(21.7.12) よく読まれる記事の紹介 NO2 竹中平蔵氏とリチャード・クー氏の論争
私が記載したこの記事が多くの読者の目に止まったのは、ある著名な経済関係のブロガーの目に止まり、そのブログに転載されたからである。
最近は嬉しいことに、私の記事が参照されることが多くなった。ちょうど学者の論文がその引用数で評価されるように、このブロガーの世界ではどれだけ記事が転載されるかにかかっている。
ますます多くのブロガーが転載してくれると、書いている方も気持ちが高ぶってくるものだ。
(21.2.24) 竹中平蔵氏とリチャード・クー氏の論争 構造改革か財政出動か
元経済財政担当相の竹中平蔵氏と野村総合研究所主席研究員リチャード・クー氏との間で実に興味深い論争が毎日新聞闘論(21.2.1)紙面上で行なわれた。
それは一言で言って「日本の失われた10年は失敗だったのか、成功だったのか」という議論である。
勿論一般的な評価は「失敗だった」と言うことで、竹中平蔵氏はその急先鋒である。
「財政拡大は需要落ち込みに対する一時的な時間つなぎの手段なのに、・・・不況脱出に不可欠な銀行の不良債権処理や経済構造改革を進めず、・・・・公共事業中心に時間稼ぎだけをやっていたため、財政にとんでもない借金だけが残った」と散々だ。
それに対しリチャード・クー氏は「90年代のバブル崩壊後、不動産価格はピーク時から9割近く下がった。・・・(それなのに)90年以降GDPは縮小していない。それを可能にしたのが大規模な公共投資だ」と擁護する。
「何もしなかったらもっと悲惨な結果になったのだから平均して1%程度の成長をしたのだから上出来ではないか」と言っているわけだ。
当初はクー氏の論説はほとんど無視された。クー氏は典型的なケインズ主義者だが、ケインズ経済学はすでに過去の経済学とみなされていたからだ。
竹中氏の言う「構造改革こそが規制ばかり多い日本の経済構造を打ち破り、グローバリゼーションの波に打ち勝てる唯一の方法」と思われていた。
「アメリカへならえ」と言うことだ。
しかし、ここに来て状況が一変してしまった。日本・アメリカ・西欧がこぞって低金利政策をとり、政策金利がほぼ0%近くまでなったのに、まったく経済が好転しないので、各国は一斉に財政出動に動き出した。
「ほれ見ろ、金融政策を諦めて財政出動に政策転換したじゃないか。オバマ政権は72兆円規模だ。これは90年代の日本と同じじゃないか(日本は失われた10年間に約140兆円の財政出動をした)」とクー氏は言う。
「企業も家庭も紐を締めて金を使わないなら、あとは政府がその需給ギャップを埋める必要がある。恐慌時にはケインズ政策が有効だ」
さらにクー氏は鼻息があがって「戦争なしで恐慌を回避したのは日本だけの快挙だ」とも言う。
「日本は世界に先駆けて恐慌を経験したが、それを財政出動で乗り切った。この経験を今世界が真似ている。日本の経験は世界の模範だ。だから失われた10年は成功経験なのだ」と言う評価なのだ。
考え込んでしまった。つい最近までマネタリストで構造改革派の竹中氏の天下だったが、リーマン・ブラザーズの倒産以降すっかり世界が変わってしまった。
今はケインジアンリチャード・クー氏の天下だ。
クー氏によれば需給ギャップに相当する金額だけ財政出動が必要と言う。現在の日本の需給ギャップは約20兆円だと政府が発表しており、一方これに対する麻生政権が予定している財政出動は約12兆円なのだからまだ8兆円も足らない。
しかも放っておくと、この需給ギャップはますます拡大していく。
だからとクー氏は言う。「赤字国債を発行してすぐさま10兆円規模の(内容は問わない)公共投資をすべきだ」
一方劣勢の竹中氏は「基本は構造改革だが、止む終えず財政出動をするならば、将来の日本のためになる羽田空港拡張のような投資にすべき」と条件闘争に変更した。
今回の経験で分かったことは、経済理論もそのときの状況によって正しかったり正しくなかったりすると言うことのようだ。
私など最近まで「経済理論は正しいか正しくないかのどちらかだ」と思っていたが、浅はかだった。
経済が不況になり需給ギャップが現れてくるとケインズ経済学の時代になり、反対に経済が加熱している時はマネタリストの時代になると言うことのようだ。
経済政策論議はそのときの経済状況によって左右されると言うことが分かっただけでもいい経験をしたと思っている。
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