(21.5.29) GMの破算とCDSの爆発
アメリカ政府がGMに求めた再建計画提出日の6月1日の期限が近づいているが、どうやらGMは倒産を免れることができないらしい。
金融機関等の債権者との交渉が暗礁に乗り上げたからだ。
このため長い間金融専門家の間で「それが爆発すると、サブプライムローンの比ではない」といわれていたCDSが本当に爆発しそうになってきた。
CDSとは金融危機が発生する前までは、もっとも人気のあった金融商品の一つで、一種の企業保険のようなものだ。
今回の例で言えば、GMは270億ドル(約3兆円弱)の無担保社債を発行しているが、これを購入した金融機関やヘッジファンドは無担保なのでリスクが高すぎると判断する。
そこで金融機関やヘッジファンドはAIGのような保証会社(保険会社)に、GMが倒産した場合のヘッジとして保険料を支払い、全額または一部の債権を保全してきた。
「GMが倒産しても、AIGが代わりに払ってくれるから安全確実だ」
それがCDSだ。
今回のGMと債権保有者との交渉が難航して決裂したのも、このCDSがあるためである。
「債権額の90%削減なんてとんでもない。それよりかGMが倒産してAIGに100%の保証を実行してもらおう。わが社にとってはGMの倒産が一番の利益だ」
オバマ政権としたら、失業者をこれ以上増やさず、業況を悪化させないためにも、何とかGMの債務削減交渉を成功させたい。
最悪でも事前調整型の破産法適用(クライスラーと同じ)に持って行きたかったが、どうもそうは問屋がおろさない状況になってきた。
事前調整のない、本当の倒産になりそうなのだ。
実は世界には総額で6000兆円(全世界のGDPとほぼ同じ)のCDSがあるといわれ、AIGだけでも約40兆円のCDSを保有している。
今回のように企業が倒産しそうになると、政府や労働組合は何とか企業存立に向けて努力するが、一方金融機関やヘッジファンドはその企業を倒産させてCDS契約に基づく債権回収を図ろうとする。
(注、金融機関は政府の公的資金の支援が期待できるので妥協の余地はあるが、ヘッジファンドには支援がないため、妥協の余地はない)
実際GMが倒産すれば270億ドル規模のCDSの保証実行がされるのだが、関連会社等への波及を考えると(関連会社が倒産して、ここでもCDSの実行が発生する)、その規模がどの位ふくらむか、現状では誰もわからない。
CDSの爆発が始まれば、小康状態にある金融市場が再び大荒れになる。だから6月1日はアメリカにとっても、世界にとってもエポックとなる歴史的な日になりそうなのだ。
(21.6.1)追加
米政府はGMが連邦破産法11条の申請をして破産するとの声明を出した。これに伴い米政府とカナダ政府が約4兆円の支援を行い、両政府あわせて72%の株式を取得して、国有化することになった。
上記ブログで記した債権額270億ドルの約半数はGMの提案を呑むことになったが、残りの半数は拒否している。拒否をしたファンドや金融機関はCDSの実行を実施することになる。
私が上記ブログで記載した約半分の規模でCDSが実行されるのだが、その広がりについては今はまだ分からない。
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