(21.4.27) 中国の知的財産権強奪計画 レッド・クリフの戦い
さすが中国だと感心してしまった。中国が国家的戦略として各国の知的財産権を合法的に強奪する計画を立て、この5月1日に各国に通達するのだと言う。
いわゆる「強制認証制度」と言うのだが、中国政府が認証しない限り、中国への製品の輸出も中国での生産・販売もまかりならないという、恐るべき制度だ。
「認証してもらいたければ、全ての情報を公開しろ」
制度そのものは07年8月にWTOで定めたものだが、これは医療用器具のような生命にかかわる製品が対象になるものと想定されていた。
しかし中国はこの制度を利用して、IT製品にまで認証制度を拡大し、世界の知的財産権を無料で強奪することを考え付いたのだからすごい。
「かつて中国は西欧や日本の植民地主義者から土地や人民を収奪された。今度は中国が強奪する番だ。我々には富を取り返す権利がある」
対象になる知的財産権は13種類で、ファイアウォールソフト、ICカードの暗号ソフト、迷惑メール撃退ソフトと言った最先端ソフトのソースコードで、それを当局に公開して、当局の審査を受けろと言う。
実はソフトの世界ではソースコードを公開するかしないかは、経営の最重要決定事項になっている。
私たちが通常使用しているパソコンのOSの世界では、Windowsはソースコードを非公開することによって莫大な利益を上げることができたし、一方Linuxはソースコードを公開することによって、世界中のプログラマーがLinuxを修正することを可能にした。
現在の電子機器はほとんどが高度なソフトによって制御されており、たとえば日立製作所が開発した非接触ICカードフェリカのソースコードは企業の最高機密になっている。
こうしたICカードに内包されている暗号ソフトは世界各国の企業や研究所がしのぎを削って開発をしているソフトと言え、この世界では「暗号化ソフトを制するものが世界を制する」ともで言われている。
そのソフトを中国は無償で公開しろと言う。驚いたのはアメリカや西欧や日本で、いわば知的財産権が国家戦略の要と認識している国家群である。
「とんでもない。そんなことをすれば中国当局はすぐさまソースコードを解読し、その情報を中国の企業に提供する。そうなれば中国が世界の最先端の知的所有権国家になってしまう」
実際中国の知的財産権強奪はすさまじく、たとえばドイツのシーメンスから高速鉄道の技術を導入したが、それにほんの少しだけ手を加えた後「中国が完全に知的財産権を保持している」と言いだした。
こうしてシーメンスは高速鉄道の技術を無料でふんだくられようとしている
だが、中国とすれば今が最高のチャンスだと思っている。「世界の景気が後退し、唯一経済成長が見込まれるのは中国だけだ。中国で商売をしたければ、情報公開するのが当然ではないか」
特に暗号化ソフトが重要なのは、中身が分かれば世界各国のファイアウォールを破ることができ、世界の軍事・経済情報を中国がすべてつかむことが可能になるからだ。
「中国が覇権国家になれるか否かは、この知的財産権強奪計画の成否にかかっている」
さすが中国は戦国の昔から兵法にたけている。
日本企業としては痛し痒しだ。対象13品目の総売上高は約1兆円と見積もられており、中国が最後のアンカーと思っている企業も多い。
中国と先進各国とのこの闘いはWTO等を舞台に繰り広げられるはずだが、唯一の経済成長先が中国と思われているだけに、企業によってはソースコードを公開して中国政府に取り入ることもあり得る。
はたして中国が仕掛けてきたレッド・クリフ(赤壁の戦い)を米・西欧・日本の連合軍は打ち破ることができるだろうか。
(21.4.30追加)
中国政府は29日、強制認証制度の実施を1年間延期して、22.5.1からの実施にするとの声明を出した。とりあえず第一回目の戦いは連合軍の勝利に終わった。
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