(21.5.9) 金融恐慌と大リーグバブルの崩壊
5月5日の毎日新聞に米大リーグの実に興味深い記事が掲載された。
それによると「世界的な経済危機が・・・右肩上がりで数字を伸ばしてきた大リーグにも影響を与え、昨年より選手年俸総額や観客動員数が減少する球団も出てきた」という。
実は大リーグは昨年まではわが世の春を謳歌しており、毎年大リーグ全体の収益は増加し、その結果選手年俸も止まるところを知らなかった。
たとえばここ3年の総収益の推移を見ると、06年 52億ドル(5200億円)、07年 61億ドル(6100億円 +17%)、08年 65億ドル(6500億円 +7%)という具合だ。
大リーグの収益は、入場料収入、放送権収入、商標権収入、スポンサー収入、グッズ収入等からなり、太宗は入場料収入で、全体の5割程度を占めている。
各球団はこの入場料を毎年値上げし、それでも観客数は増加していた。 しかし昨年のリーマン・ブラザーズの倒産を契機に(それ以前から影響はあったが)、入場者数に急ブレーキがかかってしまった。
07年の大リーグの総入場者数は7950万人、08年は7621万人となり、約4%の減少になった。
この傾向は本年になっても続いており、ここ2ヶ月の結果でも対前年比約4%の減少が続いている。
特にヤンキースの落ち込みが激しく、対前年比12%も落ち込んでしまったが、これは新ヤンキーススタジアムのオープンと同時に入場料を思い切って値上げしたためである。
たとえば日本で言うボックスシートが年間契約で400万円~2000万円、VIPルームが6000万円~8500万円と言われた。当初はそれでも予約が殺到し、ヤンキースの戦略は成功したかに見えたが、いざふたを開けてみると閑古鳥が鳴いてしまった。
金融恐慌のおかげでウォール街のスターが次々に消えてしまい、こうした高額シートを購入できる層がいなくなったためだろう。
たまらず球団側は半額値下げセールを始めたが、これはバブルで踊った高額住宅を、大幅値引きでたたき売りをする住宅会社とまったく同じ構造だ。
本年度の大リーグの収益については、増加する要因がまったくない。観客数は減少し、入場料は上げられず(一部には値下げが始まっている)、放映権料はテレビ局から値下げの要請が強く(スポンサーが高額のスポンサー料を払えなくなっている)、その他の収入も伸び悩みそうだ。
すでに年俸の引下げは始まっており、USAトゥデーは09年度、30チーム中14チームで選手年俸総額が減少したと伝えている。
選手には球団収入の約60%が分配される構造になっており、球団収入が減少すればそれに応じて選手収入も減少するのは仕方がない。
現在大リーグの選手年俸は20億円以上が何人もおり、日本人選手でも10億以上の年収が当たり前になっているが、これは明らかにバブルと言える。
それがどの位バブルかは、日本のプロ野球の年収と比較すると良く分かる。
たとえば大リーグでもっとも高いヤンキースの平均年俸は約5億円だが、日本のプロ野球でもっとも高い阪神の平均年俸は約6000万円だ。
1チームの選手数が同じでないから(大リーグは40名、日本は外国人選手を除いて約60名)一概に比較はできないが、それでも約8倍の差がある。
最高年俸の個人で比較してもロドリゲス選手が約25億で、金本選手が約5億だから、約5倍の差がある。
問題はこうした年俸が経済規模や人口に比較してふさわしいかどうかだが、アメリカは経済規模で約3倍、人口で約2倍強だから、バブルのイメージは日本の2倍~3倍程度だ。
大リーグと言えども、その国の経済状況と無関係に存続することはできず、大リーグバブルもいずれ収束するはずだ。
近い将来大リーガの年俸も現在の半分程度になり、「あの当時は本当にいい時代だった」と懐かしむことになるのだろう。
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