(21.5.18) 麻生首相は希代の強運児 その2
麻生首相の強運にはつくづく舌を捲いた。元々選挙管理内閣と思われていた麻生政権が、08年11月の公明党が求めた総選挙を封じ込め、その後は09年度予算、その補正予算を人質にとって延命している間に、何と民主党小沢代表がこけてしまった。
政治は「一瞬先が闇」だから何が起こるかわからないとはこのことだ。
西松建設の政治献金疑惑で、世論はすっかり小沢氏からはなれ、その分麻生首相の評判はあがるという春の椿事が起こった。
この事件では小沢代表の第一秘書が逮捕されたが、事件そのものは何とも胡散臭い陰の動きが感じられる。
小沢氏は「政治資金については、一点のやましさもない」といっているが、従来の政治資金規正法の解釈からは小沢氏の言説はまったく正しい。
もともと政治資金規正法はひどいザル法で、個人の資金管理団体が企業献金を受けるのを禁止しているが、地方の政党支部(実際は政治家個人の別団体)が企業から政治資金を受け入れることは認めている。
だから個人からでも企業からでも政治家は献金が受けられ、これは単なる事務処理の問題に過ぎなかったのだから、小沢氏とすれば自信を持って「潔白」と主張できる訳だ。
しかし、この国の世論はことのほか清廉潔白だから、「政治資金規正法がザル法だ」なんて説明に納得するはずがない。
「小沢止めろ」の大合唱が起こってしまった。
小沢氏としたら憤懣やる方なかったところだろう。
選挙で勝てるのは自分しかいないとの自負があり、実際07年7月の参議院選挙ではそうなった。
「これだけの実績があるのになぜやめなければならないのだ」と歯軋りしたはずだが、この国では実績より失点が少ないことが大事だ(注、サラリーマン社会を経験した人なら、出世する人は実力がある人より、ミスをしない人だと知っているはずだ)。
一時期、麻生首相の支持率ががた落ちしたのは、麻生首相自らの舌禍と朋友中川大臣の酩酊会見のせいだが、その後学習効果が効いて最近では舌禍がまったくなくなった。
その一方で小沢代表がこけたのだから、自民党としては千載一遇のチャンスが到来した。
本当はすぐにでも解散総選挙をしたいところだが、そうは行かない理由が麻生首相にはある。
なにしろ自身の政権延命策として「経済対策が一番だ」と言い続けてきた手前、補正予算が国会を通過するまでは解散するわけに行かない。
とりあえず補正予算は13日に衆議院を通過したので、後は60日ルールで自然成立する7月上旬まで待たねばならない。
「俺は本当に強運だが、総選挙だけは都合よく思い通りの時期にはできないな」と言うところだろう。
一方この国の世論は熱しやすくさめやすい。今では小沢氏のことはすっかり忘れ、新代表の鳩山由紀夫氏に注目している。
だから本当に強運かどうかは、鳩山氏との一騎打ちを経てからでないと分からない。
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