(21.6.10) 千葉市の埋蔵金問題 基金の取り崩しは条例違反
千葉市の埋蔵金がいくらあり、それをどのように使用しているか調べているが、いま一つ明確な数字が無い。
千葉市も国と同じで、財政状況が厳しくなったため一般会計に埋蔵金を繰り入れて何とか帯を結んでいるのだが、そもそも埋蔵金がいくらあって、そのうちいくらを使って、残りはいくらなのかがいま一つはっきりしないのだ。
また埋蔵金の定義もかなりあやふやで、一般的には特別会計の積立金や運用益を言う。
千葉市には市債管理基金や市庁舎整備基金と言うような基金があり、前者は市債の償還のための積み立て、後者は市庁舎建替えのための積立金である。
たとえば市債については30年で一括返済するとそのときに多額の償還金が必要になるが、とてもいっぺんに払いきれない。
そのため30年間にわたってコツコツを償還金をためていくのだが、それが市債管理基金である(ため方には国のルールがある)。
一般家庭でもそうだが、家計が苦しくなってくるとある目的を持って蓄えていた資金を生活費に使ってしまう。
「あとでもどせばいいや」という感じだ。
しかし一旦生活費に使用してしまうととても戻せないのは家庭も市も同様で、現在この市債管理基金が枯渇し始めた。
千葉市のIR資料「千葉市の財政状況」によると、20年5月段階の基金残高は全体で342億円(うち市債管理基金 222億円、市庁舎整備基金 36億円)になっている。
これが、一応埋蔵金と言うことになる。
この埋蔵金について民主党の白鳥誠一氏の「市政報告」によると、基金からの借入は「6年前から急場しのぎの策として毎年行なわれている」とのことで、21年度には市債管理基金から70億円(前年度15億円)の借入を実施するのだそうだ。
そのため全基金からの借入金は総額247億円に膨れ上がるのだという(基金の残高がそれだけ不足していることになる)。
特に問題だと私が思ったのは5年前に市債管理基金から借りうけた60億円の返済ができず、返済を先延ばしにしたと言う。
鶴岡前市長は自分勝手に基金を取り崩したり返済の引き延ばしをしていたのだが、もちろん基金の取り扱いにはルールがあり、以下のように条例で定められている。
「市長は、財政上必要があると認めるときは、確実な繰り戻しの方法、期間及び利率を定めて基金に属する現金を各会計の歳計現金に振り替えて運用することができる」と定められている。
この条例をよく読んで欲しい。特に重要なのは「確実な繰り戻しの方法」という文言で、返せるあてが無ければ借りてはいけないと言うことだ。
しかし鶴岡前市政はまったく返せるあてがないのに、基金から借金をし、実際5年前に借りた60億円の返済ができなくなった。
これは明確に条例違反と言える。
なぜ返せるあてがなくなったかは以下の理由である。
① 景気後退により法人税収入が大幅に落ち込んでいること。
② 従来の箱物行政による市債の増発で償還金が膨れ上がり、国の早期健全化基準に抵触する恐れがでてきたこと。
③ そのため20年度予算から市債の発行の抑制をせざる得なくなったこと。
従来は予算の不足分は好き勝手に市債を増発してまかなっていたが、2年前から国の基準が厳しくなり市債増発ができなくなって、基金を返済できなくなったと言う構造だ。
実際21年度当初予算は惨憺たるもので、220億の収支不足に対し、禁じ手の市債の増発を50億加えて400億にし(財政健全化プランでは350億に留めなければ早期健全化プランを達成できないと計算されていた)、市債管理基金から70億の借入と60億の返済繰り延べで計120億円調達して、かろうじて帯を結んでいる。
鶴岡前市長も苦しかったろう。市債の発行は国の「早期健全化基準」に抵触しそうなので抑制せざるを得ず、一方基金の取り崩しは条例違反をしてまで取り崩し、さらに今までのは箱物行政も継続しようとしている(千葉都市モノレールの延伸や蘇我スポーツ公園の整備等)。
これでは八方ふさがりで市長を辞職したくなるのはもっともだ(実際は収賄容疑で逮捕されたため辞職した)。
千葉市の財政は火の車であり、現在の市長選の争点は、市の財政問題への取り組み姿勢がもっとも重要な判断基準でないかと私は思っている。
(注) 千葉市の財政が崩壊寸前にあることが分かったのは、総務省が財政健全化法(07年6月)を制定し、市町村の財務状況を同一基準で横並び比較したことが一番大きい。
総務省としては夕張市に見られるような市町村の倒産を早期に把握して、対応策をとる事を目的に制定したのだが、千葉市については思わぬ波及効果があった。
それまで千葉市では野放図とも言える市債の発行で箱物行政を推進してきたが、この財政健全化法に基づく横並び指標で、政令指定都市の中で最悪の財務状況であることが判明したからである。
鶴岡前市長は平成20年度から緊縮予算を組むことにしたものの、それまでの1兆円あまりの公債発行が市政に重くのしかかり、かつ景気後退局面という外部環境の悪化が重なった。
そのため、ためていた基金を取り崩したり、過去の基金への返済を取り止めて(これは条例違反)かろうじて21年度予算を組んだというのが実態。
箱物行政しか方法を知らない鶴岡前市長としては、どうすることもできず、市政を投げ出したというのが真実に近そうだ
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