« (21.8.13) ロドリゴ巡礼日誌 パリ番外編 その5 | トップページ | (21.8.15) ヨーロッパ経済の分析はいかにしておこなったらよいのか? »

(21.8.14) ロドリゴ巡礼日誌 パリ番外編 その6 最終回

21_1196
キリスト暦2009年7月10日

 ロドリゴ巡礼日誌最終回を迎えました。ここまで継続して読んでいただいた方には心から感謝申し上げます。

 出発時間はパリ発11時45分でしたので、その2時間程度前にはシャルル・ドゴール空港に到着することにしておりました。
私の持っている航空券はHISで購入した帰国便を1回だけ変更できる航空券で、今回は変更がなかったため事前にリコンファームをしておりませんでした。

 外国の個人旅行をしていていつも悩むのが、このリコンファームでございます。今回のHISからの注意書きにも「既に予約が入っている場合は、予約便搭乗日の遅くとも3日前までには、航空会社オフィスに変更の旨ご連絡いただくようお願い申し上げます」と記載されておりました。

 素直に読めば、変更がなければリコンファームをしなくてもいいはずなのですが、かつてはどのような状況でもリコンファームが必要でしたので、「もしかしたら、変更なくてもリコンファームが必要なのでは・・・」とつい疑ってしまうからでございます。

 そうした心配があるため、できるだけ時間の余裕をみてシャルル・ドゴール空港に郊外電車で向かうことにしました。
幸いにパリの地下鉄や郊外電車の乗り方をマスターしておりましたので、スムーズに空港に着くことができ、また駅と空港を結ぶ通路に設置されていた掲示板で、第2ターミナルのどのブーツに行けば、アエロフロートのチェックイン窓口か分かったのでございます。

(注)シャルル・ドゴール空港はターミナルが3つあり、そのターミナルごとにブーツが6箇所前後あるため、どこがアエロフロートの窓口か、すぐには分からないのです。

 飛行機は順調に飛び出しまったく問題はございませんでした。たまたま私の横にはジャポンからフランス国の旅行会社に勤務しているマドマーゼル ケイが座っておりまして、2週間余りの研修にジャポンに帰国するのだといっていました。

21_1195

 ケイは旅行会社に勤務しているだけあって、フランス国の事情に精通しておりました。
私が今回巡礼の旅をしていて最も不思議に思ったのは、若者や中高年の失業が多く、そうした人たちが好んで巡礼の旅を楽しんでいることでした。
こうした疑問をケイに聞いてみました。

ケイ、私はとても不思議に思うのだけど、フランス国では失業問題はおおきな問題にはならないのかい。
3年前にフランス国では初期雇用契約(
26歳未満の若者の雇用にあたり2年間の試用期間を設け、この期間中は雇用者側は理由を問わず解雇することを認めるという法案)が可決されたけど、学生の大反対があって潰されてしまった。
 
 導入を図った首相は首を切られるし、一方で学生は大勝利だといっていた。雇用されるよりも失業している方がいいという判断はどこから出るのだろうか?」


ロドリゴ、それはねえ、フランス国は身分差別の国で、かつ社会保障制度が極端に整った社会主義国のような国だからなのよ。

 大学生は卒業すると無期限雇用契約によって一生企業から首を切られないで済むの。一頃のジャポンの終身雇用制度のようなものね。
そうして、この無期限雇用契約者だけが、会社の管理職になれるの。

 一方初期雇用契約者はジャポンの派遣労働者で簡単に首を切られ、そして会社の管理職には絶対になれないの。
だから初期雇用契約は、大学生に対し、『
お前達は永遠に下積みの労働者になれ、失業者よりはましだろう』と言ったのとおなじなの。

 それとね、ロドリゴ、フランス国では求職者登録さえしていれば失業手当はもらえるし、もし働いても給与が低ければ国から補填してくれるのよ。働かなくてもそこそこ食べていける社会主義国というわけ。

