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(21.9.22) 土地神話はなぜ崩壊したのだろうか

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 国土交通省が17日に発表した7月1日時点基準地価を見て「土地神話はなぜ崩壊したのだろうか」と考え込んでしまった。

 何しろ90年前後日本経済のバブルが崩壊してからと言うもの、地価は低下の一途をたどり、住宅地18年連続商業地は06年、07年のミニバブルを除けばこれも低下が続いている。
09年度は、全国平均で住宅地が▲4.0%、商業地で▲5.9%だという。

 過去からの推移は全国平均でピーク時対比住宅地は40%程度下落し、商業地はさらに激しく70%程度暴落している。
かつては日本に土地神話があり、「土地は絶対に値下がりがない。一時的に下がっても必ずあがる」と言われていたが、すでに20年近くほぼ直線的に値下がりが続いているのだから、神話の時代は終わったと言える

 土地も一般の商品のように需要と供給によって決まると言う通常の商品になったのだが、それならなぜ日本の土地は値下がりが続いているのだろうか。
一般的には以下のように説明される。

住宅地地価
① 人口が微増から微減になり、今後は人口減が続く
② 結婚をしないパラサイトシングルが増え、親元を離れない
③ 経済が伸び悩み、特に勤労者所得が減少している
④ 外国人が日本の土地を購入して住宅を保有しようとしない
⑤ リーマンショック後住宅融資に金融機関が消極的になっている


 人口が減って、収入が伸び悩み、金融機関からの融資が受けづらいのであれば日本人が住宅建設を積極的に行うことにはならないし、外国人は日本に魅力を持っていないので住宅取得をしないと言うことだ。

商業地地価
① 日本経済が伸び悩み、世界の経済の中心から外れている
② 郊外型店舗は増えるが商業地からは店舗の撤退が続いている
③ 日本の消費者の購買意欲が低下している
④ 金融機関が不動産融資に消極的
⑤ 海外のファンドもリーマンショック後資金手当てができなくなっている


 高度成長が終わった日本ではGDPは増えないし、消費も伸び悩み、商業地としての魅力が少ない。またリーマンショック投資ファンドが資金を一斉に引き上げてしまった。

 こうしてみると土地価格が上昇する要因はほとんど無いことが分かる。

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 イギリスやスペインでリーマンショックが起こる前まで急激な住宅価格の上昇が発生したが、これは主として外国人が住宅を購入したからだった。
イギリスの土地・住宅は主として石油成金のアラブ人とロシア人が、一方スペインの土地・住宅はイギリス人を中心とする金融成金が購入していた。日本人も昔、コスタ・デル・ソルに別荘地を買いあっていたのを思い出す。

 国内要因として住宅地地価が上昇することはほとんど考えられないが、国外要因として金持ちの中国人が日本に住宅地を求めることは期待できる。
世界的に見れば日本の住宅地はお世辞にもいいとは言いがたいが、中国に比べれば治安も便利さも格段に優れている。
価格が低下してくればそうした需要が出てきて、持ち直すかもしれない。

注)中国元は輸出政策のため、実態より安く為替管理されている。市場で自由に売り買いできるようになれば、かつての日本円が360円から90円前後になったように、大幅な元高になり、一気に購買力が増す。

 商業地地価についてはほとんど展望が持てない。ヘッジファンドは崩壊してしまったし、銀座からはルイ・ビィトンが逃げ出した。
商業用不動産を証券化して売り出すビジネスは、証券を購入する人がいない。
また日本がビジネスの中心になることは無いのだから、実需もほとんど増えない。
商業用地価はどこまで下がれば止まるのかという状況だ。

注)最近不動産関連の研究所が「商業用地価は下げ止まった」等の発表をしているが、金融緩和に伴う一時的な現象だと思っている。

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 はっきり言える事は、経済成長(GDP)と人口推移は土地価格と非常に強い相関関係が有り、GDPが増加して、人口が増加している場所でないと、地価は上昇しない
日本は1990年代以降、GDPは微増と停滞と微減を繰り返しているし、人口は長期的に減少が続く。

 アメリカやイギリスは金融工学で世界中をだまして経済成長を図ってきたが、化けの皮がはがれた今後は低成長になる。従って日本と同様、土地価格は長期的に低落する。

 思えば土地神話の時代は誰もが金持ちになって浮かれていた時代だ。今は土地保有者は誰もが貧乏人になる時代だが、だからといってこの時代が特に悪い時代ではない。
不動産を商品として売買するのでなければ土地価格が上昇しようが下降しようが関係ないし、新たに取得する人は安価に入手できるのだから、いい時代だとも言える。 

 


   

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