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(21.9.10) 中国経済の奇怪な法則 経済成長率は忠誠度

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 マーフィーの法則というのをご存知だろうか。

マーフィーの法則」という名は、オハイオ州の米軍基地内のに勤務していたのマーフィー大尉の名前を採ったとされ、その逸話は以下のようなものである。

 マーフィー大尉は、トラブルを起こした装置を調べて誰かが間違ったセッティングをしていた事を発見した。ここで彼の言った台詞 "If there is any way to do it wrong, he will." 「失敗する方法があれば、誰かはその方法でやるがこの「法則」の土台となったものだそうだ。

 予測できる失敗は必ず起こるとか人間の深層心理にあることは必ず実現するというぐらいの意味らしい。

 このマーフィー大尉の法則にもう一つ、中国政府の奇怪な法則を付け加えることにした。
経済成長率は地区共産党員の忠誠度をあらわす」という法則だ。
序列順位を少しでも上げたい地区党員は思いっきり経済成長率を上げて報告すると言う意味である。

 8月29日付けの中国系香港紙・大公報に興味深い記事が載った。
南京市の人民代表大会で「今年上半期の南京市の経済成長率は前年同期比10.2%」とだと市政府が発表したが、石油化学関連企業を経営する常務委員から「でたらめだ」と批判を浴びたという。

南京の経済は電力を大量に消費する重化学工業が中心だ。上半期の工業用電力が1.7%しか増えてないのに、GDP伸び率が10.2%というのは議論の余地がある」とその常務委員は述べたそうだ。

 実は中国の統計がいかさまではないかとの指摘は中国以外の専門家からはたびたび指摘されている。
よくある指摘は石油使用量とGDPとの関係からの推定で、従来の石油使用量とGDPの関係を調べてそこに整合性をもとめ、現在発表されている統計数字の人的操作を疑うということが多かった。

 今回は外国の研究者でなく、当の中国の専門家からの指摘だが、この議員はおそらく地方幹部の怒りを買って、常務委員の肩書きを剥奪されるだろう。

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 実は中国が発表するマクロ数字はほとんどが政治的プロパガンダとして発表され、中南海の経済担当者でさえ、本当の経済実績を把握することができない。

 特にGDPは曲者で、これは国家的な公表数字だから特に重要視され、たとえば南京市GDPが中国政府が目標とする8%を下回るようなことがあれば、地区委員会の責任問題になりかねない。

GDPによって出世も降格も決まるとなると、GDP経済学の数字ではなく心理学の数字になる。
なにしろ地区担当者は目標達成の責任者であるとともに、統計数字の報告の責任者でもあるのだ。

統計担当者工業用電力が1.7%の増加にとどまり、とても政府の言う8%の成長率は達成できません
地区委員会同志君は何か勘違いしているのではないか。かつてGDP成長率について我が委員会が正確な数字を挙げたことが一度でもあったか。北京政府が8%と言ったら、何があろうとも8%なのだ

統計担当者最近は外国だけでなく、我が中国の研究者も南京市が発表する数字に疑問を呈しています。特に電力需要との関連でその数字は政治的粉飾ではないかと言われました
地区委員会同志、警察と監獄は何のためにあるか知っているかね。そうした流言飛語を取り締まるためだ。安心してGDPの数字を10.2%と報告したまえ

統計担当者しかしそれでは統計数字の信憑性が損なわれます
地区委員会君はどうやらマーフィーの法則を知らないようだね。我が中国においてはGDPの成長率は中南海に対する忠誠度をあらわしている。
わが忠誠なる南京市企業が電力の使用効率を5倍にあげ国家目標を達成したのだ。
この数字を見て、胡 錦濤主席もお喜びなられるだろう


 実際問題として、すべての数字がでっち上げと言うのは言いすぎだが、下部組織からあがってくる数字はそのたびに政治的脚色が加えられる。
何しろ数字を報告する人はすべて共産党組織の幹部で出世主義者だ。

 たとえば鉄鋼生産量対前年比10%アップするように指令が来たとする。生産現場で実際の数字が5%アップだとしたら、現場担当責任者の首が飛ぶ。
仕方なく現場担当責任者はたとえば前年度の不良在庫を当年度の生産額に加えて9%アップだとの報告書をでっち上げる。
大限の努力をしましたが、惜しくも9%のUPにとどまりました

 この数字を見た地区担当者は次のように考える。
これでは目標達成にならない。どうせ中南海は数字の裏づけなど取らないのだから10%UPと報告しても分かるまい。いや思い切って12%にしよう

 この数字を見た中南海統計数字担当者は次のように考える。
全国から上がってくる数字はすべて10%以上だ。胡 錦濤主席の指示は実に偉大だ。目標は達成された。わが国は大躍進だ

 かくして「経済成長率は地区共産党員の忠誠度」というマーフィーの法則が証明され、めでたく党中央の目標は達成される。

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 このようにして中国のマクロ数字はほとんどが政治的脚色が施されているため、まともに信じることができない。
信じられる数字は外国に対応する数字がある場合で、たとえば貿易統計は中国の輸出は外国の輸入となるので、確認が取れる。
また、アメリカ国債の残高はアメリカの財務省が発表しているので裏づけが取れる。

 さらに各都市レベルのミクロ数字は研究者が実際に確認できるので嘘が少ない。
しかしGDPのような外国にその数字の裏づけがないような数字で、実際に何段階にも渡って操作されている数字はまったく信用ならない。
中国当局でさえその数字の信憑性が分からないと言うのは本当だ。

 かくして09年度のGDPはめでたく8%を上回る成長を遂げることになるが、それを本気で信じるのはおろかだ。


 

 

 

 


 

 

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