 だから大学生は奴隷身分より、失業の方を選ぶのだと思うわ

 ケイの説明で、この巡礼期間中最大の疑問「なぜ巡礼者には失業者が多く、そして失業を苦にしていない」が氷解できた。

21_1199

 さて私はこうして約3週間の巡礼の旅を終わったわけですが、これが私の人生に何か役立ったでしょうか。かみさんからは「行く前と同じでまったく悟りがない」といわれてしまいました。
実際その通りかもしれませんが、こうした経験は一種のボディーブローのように効いて来るものですので、もう少し長い目で見て行きたいと思っております。

 なお、最後になりますが、ロドリゴ巡礼日誌を最後まで読んでくださった方で、ご感想をコメントで記載していただければ幸いです。

 

 

|

« (21.8.13) ロドリゴ巡礼日誌 パリ番外編 その5 | トップページ | (21.8.15) ヨーロッパ経済の分析はいかにしておこなったらよいのか? »

旅行 サンチャゴ巡礼」カテゴリの記事

コメント

一気に読みました。とっても面白かったです!!日常生活に追われていたので、アクセスもできなかったのですが、毎日読めば、落ち込んだ日に救われる日もあっただろうと悔やまれます。仕事をしていないと後ろめたいと思う日本人と、リストラされてもそれほど落ち込まない外国人との間には自分を大事にするというマインドが違うのかもしれませんね。これからは神のおぼしめしもままに運命とともに生きていこうと思っています。うれしいことは喜び、悲しいことは悲しみ、そうして今日一日生きていることを感謝したという気分になりました。これもロドリゴさまの巡礼日誌のおかげでございます。

(山崎)面白がっていただけるのが何よりです。出きるだけ楽しいブログにしたいと思っていますので、また覗いてみてください。

投稿: めいちゃん | 2009年9月17日 (木) 08時47分

遅ればせで恐縮です。山崎さんのおかげで、僕も花を手掛ける仲間も貴重な海外の様子を見ることができて、とても勉強になりました。ありがとうございます。

不良クリスチャンではありますが、折々に聖書の言葉を思い出したりぐらいはします。
一番好きな言葉は「世界中どこでも教会だ!」というステファノ(フィリポ?)の言葉です。
うろ覚えです。これは、ヒトがどこにいても祈ることの大切さを説いてるんですが、拡大解釈して、人間は誰でも分かりあえるよ、くらいに思っています。

それを踏まえて、フランスの現実。拝読しました。
yokudaさんと同様衝撃を受けました。
イギリスやなんかで貴族と労働者階級があるのは知識としてありましたが、フランスもとは!

一方で、フランスの田舎の美しい風景は、そうした労働者階級の人たちの手で作られていることに思い至りました。
もちろんパリの豪華な建物は上流の人たちが作ったのでしょうが、
巡礼の道にあった素朴な美しさは、美しくしよう、と自意識を持たない農民たちの「自意識のなさ」が生んでいる根っこの部分の美しさだと思いました。
それは、千利休があえて侘びた茶器を愛したのに似ています。

いま、県内のある都市の景観づくりに携わっています。
日本は階級が一時的にしろ消滅しました。
誰もが車に乗り、飽食することができた。結果表れている
風景は、同じようなビル、同じような建売住宅です。
それが悪い、ということではなく、フランスのようにがんじがらめの
階級に縛られるからこそ、美しい風景が残る(少々飛躍しすぎ?)ことを思うと、風景悪いくらい、あとから頑張ってなんとかするのが日本流かな、と前向きな希望がわいてきました。

ややこしい長文失礼しました。
ぜひ今度はお遍路さんへ!

