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(21.8.15) ヨーロッパ経済の分析はいかにしておこなったらよいのか?

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 私が経済評論を書くようになってから一番悩んでいるのは、ヨーロッパ経済の把握がなかなかできないことにある。

 どうやら問題が山済みのようだが、それを的確に説明できない。
分からない理由の最大の要因は情報開示が遅れており、しかも時価会計の導入が不十分なため、十分な分析資料がないことによる。
一頃の日本経済と同じだと考えると分かりやすい。
ヨーロッパ経済は魑魅魍魎の世界だ」これが実感だ。

 その中で最も分かりやすいのはイギリス経済で、ここは金融と不動産の動きをおさえれば動向が分かる。
ドイツ経済は日本経済と似ていて、自動車産業を中心とする輸出産業の動きを抑えればかなり把握ができるが、金融がいまいちよく分からない。

 最も把握が困難なのはフランス経済で、何をキーに分析してよいのかさっぱりわからない。いわゆるへそのようなものがなく、かつ社会主義的な経済運営をしているので、資本主義の経済分析手法が使用できない。なかでも金融情勢がさっぱり分からないというのが実情だ。(情報開示も不十分だ)。

その他の国の経済状況はさらに分からず、「ヨーロッパは一体どうなっているんだ」と悩んでいた。

 そうしたら、Voice8月号が「ユーロ圏が沈没する日」という特集を組んでくれて、クレディ・スイスのチーフ・エコノミスト白川浩道氏が「中東欧、不良債権の危機」という論文で実に的確に問題点を説明してくれた。
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 以下、白川氏の論説に従って要旨をまとめてみたい。

① 容易ならざる「悪循環のループ」

・欧州の金融機関(ユーロ圏、イギリス、スイス)が抱える不良債権は約2兆ドル(190兆円)で、アメリカの金融機関が抱える不良債権額とほぼ同じ

・内訳はアメリカ向け不良債権(サブプライムローン等)が1兆ドル、のこる1兆ドルが欧州向けで、不動産市場のバブル崩壊によるもの、欧州の企業の収益悪化によるもの、中東欧向け不良資産がそれぞれ3分の1づつを占める。

・不動産市場のバブル崩壊はアメリカよりひどく、かつての日本の不動産バブルの崩壊に酷似している(アメリカの不動産バブルはそれを担保に消費者ローンを組む等金融バブル的な面が強かった)

・企業の収益悪化は中小企業が特にひどく、過剰な設備投資に苦しんでいる(日本のバブル崩壊後の中小企業の立場と同じ)。

・中東欧むけの不良資産は、オイルマネーやロシアの資金が欧州の金融機関を通じて中東欧に流れ込んだものだが、石油価格の低迷により逆流現象が起こっている。

・中東欧諸国は投資資金をユーロ、スイス・フラン、円で調達したが、為替相場が逆流現象により自国通貨安に振れているため、返済額が膨れ上がってしまった。

・このため中東欧諸国は実質的に破算する国(ウクライナ、ハンガリー、バルト3国等)が続出しており、貸出し側も不良債権の増加に苦しんでいる(オーストリア)。

 ここまで読んでどうやら欧州経済の一番の問題点は中東欧諸国の不良債権問題であることが分かった。このまま行けば中東欧諸国の財政は破綻する。それは即EUの破綻につながりかねない。
だからここでの課題は」中東欧諸国を誰がどのようにして救うかの問題ということになる。

② 欧州諸国が破綻する日

・通常こうした状況での処方箋はIMFからの借入で外貨準備を積みますことだが(それによって為替の介入ができる)、見返りに緊縮財政を要請されるため、中東欧の経済は低成長に陥る。そしてここから這い上がるシナリオが見当たらない(アジアの韓国やタイように世界の生産拠点として復活できない)。

・一方中東欧に多額の債権を持つ国にオーストリアがある(イギリス、ドイツ、フランス、スイスも同じだがこちらは金融の奥が深い)。
オーストリアの融資額は国内総生産の約8割に登っており、オーストリアの金融システムは崩壊の危機にある。

・欧州中央銀行によるオーストリア支援は、ユーロの増発につながり、域内のユーロの価値を引下げることになるため、ドイツ・フランスが躊躇していて、機動的な対応ができない。

・その他の国では、スペインに極端な住宅バブルが発生したが、主要な資金供給先のイギリスの金融機関が資金を引き上げ、大きく景気が落ち込んだ。ここにも誰が助けるかの問題が発生している。

・アイルランドも住宅バブルによって多量の資金が流れ込んだが、それが逆回転し始めたスペインと同じ。

 そして白川氏は「ユーロの悲劇は、過剰な楽観論を放置したことで通過価値があがりすぎ、その反動がではじめていることであ」と結論づけている。

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 ユーロが異常に通貨価値が上がっていることは、私自身最近フランスの巡礼の旅をして実感したばかりで、現在1€=140円前後だが、実質的な購買力は1€=100円程度だ。
実生活レベルの感度では約4割程度ユーロ高になっており、これは早晩解消される方向に動くはずだ。

 今回白川氏の論文を読んで、ヨーロッパ経済の分析のポイント

① 中東欧への融資の実態と、中東欧諸国のそれに対する対応
② オーストリア、スペイン、アイルランドといった弱小国の金融機関の救済方法
③ 不動産バブルを経験したイギリス、スペイン、アイルランドの不動産動向
④今後の金融機関における不良資産の開示のレベルと規制方法

に有りそうなことが分かった。

 私自身上記の仮説に従って、今後分析を深めてみたいと思っている。

 

 

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