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(21.5.15) 何があっても世界は不変 長谷川慶太郎氏の世界観

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 今、長谷川慶太郎氏の「それでも『平成恐慌』はありません」という本を読んでいる。長谷川氏と言えば長い間、経済・政治・軍事関連の日本の第一人者と目された評論家で、特に1990年前後の社会主義国崩壊の前後には非常に鋭い指摘を行なっていた。

 ソビエトロシアが崩壊する数年前、長谷川氏が「なぜロシアが崩壊するか」と予言している一節があった。

 記憶をたどって記すと「ロシアの唯一の輸出資源が石油なのにもかかわらず、経済計画において石油の産出量や販売計画がまったく触れられておらず、あたかも石油が無いかのごとくだ。

 このような経済計画を立案しているソビエトロシアは遠からず崩壊する
」と言うものであったが、そのとおりになり私は舌を捲いた(当時、私はソビエトロシアがあんなにあっけなく崩壊するとは思っていなかった)。

その後長谷川氏は「中国の崩壊」を予言したが、こちらはまったく当たらず、最近では「鉄鋼生産量や化学産業ばかりを強調する」どちらかと言えば忘れられた評論家という立場にあった。

 その長谷川氏が久々に出した本がこの「平成恐慌はない」と言う本である。

 この本で長谷川氏は以下のように論説を展開する。
まず「今度の「金融危機」で国際経済全体に根本的な改革の動きが発生することはないだろう」と言う。

 たとえ金融危機がどのようなものであったとしても、それは資本主義体制特有の景気変動の一種で、現在のアメリカ中心の国際経済体制未来永劫、びくともしないと言う。

 その上で、長谷川氏は「現在は戦争のない社会で、その結果デフレが基本的趨勢なのだから、(戦争がない以上)デフレギャップを埋めるための公共事業投資が必要」だとケインズ政策を推奨する。

 そしてこのために「いくら赤字国債を発行し、いくら公共投資を行なっても、これはデフレギャップを埋めるための投資だから、インフレには結びつかず、かえって経済活動に大きいコストダウンを提供する」のだそうだ。

 ここまで読んで考え込んでしまった。確かに21世紀は戦争のない世紀と言えるが、だからと言って無限大に近い規模まで赤字国債を発行しても問題ないとはどうして言えるのだろうか。

 たとえば日本では失われた90年代に、景気回復のための公共投資を大々的に行ったが、赤字国債が積みあがり財政の硬直化は先進国中第一位になってしまった。

 私の認識は「先進国の戦争と公共投資」は非常に似通った性格を持っているというもので、どちらも無駄な投資というものだ。

 戦争では、かつては戦勝国は賠償金を掠め取ることができたが、第二次大戦後はアメリカの例で見れば分かるとおり、かえって経済援助をしなければならない(マーシャル・プラン、ガリオア・エロア、イラク支援等)。

 また公共投資は十分すぎる位い投資がされてしまい、今では熊が遊んでいると揶揄される高速道路や、ヤンバダムのようになんで作るのか不明なダムが残っているだけだ。
こうした不要なハコモノはかえって維持費がかさんで、とても経済活動を支援するような代物でない。

(注)経済学の用語で収穫逓減の法則と言うものがあり、たとえば千葉と川崎を結ぶアクアラインを1本作った時は、それなりの経済効果が期待できるが、同じアクアラインを2本、3本と作ってはまったく無駄だというようなもの

 要するに戦争も公共投資も、確かにデフレギャップを埋めることはできるが、だからと言ってそれが次世代の経済活動を支援するようなものでなく、単なる負債を後世に付回しているだけの措置に過ぎない。
麻薬のようなものだ。

 しかし、長谷川氏は自信を持って言う。
道路網が整備され、交通渋滞が解消され、大都市の住民に限らず国民全体全体の受けるメリットは言うまでもない。そしてこうした経済効果も投資額をはるかに上回るに違いない

 何も変らず、大胆なケインズ政策さえとれば、経済は復活し、アメリカ中心の世界が維持できて万々歳だと言うわけだ。
これでは長谷川氏はアメリカ中心のこの世界秩序を何とか守りたいために、そうした論説を展開しているだけといわれても仕方ない。

 読んで見て、もはや長谷川氏は評論家ではなく、単なる体制維持のプロパガンダーに過ぎないという印象を強く持った

 

 

 

 

 

 

 

 

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