(21.7.29) 麻生首相の舌禍と民主党政権の行方
私がサンチャゴ巡礼フランス道の旅をしている間に、政権の行方はほぼ決まってしまったようだ。自民党の退潮は避けられず、民主党政権の誕生がカウントダウンになった。
このような状況下でも麻生首相の舌禍はおさまる事を知らず、25日の日本青年会議所での挨拶で「元気な高齢者をいかに使うか、この人たちは皆さんと違って働くことしか才能がないと思ってください」と言ってしまった。
麻生首相の本音は「高齢者にも働いてもらって、活力ある長寿社会を作ろう」ということで、日本では長寿者が働かなければ社会が持たないことは確実なのだから、まったく正しい認識なのだが、その表現は小学生並だ。
このため首相の街頭演説を自民党首脳はできるだけさせないように配慮し始めた。
同じく25日には自民党宮城県連の政経セミナーでの講演をしているが、ここは仙台市長選の真っ盛りだったのに、自民党候補を擁立していないため応援演説もできない(そのために仙台に行かせたようだ)。
「麻生には何もしゃべらすな。しゃべるたびに自民党は議席が減る」
26日は日曜日で民主党の鳩山代表は東奔西走していたのに、麻生首相は行くところがなく、仕方なく集中豪雨被害の出ている山口県防府市に視察に行くことにしていた。
しかし山口県知事から「2次災害も懸念されるので視察を取りやめて欲しい」とやんわりと断られ視察にまで出られなくなってしまった。
応援演説も駄目、視察も駄目で麻生首相は完全に干されている。
自民党の党首が「何もしないのがベスト」と思われているのだから、選挙前から自民党の大敗は確実だ。
一方民主党の鼻息はますます荒くなってきた。選挙に向けてのマニフェストが公表されたが、目玉は子供手当ての創設と、公務員人件費の削減だという。
子供手当ては一人当たり月額2万6000円の子供手当てを創出する代わりに、扶養控除、配偶者控除を見直すという。
従来は老人福祉に政策の重点が置かれていたが、それを子供福祉に重点を移そうというもので、このまま行けば日本は老人ばかりの社会になってしまうので、出生率の向上を図ろうということのようだ。
麻生首相は子供を増やすことを諦め、老人を働かせようと提案しているが、どうやら鳩山代表は子供を増やすことは可能と考えているようだ。
公務員人件費の削減は、昨年までは3年間で2割以上削減するといっていたが、今回のマニフェストでは期限を切ることを止めた。
天下り反対との整合性を取ったものだが、天下りを中止させれば公務員は定年まで勤めることになるのだから、削減は容易ではないだろう(実際は天下りは公務員定員の隠れ蓑で、定員が削られるとその分天下り先の人員が増えていた。公務員だって生活がかかっているので、おいそれと馘首されるわけにはいかない)。
日米同盟については前小沢代表の国連主義をすっかり取り下げ、日米同盟重視に移っている。日米地位協定の抜本的な改定をするには、そもそも日米安保条約そのものを見直さなくてはならないのだから、そこまで踏み込む腹はないだろう。
野党だから気安く日米同盟反対を唱えていたが、政権をとったら世界に味方がアメリカだけで、日本が他に頼るべき国がないことが身にしむはずだ。
インド洋の給油にも反対していたが、こちらも反対を取りやめている。
麻生首相に「そういうのをブレというのだ」と皮肉られているが、日米関係が最重要な関係なのはアメリカでなく日本なのだから、政権をとれば現実路線になるのはどこも同じだ。
こうした現実路線転換を民主党の岡田幹事長は「鳩山首相とオバマ大統領との信頼関係を築くのが重要だから」と説明したが、「鳩山首相」という言葉には驚いた。
すでに政権移譲がおこなわれたような表現だが、各政党もマスコミも世論も、アメリカを含めた外国も民主党政権の誕生を確実なものとして対応を検討し始めたことだけは確かだ。
民主党は外交問題で現実路線をとり始めた。後は財源問題でどこまで現実路線が取れるかが課題になる。
国民福祉の向上には金がかかる。増税か国債の増発か、はたまたその両者か。
日本の将来は民主党の現実路線の成否にかかってきたようだ。
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