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(21.10.7) 小泉改革の影のブレイン 高橋洋一氏の不思議な弁明 

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 最近まれに見る不思議な本を読むことになった。ただし中身ではなくその書き出しについてである。
著者は小泉内閣の影のブレインで、かつ竹中平蔵氏の懐刀と言われた元内閣参事官高橋洋一氏だが、本の題名は恐慌は日本の大チャンス」(09年9月発行)である。

 私はこの本の副題「官僚が隠す75兆円を国民の手に」にひかれ、民主党が狙っている埋蔵金の明細を確認したくてこの本を購入したのだが、書き出しの不思議さに驚いてしまった。
序章「埋蔵金を埋め戻す官僚」の最初の項目が「霞ヶ関に刃向った者の末路」で、自身が遭遇した窃盗容疑についての弁明が記されている。

 通常経済学関連の本を購入する人は、経済にかかる情報を得ようとして本を購入するのであって、本人が窃盗容疑で逮捕されたと言うようなことには興味は無い。
そうした道徳的なことと、経済的知識とは別のものであり、知りたいのは埋蔵金の実態だけだ。

 だが、この本ではまず窃盗事件の弁明がなされ、しかもその弁明がなんとも不十分な内容なので読む人に対し非常な不安感を与える。
なぜ、そんなことをわざわざ最初に書く必要があるのだろうか

 事件そのものは広く新聞報道されているので知っている人も多いと思うが、読売新聞3月30日の記事をそのまま掲載すると以下の通りだ。

東洋大教授の高橋洋一容疑者(53)を窃盗容疑で書類送検した。

 同署幹部によると、高橋容疑者は24日午後8時ごろ、東京都練馬区の温泉施設「豊島園庭の湯」の脱衣所で、区内に住む男性会社員(67)が使っていたロッカーから、現金約5万円が入った財布や、数十万円相当のブルガリの高級腕時計を盗んだ疑い。ロッカーは無施錠だったという。

 男性の通報で駆けつけた同署員が調べたところ、防犯カメラに高橋容疑者に似た男が写っていたため、浴場から出てきた高橋容疑者に事情を聞くと、盗んだことを認めたという。調べに対し、高橋容疑者は「いい時計だったので、どんな人が持っているのか興味があり、盗んでしまった」と供述しているという。

 逮捕しなかった理由について同署は「証拠隠滅の恐れがないと判断したため」としている。

 高橋容疑者は小泉政権のブレーンとして郵政民営化道路公団民営化などを推進。安倍政権では内閣官房参事官として公務員制度改革の青写真を描いたが、2008年3月に退官。「さらば財務省!官僚すべてを敵にした男の告白」などの著書がある。東洋大は「教育に携わる者として許し難いことであり、厳正に処分を行いたい」としている

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 さて、これに対する高橋氏のこの本での弁明は「事件は私のミスから始まったと言う事実だけである。ミスを犯した私が、根拠の無い邪推で被害者面をして自己弁護するのは許されない」と言っているので、てっきり高橋氏は窃盗を行ったのだと思ったが、そうではないと言う。

 弁明は「(財布と時計を)後で届けようと、その程度に意識していた
ところがマッサージをしてもらっている間に熟睡してしまい「つかの間の熟睡が記憶を頭のなかからすっかり消えさり」、人の時計と財布を自分が持っていることも忘れてしまった。
そして通報を受け出口で待ち構えていた警察官に職務質問され、自分が持っていることをそのとき気づいたのだと言う。

 「まったく知らなかった」と弁明したが警察官が「子供だましのようなことは言うな」と言い、マスコミには言わないと約束したので、それならば面倒を避けようと容疑を認めたと言う。


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うぅーん」とうなってしまった。高橋氏は何を弁明しているのだろうか。
表題は「霞ヶ関に刃向ったものの末路」なのだから、これは冤罪だと言っているのに等しい。
そうなると、当局にはめられたと言うことで、わざわざ鍵をかけずに財布と時計を高橋氏がいつも使用するロッカーの中に隠していたと言うことになる。

 高橋氏がそれをネコババするのを確認して、待機していた警察官が現行犯で逮捕したと言うことになるのだが、高橋氏はそうではないと言う。
まったく記憶にございません」国会での釈明と同じだが、なぜか財布と時計を持っていたのは事実だからそれは「自分のミス」だと言う。

 なんともつじつまの合わない弁明だ。通常であれば「届けるつもりが忘れた」というはずなのだが、そういわないところが不思議だ。
こんな不可思議な書き出しをされては、この本を読むものにとって、埋蔵金問題より高橋氏の窃盗容疑が冤罪かそうでないかの方が気になる。
なにしろ高橋氏は「霞ヶ関から蛇蝎のように嫌われている男」なのだ。

 どうしてこんなに奥歯に物が挟まったような書き出しをするのだろうか。
そして、この本全体もキレがなく、非常に読みづらい。
警察との間で何らかの密約があって、不起訴処分にする代わりに明確に述べることがはばかられているからだろうか。
それなら、最初から何も言わないほうがいいくらいなのだが、不思議な感覚にとらわれる本だ。

 

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