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(21.9.17) JALはGMになるのだろうか? JAL再建計画の行方

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 JALの業績が芳しくない。時間がたつに従って悪化していく。何度も抜本的改善策なるものを実施し、その直後は改善されるのだが、再びもとの木阿弥になっていく。

 実は航空業界は構造不況業種といわれるくらい環境が厳しい。燃料費の高騰に悩まされ、テロやインフルエンザが発生する都度旅行客は減少する。

 日航は05年06年赤字で、07年はリストラ効果(4300人の人員削減・低採算路線の廃止・子会社売却等)がでて169億円黒字になったが、08年は燃料費の高騰とリーマンショックで再び630億円赤字になってしまった。

 メガキャリアが単独では生き残ることができないのは世界中同じで、04年にはエールフランスとKLMが合併し、08年にはデルタ航空がノースウェスト航空を買収し、09年にはルフトハンザがオーストリア航空を買収した。

 航空会社の収益構造を見ると、国内航空会社だけで独占している国内線からは収益が上げられるが、自由競争の国際線ではほとんどが赤字だ。全日空と異なり、日航は国際線のウェイトが高い。
日本人でもビジネス客を除くと、日航の国際線に乗る人は少ない。私などはヨーロッパに行くときは常にアエロフロートで、料金が極端に安いディスカウントキップを使用している。
注)かつてはアエロフロートのサービスは日航に大きく差をつけられていたが、現在はまったく問題がない。飛行機もボーイングやエヤバス中心になり、食事もなかなかのもだ。そして安い。

 日航の問題点は毎年数千億円規模の新たな資金が必要になることだ。しかもそれがほぼ赤字見合い資金のため、融資をしてくれる金融機関や投資先がない。
仕方なく09年6月には政府系金融機関日本政策投資銀行を中心に1000億の融資を受けたが、政府保証をつけなければならないほど日航の信用はなかった。
もはや日航からの回収は不可能です。政府が肩代わりしてください」金融機関から見放されている。

 しかもようやく調達したこの1000億円も、09年4月~6月の第一四半期ではやくも食いつぶしてしまった。その間の赤字が990億円になったからである。
こんなにも収益が悪化した原因は旅客数の大幅な減少である。09年6月は海外からの旅客数が対前年比25%の落ち込みになった。
日航は顧客からも見放されつつある。

 日航は日本政策投資銀行からの融資の見返りに、抜本的な改善策を作成するように政府から指示され、現在再建計画を作成中だ。その概要の説明が15日に行われた。

 現在取りまとめ中の再建計画では、本年度中にさらに2500億円の資金手当てが必要と言う。
大雑把に言って、四半期ごとに1000億円ずつ赤字が出るので、その穴埋めが必要だと言うことだ。

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 内訳はデルタ航空アメリカン航空の増資で1000億円、メガバンク3行からさらに1000億円の融資を得る予定に成っている(残りの500億円は未定)。

注)日航が取りまとめ注の再建計画の内容は以下の通り
① グループ全体で6800人の人員削減
② 営業費用を08年対比11年までに5000億円削減
③ 国際線21路線、国内線29路線の廃止
④ 09年度下期に2500億円の資金調達。外部出資1000億、金融機関の借入1000億
⑤ 企業年金の支払い減額

 日航は従来から高コスト体質だと言われているが、日航がもともと政府と民間の折半出資会社(ただし約20年前に完全に民営化した)だったことから、政治がらみの路線の押し付けがあったり、一方組合が親方日の丸意識で給与や企業年金の削減に抵抗してきた経緯がある。
旧国鉄と同じだと思えばイメージがわく。

 今回の日航の再建計画は確かに大胆なものだが実現性はかなり危うい

 たとえば国際線21、国内線29の路線の廃止を計画しているが、国内線のほとんどが政治的に押し付けられた路線であり、そのため当該自治体の抵抗を覚悟しなければならない。
この路線が廃止されれば地方の死活問題だ」大合唱が始まる。

 また組合については8組合があって、交渉に時間がかかることと、組合が賃金の引下げと企業年金の引下げに強く反対していることだ。
これはまさにGMUAW自動車全米労組)との関係と同じで、組合がおいそれと給与改定等に応じるはずがない。

 デルタ航空アメリカン航空との資本提携については、JALアジア路線中国、台湾、韓国、フィリッピン等)がこの二社にとって魅力的なことは分かるが、リストラが十分行われなければかえって負担になるだけだから、当然リストラ前提の資本提携になる。

 金融機関はこれ以上の融資は願い下げで、政府保証がない限り実施しない。

 現在の状況は昨年末のGMの状況と酷似している。

 GMワゴナー会長は昨年末「政府の支援がなければ来年前半には資金が底をつく」と居直ったが、日航の西松社長は同じく下期2500億円必要だと言う。

 当時GMはリーマンショックの後、販売量が毎月30%~50%落ちていたが、日航の乗客数03年以降傾向的に落ち込んでいた。特に09年6月海外からの旅客数が25%減少している。
売上高を見ても06年度2.3兆円、07年度2.2兆円、で08年度は2.0兆円と減少しており、09年度の落ち込みはさらに大幅になりそうだ。
注)JALの業績推移は以下のURLを参照
http://www.ullet.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA/%E6%B1%BA%E7%AE%97%E6%9B%B8

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 現状は再建計画が適正であれば政府が産業再生法による資本投入を行うと言う路線だが、日航を取り巻く環境は厳しい。

 結局GM連邦破産法11条の適用で、資本金、借入金、年金繰入金、給与を大幅にカットし、さらに首切りをして再生を図ることになった。これは利害関係者が多すぎて調整がつかない場合の最善の方法だ。

 はたしてJALはどうなるだろうか。今回の再建計画でも利害関係者が多すぎてとても実施に移すことが難しい。
最終的にはGMと同様、JAL民事再生法を申請し、負債を踏み倒して出直すことになるというのが私の予想だ。

 

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