・エア | 2009年11月23日 (月) 10時00分