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(21.6.4) 魑魅魍魎(ちみもうりょう)の公債管理 千葉市の借金はなぜ増えるか

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 先日来千葉市市債が増え財政が悪化していくメカニズムが分からず、頭を悩ましていた。なにしろ一般会計では市債は減少するのに、千葉市全体としては増加していくのだから不思議だ。
私のような一般市民は通常一般会計しか見ないから、それを見ている限り、千葉市の財務は改善されて問題ないように見える。

 だが一方で市債1兆円を越え、さらに増大していると熊谷候補は言っている。どうしたら実態が分かるのだろうか。
千葉市21年度特別会計の明細を取り寄せてようやくそのからくりが見えてきた。

 千葉市会計書類を見てまず驚くのは、一般会計の規模より特別会計の規模の方が大きく、一般会計をいくら眺めていてもその本当の姿が分からないことだ。

 たとえば18年度以降の当初予算で比較すると以下のようになっている。
単位億円 )      21年    20年    19年   18年

一般会計        3350   3213   3573  3323
特別会計        3901   3683   3853  3391

合計           7251   6896   7426  6714

うち一般会計の割合  46%    47%   48%   49%


 特別会計は、 一般会計の例外として設置されているのだが、例外の方が大きくなり、 しかも原則として独立採算制をとることになっているが、一般会計からの繰り入れによって運営されるといういびつな形態になっている。
これでは一般会計をいくら眺めていても分からない。

 そしてなぜこのように特別会計が膨れ上がるかといえば、主として公債管理特別会計が膨れ上がっているからである(16年度 1097億円、21年度 1601億円  +504億円)。

 公債管理とは非常に不思議な勘定で、本来は返済期限が来た時に当然返済が発生するのだが、実際は返済せず借換をするので別勘定にするというものである。
露骨に言うと返せない金の勘定だといえばよい。

 もしこれを一般会計に置いておくと、借入と返済が両建てになり、昨今のように返済が進まないと予算規模が毎年膨れ上がってくる。それがいやなので別勘定にしたと言う

 金融機関はこうした借換を継続する資金を底積資金と言って、いわば赤字見合い資金と認識している。 資本金が不足している企業の常套手段だ。

:もちろん役所の論理は違って、金融機関から30年返済で資金を調達すると10年ごとに一括返済期日が来る(普通銀行は10年以上の長期貸付ができない)。そこで10年ごとに借り返るのだが、それを一般会計で行なうと両建てになって一般会計の本当の規模が分からなくなるので別会計で処理している、と言っている。

 詳細は以下のURL参照

http://www.pref.nara.jp/zaisei/16yosangaiyo/image/16kousai.pdf

 だがどのように定義しようとも、本当に大事なのはこの返せない金が毎年どのように推移しているかである。
借換債の推移を見ていくと、15年度 166億円、16年度 392億円、20年度 572億円、21年度 716億円と毎年増大しているのが分かる(
注:17,18,19年度の資料は手元に無いので不明)。

 
ところが一般会計の市債推移で比較すると以下のようになっている。

一般会計の市債と公債費(償還金)の推移
単位億円)       21年    20年    19年   18年

①市債の発行(一般) 400    350    628   521
②市債の償還(一般) 562    516    485   435

①-②市債の増減  ▲162   ▲166   +143  +86


市債残高           ?      ?   10790  10442

 どうだろうか。これを見ると一般会計の数字は実に美しく、一般会計20年、21年には市債は減少さえしている。
しかし実は市全体では増大しているという(20年度末の実績数字は入手できなかった)。

 それはどこを見ると分かるかと言うと特別会計の公債管理で、そこでは市全体の償還財源が分かり、またその借換金が分かるからである。

単位億円)         21年    20年    19年   18年
③市債の償還財源(特別) 884    808
④市債の借換(特別)    716    572    ?     ?
⑤市債の返済額      1601   1380    ?     ?

 
ここから先の説明はほとんどマジックのような世界で、私はこのマジックが分かるまで1週間もかかってしまった。

市債が増えるロジックは、①+④ー③=市債の増減である。
この式に当てはめて20年度、21年度を計算すると、

20年度:350+572-808=+114
21年度:400+716-884=+232


注1) ③の中に②が含まれている。③は返済可能な財源をすべてあつめたもの。基金の取り崩しもここに含まれる。

注2) ①は新規の市債発行、④は返済が来ても返済できなかった金額

注3) 実際は特別会計の中に企業会計があってさらに複雑なのだが、今回は省く。


 分かっていただけたであろうか。もう一度言うと
①新規発行市債+④借換市債ー③市債返済額=市債の増減

 
しかしどうしたものだろうか。特別会計の中のさらに公債管理をじっくり眺めて、さらに一般会計との入り繰りを調べてようやく千葉市の借金体質が分かる。

しかしこれでは一般市民が千葉市の財政状況を知ることなんて、金輪際できそうも無い。

 鶴岡市政では「返せるものは返すが、返せなければ借り替えればよい。ただし一般会計だけは美しくしておけ」
ということだったようで、その結果段々と市債は増えていく。GMのようなものだ。

注)資料がなく市債返済額が契約上の返済額か、とりあえず返せる額か明確には分からない。実際は金融機関等と交渉して返済期限を延ばすことはしばしば行なわれるので、実態解明には内部資料を見ないと分からない。


 やはり特別会計の公債管理は魑魅魍魎の世界なのだ。

 

注:千葉市の財政状況は以下が見やすいが、市債のロジックまでは分からない。
http://www.city.chiba.jp/zaiseikyoku/zaisei/zaisei/download/zaiseijoukyou.pdf

   

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評論 地方自治 千葉市」カテゴリの記事

コメント

1週間も掛かっての分析、どうもお見逸れいたしました。
うーん、特別会計という別腹を開腹手術で摘出しなければなりませんねえ・・・。
6日の千葉日報では「実績を積んだ人を」と演説した大臣のことが報道されてましたが、その「実績」の中身が問題なんですよねえ。
ということで、勝手連blogで、この記事を紹介させていただきましたのでご連絡いたします。

(山崎) どうぞご自由にご利用ください。

投稿: 横田 | 2009年6月 6日 (土) 10時42分

きちんと勉強されて、価値ある記事をUPされる山崎さんに敬意を表します。
さて千葉市、物凄い借金体質ではありませんか。
これは本当に何とかしなければ、と思いますね。ハコモノを作っている場合じゃないでしょう。
好景気、不景気を肌身で感じざるを得ない企業人、自らの業務に常に改善を求められ、またその評価の方法論を体得するべく習慣づけられている会社員から見れば、市の認識は「甘い」の一言です。
経営責任を問われることなく、これまでサブとして働いてきた「実績」のある方が、今度はトップを目指しているのですから、厚顔無恥とはこの事です。

(山崎) この記事を作成するのに悪戦苦闘しましたので、yokuyaさんにほめて頂けるととてもうれしいです。

投稿: yokuya | 2009年6月 5日 (金) 07時45分

この記事へのコメントは終了しました。

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