(21.10.4) オリンピック招致失敗と鳩山首相の甘い観測
2016年のオリンピックはブラジルのリオデジャネイロに決定した。南米で始めてのオリンピック開催と言うことで、国を挙げての招致活動が功をそうした形だ。
一回目の投票でシカゴが落ち、2回目の投票で東京が落ちた。リオとマドリードの決選投票になったが、66票対32票という圧倒的な大差でリオの開催が決定した。
北京(アジア)→ロンドン(ヨーロッパ)→リオデジャネイロ(南米)と各大陸持ち回り形式が今回も踏襲された訳だ。
私は21.9.8 に「東京オリンピック招致絶望 石原都政の黄昏」(リンクが張ってあります)という記事を書き、東京招致の可能性が無いこと、一位はリオであることを予測していたので、結果そのものはまったく驚かないが、鳩山総理がIOCの総会に出向いていったのには驚いた。
「なぜ、はっきりと負けることが分かっており、石原都知事のパフォーマンスにすぎないオリンピック招致活動に出向いて行ったのか」という驚きである。
東京オリンピックがないと分かったのは8月、IOC理事会による競技種目の決定で野球とソフトがはずされたからである。
「野球とソフトが盛んな国ではオリンピックは開催しませんよ」
これがIOC理事会のメッセージで、東京とシカゴではオリンピックはしないと言う意味だった。
さらにダメ押しは9月始めのIOCの調査報告書の中で、「東京は世論支持率で最も低い」と評価されたことで、「石原都知事だけが一生懸命でもダメですよ」と念を押されたからだ。
最もIOC理事会の意思はそうであっても約100名もいる総会の委員については、ロビー活動でその意思を左右することができる。
今回の投票結果を見てロビー活動を熱心に行ったのはリオとマドリードで、一方まったく行わなかったのが東京とシカゴであることが分かった。
日本とアメリカは金融危機の対応にてんてこ舞いで、とてもロビー活動に手が回らなかったようだ。
世界にはアフリカやアジアや中南米や東欧諸国のような貧しい国がある。
こうした国へのロビー活動とはスポーツ施設の資金援助や、選手強化のためのコーチ派遣から、ODAによる橋や道路建設までのさまざまなバリエーションがある。
またIOC委員個人に対しては子供の留学の斡旋や委員の事業会社に対する融資から、直接的な金銭の受け渡しまでさまざまだ。
貧しい国と個人にとってはこのIOC委員と言う役柄は利権以外の何者でもない。
だから、そうした国に対する働きかけが従来ロビー活動として行われてきた。
ただしこうした活動は開催都市だけではできないので国と一体になって行なう。そして国がロビー活動をするための条件とは政府がオリンピック招致に熱心で、かつ資金的余裕があることだ。
今回その条件を満たしていたのは金融危機の影響がほとんど無く、政府が熱心だったブラジルのリオジャネイロだけだった。
意外にマドリードが健闘したのは前IOC会長のサマランチ氏(スペイン人)がヨーロッパ各国に働きかけたからである。ヨーロッパ各国は金で動くことは少ないが、同情票はいく。
「お願いだ、私の顔を立ててくれ。ロンドンオリンピックの招致に努力したではないか。今回はそのお礼をしてもらいたい」
さて、鳩山首相のことである。IOC理事会が東京ではオリンピックは行わないと言うメッセージを発し、かつ国としてのロビー活動を一切行っていなかった日本がどうして招致に成功すると思ったのだろうか。
東京オリンピック招致活動は、新銀行東京で大失策を演じた石原都知事が、起死回生の賭けに出た最後の戦いである。
「このままでは無能な都知事としてのレッテルを貼られる。何とかオリンピック招致を成功させ、有能な都知事だったと言う名誉を歴史に残そう」としてはじめたものだ。
民主党は新銀行東京の処理についてにがにがしく思っており、都知事と民主党との仲は犬猿の関係だった。
だから鳩山首相は負けると分かっていた招致活動にのこのこでて行って、自分の影響力がまったく無いことを世界に知らしめる愚は冒すべきでなかった。
私は「友愛」を説く鳩山首相の優しさは個人的にはとっても好きだが、世界の動向を見抜く目についてはまったく信用していない。
私のような定年退職者で情報と言えば新聞情報が主な者でさえ、東京招致が絶望であることが分かっていたのだから、一国の首相としてそれに気づかないのは迂闊以外の何者でもない。
閣内には亀井静香氏のように折あらば寝首をかこうとしている人もいるのだから、政治はリアリズムであり、そして貧しい国への「友愛」とは言葉ではなく「金銭その物」であることを理解し、甘い観測はしてほしくないものだ。
注)今回の招致活動で鳩山首相と同じように、世界に向けてその無能さを証明した人にオバマ大統領がいる。
オバマ大統領はロビー活動もせずに総会に出席したアメリカの唯一の大統領だが、自分の人気が世界に通用すると誤解していた。
先進国以外では人気とは「金」であることを身にしみていることだろう。
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