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(21.10.2) 円高と藤井財務相の見識

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 日本においてもようやく見識を兼ね備えた大臣が出てきたと感心してしまった。藤井財務相のことである。

 ここ数日円高傾向が続き、28日の為替相場は一時88円前半まで円高が更新した。これに対し藤井財務相は記者団に対し「今は異常でもなんでもない」と円高を容認する発言をしたのである。

 今までの自民党政権の閣僚だったら「あまりに急激な円高は輸出産業にマイナスで、ようやく持ち直してきた景気に水をさす」と言いそうだが、さすがに民主党の財務相はそうした泣き言を言わなかった。

 藤井財務相は24,25日のG20で、アメリカは消費抑制、日本と中国は外需頼みを止めて、内需中心の景気刺激策を取ることを約束し、また24日ガイトナー米財務長官との会談でも「(輸出振興のための)円安政策は採らない。為替は不介入が原則」と約束したばかりだ。
その舌の根も乾かないうちに「やはり日本は円安政策で輸出企業を支援します」なんていったら、国際的な公約を踏みにじることになる。

 だから藤井財務相の発言は当然と言えば当然の発言だが、それでも財務大臣が国策として円安政策を放棄したことは特筆に値する
それと言うのも従来日本政府は公然とではなかったものの、実質的に円安政策を採り続けて、輸出産業の支援をしてきたからだ。
注)自民党政府は円安でないと日本がつぶれると言う恐怖感を持っていた。

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 通常円安政策をとる方法は三種類ある。

① 為替市場での直接的な為替介入
 日銀が国債を発行して円資金を得て、その金でドルを購入する。ドルはそのままま持っていても金利を生まないから、そのドルでアメリカ国債を購入する。外国為替資金特別会計に計上されているアメリカ国債約60兆円はこうして積みあがった。
ただし、日銀は04年以降直接的な為替介入を行っていない。

注)1円円安にするためにほぼ1兆円の資金でドル買いをしなければならないといわれている

② 低金利政策を導入する
 長らく日銀はゼロ金利政策を導入してきたが、他国はリーマン・ショックまでは高金利政策だった。金利差が大きいと(通常3%程度開いた場合)、低金利の国(日本)で資金調達し、それを高金利の国(アメリカ等)で運用すれば、何もしなくても利益を出せる。

 この場合も円をドルに代えるので円安になるが、日本政府はこのゼロ金利政策をとることによって円安に誘導し、輸出産業を保護していた

③ 金融機関を統制化に置く
 金融の自由化政策が完了しているため、日本では行っていない。現在この方式を採用しているのは中国で、外為を扱える金融機関を特定し、さらに元とドルの交換できる取引を限定し(たとえば輸出入だけを認める等)、そこでの交換レートを政府が指示し、同時に監視する。これによって元安に誘導できる。

 日本政府は上記②の政策をとって、実質円安を実現し、輸出主導の景気拡大策を採り続けてきた。
しかしリーマン・ショック以降アメリカ政府もゼロ金利政策をとるようになったので、現状ではこうした方式は意味を成さなくなっている。

注)他国との金利差が減少したため、110円前後だった円が90円前後まで円高になった。これ以上の円高になるには日本政府の円高を容認する姿勢が必要になる

 日本が輸出支援策を放棄して、内需拡大策を採るのが世界的公約であれば、円高こそ内需拡大に役立つことは確かだ。
なにしろ輸入物価はすべて安くなり、自給率40%と言われる食料価格も低下する。

 日本人は黙っていても裕福になって行くのだが、今までは円安政策をとることで国民生活の犠牲のうえに輸出産業に利益を与えていた

注)たとえばトヨタは1円円高になると300億円営業利益が減少するといわれているが、今までの円安政策で年間、300億円×20円=6000億円の支援を日本政府から得ていたことになる。

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 私は最近フランスに旅行して円の購買力が無いことに目を剥いてしまった。当時1ユーロが130円前後だったのだが、実質的な1ユーロの購買力は100円程度だった。
なんて、物価が高いのだろう」と思ったが、すべてこの日本政府の円安政策による。
私の感覚では1ドルは70円、1ユーロは100円程度が生活実感にあう。

 通貨安政策は一種の出血輸出で、いまだに中国と韓国が実施しているが、日本のように十分成熟した国はそうした政策をとって他国の産業を窮地に追いやるようなことをすべきでない。
円高こそ国の利益だ」そう言える国に変えることが今求められており、そうした意味で藤井財務相円高容認の発言を高く評価したい。

 

 

   

 

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