(山崎) 本当は花の写真だけをまとめた写真集を作る予定でしたが、疲れてしまいそうしていません。ダウンロードしてささきさんのほうでまとめて下さい。
フランスは階級制度と社会主義がミックスしたとても不思議な社会です。おそらく世界で最初の市民革命が試行錯誤の末たどりついた姿ではないかと思っています。
市民革命→王政→市民革命のゆれを繰り返す間にこうした社会が出来上がったのではないかと私は思っています。

投稿: ささき | 2009年8月26日 (水) 22時28分

ロドリゴ様、巡礼記録を読ませていただく毎日が、ジャポンから出ることのない私にとって「目からウロコ」の日々でございました。
異国の片田舎の美しい風景と風情に触れ、便利になりすぎた我が国を思い返し、不便ゆえに生ずる現地の住人と、そして同行の方との確執を疑似体験させていただけましたのは、このうえのない神の思し召しでございました。

そして、最後のこの記事は、私のような身分の高低の少ない社会に生きる者にとっては衝撃でございました。
彼の国は、歴然と階級の残る社会だったのですね。彼の国の田舎の住民は、都会で暮らす同国人をどう理解しているのでしょう。
過酷な資本主義に生きるものを哀れむのでしょうか、或いは羨望するのでしょうか。

国柄は歴史が作るのですが、その歴史は国の仕組みにより醸成されるのだということを、今更ながら実感させていただきました。ロドリゴ様のこの巡礼記は、誠に貴重なレポートであり、触れさせていただく機会を得て感謝することでございます。

そして神よ、神の御名を忘れた資本主義者がカジノキャピタリズムに走る様を、どうか笑い、そして罰してください。
今も、世界は、まさに見えざる貴方様の手を求めております。

(ロドリゴ)yokuya様、お便りありがとうございます。yokuya様が私の巡礼記を通読していただいたことを感謝申し上げます。
本来ならもう少し悟りを開ければよかったのですが、なかなか思うようにはいかないものでございます。
私の巡礼記がyokuya様に少しでも役立ったなら、とても幸甚でございます。

投稿: yokuya | 2009年8月14日 (金) 23時01分

ロドリゴさま、迷える子羊ならぬ老羊の『ウメジーノ』でございます。
『巡礼日誌』の最終回、とても名残惜しゅうございます。
ロドリゴさまが、巡礼から『悟りを啓いて』お戻りになるようなことがあったら、不肖『ウメジーノ』も、早速巡礼に旅立たねばと思い、毎回拝読いたしました。
しかし、日を追うにつれ、ムッシュタムさまとの『食べ物』に関する『考え方の違い』や、同じくムッシュタムさまの、『安易な近道を望む気持ち』に、ロドリゴさまが、『神様の御心に沿わないのでは』とお悩みになる様子を拝見し、『悟りは容易なものではないぞ』と、思い知り、巡礼に旅立つかどうかは、しばし考えることにいたしました。
ロドリゴさまのお悩みとは、無関係に見える異国のきれいな景色の写真の数々には、感動いたしました。ごちゃごちゃ思い悩まずに、『写真を撮るために巡礼に出る』のも、わるくないなと、またまた神の御心に背くような考えが、心をよぎったのでございます。
ロドリゴさまが、異国の体験を活かされ、ますますご活躍されるようにと、お祈り申し上げます。

(ロドリゴ) ウメジーノ様、お便りありがとうございます。なかなか悟りとは程遠い旅になってしまいましたが、巡礼そのものと、周りの景色には圧倒されました。時に異国の地を踏むことは大切なようでございます。
ウメジーノ様はよく旅をなさっておられますので、巡礼の旅をジャンルのひとつに加えられるのも面白いのではないこと思われます。


投稿: 梅爺 | 2009年8月14日 (金) 12時25分

毎日拝見してました。
ベルサイユ宮殿は素晴らしいですね。
関係ない話ですが、ベルばらファンでしたので映像に感動しました。
実際外国旅行に行ったことがなく(飛行機がだめなので)
移動の手続きは全く無知ですが、大変なんですね。

(山崎)おたよりありがとうございます。毎日見ていただいた方がいてとてもうれしい気持ちがしました。個人旅行の場合は公共交通の乗り方のマスターが一番大事です。もしマスターできなければ巡礼の旅のように歩かなくてはなりません。

投稿: ジェーン・エア | 2009年8月14日 (金) 08時13分

この記事へのコメントは終了しました。

« (21.8.13) ロドリゴ巡礼日誌 パリ番外編 その5 | トップページ | (21.8.15) ヨーロッパ経済の分析はいかにしておこなったらよいのか? »