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(21.11.20) 日本経済の回復と輸出主導体質

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 ここにきて先進諸国の経済回復の基調が鮮明になってきたが、日本も09年第3四半期(7月~9月)のGDP年率4.8%と急速に回復してきた。

 内訳を見ると前期比もっとも大きく伸びたのが輸出+6.4%であり、一方個人消費は+0.7%だった。
また設備投資も回復して+1.6%となったが、住宅投資は相変わらず水面下にある。

 この世界不況が始まるや日本では内需拡大の必要性が叫ばれたが、内需と言っても個人消費はほとんど拡大せず、公共投資だけが大幅に伸び、そのうちに中国等の新興国の経済成長に伴い輸出が回復してきたというのが実態だ。

 今回も輸出主導の回復なのだが、実はそれ以外の方法は日本には存在しない。

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 なぜ個人消費が拡大しないかは理由がある。
日本のように人口が停滞する国では、老人人口の比率が毎年高くなっていくが、老人は消費活動に熱心でない

 私個人をみても分かるが、食欲はわかないし、衣類などはタイツがあれば十分だし、家の手当ては済んでいるので住宅関連はメンテナンス以外の需要はない。自動車などは年に2回程度しか乗らないので手放してしまった。

 実際ここ数年来デパート、スーパーは売り上げ減少に悩み、最近ではコンビニまでもが不況業種になってきた。
また旅行などのような遊興費の支出も体力勝負だから、若者のようにどこへでもいけるというわけでなく、結果として老人は医療費以外に金の使い道がない。

 また住宅投資が伸びないのも当然で、子供が少なくなれば親の持ち家があるので、自分で新たに新築する必要性が薄れる。
いずれお父さんの家がもらえるのだから、今は賃貸でいいや」と言うことになる。

 結局老人人口が増えると言うことは長期的に個人消費も住宅投資も漸減する

 だから内需拡大とは自民党政府がそうしたように、総額15兆円に登る公共投資の大盤振る舞いしかなく、不要な道路や橋や、飛行場をめったやたらと作ることだけだ。

注)麻生政権が行った消費拡大策の、定額給付金、エコカー減税、エコポイントのおかげで、消費はやや拡大したのは事実だが、効果は一時的なもので、消費を恒常的に増加させることはできない
自動車メーカーや電気メーカーはこうした措置がなくなると、すぐに売り上げが落ちてしまうと鳩山政権になきついている。

 後に残るのは膨大な財政赤字だが、リチャード・クー氏の言うようにそれ以外の方法はないのだから「これはいい財政赤字」と言うことになる。

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 しかし財政赤字を無理やり増大させることが本当に正しい態度なのだろうか?
ここには壮大な近代経済学の嘘があるように私には思える。

 かつてサミュエルソンの経済学を学んだときにとても不思議な感じがしたのは「クリーピング インフレーション」という概念だった。
穏やかなインフレと言う意味で、「経済が成長するためには穏やかなインフレーションの環境が最善だ」と言うのである。

 もう一つの不思議な概念は「GDPが毎年○○%成長しないと、失業率が増大して社会的不安が発生する」と言うもので、中国は8%、日本では3%程度の経済成長が絶対必要と言うものだ。

 二つあわせると、「インフレでなくては経済成長ができないのだから、インフレターゲットを設けて、日銀は資金供給を(ジャブキャブ)して何がなんでも経済成長をはかろう」と言うことになる。

 しかし考えても見てほしい。私のような定年退職者にとってはインフレは最悪の環境で、年金は増加しないのに物価が高くなって生活苦にあえいでしまう。
また毎年3%ずつ経済成長するということは、たとえばGDP約60%を占める個人消費の場合は毎年食料や衣類を3%ずつ増やしていかなければならない。

 しかし老人が増えている日本で、食料を毎年3%ずつ増やして食べていくことなど、どだい無理だ。無理して食べれば飽食になり糖尿病患者になってしまう。
だから個人消費が永久に3%増加するなんて事はありえない

 残された方法は公共投資を拡大して、不必要な道路や飛行場やダムや林道や漁港等を作って、後に膨大な財政赤字を残すことだけだ(実際そうしてきた)。

 しかし人間が成人になればそれ以上身長が伸びないように、経済も成熟すれば成長が止まる。少なくとも個人消費を中心とする内需は止まる。
そうした社会ではGDPは停滞するか、老人人口の増大にあわせて穏やかに減少していくのが正常だ。

 だから成熟社会では「GDPの拡大をはかる」などという政策目標は間違いで、不必要な公共投資は止め、GDPの減少は正常と認め、ありあまった時間でのんびり人生を楽しむのが最善の生き方になる。

注1)トインビーが「歴史の研究」で文明は成長し、成熟し、そして衰退を繰り返すといったが、この資本主義文明もいつまでも成長できないのは同じだと私は思っている。 

注2)ただしGDPをどうしても拡大したければ、国内需要が停滞するのだから、唯一の方法は輸出拡大しかない。世界には日本に比較して貧しく財に対する需要の大きな国(中国やインド等)があり、そこに対する財やサービスの供給には実需はある。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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